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第五十一話 救出完了

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勇者とリザードマンのマスタークラスが睨み合っている中、一人の冒険者がこっちに手を振りながら駆け寄ってきた。

「ノコ様―! やっと見つけました。来ているとは思っていましたが、こんな所にいたのですね」

他の冒険者が、勇者の戦いに集中している中、よそ見をしていたようだ。
A級冒険者のティコーさんだった。

「ティコーさん、A級に昇進したのですね。おめでとうございます」

「ふふふ、ノコ様のおかげなのですけどね。ここでご一緒してもよろしいですか?」

「は、はい。どうぞ」

「ふふふ、ここほど安全な場所は無いですからね」

「ならば、我らもご一緒させて下さい」

ティコーさんが笑っていると、見慣れぬ二人のS級冒険者が馴れ馴れしい笑顔で近寄って来る。

「あの、どちら様ですか」

「わかりませんか、俺はトユウ村でオークに囲まれているところを、助けてもらったオルダです」

「俺はバドラです」

「ふふふ、オークマスターを一刀両断などは、S級冒険者でも無理です」

だーー、まさか見られていたのかー。
僕たちがこんなやりとりをしていると、リザードマンが十九階層への入り口をふさぎ、全体を囲んで包囲した。
これで勇者が負ければ全滅の危機です。
ドラゴンソードは強力な武器なので当てれば負けることは無いはずです。

「行くぞーー!!」

勇者がドラゴンソードを振りかぶり、敵に斬りかかります。
でも、敵のリザードマンマスターの方が、動きが速い。
三度、四度と空振りをする。

「ちょこまか、逃げるなーー!!」

勇者は大きく振りかぶり斬りかかった。

「お前は、それで本気なのか」

リザードマンマスターは弱すぎる勇者に驚いている。
そして攻撃を紙一重で避けると剣を前に出した。
その剣は勇者の腕を切り裂いた。
敵の剣はボロボロで、その刃はノコギリのようにギザギザだった。

「ぎゃあーーー! いだいーー!!」

ギザギザの刃で切られた傷が痛かったのだろう、勇者の悲鳴が響いた。
そして、勇者は敵に背を向けると一目散に逃げ出した。

「お前たち、冒険者は俺を守れーー」

勇者の後ろに控えている冒険者を薙ぎ倒し逃げ出した。
その顔は、涙でぐしゃぐしゃになり、鼻水を垂らし、口からよだれも垂れ流したままになっている。
まるで、ご馳走を食べているオークの顔のようだった。

リザードマンマスターはその姿を見つめ、明らかに笑っているようだった。
逃げる勇者を追いかけて冒険者も必死でその後ろを追いかけた。
その姿をみて学生達に動揺が走った。

「騒ぐなーー、全員ひとかたまりになり、ここに集まれーー」

S級冒険者のオルダさんが叫んだ。
S級冒険者の叫びは、学生達の心によく届いたようで、一塊になってくれた。

「ローズ、防御壁で守ってあげて」

「はい、ノコ様」

十九階層への通路をふさぐリザードマンは、囲みを解くと勇者達の逃げ道を開けた。
そして、リザードマンマスターは僕の前でひざまずいた。
僕は、勇者がケガをして逃げ出したとき、勝ち誇るリザードマンマスターに、ゴーストを憑依させておいたのだ。

「全軍を、整列させ、ノコ様に平伏させなさい」

ローズがリザードマンマスターに胸を張り命じた。
その言葉を聞くと、この階のリザードマンが大あわてで全て整列し平伏した。
この光景を目にした先生と生徒、冒険者三名が大きな口を開けて見ている。

「あーー、皆さん、ここで見たことは他言無用です。いいですね」

言い終ってから僕は、皆の顔をゆっくり右から左へ顔を動かし見つめた。
全員すごい勢いでうなずいています。
まあ、二度と会うことも無いでしょうから、脅す必要も無いでしょう。

「ローズ、皆を地上へ転送して下さい」

皆の姿が無くなってから、僕とローズは自宅に移動した。
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