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第三十三話 美しい心
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「ミサさん、アイスクリームはどうですか」
柳川さんが、私にアイスをさしだしてくれた。
北海道なんとかと書いてある、ソフトクリームのような形状のアイスだ。私は笑顔で受け取った。
「すごーい、おいしーい。こんな世界になってしまって、アイスが食べられるなんて夢のようです」
坂本さんが嬉しそうに、少し涙を流して食べている。
結局、会議室に残る人は一人も無く、全員が興味津々で二人の行動を見守っている。
「ねー、来て良かったでしょ」
愛美さんが自慢そうに言った。
どうやら、ここに来たのは愛美さんの発案のようだ。
「あのー、何故お二人はここに来たのですか」
「理由は視察です。ここに『保護した人を連れて来たい』と、いう事だったのですが『どんな所かわからないと行かせられない』と、寺倉さんが言っていたので、それなら『私が見てきます』と言いました」
愛美さんが言います。
「反対は無かったのですか」
「うふふ、当然話せば、全員危険だと大反対されるでしょう。でも、誰か信頼の置ける人が行かないと話にならないし、行きたいという人もいないので、坂本さんに頼んでこっそり連れ出してもらったのです。まあ、坂本さんも最初は反対でしたが、美味しい物が食べられるかもしれないと、だまして連れ出してもらいました」
「怖くは無かったのですか?」
「全然、だってあずさちゃんが、可愛すぎますから」
うーーん、最後がいまいち良くわかりませんが、あずさちゃんがいるから怖くなかったのでしょう。
「あのー、ミサさんこちらはどの様な方なのですか」
柳川さんが質問してきました。
まあ、当然の質問でしょうね。
「こちらは愛美内親王様です」
「ええーーー!!」
柳川さんは分かった様です。
ファンタジー世界なら、お姫様ですよね。
「二人には内緒にして下さいね」
愛美さんが口に人差し指を立てました。
「えーーっ、二人は知らないのですか?」
「あの二人は、変なところで同じように、ネジが抜けていますからね」
私が言うと。
「た、確かに」
柳川さんは、妙に納得している。
「あずさ、ミスリルソードを出してくれ」
「はい」
「相変わらず、すごい剣だ」
「とうさん、それをどうするのですか」
「うん、これを、吸収して別の物に加工しようと思うんだ」
「別の物に加工するのなら、ミスリル鋼がありますけど、ミスリルの加工はドワーフしか出来ませんよ」
ドワーフしか出来ないって、ファンタジーかー!
っていうか、あずさちゃんは「記憶が少ししか戻っていない」って言っていたけどそこはわかるんですね。
「それが、出来るかどうか、試してみたいのさ」
「じゃあ、どうぞ」
そう言うと、あずさちゃんは、巨大なミスリル鋼の固まりを出した。
あの人は、それを右手でくるんと包むと消してしまった。
「ふふふ、出来る。出来るぞー。あずさー!! ちょっと取ってくる」
そう言うと、あの人は旧木田産業の建物に入っていった。
「あの、柳川さん、柳川さんと、あの人とはどの様な関係なのですか」
「ああ、木田さんとの関係ですか。俺たちはまあ、ぞくに言う半グレです。ですから、まあ力ずくで暴れまくって、いろんな事をやりました。特にやっていたのは、薬の売買の横取りです。薬は海に捨てますが、お金はいただきました。その額がまあ半端ないのでそれを資金に、飲食店や風俗を始めました。真面目に税金も払って真っ当な商売をしていましたよ。でも恨みを買いましてね。殺されそうになっているところを、木田さんに助けられた。まあそんなところです。はははっ」
柳川さんは笑いながら、恐ろしい事を言う。
でも、てっきり、暴力団だと思っていましたが、それは違うみたいですね。
私は、柳川さんとあの人の事を聞きながら、自分の過去を思い出していた。
私の母は霊能力者でした。
ただ、インチキ霊能力者では無く本物でした。
私には霊能力はありませんが人の心の声が聞こえる能力がありました。
だから、母の真実の声が聞こえてきて、この人には本当に見えているのだとわかりました。
本物の霊能力者の母は人々の信頼を集め教祖と崇められました。
母が亡くなった後、私は教団を継ぎましたが、結局、私には霊能力は継ぐ事が出来ませんでした。
でも、人の心が読める能力は、母以上に信者を集める能力でした。
愛知県に本拠地を置き数万人の信者を集めました。
いま、信者数千人が三河の半島に避難してそこで生活をしています。
キャベツ畑が広がる田舎で、苦しいけれども頑張って生きています。
私は、信者を何としても助けたいと思っていますが、あの人には言い出せないでいます。
何しろ人数が多いし、宗教団体です。
普通の人には、宗教団体はあまり良く思われていない事も知っています。
迷惑をかける事が分かっているからです。
きっと、「助けて!」と言えば笑って助けてくれる人です。絶対間違いありません。
ここまであの人と過ごして来て、私の心はあの人に奪われてしまいました。
人は恋愛話にしたがりますが、そんな物では決してないと思います。
だって、見た目は不細工で嫌いだからです。
でも、あの人ほど、心の純粋な人を見た事が無いのです。
今日も、怖い怖いと震えながら、皇居を必死で守っていました。
私は、ずっと人の汚い欲にまみれた、みにくい心ばかり見てきましたが、あの人の心は無垢で美しいと思います。
「あったぞー!! これだー!! これこれーー!!」
何かを見つけて、はしゃいでいます。
あの人の心は、うれしさで一杯になっています。
何を見つけて来たのでしょうか?
柳川さんが、私にアイスをさしだしてくれた。
北海道なんとかと書いてある、ソフトクリームのような形状のアイスだ。私は笑顔で受け取った。
「すごーい、おいしーい。こんな世界になってしまって、アイスが食べられるなんて夢のようです」
坂本さんが嬉しそうに、少し涙を流して食べている。
結局、会議室に残る人は一人も無く、全員が興味津々で二人の行動を見守っている。
「ねー、来て良かったでしょ」
愛美さんが自慢そうに言った。
どうやら、ここに来たのは愛美さんの発案のようだ。
「あのー、何故お二人はここに来たのですか」
「理由は視察です。ここに『保護した人を連れて来たい』と、いう事だったのですが『どんな所かわからないと行かせられない』と、寺倉さんが言っていたので、それなら『私が見てきます』と言いました」
愛美さんが言います。
「反対は無かったのですか」
「うふふ、当然話せば、全員危険だと大反対されるでしょう。でも、誰か信頼の置ける人が行かないと話にならないし、行きたいという人もいないので、坂本さんに頼んでこっそり連れ出してもらったのです。まあ、坂本さんも最初は反対でしたが、美味しい物が食べられるかもしれないと、だまして連れ出してもらいました」
「怖くは無かったのですか?」
「全然、だってあずさちゃんが、可愛すぎますから」
うーーん、最後がいまいち良くわかりませんが、あずさちゃんがいるから怖くなかったのでしょう。
「あのー、ミサさんこちらはどの様な方なのですか」
柳川さんが質問してきました。
まあ、当然の質問でしょうね。
「こちらは愛美内親王様です」
「ええーーー!!」
柳川さんは分かった様です。
ファンタジー世界なら、お姫様ですよね。
「二人には内緒にして下さいね」
愛美さんが口に人差し指を立てました。
「えーーっ、二人は知らないのですか?」
「あの二人は、変なところで同じように、ネジが抜けていますからね」
私が言うと。
「た、確かに」
柳川さんは、妙に納得している。
「あずさ、ミスリルソードを出してくれ」
「はい」
「相変わらず、すごい剣だ」
「とうさん、それをどうするのですか」
「うん、これを、吸収して別の物に加工しようと思うんだ」
「別の物に加工するのなら、ミスリル鋼がありますけど、ミスリルの加工はドワーフしか出来ませんよ」
ドワーフしか出来ないって、ファンタジーかー!
っていうか、あずさちゃんは「記憶が少ししか戻っていない」って言っていたけどそこはわかるんですね。
「それが、出来るかどうか、試してみたいのさ」
「じゃあ、どうぞ」
そう言うと、あずさちゃんは、巨大なミスリル鋼の固まりを出した。
あの人は、それを右手でくるんと包むと消してしまった。
「ふふふ、出来る。出来るぞー。あずさー!! ちょっと取ってくる」
そう言うと、あの人は旧木田産業の建物に入っていった。
「あの、柳川さん、柳川さんと、あの人とはどの様な関係なのですか」
「ああ、木田さんとの関係ですか。俺たちはまあ、ぞくに言う半グレです。ですから、まあ力ずくで暴れまくって、いろんな事をやりました。特にやっていたのは、薬の売買の横取りです。薬は海に捨てますが、お金はいただきました。その額がまあ半端ないのでそれを資金に、飲食店や風俗を始めました。真面目に税金も払って真っ当な商売をしていましたよ。でも恨みを買いましてね。殺されそうになっているところを、木田さんに助けられた。まあそんなところです。はははっ」
柳川さんは笑いながら、恐ろしい事を言う。
でも、てっきり、暴力団だと思っていましたが、それは違うみたいですね。
私は、柳川さんとあの人の事を聞きながら、自分の過去を思い出していた。
私の母は霊能力者でした。
ただ、インチキ霊能力者では無く本物でした。
私には霊能力はありませんが人の心の声が聞こえる能力がありました。
だから、母の真実の声が聞こえてきて、この人には本当に見えているのだとわかりました。
本物の霊能力者の母は人々の信頼を集め教祖と崇められました。
母が亡くなった後、私は教団を継ぎましたが、結局、私には霊能力は継ぐ事が出来ませんでした。
でも、人の心が読める能力は、母以上に信者を集める能力でした。
愛知県に本拠地を置き数万人の信者を集めました。
いま、信者数千人が三河の半島に避難してそこで生活をしています。
キャベツ畑が広がる田舎で、苦しいけれども頑張って生きています。
私は、信者を何としても助けたいと思っていますが、あの人には言い出せないでいます。
何しろ人数が多いし、宗教団体です。
普通の人には、宗教団体はあまり良く思われていない事も知っています。
迷惑をかける事が分かっているからです。
きっと、「助けて!」と言えば笑って助けてくれる人です。絶対間違いありません。
ここまであの人と過ごして来て、私の心はあの人に奪われてしまいました。
人は恋愛話にしたがりますが、そんな物では決してないと思います。
だって、見た目は不細工で嫌いだからです。
でも、あの人ほど、心の純粋な人を見た事が無いのです。
今日も、怖い怖いと震えながら、皇居を必死で守っていました。
私は、ずっと人の汚い欲にまみれた、みにくい心ばかり見てきましたが、あの人の心は無垢で美しいと思います。
「あったぞー!! これだー!! これこれーー!!」
何かを見つけて、はしゃいでいます。
あの人の心は、うれしさで一杯になっています。
何を見つけて来たのでしょうか?
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