215 / 428
第二百十五話 茶臼山
しおりを挟む
「とうさん、やばいね。夜の海って恐すぎでした」
日の出と共にあずさと海岸へ戻った。
朝食の準備を済ますと、あずさを残してクザンとシュラとアドを連れて、俺はふたたび漁に出かけた。
夜捕った分だけでは、越後のマグロ祭りの分には心細いので、もう一度出かける事にしたのだ。
残った人には、ハワイ観光を楽しんでもらう為に自由時間とした。
その翌日、フォード教授の牧場へ行き、牛と馬をもらってフォード教授と共に日本へ帰国した。
アメリカから帰った俺は忙しかった。
牧場の運営の手伝い。
その後は、大和までの鉄道の開通、これは大和八木までの路線を使い名古屋から津を経由して開通させなくてはならない。
当然勝手には出来ないので、大和解放軍との交渉をしなくてはならない。列車の製作から試運転までは、俺が担当しなくてはならない。
あっ、という間に一月二十八日になってしまった。
「やあ、柴井隊長。すみません、全面協力してもらって」
「何を言われます! 協力するのは当たり前です。この戦いで救っていただく者達の中には、大和の人間も多くいるはずですからね」
「シュウさん!!」
「おう、元気そうだな」
ノブとエマとライがやって来た。
エマとライに両手を引っ張られて、平城宮跡の大和解放軍本部に案内された。
すでに遠方の伊達と上杉は、到着していた。
「もう観光はしてきたのか。近くに古墳もあるぞ」
「ふふふ、色々案内していただきました」
上杉が答えた。
柴井隊長が、よくしてくれたようだ。
「柴井隊長、俺はノブと大阪の下見がしたい。お借りしてもよろしいですか?」
「そう言うと思っていました」
「ノブ、アンナメーダーマン、アクアブラックには慣れたか?」」
「もちろんさ、毎日、ライ様のライファとエマ姉のジェニファーと練習したからね」
「そうか、それならいい。じゃあ、スケさん、カクさん、響子さん、カノンちゃん、行きましょうか」
「はい!!」
お供五人と共に大阪入りした。
下見がしたかった目的の場所は茶臼山だ。
俺が二月一日に、本陣にしようと思っている場所だ。
茶臼山と言うのは日本中に結構ある。
愛知県の新城にもあって、ここは長篠合戦の時に織田信長が本陣にした場所でもある。
大阪の茶臼山は、標高二十六メートル、大坂冬の陣の時に徳川家康が本陣にした場所である。
そして、なんとここには美術館があるのだ。
「なるほど、丁度良いな」
「何がですか?」
ノブが聞いて来た。
「うむ、大阪城のまわりは荒野になっているが、ここのまわりはまだ、冴子の破壊が終っていない。伏兵するのに丁度いいと言う事だ」
「でも、木が生い茂っていて、見晴らしはよくありませんね」
響子さんが言った。
確かに、遠景を見るには見晴らしが悪い。
「まあ、当日は櫓を頂上に建てるとしましょう。近くに通天閣があります。ちょっと寄って、少しふかんで見て見ましょうか」
俺達六人は、目立たないように移動すると、通天閣もまだ壊されていなかった。
通天閣を大阪城の反対側から、新政府軍に見つからないように登ると、すごい景色がひろがっていた。
「ひでーー、何にも無くなっている」
ノブが声を上げた。
俺が初めて見た時より拡がっている。
冴子の奴真面目に頑張ったようだ。
「見晴らしが良いなあ。当日はここを本陣にする方が良さそうだな」
俺は、二月一日はここで戦局を確認し、戦いの状況を見て、大阪城に入り込もうと考え直した。
「ノブ君、見えますか?」
響子さんが大阪城の横を指さした。
「うん、あそこにシノさんがいるんだね」
「そうだ、当日はここで状況を見て、チャンスと見たら一気に救出作戦を実施する」
「……」
五人は無言で大阪城を見つめた。
ここから見た感じでは、数千人の女性の救出は困難を極めそうだ。
普通に想像してみると、それほどの大勢が荒野を走れば、とても目立つ、近くに陣を作ってそこに、いったん逃げ込んでもらうようにしないと逃げ切ることは出来なさそうだ。
「あの川を渡ったあたりか。ノブ救出した人達と、川を越えてくれ、そこに陣を築く」
俺は、大阪城の東の川を指さした。
「うん、わかった」
「五人で、しんがりを守ってくれ、陣から援軍を出し、守りながら川を越えるんだ」
「わかったよ」
ノブが返事をすると、スケさん達も全員うなずいている。
全員の顔に緊張が走り、顔が引きつっている。
風は冷たかったが、五人の顔に一筋汗が流れた。
俺は、この荒野に変わった都市の姿の中に、当日布陣した木田軍の姿を想像していた。
「よし、わかった。では、全員平城宮跡の大和解放軍本部へ帰ってくれ」
「えっ!? シュウさんはどうするのですか?」
響子さんが聞いてくる。
「ああ、俺は美術館をちょっとのぞいてくる」
「では、我々も……」
今度はスケさんが言った。
「いや、ここまで忙しかった。少し一人でのんびり美術館を歩いて見たいんだ」
「シュウさんを一人にしては……」
「大丈夫、俺が我がままを言ったと言えば、全員『ふーーん』で済ましてくれるはずだ」
「それは、いつもやっていると言う事ですね」
「ふふふ、そう言うことだ」
五人は何度も振り返りながら、解放軍本部へ帰って行ってくれたようだ。
日の出と共にあずさと海岸へ戻った。
朝食の準備を済ますと、あずさを残してクザンとシュラとアドを連れて、俺はふたたび漁に出かけた。
夜捕った分だけでは、越後のマグロ祭りの分には心細いので、もう一度出かける事にしたのだ。
残った人には、ハワイ観光を楽しんでもらう為に自由時間とした。
その翌日、フォード教授の牧場へ行き、牛と馬をもらってフォード教授と共に日本へ帰国した。
アメリカから帰った俺は忙しかった。
牧場の運営の手伝い。
その後は、大和までの鉄道の開通、これは大和八木までの路線を使い名古屋から津を経由して開通させなくてはならない。
当然勝手には出来ないので、大和解放軍との交渉をしなくてはならない。列車の製作から試運転までは、俺が担当しなくてはならない。
あっ、という間に一月二十八日になってしまった。
「やあ、柴井隊長。すみません、全面協力してもらって」
「何を言われます! 協力するのは当たり前です。この戦いで救っていただく者達の中には、大和の人間も多くいるはずですからね」
「シュウさん!!」
「おう、元気そうだな」
ノブとエマとライがやって来た。
エマとライに両手を引っ張られて、平城宮跡の大和解放軍本部に案内された。
すでに遠方の伊達と上杉は、到着していた。
「もう観光はしてきたのか。近くに古墳もあるぞ」
「ふふふ、色々案内していただきました」
上杉が答えた。
柴井隊長が、よくしてくれたようだ。
「柴井隊長、俺はノブと大阪の下見がしたい。お借りしてもよろしいですか?」
「そう言うと思っていました」
「ノブ、アンナメーダーマン、アクアブラックには慣れたか?」」
「もちろんさ、毎日、ライ様のライファとエマ姉のジェニファーと練習したからね」
「そうか、それならいい。じゃあ、スケさん、カクさん、響子さん、カノンちゃん、行きましょうか」
「はい!!」
お供五人と共に大阪入りした。
下見がしたかった目的の場所は茶臼山だ。
俺が二月一日に、本陣にしようと思っている場所だ。
茶臼山と言うのは日本中に結構ある。
愛知県の新城にもあって、ここは長篠合戦の時に織田信長が本陣にした場所でもある。
大阪の茶臼山は、標高二十六メートル、大坂冬の陣の時に徳川家康が本陣にした場所である。
そして、なんとここには美術館があるのだ。
「なるほど、丁度良いな」
「何がですか?」
ノブが聞いて来た。
「うむ、大阪城のまわりは荒野になっているが、ここのまわりはまだ、冴子の破壊が終っていない。伏兵するのに丁度いいと言う事だ」
「でも、木が生い茂っていて、見晴らしはよくありませんね」
響子さんが言った。
確かに、遠景を見るには見晴らしが悪い。
「まあ、当日は櫓を頂上に建てるとしましょう。近くに通天閣があります。ちょっと寄って、少しふかんで見て見ましょうか」
俺達六人は、目立たないように移動すると、通天閣もまだ壊されていなかった。
通天閣を大阪城の反対側から、新政府軍に見つからないように登ると、すごい景色がひろがっていた。
「ひでーー、何にも無くなっている」
ノブが声を上げた。
俺が初めて見た時より拡がっている。
冴子の奴真面目に頑張ったようだ。
「見晴らしが良いなあ。当日はここを本陣にする方が良さそうだな」
俺は、二月一日はここで戦局を確認し、戦いの状況を見て、大阪城に入り込もうと考え直した。
「ノブ君、見えますか?」
響子さんが大阪城の横を指さした。
「うん、あそこにシノさんがいるんだね」
「そうだ、当日はここで状況を見て、チャンスと見たら一気に救出作戦を実施する」
「……」
五人は無言で大阪城を見つめた。
ここから見た感じでは、数千人の女性の救出は困難を極めそうだ。
普通に想像してみると、それほどの大勢が荒野を走れば、とても目立つ、近くに陣を作ってそこに、いったん逃げ込んでもらうようにしないと逃げ切ることは出来なさそうだ。
「あの川を渡ったあたりか。ノブ救出した人達と、川を越えてくれ、そこに陣を築く」
俺は、大阪城の東の川を指さした。
「うん、わかった」
「五人で、しんがりを守ってくれ、陣から援軍を出し、守りながら川を越えるんだ」
「わかったよ」
ノブが返事をすると、スケさん達も全員うなずいている。
全員の顔に緊張が走り、顔が引きつっている。
風は冷たかったが、五人の顔に一筋汗が流れた。
俺は、この荒野に変わった都市の姿の中に、当日布陣した木田軍の姿を想像していた。
「よし、わかった。では、全員平城宮跡の大和解放軍本部へ帰ってくれ」
「えっ!? シュウさんはどうするのですか?」
響子さんが聞いてくる。
「ああ、俺は美術館をちょっとのぞいてくる」
「では、我々も……」
今度はスケさんが言った。
「いや、ここまで忙しかった。少し一人でのんびり美術館を歩いて見たいんだ」
「シュウさんを一人にしては……」
「大丈夫、俺が我がままを言ったと言えば、全員『ふーーん』で済ましてくれるはずだ」
「それは、いつもやっていると言う事ですね」
「ふふふ、そう言うことだ」
五人は何度も振り返りながら、解放軍本部へ帰って行ってくれたようだ。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す
栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」
魔族と人間が対立して1000年。
災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。
城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。
魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。
千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。
そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。
命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。
この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。
そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター
呑兵衛和尚
ファンタジー
異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》
帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。
その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。
最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎
この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。
・第一部
十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。
・第二部
十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる