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第三十話 敵はドラゴンスレイヤー

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「ノコ様、どうかこの愚かなドラゴンの命だけはお許しください」

「ユーリ! 黙るでありんす。ノコ様に命乞いなど見苦しいでありんす」

うん、なにやら、二人が茶番を始めたようだ。
平伏して体を震るわして怯えているようにしているけど、顔は笑顔で、パシパシウインクしている。
乗るしか無いのか。

「若きドラゴンの王よ、話す事は出来ますか」

僕が静かに大げさに話し出すと、ドラゴンもずいぶん落ちついた。

「あの、ノコ様はいったい何者なのですか?」

「あなたの前にいる二人の主人です。ただそれだけの者です」

「その様な可愛らしくて、美しいお姿でこの二人の御主人とは……」

えーーっ、まじかーー?
マリーの奴めー、いったいどんな姿にしたんだよー。

「なぜこのような乱暴な事をしたのですか」

いいながら、少し恥ずかしくなって顔が赤くなった。
ユーリさんとアクエラさんが、嬉しそうな顔をして僕の顔を見つめている。

「それは、人間が我一族の幼い者を連れ去っているからだ」

あーなるほど、ドラゴンを密猟している奴がいるんだ。
ドラゴンの素材は高く売れるからなー。
でも、ドラゴン側から見れば同胞の誘拐だ。
怒って当然かー。

「そうだとしても、人間皆殺しはやり過ぎです。それに一人でそんなことが可能だと思うのですか」

「ふん、人間だけなら俺様だけで出来たはずだ……。ノコ様がいなければ……。俺は殺されるのか?」

「いいえ、人間にも非がありますからね。でも人間皆殺しはやり過ぎです。殺すならあなたの同胞を殺したドラゴンスレイヤーだけにして下さい」

「そうは言っても我らでは誰が犯人か知ることが出来ない」

うわーー、せっかくこれでのんびり生活出来ると思ったのに、今度はドラゴンスレイヤーと話し合いだよ。
厄介ごとばかりだ。

「分かりました。少し僕が動いてみます。それで納得して帰ってくれませんか」

僕が嫌そうな顔をしていたら、ユーリさんとアクエラさんが、ほっぺたを膨らまして笑いをこらえている。

「ノコ様が動いて下さるのならば……。では、俺は帰らせてもらいます」

「ちょっと待つのじゃ、迷惑料を置いていくのじゃー」

ユーリさんが飛び去ろうとしたドラゴンの尻尾をつかんだ。
尻尾がプツンと切れて地面に落ちて、ビクンビクンと動いている。
あれだ、トカゲの尻尾切り。
気持ち悪い。

ドラゴンの尻尾が手に入った。
ユーリさんに比べれば大人と子供ほど差がありますが、立派なドラゴンの尻尾です。
赤い鱗は美しくて固そうだ。

「ノコ様―。軽くドラゴンの撃退とはさすがですなー。助かりました」

大将軍ゼルバンさんが笑顔で駆け寄ってきた。

「あのー、このことは、全て勇者様の手柄ということでお願いします」

「わあはっはっはあーー。なるほどこういう事でございましたか」

「……」

「私は、国王に忠誠を誓う者です。嘘はつけませんので、陛下にはありのままとノコ様の言葉を、そのままに伝えましょう」

あーー、国王にはバレるのね。
いやな予感しかしない。

「あの、ドラゴンスレイヤーについて、教えて欲しいのですが、誰か何か知りませんか」

僕が、全員の顔を見回して質問してみた。
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