上 下
207 / 428

第二百七話 大坂冬の陣への決意

しおりを挟む
「ゲン、聞いてくれるか。俺が見てきた、大阪の状況を説明したい」

「丁度、腹も膨れた。説明してくれ」

「柳川、大きめの大阪の地図はあるか?」

 シュウ様が言うと、ゲン様の斜め後ろの目つきの悪い男の人が、声を出し右手を少し上に上げた。

「おい!!」

 柳川様が声を出すと、壁際に控えていたメイドさん二人が、折りたたんだ白い布を持ってパタパタと運んで来ました。

 それを部屋の中央で広げました。
 その布は、ベッドのシーツを縫い合わせた物のようです。左右に分れて座っている重臣達の中央に、丁度収まる寸法です。

「さすが、柳川だな。最初からこれを想定しての配置だったのか。妙に中央が空いていて、おかしいなーと思っていたんだ。ミサ! 大阪の地図を頼む」

 広げられたシーツには、墨で大阪の輪郭と大阪城のマークが書かれています。
 シュウ様はそれを見ると、さらに地図を要求しました。

「はい、はーーい!」

 嬉しそうに、巨乳の女性が走ってきました。
 胸が、飛んで行きそうに弾んでいます。
 なんて、すごい胸でしょう。
 ドレスの胸が大きく空いていて、わざと目立つようにしてあります。

 ――なーーっ

 ち、地図をその胸の隙間から出しました。
 まさか、秀吉のわらじを温めておいたのと同じでしょうか。
 冬だから、シュウ様の手が冷えないようにしたのでしょう。
 きっと、入れる時は「つめた!」って言ったでしょうね。
 愛を感じます。まさか、この人もシュウ様の事を……。

 ――うわっ

 胸ばかり見ていたから気が付きませんでしたが、顔が、顔がすごく素敵です。
 フージコちゃーーんみたいな、セクシーな感じの美女です。
 私には無い魅力が一杯あります。すごく、負けた感じがします。
 私の隣でカノンがシュンとしています。
 私達は、顔の作りが良いだけ、後は何も無いですからね。
 ミサさんは、悔しいですけど、とても素敵な女性です。

「これで、良いかしら」

「さすがだ、欲しかった大阪の詳細地図だ。ミサがいなくて大阪では、苦労したんだよ」

「そ、それって、私が必要だったってこと」

「ああ」

 ミサさんが顔を真っ赤にして、とても嬉しそうです。
 セクシーな上にかわいい女性です。
 女の私でもほれてしまいそうです。
 でも、シュウ様はさすがです。そんなミサ様を見ることも無く、詳細地図に集中しています。

「響子さん、そこのフキンを取ってください」

「はい」

 シュウ様に私は、足下にあったフキンを渡しました。
 たったこれだけの事なのに嬉しく感じました。

「しかし、こうしてみると、大阪城はすごい場所に作られているなー」

「おっおおーーー!!!」

 シュウ様は言いながら、右手にフキンをかぶせると、その中から大阪城の模型を、マジックのように取り出しました。
 食事中の重臣の席から、歓声が上がりました。余興のマジックショーとでも思ったのでしょうか。

 それにしても、よく出来た大阪城です。
 かわらの模様まで作り込んであります。まさか、シュウ様はオタクなのでしょうか。
 鉄製なのでしょうか銀色にピカピカ光って美しいです。
 それを、大きな地図の上に置きます。

「後は、ここにこんな感じかな」

 詳細地図を見ながら、青い金属の板を出しました。
 妙にくねくねしています。
 地図の上に置くと、それは川の模型でした。
 そして、お城の少し右上に、ビル群の模型を置きました。
 あれは、私にもわかります。遊郭のあった地区です。

 とてもわかりやすい地図になりました。
 大阪城は、東西と北を川が囲んでいます。
 天然の堀になっています。開いているのは南側のみです。
 そう言えば堀を作っていると言っていましたが、この南側に作ろうとしているのでしょう。

「すげー、大阪のジオラマの完成ですか。でも他の建物は?」

 柳川様がそう言うと、目をキラキラさせて、地図を見つめています。

「大阪城のまわり二キロくらいは、荒野になっている。ハルラは大阪城で、俺達を迎え撃つ気らしい」

「なるほどなあ。おい! 皆注目してくれ! 兄弟が聞かせたいことがあるようだ」

 ゲン様はここから、シュウ様が説明を始めると思ったのでしょう、皆に声をかけました。
 あうんの呼吸なのでしょうね。さすがです。

「全員食事はしたままでいい、聞いてくれ。今の大阪は、ここに堀を作ろうとしている。川も拡幅している。完成すれば難攻不落の城になる」

 シュウ様は、大阪城の南側を指し示して言いました。

「……」

 全員が、思わず箸を止め地図に注目しました。

「ハルラの新政府は、軍を十二部隊に分けている。その内、主力の一から八番隊は、四国、中国方面の攻略に行っている。九番隊は山城で織田家の羽柴軍と交戦中だ。十番隊は大阪城の守備、十一番隊は食糧の探索など雑用を担当し、十二番隊は街道の警備だ」

「なるほど」

 柳川様が、答えました。

「俺が大阪に入った時は、大和も支配していたのだが、今は解放軍の反乱で失っている。さらに、二番隊を山城の攻防戦に投入したが、織田家の柴田軍に敗れ将を失った。恐らく今頃は、京都で苦戦しているだろう」

 シュウ様は自分がやったことは、何一つ言いませんでした。
 大和の解放軍はシュウ様が組織して、新政府軍を追い出したのです。
 それに、織田家の柴田は、シュウ様が橋の上でやっつけています。
 カノンと私は、ちゃんと見ていました。
 ここにいる人達に、私が言ってあげたい。ですが、シュウ様が言わないのだからと我慢しています。

「ふふっ、どうせ解放軍は兄弟が作ったんだろ。織田家の柴田はぶっ飛ばしちまったんじゃねえのか」

「なっ!?」

 思わず声が出てしまいました。
 驚きました。ゲン様はすべて見抜いてしまいました。

「そんな事を、こんな短期間で出来る訳がねえ。ゲンの買いかぶりすぎだ」

「ふふふ」

 ゲン一家の大幹部でしょうか数人が笑っています。
 もうこれは、バレていますね。
 さすがですね。私の方が嬉しくなりました。

「俺は、時は今だと思っている。チャンスに動かなければ後はない」

「ほう」

 ゲンさんが少し驚きの声を出した。
 でも、表情は少しも変化がありません。恐いです。

「木田家の大坂冬の陣です。敵はハルラ、そして目標のもう一つは、遊郭から女性の救出です」

「遊郭からの救出ですか?」

 柳川様が質問しました。

「そうだ。ハルラは女性を捕まえると、奴隷のように無理矢理遊郭で働かせている。その女性を救出したい」

「兄弟らしいぜ。どうせ、それだけが目的のはずだ」

「はーーっ、それだけじゃねーーっ!」

 ぷっ、私もそう思えてきました。
 シュウ様が真っ赤になっています。
 わかりやすいですね。でもその優しさが最高です。

「ゲン、今回は木田家全軍で行きたいが、留守番がいる」

「ちっ、そうきたか」

「留守番は、ゲン一家だ。それ以外は、全軍出陣の準備をしてくれ。二月一日、大阪城に総攻撃をする。遅れるなよ!!」

「おおおおおーーーー!!!!!」

 会場全体がビリビリ震えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す

栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」 魔族と人間が対立して1000年。 災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。 城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。 魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。 千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。 そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。 命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。 この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。 そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター

呑兵衛和尚
ファンタジー
 異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》  帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。  その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。  最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎  この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。 ・第一部  十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。 ・第二部  十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。

処理中です...