上 下
308 / 428
北と南の戦い

第三百八話 壮観の撤退劇

しおりを挟む
「離せーー汚ねーぞ。やり直しだーー。てめー達は四人もいた。反則だー! ありえねえ。やり方が汚すぎる。これがお前達のやり方なのかー」

「……」

 全く! あおり運転の運転手みたいな言い草です。あきれました。
 自分のやった事はかえりみず、相手がやった事だけが全て悪いと言うのでしょうか。
 だいたいたった四人にこれだけの戦力で襲いかかり、手出しをしないと言っている人に不意打ちをしておいて、最初にルールを破ったのはそっちでしょうに。

 最近こんな人が大勢日本にいますよね。
 崩壊した世界ではしょうが無いのでしょうか。
 私は、日本はもっとましな国だと思っていました。

 でもだからと言って大臣がこれでは……まさか! まともな教育を受けていないからなのでしょうか。
 いいえ、この大臣もきっと有名な大学を出ているはずです。
 日本の学校は、もう少し心の教育をしてほしいですね。 

「離せーー!! 離せば、おまえを、元帥にしてやる。北海道国陸軍元帥だ。なっいいだろ、助けてくれ。褒美も思いのままだーー! ほらわしと一緒に行こう!」

「はーーっ! 全く、あなたっていう人は最低ですね。本当によく大臣になれましたね」

「ひゃああぁー、はっはっはー、おもしれえー。てめーは政治家に何を期待しているんだ。政治家なんざ、皆こんなもんだ。こんなんだから大臣になれたんだ。自分の事しか考えねえで権力と金と女の亡者だ。それを3文字で書くと政治家なんだ。俺なんかまだいい方だ。現場に来てちゃんと見て指揮しているのだからな」

「あ、あなたでいい方なのですか?! そ、そういえば政治家なんて選挙のときしか姿を見た事がありません」

 私は驚きから、もはやあきれて悲しくなっています。

「ははは、政治家で正義をかざす者は力がねえ。何もしねえんだから同罪だろう。しかも、高給をもらって、歳費なども黙ってもらっているじゃねえか。消費税を無くせ、低所得者を守れと言いながら。選挙で何千万も使い、給料も何千万だ。そんな奴が低所得者の味方? はあーっ! 信じている奴は馬鹿か間抜けだ」

 くっ。
 でも、これはこの大臣の個人的な意見です。
 事実とは違うはずです。消費税をぶっ壊せ政党とかありましたよね。
 無いかー、有ってくださいよ……泣けてきました。
 私は母子家庭で育ちました。母は低所得で私を必死で育ててくれました。こんな奴が政治家として、好き勝手をやっているようでは、日本が住みやすくなるわけがありません。

 ――?!

 今の木田家は低所得者に優しくてとても住みやすいです。
 こんな崩壊した世界でも、とても住みやすく感じます。
 だから、私は自主的に頑張れています。
 それもこれも、大殿のおかげなのですね。ありがたくて泣けてきました。

「てめーら、聞きゃあがれ!!!」

 ゲン様が大声で言いました。

「!?」

 撤退する、北海道国軍の兵士が振り向いて声の方を見ます。

「遊びはここまでだー!!」

「あ、遊びーーーーーー!!!!!!」

 ゲン様の言葉に敵兵も、大臣も伊達様も豊久様も、もちろん私まで驚いています。

「赤穂さん、大臣を離してやってくれ!! いいかーー!! よく聞けーー!! 俺達木田軍は、次は本気で攻める。そっちも本気の装備で来てくれー! 小手調べは終わりだー! むかってくる者には、戦士として全力でお相手する。無論ブレードも使用して、三千の釧路で待機している機動陸鎧を参加させる。正々堂々全力で戦おう。そっちも三つや四つの機動陸鎧でごちゃごちゃ言わねえでもすむように準備してくれーー!!!!」

 私は大臣から手を離しました。

「お、おい! 機動陸鎧とは何だ?」

 大臣はさっさと逃げればいいのに話しかけてきました。

「貴方の目の前にいるロボの事ですよ」

 話したくはありませんが、一応返事を返しました。

「お、おい。これが釧路に三千もいるのか?」

「あー、いますね。ゲン様は今回の戦いは遊びだったようです。まあ、北海道国軍も遊びだったのですからお互い様ですね。次は本気だそうですよ。北海道国軍も遊びじゃ無くて全力で来てほしいそうです」

「ば、馬鹿な! これが北海道国軍の本気だ。弾薬も八割は使い切ってしまった」

 あのー、それ、言っていいのですか?
 スピーカーから全体に聞こえていますよ。

「またまたー、そんな事を言ってー。油断させるつもりですかー。次は今回の千倍は準備して下さい。戦車も戦闘機も一万ずつは用意して下さいね。次は本気という事は命のやりとり、戦争をするということです。お互い悔いの無いように正々堂々戦いましょう」

「お、お前は知らないのか、そんなに戦車や戦闘機があるわけ無いだろう。日本中のものを集めてもそんなに無いぞ!! ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……!!」

 あ、貴方だって、日本に核兵器が無い事知らなかったくせに!
 大臣様は、何かを考えているようです。うなり声が止まりません。

「あーーっ、言い忘れたーー!! 降伏する者は歓迎するぞーー。しばらくは農業に従事するから、農業をやりたいものは、帯広に移住してくれーー、歓迎する!! 追撃はしねえから、ゆっくり転ばないようにけえってくれーー!!」

 逃げる兵士達に追い打ちでゲン様は言いました。
 大勢逃げて来てくれるといいですね。

「すげーー、すごすぎる。来て良かった!」

 三万を超える兵士達の撤退劇は壮観です。
 豊久様が私の横に来て言いました。
 心から感動しているみたいです。

「く、くそーー!! 憶えていなくてもいいからなーー!!!!」

 大臣が捨て台詞です。って、「憶えておけよ!!」じゃないのですかー。
 初めて聞きました。

「はあーはっはっはっー!!!!」

 皆の笑い声が北の大地にこだまします。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す

栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」 魔族と人間が対立して1000年。 災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。 城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。 魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。 千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。 そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。 命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。 この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。 そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター

呑兵衛和尚
ファンタジー
 異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》  帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。  その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。  最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎  この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。 ・第一部  十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。 ・第二部  十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。

処理中です...