上 下
37 / 41

第三十七話 入団審査

しおりを挟む
「レイカ姉ーー!!」

 ようやくのんびり出来ると思っていたら、散歩に出ていたうちの体の大きな子供達三人が、お店に飛び込んできました。
 その目がキラキラ輝き、なにか珍しいものを見つけて来たみたいです。

「そんなに慌てて、どうしたのですか?」

「広場に人が一杯います。なんだか楽しそうです」

 シノちゃんが広場を指さして、それをバタバタ上下させています。
 チマちゃんとヒジリちゃんがそれを見てうなずきます。
 どうやら、行ってあげないと収まらないみたいです。

「じゃあ、ちょっと行ってみましょうか」

「はーーい!!」

「うふふ」

 三人の反応が可愛すぎて思わず声が出ました。
 私は用心棒の鎧の鉄人を連れて、戸締まりをして外に出ました。

「こっちーー!!」

 三人に案内されると、王都の中央の石畳の巨大な広場に、大勢の人が集りにぎやかです。

「おっ!? レイカ様このような場所へ何用ですかな?」

 アーサー騎士団の三番隊の隊長ギリザさんです。
 私を見つけて来てくれたようです。
 顔の周りに硬い髭が自由にピンピン生えているまるで、三国志の張飛のような感じの隊長さんです。

「うふふ、この子達が見たいと言うものですから。いったい何が行なわれているのですか?」

「騎士団の入団審査です。各地の田舎からやって来た腕自慢の者達です」

「入団審査!!!!」

 うちの子達が目を輝かせています。
 ――まさか!

「や、やりたいのですか?」

 三人が高速で何度もうなずきます。
 そうとうやりたいみたいです。

「隊長さん、この子達を参加させたいのですが駄目ですよね」

「な、何をおっしゃいますか。大歓迎です。よろしければ、レイカ様もどうぞ」

「ええっ!? でも合格しても入団はしませんよ」

「ふふふ、かまいませんとも」

「あの、この子達も全員入団しませんよ」

「もちろんですとも」

「みんな、隊長さんのお許しがでたわ」

「おおおおーーーーー!!!!!」

 三人が喜んでいます。
 まあ、たまにはこういう息抜きがあってもいいのかしら。
 私は軽い気持ちでいました。



「では、試験の内容を説明します」

 試験の説明をする女性の前に案内されました。
 ギリザ隊長は暇なのでしょうか、ニヤニヤしながら同行しています。

「はい、お願いします」

 一緒のグループの人達と、うちの三人が返事をしました。
 全員で十人が、一緒に試験を受ける一つのグループのようです。

「試験は四種類です。一つ目が知識の試験、二つ目が体力の試験、三つ目が武術の試験、四つ目が魔法の試験です。どれか一つでも100点を取るか、四つの試験の合計が240点以上なら合格です。よろしいですか?」

「わかりました」

 全員で返事をしました。

「では、こちらへどうぞ」

 第二の門の中まで案内されて、アーサー騎士団の建物の中に通されました。
 そこに部屋が用意されていて、一人ずつ別々の部屋に案内されました。

「ではそのイスに座って、これから質問する内容に答えて下さい。御供の方は後ろにいてください。くれぐれも不正の無いようにしてください」

 大丈夫です。私の御供は話す事は出来ません。不正のしようがありません。
 狭い部屋の中には試験官が二人いて、どうやら面接形式で質問に答えて学力を調べるようです。

「わかりました」

「では、最初の質問から。サイシュトアリ国の隣接する国の名前を全て答えて下さい」

 ――えーーっ!! そんなの知らないよーー!!

 私はサイシュトアリ国の事なんか全く知りませんよ。
 あっ! フト国とは戦争中だから、フト国は隣の国ですよね。

「フ……フト国」

「はい。他には?」

「わかりません」

 この後、いくつも質問されましたが、王女イオ様に関する質問と、アーサー騎士団長に関する問題以外は答えることが出来ませんでした。

「はい、レイカさん。22点です。次の試験は体力試験です」

 ――ぎゃーー!! 22点ってやばくない!!

 部屋の外には、うちの子達が既に終わっていて私を待っていました。

「あなた達は、試験どうでした?」

「うふふ、100点でーーす!!」

 三人が笑顔で同時に言いました。

「な、なんですとーーっ!!」

 既に、この子達は入団審査に合格してしまいました。

「なんだか、体が温かくなったときに、次々入って来た知識で全部知っている内容でした。レイカ姉は何点ですか?」

 そうかー。この子達はレベルアップして、知力が上がってこの世界の知識が勝手に頭に入ったんだー。うらやましい。
 まさか、私の点数が一番悪いだなんてーー!!
 チマちゃんめー、私の点数を聞くんじゃ無いよーー。

「うわあ、なんだこの点数、22点だってよーー!! 最低点だーー!!」
「ぎゃぁはっはっは、誰だよーー!!!! この馬鹿!!!!」
「レイカだってよ!! 頭悪すぎだろう、はぁーはっはっはっ」
「おい、こっちは100点が三人もいるぜ!!」

 よりにもよって、点数が壁に張り出されました。
 もう、三人にはバレましたよね。
 くぅ、かっこわるーい!!

「次は、体力テストだ。王都を一周走ってもらう。先導の兵士から、500メートル以上遅れたら失格だ。先導の兵士を追い越したものは100点、50メートル遅れる毎に10点減点だ。いいな」

「はい!!!!」

 家の子達は、全員合格しているのに、体力試験も受けるようです。

「ぎゃはははははははは、なんだあのチビーー!! 走りだしてすぐに500メートル以上離されたぞーー!!!!」

 ――くぅーーっ!! かっこ悪い、私に大人の兵士についていける体力なんかありませんよーー!!

「レイカさん、0点です」

「は、はぃ……」

 いちいち言わなくても分かっています。
 当然のように、うちの子達は三人とも100点です。
 そして、武術試験は木製の武器を使って、試験官との試合形式の試験です。
 当然勝てば100点で、弱すぎれば0点です。

「レイカさん、0点です」

「はぃ……」

 くうううぅ! 言わなくてもいいっちゅうのーー!!!!

「すげーーっ、なんだあの三人!! 試験官に勝っちまったぞ!! 何者なんだーー??」
「それに引きかえ、あのチビはなんだ。何しに来たんだー??」
「ひゃははははーーーー!!!!」

 くぅーーっ!! くやしい!! 皆に馬鹿にされています!!
 ですが、次は魔法の試験ですよ!!
 ここで、100点を出して、皆をびびらせてやるんだからーー!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした

あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を 自分の世界へと召喚した。 召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと 願いを託す。 しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、 全く向けられていなかった。 何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、 将来性も期待性もバッチリであったが... この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。 でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか? だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし... 周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を 俺に投げてくる始末。 そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と 罵って蔑ろにしてきやがる...。 元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで 最低、一年はかかるとの事だ。 こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から 出ようとした瞬間... 「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」 ...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【短編】冤罪が判明した令嬢は

砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。 そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。

150年後の敵国に転生した大将軍

mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。 ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。 彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。 それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。 『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。 他サイトでも公開しています。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

処理中です...