上 下
150 / 428

第百五十話 アンナメーダーマンショー

しおりを挟む
 仙台駅を出ると、外は快晴でした。

「全く、夏ぐらい暑いですねー」

 豚カレーが言います。
 でも、空気は乾燥していて、風が爽やかで気持ちがいいです。
 子供達が楽しそうにはしゃいでいます。
 でも、服装が変です。

 男の子は、黒いジャージを着ています。
 女の子は青か黄色のフリフリの服を着ています。
 少し黄色い女の子が多いですね。
 男の子の背中には、布が貼り付けてあり、何か書いてあります。

「げ、げきぶた?」

 漢字で激豚と書いてあるみたいです。

「あれは、きっと遠江か駿河の子供達でしょう。あー、申し遅れました。私は浜松の本多と申します」

 悪人顔の筋肉質で、強そうな男が教えてくれました。

「いったい、どんな意味があるのですか?」

「あれは、スーパーヒーロー、アンナメーダーマンのコスチュームです。静岡では超人気なんですよ」

「スーパーヒーロー? テレビか何かですか?」

「いえ、本物のヒーローです」

「ほ、本物? そうですか……」

 何を言っているのか、ちょっと分かりませんが、どうやら新潟では知られていない、有名なヒーローのようです。
 ロータリーには、マグロ丼の店が有り、大勢の人が群がっています。
 マグロ丼、無料となっています。
 食べている人のどんぶりを見ると、沢山の赤身が乗っかった美味しそうなマグロ丼です。

 これが、無料ですか。
 上杉家の人達にも食べさせてあげたいものです。
 きっと、喜んでもらえると思います。

「おっ、あれは、アイアンウルフじゃないか。おーーーい!! アイアンウルフーー!!」

 豚カレーの視線の先には、鉄製の人狼がいます。
 全身銀色で、服装は短パン一丁です。牙がサーベルタイガーのように出ています。

「マッタク、アンナメーダーマンハ、相変ワラズダ。オラハ、アイアンファングダ」

「えっ、アンナメーダーマン?」

「ファング、今の俺は大田だ」

「ソウダカ、ソリャアスマンカッタダ」

 まさか、豚カレーがアンナメーダーマンなのでしょうか。

「ふふふ、あんた、強そうだな。俺とたいまんをはってくれねーか」

 赤鬼が、鉄人狼を嬉しそうににらみ付けています。
 でも、鉄人狼は赤鬼よりひとまわり以上大きい。
 あっ、わかった。赤鬼は何かかぶり物をかぶっていると、思っているのじゃないでしょうか。

「ふふ、祭りですからねえ。良いじゃ無いですか。ファングさん、相手をしてあげて下さい」

「ソウダカ、アンナ……大田サンガソウイウナライイダガ」

 私達は、ロータリーの横の駐車場に移動した。

「これより、格闘ショーを始めますー。アイアンウルフ対伊達家の殿様でーす。ご用とお急ぎで無い方は、見ていってくださーい。料金はいりませんよーー!!」

 豚カレーは、またアイアンウルフと間違えています。
 仙台駅のペデストリアンデッキで、大勢の人がこっちを注目した。

「おおおーー、伊達の殿様じゃねえか」
「あれはアイアンファングだーー」

 ペデストリアンデッキで声がした。
 私の横に、大勢の黒いジャージの子供が集りました。

「この子達は、ウルフの村の子供達だ」

「ファングですよ」

 とうとう、我慢しきれずに訂正してしまいました。

「だってよー。どう見ても狼だろー。間違えるよなーー」

 まわりの人が全員笑っています。
 豚カレーは、優しくていい豚さんなのかもしれません。

「ふふふ、あんたにゃー悪いが、俺の百勝目になってもらうぜ!!」

 赤鬼が、勝つ気満々です。

「本多さん、審判をお願いします」

「おお、承りました」

 本多殿が、二人の間に進みました。

「殿様ー!! 頑張れー!!」
「ファングー! 頑張れーー!」

 ペデストリアンデッキからは、伊達の赤鬼を応援する声が多いようです。
 私の横の子供達は、ファングさんを応援しています。

「では、はじめーーー!!!」

 試合開始です。
 赤鬼が、走り込み渾身の力でファングさんを殴りつけました。

 コーーーーン

 鉄を、木槌で叩いたような音が響きました。

「ぎゃーーーーっ!! 手、手がーーっ!!」

 どうやら、赤鬼は手が痛いようです。
 漫画なら、手が何倍にも膨れ上がり、真っ赤になっていることでしょう。

「何だよー、もう終わりなのかよーー」

 まわりから拍子抜けの声が聞こえます。
 いやいや、赤鬼は強いですよ。
 でも、ファングさんが強すぎなのです。

「アンナメーダーマン、イルノダロウ、ショーのハジマリダーーー!!!」

 ファングさんが空に向って大声を出しました。

「やれやれだぜ! 祭りだししゃーねーかー!」

 豚カレーがつぶやきました。

「オイサスト! シュヴァイン!!」

 大きな声を出すと同時に、豚カレーの姿が消えました。
 きっと、目にも止まらぬ速さで移動したのでしょう。
 すぐ横のビルの上に移動したようです。

「うわーーーっ!!! アンナメーダーマン!!」
「おい、あれって本物なのか」
「やべーー! はじめて見る」

 見ている人達の中から声がします。

「ははははは、俺がアンナメーダーマンだ!! 呼んだのは、てめーか!!」

 黒いジャージに黒いヘルメットのデブです。
 黒い豚カレーになりました。

「キタナ、アンナメーダーマン!! 降リテコイ!! 勝負ダーー!!」

「とうっ!!」

 うわあっ! ビルから飛び降りました。死んでしまいますよ。
 と、思ったら、綺麗にかっこよく着地しました。
 映画のヒーローのようにかっこいいポーズをしています。
 でも、残念です。そんなデブではすべてがかっこよくありません。

「うわあああーーーーー!!!」

 でも、まわりからは、大歓声が上がりました。
 藤吉殿達が、近くにあったアンナメーダーマンショーの旗を持って来て振っています。
 そう言えば、ホールでもショーがあるので、いたる所にアンナメーダーマンショーと、アイドルコンサートの旗が揺れていました。

「さあ、皆さん!! 本物のヒーロー、アンナメーダーマンショーの始まりでーす」

 本多殿がノリノリで司会をしています。
 どっちが勝つのでしょうか?
 そもそも、その前に本気で戦うのでしょうか?
 少し気になります。

「ホンキデ、イクダーーッ!!!」

 少なくともファングさんは本気のようです。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す

栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」 魔族と人間が対立して1000年。 災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。 城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。 魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。 千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。 そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。 命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。 この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。 そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター

呑兵衛和尚
ファンタジー
 異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》  帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。  その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。  最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎  この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。 ・第一部  十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。 ・第二部  十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。

処理中です...