252 / 428
第二百五十二話 罪悪感
しおりを挟む
翌日の朝は、お城から朝ご飯の用意の煙が上がりませんでした。
「せっかく結界の上を開けておいたのに、火を使わないのでしょうか」
ミサさんが首をかしげています。
お米が無くなりかけていると、のどまで出かかりましたが言うのをやめました。
言ってしまうと、「なんで知っているの?」と、こういうときばかり頭の回転の速いあずさちゃんに突っ込まれるからです。
黙って朝食を食べます。朝食が終ればお祭りの準備です。
「おのれ、見せしめに数人ぶっ殺せー」
私達が、駿河公認アイドル、ピーツインのステージのセッティングをしていると、城から大声が聞こえました。
昨日の夜に見た、ひげもじゃのおかしらです。
銃声があたりに響きました。
「やめろー! 撃つなーー!! 見えない壁があるー! うわあ、跳弾が当たる! やめるんだーー!! な、なんなんだこれはー?」
跳弾がおかしらの足先に当たりました。いい気味です。
でも、残念な事にケガはしなかったようです。
「お、おかしらー。壁におおわれていて、城への出入りが出来ません」
「ぬうう、清水めーー。何をしやあがった」
「おかしら! 目を細めて、首を傾けるとキラキラ虹色に光って何かが見えます」
城の男達がそろって、目を細めて首を傾けています。
「ぷっ!!」
笑っては失礼ですが、少し滑稽で全員が吹き出してしまいました。
「ちくしょう!! 全体を覆っていやあがる。これじゃあ、城からの銃撃は無理だ。くそやろー!!」
お祭りの準備は順調です。
少し暗くなってきたので、今日の祭りの準備は早めに終る事にしました。
美術館へ戻る途中、お城から夕食の準備の煙が上がりました。
「少し様子を見てみましょうか」
古賀さんの言葉に全員が賛成し、城をよく観察できるビルの屋上へ移動しました。
炊かれたご飯のまわりに女性が集りました。
「うわあ、美味しそう。炊き込みご飯だ」
あずさちゃんが、無邪気に言います。
「あずさちゃん、あれは炊き込みご飯ではありません。泥水で炊いたので黄ばんでいるのですよ」
坂本さんが悲痛な表情で言いました。
「私が想像していたのとは違って、城はずいぶん疲弊していますね。かわいそうに。非戦闘員だけでも先に解放してくれるといいのですが」
ミサさんが悲しそうに言います。
きっと、今はおかしらが激怒していますので、交渉には応じてもらえないでしょう。
「おにぎりにしていますが、数が少ないですね。あれでは、一人一個ですね。しかも、小さい」
古賀さんが冷静に言いました。
全員無言になり、おにぎりが配られるところを真剣な表情で見つめます。
「朝飯もねえのに、これだけかよー!!」
不満を言う人が何人かいます。
「文句を言うな。おかしらもおなじ物で我慢しているんだー」
「いつまで、我慢すりゃあいいんだ」
「もう少しだ、もう少し我慢すりゃあ、カンリ一族が敵にスキを作る。そしたら、一気に打って出て清水など皆殺しだー」
「……」
すでに、城の士気は無くなりかけているようです。
「あの、これなら祭りをしなくても兵糧切れで勝てそうに思えますが……」
私が言うと、全員が大きく目を見開いて私の方を見ました。
「さあ、帰りましょう」
四人が、何も無かったように声をそろえて言いました。
私の言ったことは無かった事になったようです。
美術館にもどり、ロビーの大テーブルに座ると、フォリスさんが食事を運んで来てくれました。
外は寒いのですが、美術館の中は暖房設備がセットされて快適です。
仙台のアーケードで威力を発揮したミスリル製の空調ゴーレムです。
私の前に置かれたのは、熱々の鉄板に乗せられた、サーロインステーキと大きなハンバーグです。鉄板の上でジュージュー言っています。
そして、真っ白なご飯。湯気まで真っ白です。
とても美味しそうですが、さっきの情景が目に浮かび手が出せません。
「おいひいーー!!」
あーー、あずさちゃんが口一杯に頬張っています。
「本当ですね」
三人の大人も、あずさちゃんが食べ始めると、一口目を口に入れました。
おそらく、これは祭りに出されるメニューです。
試食という事なのでしょう。
そういうことなら、私も食べないわけにはいきません。
一口だけ口に運びました。
あーーっ、駄目だ。
一口で済むわけがありませんでした。
あっという間に、サーロインステーキが消えました。
次はハンバーグです。
「おかわりーー!!!」
あずさちゃんと、三人の大人の声がそろいました。
見ると全員のご飯とお肉が消えています。
私はまだ、ステーキしか食べていないのにーー。速すぎです。
私は大きくて、まん丸に膨らんだハンバーグを一口食べました。
あーーーーっ!!
美味しい。私は子供なので、ハンバーグの方が美味しいです。
でも、そんなことは言ってはいけませんよね。
だって、どう見てもサーロインステーキの方が高そうですもの。
「おいしーーー!! でも、やっぱりハンバーグの方がおいしいー!」
「あっ、私もです」
はっ! しまった。あずさちゃんにつられて言ってしまいました。
あずさちゃんめーー!!
私も、お替わりをしてしまいました。
食べ終わると、罪悪感です。
お城では、おなかを空かした人達が大勢いるのに、私と来たらこんなに美味しい物を食べてしまって……。
「私は、ハンバーグだけお替りーー」
「あーっ、私もーー」
はっ! あずさちゃんに、つい、つられて言ってしまいました。
久しぶりの牛肉は美味しすぎます。
罪悪感とは裏腹に、ハンバーグは最高でした。
「せっかく結界の上を開けておいたのに、火を使わないのでしょうか」
ミサさんが首をかしげています。
お米が無くなりかけていると、のどまで出かかりましたが言うのをやめました。
言ってしまうと、「なんで知っているの?」と、こういうときばかり頭の回転の速いあずさちゃんに突っ込まれるからです。
黙って朝食を食べます。朝食が終ればお祭りの準備です。
「おのれ、見せしめに数人ぶっ殺せー」
私達が、駿河公認アイドル、ピーツインのステージのセッティングをしていると、城から大声が聞こえました。
昨日の夜に見た、ひげもじゃのおかしらです。
銃声があたりに響きました。
「やめろー! 撃つなーー!! 見えない壁があるー! うわあ、跳弾が当たる! やめるんだーー!! な、なんなんだこれはー?」
跳弾がおかしらの足先に当たりました。いい気味です。
でも、残念な事にケガはしなかったようです。
「お、おかしらー。壁におおわれていて、城への出入りが出来ません」
「ぬうう、清水めーー。何をしやあがった」
「おかしら! 目を細めて、首を傾けるとキラキラ虹色に光って何かが見えます」
城の男達がそろって、目を細めて首を傾けています。
「ぷっ!!」
笑っては失礼ですが、少し滑稽で全員が吹き出してしまいました。
「ちくしょう!! 全体を覆っていやあがる。これじゃあ、城からの銃撃は無理だ。くそやろー!!」
お祭りの準備は順調です。
少し暗くなってきたので、今日の祭りの準備は早めに終る事にしました。
美術館へ戻る途中、お城から夕食の準備の煙が上がりました。
「少し様子を見てみましょうか」
古賀さんの言葉に全員が賛成し、城をよく観察できるビルの屋上へ移動しました。
炊かれたご飯のまわりに女性が集りました。
「うわあ、美味しそう。炊き込みご飯だ」
あずさちゃんが、無邪気に言います。
「あずさちゃん、あれは炊き込みご飯ではありません。泥水で炊いたので黄ばんでいるのですよ」
坂本さんが悲痛な表情で言いました。
「私が想像していたのとは違って、城はずいぶん疲弊していますね。かわいそうに。非戦闘員だけでも先に解放してくれるといいのですが」
ミサさんが悲しそうに言います。
きっと、今はおかしらが激怒していますので、交渉には応じてもらえないでしょう。
「おにぎりにしていますが、数が少ないですね。あれでは、一人一個ですね。しかも、小さい」
古賀さんが冷静に言いました。
全員無言になり、おにぎりが配られるところを真剣な表情で見つめます。
「朝飯もねえのに、これだけかよー!!」
不満を言う人が何人かいます。
「文句を言うな。おかしらもおなじ物で我慢しているんだー」
「いつまで、我慢すりゃあいいんだ」
「もう少しだ、もう少し我慢すりゃあ、カンリ一族が敵にスキを作る。そしたら、一気に打って出て清水など皆殺しだー」
「……」
すでに、城の士気は無くなりかけているようです。
「あの、これなら祭りをしなくても兵糧切れで勝てそうに思えますが……」
私が言うと、全員が大きく目を見開いて私の方を見ました。
「さあ、帰りましょう」
四人が、何も無かったように声をそろえて言いました。
私の言ったことは無かった事になったようです。
美術館にもどり、ロビーの大テーブルに座ると、フォリスさんが食事を運んで来てくれました。
外は寒いのですが、美術館の中は暖房設備がセットされて快適です。
仙台のアーケードで威力を発揮したミスリル製の空調ゴーレムです。
私の前に置かれたのは、熱々の鉄板に乗せられた、サーロインステーキと大きなハンバーグです。鉄板の上でジュージュー言っています。
そして、真っ白なご飯。湯気まで真っ白です。
とても美味しそうですが、さっきの情景が目に浮かび手が出せません。
「おいひいーー!!」
あーー、あずさちゃんが口一杯に頬張っています。
「本当ですね」
三人の大人も、あずさちゃんが食べ始めると、一口目を口に入れました。
おそらく、これは祭りに出されるメニューです。
試食という事なのでしょう。
そういうことなら、私も食べないわけにはいきません。
一口だけ口に運びました。
あーーっ、駄目だ。
一口で済むわけがありませんでした。
あっという間に、サーロインステーキが消えました。
次はハンバーグです。
「おかわりーー!!!」
あずさちゃんと、三人の大人の声がそろいました。
見ると全員のご飯とお肉が消えています。
私はまだ、ステーキしか食べていないのにーー。速すぎです。
私は大きくて、まん丸に膨らんだハンバーグを一口食べました。
あーーーーっ!!
美味しい。私は子供なので、ハンバーグの方が美味しいです。
でも、そんなことは言ってはいけませんよね。
だって、どう見てもサーロインステーキの方が高そうですもの。
「おいしーーー!! でも、やっぱりハンバーグの方がおいしいー!」
「あっ、私もです」
はっ! しまった。あずさちゃんにつられて言ってしまいました。
あずさちゃんめーー!!
私も、お替わりをしてしまいました。
食べ終わると、罪悪感です。
お城では、おなかを空かした人達が大勢いるのに、私と来たらこんなに美味しい物を食べてしまって……。
「私は、ハンバーグだけお替りーー」
「あーっ、私もーー」
はっ! あずさちゃんに、つい、つられて言ってしまいました。
久しぶりの牛肉は美味しすぎます。
罪悪感とは裏腹に、ハンバーグは最高でした。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す
栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」
魔族と人間が対立して1000年。
災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。
城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。
魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。
千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。
そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。
命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。
この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。
そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター
呑兵衛和尚
ファンタジー
異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》
帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。
その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。
最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎
この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。
・第一部
十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。
・第二部
十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる