上 下
126 / 428

第百二十六話 巫女さんの名演技

しおりを挟む
「ミサ、柳川を連れてきてくれ」

 巫女さんは、鼻を指で押し上げて言いました。
 きっと、とうさんが言ったのですね。

「教祖様に豚が豚のくせに命令しました」

 指を鼻から離して言いました。
 あーこの子、とうさんに強い悪意を持っていますね。

「しばらく、豚が地図を見ていると、鋭い目つきの恐ろしい男を教祖様が連れてきました。あれは、人殺しです。インテリぶってメガネをかけていましたが、あれは悪党です」

 柳川さん、言われていますよーー。

「柳川、関東から遠江までの収穫は終った。三河は、教団がやっているから、次は、尾張と美濃だ」

 鼻を指で押し上げて言いました。

「チラッっと悪党メガネが私を見ました」

 あー柳川さんが、巫女さんを見たのね。
 とうさんをどう呼ぼうか考えたのだわ。

「大田さん、越中、越後の勢力は我らの敵となりました。また東北も敵対しています。この際、こいつらの米もこっちで収穫してしまいましょう」

 柳川さんは、とうさんを木田さんではなく大田さんと呼ぶ事にしたみたいです。
 巫女さんは、柳川さんが話す時は指で目尻を押し上げて、吊り目にします。
 なんだか、とてもわかりやすいです。

「そ、それは、少し酷いのではないですか」

 巫女さんは胸の前に手をやって、素早く上下します。
 まるで大きな胸がユサユサ揺れているように見えます。
 あー、これはミサさんが言ったんだわ。
 わかりやすい。
 でも、大事な教祖様をその表現で良いのかしら?

「いえ、そんなことはありません。そこにある稲は、敵対勢力が植えた物ではないはずです。それに今のこのご時世、収穫することが出来ないかもしれません。それだと全てが無駄になります」

 巫女さんは吊り目にしています。

「うむ、その通りだな」

 巫女さんは鼻を押し上げます。

「そうです。そして収穫したら、春には田植えをしないといけません。来年以降も収穫出来るようにしないと、いずれ来るのは飢餓です」

 今度は吊り目です。

「ふむ、春までに勢力圏にしないといけないということか」

 豚鼻です。

「そうです」

 吊り目です。

「ならば、先に東北と越後、越中か。……いや、まずはあずさに会わないといけない」

 豚鼻です。

「なぜですか」

 吊り目です。

「うむ、そろそろ、アダマンタイトとミスリルが無くなってきた。まあそれは、口実か。単純に会いたいのだ。世界一かわいい娘に」

 まあ、とうさんたら。
 巫女さんは、豚鼻にしていますが、ここまで来ると、それをやらなくても誰が言っているのか分かるようになりました。

「ふふふ、まあ、そのくらいなら良いのではありませんか。どうせ敵対勢力達は稲刈りに、時間がかかるはずですからね」

 恐らく、道具も機械も無く手作業で稲刈りをする。
 そんな事を柳川さんは考えているみたいです。

「柳川、さしあたって、どちらに俺は援軍に行けばいいのだろうか」

「ふふふ、援軍は送らず、ゲン一家の腕前を高みの見物で良いかと思います」

「そ、そうか。心配だなー」

「ふふふ、じゃあ、次は名古屋でいいのですね」

 ここで巫女さんは、これでもかという位胸の前で手を上下させました。
 いやいや、今の一言で、いくらミサさんの胸でもそんなに揺れないでしょう。

「というような、やりとりがありました」

「す、すごいです。とてもよくわかりました」

「ふふふ、まあ、この位はすぐに憶えられます。言っている意味がよくわからないだけです」

 でしょうね。きっと、あずさが誰かもわからないのでしょうね。
 でも、この話から推理すると、とうさんは、この忙しい中すでに名古屋にいると言う事になります。
 急いで帰らないと……。

「巫女さん、ありがとうございました。私は帰ります。クザン帰りますよ」

 私はそう言うと、お屋敷を飛び出しました。
 そして、巫女さんから私達が見えなくなるのを確認して、名古屋へ移動魔法で移動しました。



 私は、名古屋城の城内入り口の前に移動して、天守を目指します。
 一目散に天守を目指し駆け上がります。
 一応いなかった時の為に、私の姿を皆に印象づけしておきました。
 こうすれば、天守にとうさんがいなかったら、とうさんに誰かがあずき様が天守に行かれましたと、伝えてくれるはずです。

「とうさーーん」

「あずさ! いったいどこに行っていたんだ?」

 し、しまったー。
 とうさんに会いた過ぎて、忘れていました。
 子供が何日も家を抜け出していたら、普通心配して怒りますよね。
 でも、私のダッシュは止まりません。
 仕方が無いので、とうさんを通り越して隣に立っているミサさんに飛びつきました。

 ミサさんの大きな胸の谷間に顔が埋まります。
 なんだかガサガサする物が、口に入ってきました。
 ミサさんの胸から顔を引き抜くと、私はあの地図をくわえていました。

 ――わーーっ! 汚ーい!!

 とうさんのよだれの付いた地図です。
 でも、汚いと言うと色々、傷つけそうです。
 言うのは我慢しました。

「ご、ごめんなさい」

 私は、瞬時に嬉しい気分が吹き飛びました。
 そして、涙が目に浮かびます。
 とうさんが一生懸命働いている時に、遊び気分で浮かれていました。
 どうしたら良いのでしょうか。
 十分反省しています。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

最強パーティーのリーダーは一般人の僕

薄明
ファンタジー
ダンジョン配信者。 それは、世界に突如現れたダンジョンの中にいる凶悪なモンスターと戦う様子や攻略する様子などを生配信する探索者達のことだ。 死と隣り合わせで、危険が危ないダンジョンだが、モンスターを倒すことで手に入る品々は、難しいダンジョンに潜れば潜るほど珍しいものが手に入る。 そんな配信者に憧れを持った、三神《みかみ》詩音《しおん》は、幼なじみと共に、世界に名を轟かせることが夢だった。 だが、自分だけは戦闘能力において足でまとい……いや、そもそも探索者に向いていなかった。 はっきりと自分と幼なじみ達との実力差が現れていた。 「僕は向いてないみたいだから、ダンジョン配信は辞めて、個人で好きに演奏配信とかするよ。僕の代わりに頑張って……」 そうみんなに告げるが、みんなは笑った。 「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」 「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」 「シオンがいないと僕達も寂しいよ」 「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」 「みんな………ありがとう!!」 泣きながら何度も感謝の言葉を伝える。 「よしっ、じゃあお前リーダーな」 「はっ?」 感動からつかの間、パーティーのリーダーになった詩音。 あれよあれよという間に、強すぎる幼なじみ達の手により、高校生にして世界トップクラスの探索者パーティーと呼ばれるようになったのだった。 初めまして。薄明です。 読み専でしたが、書くことに挑戦してみようと思いました。 よろしくお願いします🙏

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...