上 下
20 / 89

第二十話 本当の心

しおりを挟む
「私は、ゾンビの間の記憶はないのじゃが、それ以外の記憶はしっかりしているのじゃ。その上で憎んでなどいないのじゃ。これが本当の心なのじゃ」

ユーリさんが少し照れながら言う。
アクエラさんが大きくうなずいた。

「しかし、それがスキルの……」

僕が全部言う前にユーリさんが続けた。

「ならばヒュアちゃんはどう説明するのじゃ。スキルは関係ないじゃろ」

ヒュアちゃんが赤くなって、くねくねしている。
そうだ言われて見れば、確かにヒュアちゃんは僕のスキルは関係ない。
でも、女の人はこんな小さなうちから恋をするのだろうか。

「そうか、言われて見れば……」

「だから、私の気持ちはそのまま受け止めればいいのじゃ」

抱きつこうとしたユーリさんを、ローズとアクエラさんがすごい形相で止めている。
こんな会話をしていたら、ホベルトさんが意識を取り戻して歩いてきた。

「ひ、姫を宜しくお願いします」

「じゃあ、ノコ様と一緒なら護衛はいらないのですね」

ヒュアちゃんがそう言うと、ぴょんぴょん跳びはねて喜んでいる。
んーちょっと待てよそれって、僕がヒュアちゃんの面倒を見るって事か?

「じゃあ、ホベルト、私は今からノコ様の家へ遊びに行きます。いいですね」

「はい、その様に陛下には伝えておきます」

ヒュアちゃんがキラキラした目で僕を見ています。
そんな、顔を見たら、断れませんよね。
一応ローズの顔を見てみた。
笑いながら、うなずいている。





ヒュアちゃんが、ずっと家に居て帰らないから、城から使いの人が来た。
使いの人が少しヒュアちゃんに耳打ちすると。

「ノコ様、少しやらねばならないことがあるようです。しばらく城に帰ります。ううっ……」

泣くほど嫌なようだが、王族としての公務があるようだ。
ヒュアちゃんはしばらく城に帰ることになった。
なので僕たちは久しぶりにギルドに行く事にした。

少し街をぶらぶらしながら、今日は歩いてギルドの前についた。
すると、ギルドの中がザワザワしている。

「バカヤロー、俺はこの目で見たんだ。トロールキングが平伏したんだ!」

「F級の冒険者にだろう。そんな訳あるかー」

「本当だ。だから勇者が解決したなんて全部嘘っぱちだー」

「ぎゃあはっはっー、どう考えてもお前の方が嘘っぱちだろう!」

僕は、今、中に入ちゃあいけない気がした。
だが、うちの三人衆はそういうのは気にしない人達だ。
そのままズカズカ入ると受付嬢に話しかけて、アクエラさんの冒険者登録をした。
当然F級での登録である。

「あの、二階へあがってギルド長室に行っていただけますか」

「いえ、今日は登録だけに来たので帰ります」

すごく面倒ごとの予感がしたので帰ろうとした。
だが、間の悪いことにギルド長が降りてきた。

「おおーー、ノコ様、ローズ様、二階へどうぞー」

ギルド長は満面の笑顔である。
そして、さっき、ハルトの街の事を話していた冒険者にバレたみたいだ。
唇がわなわな震えている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

外道魔法で異世界旅を〜女神の生まれ変わりを探しています〜

農民ヤズ―
ファンタジー
投稿は今回が初めてなので、内容はぐだぐだするかもしれないです。 今作は初めて小説を書くので実験的に三人称視点で書こうとしたものなので、おかしい所が多々あると思いますがお読みいただければ幸いです。 推奨:流し読みでのストーリー確認( 晶はある日車の運転中に事故にあって死んでしまった。 不慮の事故で死んでしまった晶は死後生まれ変わる機会を得るが、その為には女神の課す試練を乗り越えなければならない。だが試練は一筋縄ではいかなかった。 何度も試練をやり直し、遂には全てに試練をクリアする事ができ、生まれ変わることになった晶だが、紆余曲折を経て女神と共にそれぞれ異なる場所で異なる立場として生まれ変わりることになった。 だが生まれ変わってみれば『外道魔法』と忌避される他者の精神を操る事に特化したものしか魔法を使う事ができなかった。 生まれ変わった男は、その事を隠しながらも共に生まれ変わったはずの女神を探して無双していく

封印されし魔王、自称モブ生徒に転生す!

猫宮乾
ファンタジー
 勇者が言った。「魔王! お前を封印する!!」来た。ついに来てしまった。俺は絶望的な気分で、目の前で閉じつつある時空の歪みを見た。それから――三百年以上の時が経過していたらしい。「リザリア・ナイトレル! 貴様との婚約を破棄する!」なんだか目の前で婚約破棄が繰り広げられているが、それどころではない。俺は、思い出してしまった。そう記憶が蘇ってしまったのだ。俺は、魔王だ……! ※主人公最強の異世界ファンタジーで恋愛要素があります。お楽しみいただけましたら幸いです。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...