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学園生活編

第三百四話 恐るべき敵

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「中川、アメリ先生を呼んできてください」

 五対一の戦いは、熱田の天夕改が五人を圧倒しています。
 私は、どこかの教室で英語の授業をしているアメリ先生を呼んでもらう事にしました。
 恐らく天夕改に勝てる人は、変身したアメリ先生だけでしょう。

「は、はい!」

 返事をすると、中川はすぐに行こうとしました。

「ちょっと、まって! 今動けば標的になります。熱田の隙をつきます。私の合図で体育館をこっそり抜け出して下さい」

「わかりました」

 中川は私の合図でいつでも抜け出せるように、ドアにあまり近すぎない位置へ移動しました。
 ドアに近づきすぎると、熱田が警戒するので少し離れた所でスタンバイしています。

「みんなーー!! 右手だけを拘束しまーす! いきますよ!!」

 古賀さんが指揮をとり、天夕改への攻撃を一点に集中するようです。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 全員が攻撃を開始しました。

「今だ!!」

 私は中川に指示しました。
 中川は、天夕改の隙をつき、うまく体育館を抜け出しました。

「すごい、アスカ君はなんでもわかるのね」

 美代ちゃんが感心していますが、全然すごくありません。
 だって、熱田は美人過ぎる校長先生がお気に入りのようで、古賀先生のミニスカートがめくれる時は必ず見つめています。
 今回の攻撃の時にもミニスカートがめくれました。紫のスケスケレースパンツが丸出しです。
 天夕改の視線が、紫のパンツに固定されたのを見て合図を送っただけなのです。

 とうさんのパンツ作戦が見事に成功しています。
 紫のスケスケレースパンツはやり過ぎと思いましたが、必要だったという事がいまやっと分りました。
 やっぱりとうさんはすごいです。いつもとうさんに助けられます。
 でも、こんなことは美代ちゃんに言えませんよね。

「ま、まあね」

 とりあえず、説明はせずにごまかしておきました。

「うわあーーっ!!」

 天夕改の中で熱田が叫びました。
 五人のロープ状の物が天夕改の腕に巻き付いています。
 全員が全力で引っ張っています。
 どうやら攻撃は功を奏したようです。

「このまま引き倒しますよ!!」

 古賀さんが言いました。

「ひゃーーはっはっはっ」

「?!」

「まさか、こんな攻撃が効いたと思っちゃったのですかーー!!」

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 天夕改が引っ張られて伸びていた右腕をグイッと曲げて引き戻しました。
 五人がいっぺんに宙を舞いました。

 ガツン! ガツン! と大きな音を立てて、空中でそれぞれが体をぶつけあって、床に落ちました。
 ですが、全員床には綺麗に着地しています。さすがですね。
 そんな時に体育館の窓が真っ白に輝きました。
 体育館の中まで真っ白になり、何も見えなくなりました。

 こんな光量を出すのはウーマンフラッシュだけです。
 アメリ先生が、変身したのでしょう。
 でも、タイミングがおかしいです。
 もう、中川がアメリ先生の所についたのでしょうか。

「く、くそう、まぶしい」

 熱田も視力を奪われて、動けなくなりました。
 この隙に、五人は体勢を整えることが出来ました。

「全員、ここは回避に徹しましょう」

 古賀さんが言いました。

「はい!!!!」

 四人が返事を返します。
 ここからの五人は、天夕改の攻撃を紙一重でかわすように動きます。

「くそーーっ!! ちょこまか、ちょこまかと、うっとうしい!!」

 数分間の天夕改の攻撃が全部避けられます。
 天夕改の大きな動きでは、五人を捕らえる事は出来ません。
 忍者装備とアンナメーダーマン装備は機動力で天夕改に勝っていますね。
 とうとう熱田がじれて声を出しました。
 その時。

「だいじょうぶでしゅか?」

 体育館のドアが開き、アメリ先生とエマ姉が入って来ました。

「オイサスト! シュヴァイン!」

 エマ姉が体育館をいちべつすると、すぐに変身を始めました。
 エマ姉もこの学校だったのですね。と言う事は三年A組でしょうか。
 セーラー服が脱げて、スクール水着になりました。
 中学三年生美少女の水着姿が一瞬現れると、アンナメーダーマンジェニファが現れました。

「遅くなりました」

「ひゃははは、テメーラごときが六人になったところで、どう変わると言うんだ」

「みんなー! もう一度、今度は右足を狙いましょう」

 古賀先生が言いました。
 一点集中で足を狙い引き倒すつもりなのでしょう。

「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

 新たな戦いが始まりました。

「アメリ先生、変身をしてしまったのですね」

 戦いは六人に任せて、アメリ先生に話しかけました。

「ちまちた」

「どうしてですか? なにかあったのですか?」

「ありまちた。はちゅおんがわからないと言われまちた」

「は、発音?」

 アメリ先生は大きくうなずいて言いました。

「ちょーでしゅ。だから変身してはちゅおんちまちた」

「あの、ちなみに、This is a pen.ってどうなりますか」

「かんたんでしゅ。でぃしゅいじゅやぴぇん。でしゅ」

 あーーだめだ。
 こんな発音じゃあ何を言っているのかわかりません……。
 っていうか、アメリ先生に英語の授業は無理でしょう。
 そもそも、今のご時世に英語って、いるのですかーー??

「あの、変身は出来ないのですか?」

「はい。今日の分はもうおわりましゅた」

「あーーーっ」

 私は天を仰ぎました。
 発音の為に変身してしまったとは。

「きゃあああーーーーー!!!」

「くそがーー!! てめーらはもういい邪魔だー! どけーー!!」

 六人のロープを握って振り回し、体育館の壁に全員をぶつけました。
 天夕改は、圧倒的に強いです。こんなに強いとは知りませんでした。
 敵にまわすと、恐ろしすぎです。

「ふふふ、まずはてめーからだ」

 熱田が私の腕に、しがみついている美代ちゃんの前に来ました。

「彼氏だの何だの、ませガキが! まずはてめーから、ぶち殺してやる! こっちへ来い!!」

 美代ちゃんの体がガタガタ震えだしました。
 美少女を震えるほど怖がらせるとは。

「ガキとか言いやがって、てめーだってガキだろうがー!!」

 中川がいい事を言いました。

「ばっきゃあろー! 俺はてめーら見てーな、しょんべんくせーガキとは違うんだよ! 俺は二十一才なんだよ」

 成人した大人が中一の美少女を殺すだってーー!!
 これは、もう許せませんね。
 でも、あいつ二十一才だったのですね。中一だと思っていました。

「安心して下さい。可愛い彼女を守るのは彼氏の仕事です」

 私は、美代ちゃんの耳元に言いました。

「えっ?!」

 私は驚いている美代ちゃんの手の上に、優しく手を重ねました。
 美代ちゃんが首をブンブン振りました。
 目に涙が一杯溜まっています。
 悪役令嬢が、可哀想なとらわれのお姫様みたいになっています。可愛いですね。

「おい、長太郎!! 僕が相手だ!!」

 私はとうさんの真似をして言うと、天夕改の前に進み出ました。

「てめー! ぶっころす!!」

「いけません!!」

 古賀先生の声が体育館中に響きました。

 ドーーーン!!!!

 長太郎が天夕改の右手を振り上げて私の頭の上に落としました。
 体育館の床に大きな穴が開きました。
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