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第四十話 えん罪美女の救済

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「ローズ、まずはンデラさんの治癒からだ。熱がある」

「はい、食中毒ですね。すぐに治します」

ローズがンデラさんに手をかざすと、ンデラさんの体が薄ら光った。

「次は、机と椅子、真っ黒の物を出して下さい」

「はい、分りました」

牢の入り口にロウソクが二本あるだけなので、牢の奥はほとんど明かりが届いていない。
ローズの出してくれた黒い机と椅子は、牢の外からでは目をこらしても見ることが出来ない。

「次は、お水と少し薄めの野菜スープとスプーンを」

「はい、分りました」

机の上に水とスープが用意されると、ンデラさんの目が輝いた。

「どうぞ」

僕が笑顔ですすめると、ンデラさんは椅子に腰掛けて、まず、水に手を伸ばした。
そして、ごくごく喉を鳴らして飲み干した。

「ローズ、お水をもう一杯」

すぐにお替わりが用意されると、それも美味しそうに半分ほど飲んだ。

「美味しいです。生き返りました」

ンデラさんが美しい笑顔になりました。

「野菜スープです。こちらもどうぞ」

僕がンデラさんにすすめた。
ンデラさんが一口スープを口にした。
目玉が落ちるのじゃ無いかと思えるほど目を見開いた。

「おいしいーー」

すごい勢いで食べ出した。

「ンデラさんゆっくり食べて下さい。体によくありません」

「は、はい、美味しすぎて夢中になりました」

そういって、顔を赤くして恥じらいを見せた。
うん、可愛いですね。
そう思っているのがバレたのか、ローズがのぞき込んできた。

「ローズ、次はトマトが一杯入ったスープを出して下さい」

ローズは、三人分のトマトスープを出してくれた。
僕と、ローズも椅子に座り、スープを口にした。
うん、おいしい。

「おいしーー」

ローズが叫んでいる。
ローズさんは、何度も食べているでしょうに。



その夜は、僕を中心に三人で体を寄せ合って眠った。
ンデラさんは僕に心を許してくれたようだ。
ンデラさんはお腹も一杯で、熱も下がって、すぐにぐっすり眠ってしまった。

「ローズまでこんな汚い牢獄で眠らなくてもいいのに」

「ノノノ、ノコ様、本気で言っているのですか」

「えっ」

「もういいです」

ローズは怒って眠ってしまった。
怒っているくせに、顔が僕の顔にくっつきそうな位に近かった。

翌日はヒュアちゃんまで遊びに来た。
少し豪勢な食事を楽しんだ。
えん罪で死刑になろうとしている美女に明るさが少し戻った。

その晩は、四人で眠ることになった。
僕の両脇には、ローズとヒュアちゃんがぺったりくっついている。
そして、ンデラさんはローズの横にいて、人恋しいのかローズに体を寄せて横になっている。

「ンデラさん」

「はい」

「あなたは、本当に死刑になるような事はしていないのですね」

僕はローズに、真贋の魔法を使ってもらった。

「はい、ノコ様に嘘はつきません」

僕は、ローズの顔を見る。
ローズが、小さくうなずき笑顔になった。
ンデラさんはローズに密着して安心して眠り始めた。
ローズが、そんなンデラさんを気にいったのか、体を抱きしめて優しげに見つめている。
僕は、ンデラさんを救うことに決めた。
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