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第五十八話 君の名前は

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「おい、新入り、俺に勝つことが出来たら何でも言うことを聞いてやる。その代わり……」

ぷー男って奴は、ここまで言っておいて恥ずかしくなっている。
どうせ、いやらしいことを考えているに決まっている。

「その代わり、なんですか」

わざと可愛らしく言ってやった。
なんか目を見開いて赤くなっている。
哀れなほどチョロイ。

「そ、その代わり俺が勝ったら、俺の言うことを一つ何でも聞いてもらう、いいな!」

「痛くしないで下さいね」

まわりがザワついた。
ち、違うぞ。痛くしないでというのは殴ったり、蹴ったりで痛くしないでという意味だー。
何てことでしょう、ゴリさんが耳まで赤くなっている。
もう面倒くさいので、今度は本気の攻撃の姿勢で構えた。

「こい!」

ゴリさんの声で僕は、素早くふところに飛び込み、胸に掌底を打ち込んだ。
僕の動きすら目で追うことが出来ないようだ。

「がはっ!」

ゴリさんの体が二メートルほど吹き飛びその後、ザーーと体がすべって、ドンと壁にぶつかり止まりました。
口から泡を吹き失神したようです。

「どうして……」

取り巻きの一人が驚いている。

「くすくす、これが僕の本気です」

最初にペチリと叩いたのは、虫を叩く程度の力です。
体に止った虫を叩くのに全力の人はいませんよね。
それで、戻っている戦闘力がわかったので、今ある戦闘力の超本気の半分位の力を出してみたのです。
本気なら死んでいるかもしれませんね。
まあ一応本気とは言っておきましたけどね。

「お、お前。とんでもないことをしたな」

「えっ、なんの事ですか」

「この方は、ラグラ様だ。ガメーイ男爵家の長男なんだぞ」

あー、そういう事か。お貴族様を失神させてしまったということですか。

「へーこのゴリラが、貴族ですか」

「ゴ、ゴリラ?」

「あれ、この世界ってゴリラはいませんでしたっけ?」

「いや、いるけどゴリラは背中にこぶが二つある」

「それって、ラクダですよね」

「ラクダはこういう奴だ」

そう言うと胸を叩いて、ドラミングを真似した。
ってことは、ラクダがゴリラのことだ。
で、このゴリさんの名前はラグラ、らくだみたいな名前だ。
あーーだめだ、名前がねじれすぎて情報量が多すぎて混乱してきた。

僕は失神しているゴリさんの顔を見た。
丁度気が付いたようなので、ゴリさんに近づいて、

「負けた方は、何でもいうことを聞く約束でしたよね。今日から君の名前はゴリです。いいですね」

僕が言うと、ゴリさんは上目遣いで鼻の穴を膨らまし赤い顔をして体が硬直しています。
目線を追うと僕のスカートの中でした。
こ、こいつ、僕の短めのスカートの中の、パンツを見ている。

「お、おまえこんな物が見たいのか?」

僕はスカートをまくって丸見えにしてやりました。
僕は男だから別に恥ずかしくありません。
するとガタッという音と共に教室中の生徒の顔がこっちを向きました。
あらまあ、さっきまで下を向いて見てない振りをしていたけど、全員関心はあったみたいで横目で見ていたようです。
男子も女子も僕のパンツを見ています。

さすがの僕も女性にパンツを見られるのは恥ずかしくなってしまい。
赤い顔をしてスカートをそっと下ろしました。

「ぶーーーっ」

教室中から吹き出す音が聞こえた。

「新入りお前は強いな、俺はゴリだ」

「くすくす、僕はノノコです」

らくだ君はゴリという名前を受け入れてくれたようだ。

「なあ、俺はゴリラに似ているか」

ゴリ君は取り巻きに質問している。

「いえ、どちらかというとラクダに似ています」

「なんだとーーっ」

ゴリ君は怒り出しました。
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