モンスターのいない世界で私の作るゴーレムだけがモンスター扱いでした。仲間だけレベルアップさせ巣立たせたら仲間達が世界の頂点に立っちゃいました

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第四十四話 行商

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 荒野の一本道を一台の馬車がゆっくり進んで行きます。
 馬車は王族や貴族が乗るほど高級な物ではないのですが、それでも相当立派な馬車です。
 既にサイシュトアリ国の国境を出て、さらに北に向っています。
 サイシュトアリ国の北にはまだ、小国がいくつか存在していて馬車はその国の王都を目指しているようです。

「旦那様、そろそろ無法地帯に入りますが大丈夫ですか?」

 馬車の中で年老いた執事さんが言いました。

「ペルデイドさん、あんたは我がゾング家三代に仕える執事だ。あんたの目から見て爺さんとおやじと比べれば、俺はまだまだ二人には遠く及ばない青二才にしか見えないのだろうなあ」

 馬車の中にはゾングさんと、執事のお爺さん、そしてレンの三人が座っています。
 レンは大きな白い帽子をかぶり金髪のカツラをかぶって、全身を白いドレスで覆っています。
 ドレスには金色の飾り刺繍が入っていてとても美しい。
 さらに手には長い白い手袋、足は白いブーツ、顔には顔全体を覆う白い仮面をかぶっています。
 どれも金色の飾り模様が入っていて、どこかの貴婦人の様なたたずまいになっています。
 肌の露出がありませんので、とても鉄人には見えません。

「そ、その様な事はございません。むしろ、ゾング家は旦那様が一番栄えさせています。売り上げだけでも三倍、いえ四倍にはなっています」

「なるほど。では、ペルデイドさんは、レイカ様をまだ信頼出来ていないのだな」

「は、はあ。それなりには信頼していますが……」

「まあそれもすぐに変わるだろう。しかし、いつもなら千人の護衛をつけて、何十台もの荷馬車で商隊を編成しないといけないのに、一台の馬車で同じだけの物資が運べるのは助かるなあ。しかも、行商に出ると言ったら、鉄馬に馬車まで用意してくれた。お優しいお方だ」

 ふふふ、その代わり、私の監視の目まで付いていますけどね。

「ああっ!!!!」

 執事のペルデイドさんが声を上げました。

「ふふふ、おいでなさったか」

 道に、大きな石が置いてありそのままでは、馬車が通行できないようになっています。
 荒野は大小様々な石や岩が転がっていて、道だけはそれが取り除かれ平らに整備されています。

「へへへへへ」

 道の横の大岩から、十人ほどの男がみすぼらしいボロの服を着て、武器を手に出て来ました。

「レンちゃん、頼めるかい」

 ゾングさんが優しげな目でレンを見ました。

「……」

 レンは鉄製のゴーレムです。
 話す事が出来ません。
 こくりとうなずくと、馬車のドアを開けて外に出ました。

「うおっ!! な、なんだこいつ!!」

 レンの姿を見て、賊達が驚いています。
 ごつい護衛の大男が出てくると思っていたのでしょうか。

「……」

 レンは無言のまま、白い貴婦人の様に静かに立っています。

「命までは取ろうとは思わねえ。金目の物を全て出すんだ!!」

「……」

「な、なんだ、こいつしゃべれねえのか? それとも耳が聞こえねえのか?」

「レンちゃん、そいつらは悪人です。構いません! やっちゃって下さーーい!!」

 馬車からゾングさんが声をかけました。

「なにーー!!!!」
「くそがーー!!!!」
「なめるなあーー!!」

 賊達が武器を振りかぶり、レンに襲いかかりました。
 それを見たレンは、賊達に向って走り出します。
 その瞬間、賊達はレンの姿を見失った様です。
 鉄人の動きは、普通の人には目では追えないようです。
 レンは、襲いかかる賊に一撃ずつ攻撃を加えました。

「ぐわああああーーーーーーー!!!!」

 レンは胸に重い一撃を賊全員に加えたようです。
 賊達は肋骨が折れたのでしょうか、立ち上がる事が出来ないようです。
 レンは、馬車の前で苦しむ賊達の襟首をつかむと、道の横に無造作に投げ捨てます。
 道に置かれた石も、軽々と持ち上げて道の横に投げ捨てました。

「な、なんだ、あいつ……ほ、本当に女なのか? あの石は俺達が五人がかりでしか持ち上がらなかったのに、一人で持ち上げやあがった……」

 動けなくなった、賊達の横を馬車はゆっくり通り過ぎていきます。
 大岩の影には戦いに参加せず見ていた数人の賊が、馬に乗り荒れ地を猛烈な勢いで走りだしました。

「なあ、ペルデイドさん、すげーだろ。レンちゃんお疲れ様でした」

「……」

 レンはうつむいて手袋をゾングさんに見せました。
 石をつかんだときに汚れてしまった様です。

「ははは、街についたらまた、新しいのを買ってあげるよ。気にしなくてもいい」

 そう言うと、ゾングさんはレンの頭を撫でました。

「……」

 レンは視線をゾングさんに向けました。
 それだけで、喜んでいるのが分かります。
 ゾングさんも満足そうに笑顔になりました。

「ペルデイドさん、レンちゃんはフト国のゲンシン大帝の横の鉄人と同じだけの強さがある。ふふふ、今では伝説の様に言われているが、ゲンシン様が旗揚げをしたばかりの頃は、千人程度の兵力でいつも戦っていた。そのとき何万もの敵兵に囲まれ絶体絶命になったことがあるということだ。それをたった二体の鉄人が。敵を全滅させて勝利したことがある」

「まさか、レン様はその鉄人と同じ強さ……」

 ペルデイドさんが驚きの表情になり硬直しています。
 それを見て、ゾングさんは満足そうにそして嬉しそうにうなずきました。

「だから、千人の護衛より安心出来るのさ。そして、荷馬車隊が運ぶ物量よりも、はるかに多い物資をレンちゃんは収納していてくれる。しかも冷たい物は冷たいまま、温かい物は温かいままだ。そろそろ昼になる、温かい唐揚げでも食べるとするか」

 レンは二人分の唐揚げ定食を用意しました。
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