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第21章 英雄の慟哭と苦悩と再起編
第3話 英雄、復活の刻
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・・3・・
「………………リイ、ナ?」
僕はリイナに平手打ちされた頬を触れながら、現実を飲み込めないでいた。
呆然とする自分。身体を震わせているリイナ。今までリイナに抱き締められたり、撫でられたりされた事こそあれど思い切り叩かれたことなんて一度も無かった。
「なん、で……?」
ぽつりと出てきた言葉はなんとも情けない一言だった。エイジスに救いを求めるように視線を移しても、今のはマスターが悪いと言わんばかりに見つめられていた。
「なんで、って……。旦那様、本当に、アナタは私に何と言おうとしたか。どう返されるか分からなかったの……?」
「僕は……、だって……、見限られても……」
「だってもさっても無いわよ!! アナタ、私がこの程度のことで旦那様に嘘をつかれたからって見捨てるような女だと思ってるのかしら?! 私とアナタの育んできた時間が薄っぺらいものだとでも?! 一つ隠し事をしていたくらいで、あの女と何があったか知らないけれどたったこれくらいで掌返してアナタったら最低ねもう一緒に居られないわ最低ねなんて言うとでも思ったのかしら?!」
「そ、それは……」
「私を誰だと思っているのよ!! リイナ・ノースロード!! アナタの奥さん!! 常に国を案じ、兵を大切にし、そして家族を何よりも大事に思うアカツキ・ノースロードを愛する女よ!!」
「でも、僕はキミに嘘を……」
「ええ確かにアナタは私に隠し事をしていたのかもしれないわね! でもそれがどうしたと言うの! 私はココノエ陛下の『流れ人』の話を聞いた時に、易々と話せる事だとは思わなかったわ! もし自分が旦那様の立場だったのなら、信じてもらえる可能性の低い話なんて出来ないと思ったもの!」
「じゃあ、どうして……」
「私が怒っているのはそんな事じゃないのよ!! アナタが抱え込んでいるものに気付けなかった私が悔しい!! 腹が立つ!! 嫌になる!!」
「…………」
「そして一番怒っているのは、旦那様が自身を蔑ろにして自分を捨てろだなんて言ったことよ!!」
「リイ、ナ……」
リイナは耐えきれなくなったのか、泣き叫んだ。
そこで初めて僕は気付く。なんて事を言ってしまったんだろうと。
僕が戦場で負傷したのは小さい傷なら何度かあった。病室送りなら二度だ。その時もリイナは献身的にしてくれていた。さらに三度目の病室送りが今。しかも肉体的ではなく精神的なものが原因によるもので、全ての手配をリイナはしてくれていた。僕の指揮の代理をしながらだ。
その重責たるや察するに余りあるもののはず。
だというのに、目を覚まして錯乱してようやく落ち着いたと思ったら今度は自暴自棄になって自分を捨てても構わないなんてのたまう。
怒って当然だろう。怒らない訳がなかった。
「どうして、どうして旦那様は……。いつも、いつもそうやって自分を大事にしないのよ……。もっと自分自身を、大切にしなさいよ……」
「リイナ、僕は、そんな……」
「私には前の世界の事なんて分からないわ……。どんな風に生きていたのかも、あの女との接点も関係も分からないわよ……。でもこれだけは言えるのよ……。私はアナタを愛しているの……。愛しているから、怒っているのよ……。どうして、自分を捨てろなんて事を言うのよ……」
「…………ごめん」
「謝罪の言葉なんていらないわよ……。私は、私はただ、もっと頼って欲しくて、でもなによりも、私が愛する人が自分のことを大事にして欲しくて……」
「リイナ……」
「マイマスター。差し出がましいかもしれませんが、発言をお許しください」
「……うん」
今まで黙って見守ってきたエイジスが口を開く。僕にそれを止める権利はない。
「リイナ様はマスターが錯乱されてから今日に至るまで、マスターに代わり無事指揮を遂行されました。その時に仰られていたのです。『旦那様は、こんな重たい責務を常に背負っていたのね』と。そして、『もっと旦那様を支えなければならなかった』と痛感されておりました。結果的に、本件でマスターが錯乱された理由が重責ではなくリシュカ・フィブラにある事が分かりましたが、とはいえリイナ様は非常に心を痛めておられたのです。愛する人が倒れられたのですから。ところがマスターは言ってしまわれたわけです」
「僕を捨ててしまっても構わない、だろう……」
「肯定。畏れ多くも、ワタクシは思いましたよ。悪言だと。リイナ様が怒られるのは当然です。同時に、ワタクシもリイナ様と同じ感想を持っております。マスターは、マスター自身を大切にして欲しいと」
「…………そう、だね。僕は自暴自棄になっていた。上官を救えなくて、今の状態になる前に動けなくて、そして敬愛する上官に殺意を向けられて……」
「だからって、自分を卑下するのはやめてちょうだいよ。旦那様……」
リイナは涙をこぼして俯き、弱々しく言う。
僕は目の前で泣かせてしまった大切な人を抱きしめるべきか躊躇する。
そんな権利があるのかと、手が止まる。
「私は旦那様がどんな隠し事をしていても、胸の内に秘めていても受け入れるわ……。でも、旦那様が旦那様を蔑ろにすることだけは許さない……、許さないんだから……」
「ごめん、ごめんよ……」
「だから、謝罪の言葉はいらないの……。謝るくらいなら、抱き締めなさいよ……」
「…………ありがとう、リイナ。こんな僕を、受け入れてくれて……」
ベッドにいる僕は上半身だけだけど、そっと、リイナを抱きしめた。
いつも胸を張って自信に満ちていて、僕を大切にしてくれる人。愛してくれる人は、まるで今すぐ割れそうなくらいな程に弱々しくすすり泣きをしていた。
「ばか……、旦那様のばか……」
「…………うん」
「なんでも一人で背負い込んで、悩んで、自分の命より人の命を大切にして……」
「…………うん」
「でも、だからこそ誰よりも人々を守ろうとする……。そんなアナタが大好きで、愛しているのよ……」
「ありがとう……。僕もリイナを愛しているのに、あんな事を言ってごめんよ……」
「…………ばか。ただ愛しているだけ言ってくれればいいのよ……」
「リイナ、愛してる」
「もっと私を頼ってくれる……?」
「うん」
「自分を大事にしてよ……」
「うん」
「もう隠し事はなしよ……?」
「うん」
「…………叩いてしまって、ごめんなさい」
「いいんだ、お陰で目が覚めた」
「…………そう。そう。なら、良かったわ。けど、これくらいはさせなさいな」
「え、わ、わぷっ――」
リイナは顔を上げると両目から零れた涙を両頬に残したまま小悪魔のような笑みを浮かべると、僕をいきなり押し倒す。
顔を近付けてきたと思ったら、強引に口を塞がれた。
唇同士を触れさせるだけのではなく、舌が絡み合う熱い熱いキス。直後こそじたばたこそすれ、直ぐに抵抗をやめて受け入れた。
存在を確かめ合うような行為は数分続いた。
「…………ぷはっ。ごちそうそまでした」
「ごちそうさまでした、って……」
僕は未だ余韻の残る唇を触れながら言う。エイジスに至ってはこの光景を見て口笛を高く吹いていた。君、それどこで覚えてきたんだよ……。
「仕方ないでしょう? 我慢ならなかったのですもの」
「悪びれない様子……。うん、リイナだ」
「ええ、私よ?」
艶めかしく濡れる唇を舌でぺろりと舐めるリイナ。
本当にこの人は……。
でも、彼女のおかげで僕はまた救われた。ならば、いつまでも病室にいちゃいけない。
何故ならば僕は軍人で、今は危機の最中で、僕は大切な人を守らなければならない。
高槻亮は死んでしまったけれど、今の僕はアカツキ・ノースロードだ。この世界には、沢山のかけがえのない大切な人がいる。
…………如月中佐。申し訳ありません。
僕は今も貴女に救いの手を差し伸べられなかった事を後悔しています。
貴女が今の様子になってしまった原因は、少なからず僕にあるかもしれません。
でも、それでも僕は大切な人を守りたいんです。貴女がかつて教えてくれたように、この力で僕は大切な人を守りたいんです。
……きっと、僕は貴女を殺すことになるかもしれません。
捕らえるだなんて生易しい終わり方をしないかもしれないです。
それでも、僕は決めました。
妖魔帝国には負けません。必ず統合軍が勝利します。何故ならば、大切な人達がいるから。
そして。
貴女を尊敬しているからこそ、変わってしまった、変わらせてしまった貴女を殺します。
…………待っていてください、如月中佐。
また、相見える日まで。
「旦那様……?」
「ああ、ごめんよリイナ。じっとはしていられないなって思っただけさ」
「ふふふ、いつもの旦那様に戻ったわね。まずは、どうするのかしら?」
「軍服に着替えよう。それから、マーチス元帥閣下の所へ行こう。今回の件を謝って、僕は戦線に復帰する。流石にリイナ達に言った真実は極一部の人にしか話せないけれど」
「そうね。話せるのは、お父様にココノエ陛下。ごくごく限られた人の方が良さそうだわ。色々、とね」
「肯定。全ての人に公開するといらぬ混乱を産みかねませんし、説明が多すぎます。ひとまずはマーチス元帥閣下やココノエ陛下に打ち明け、それから判断しましょう。場合によっては、墓場まで持っていくのも一つの手です」
「よし。方針が決まったのなら早速動こうか」
・・Φ・・
統合軍の危機の中で、運命の女神はアカツキに微笑んだ。
アカツキの復活を語るにあたっては、後世の歴史書にはリイナの存在が不可欠であり、リイナこそが救国の女神とも言えるだろうと記録されているほどだ。
リシュカが企図したアカツキの精神的崩壊は、一時的には目論見通りとなったが、リシュカの予想を大幅に反してアカツキは短時間で復活してみせたのである。
もしアカツキがあのまま抜け殻のようになっていたのならば、戦況は大きく変わっていただろう。
だがしかし、そうはならなかったのである。英雄は英雄故に再び立ち上がったのである。
何はともあれ、時計の針は再び動き出す。
アカツキ・ノースロード復活の時は、人類諸国統合軍の反撃の狼煙の時でもあった。
「………………リイ、ナ?」
僕はリイナに平手打ちされた頬を触れながら、現実を飲み込めないでいた。
呆然とする自分。身体を震わせているリイナ。今までリイナに抱き締められたり、撫でられたりされた事こそあれど思い切り叩かれたことなんて一度も無かった。
「なん、で……?」
ぽつりと出てきた言葉はなんとも情けない一言だった。エイジスに救いを求めるように視線を移しても、今のはマスターが悪いと言わんばかりに見つめられていた。
「なんで、って……。旦那様、本当に、アナタは私に何と言おうとしたか。どう返されるか分からなかったの……?」
「僕は……、だって……、見限られても……」
「だってもさっても無いわよ!! アナタ、私がこの程度のことで旦那様に嘘をつかれたからって見捨てるような女だと思ってるのかしら?! 私とアナタの育んできた時間が薄っぺらいものだとでも?! 一つ隠し事をしていたくらいで、あの女と何があったか知らないけれどたったこれくらいで掌返してアナタったら最低ねもう一緒に居られないわ最低ねなんて言うとでも思ったのかしら?!」
「そ、それは……」
「私を誰だと思っているのよ!! リイナ・ノースロード!! アナタの奥さん!! 常に国を案じ、兵を大切にし、そして家族を何よりも大事に思うアカツキ・ノースロードを愛する女よ!!」
「でも、僕はキミに嘘を……」
「ええ確かにアナタは私に隠し事をしていたのかもしれないわね! でもそれがどうしたと言うの! 私はココノエ陛下の『流れ人』の話を聞いた時に、易々と話せる事だとは思わなかったわ! もし自分が旦那様の立場だったのなら、信じてもらえる可能性の低い話なんて出来ないと思ったもの!」
「じゃあ、どうして……」
「私が怒っているのはそんな事じゃないのよ!! アナタが抱え込んでいるものに気付けなかった私が悔しい!! 腹が立つ!! 嫌になる!!」
「…………」
「そして一番怒っているのは、旦那様が自身を蔑ろにして自分を捨てろだなんて言ったことよ!!」
「リイ、ナ……」
リイナは耐えきれなくなったのか、泣き叫んだ。
そこで初めて僕は気付く。なんて事を言ってしまったんだろうと。
僕が戦場で負傷したのは小さい傷なら何度かあった。病室送りなら二度だ。その時もリイナは献身的にしてくれていた。さらに三度目の病室送りが今。しかも肉体的ではなく精神的なものが原因によるもので、全ての手配をリイナはしてくれていた。僕の指揮の代理をしながらだ。
その重責たるや察するに余りあるもののはず。
だというのに、目を覚まして錯乱してようやく落ち着いたと思ったら今度は自暴自棄になって自分を捨てても構わないなんてのたまう。
怒って当然だろう。怒らない訳がなかった。
「どうして、どうして旦那様は……。いつも、いつもそうやって自分を大事にしないのよ……。もっと自分自身を、大切にしなさいよ……」
「リイナ、僕は、そんな……」
「私には前の世界の事なんて分からないわ……。どんな風に生きていたのかも、あの女との接点も関係も分からないわよ……。でもこれだけは言えるのよ……。私はアナタを愛しているの……。愛しているから、怒っているのよ……。どうして、自分を捨てろなんて事を言うのよ……」
「…………ごめん」
「謝罪の言葉なんていらないわよ……。私は、私はただ、もっと頼って欲しくて、でもなによりも、私が愛する人が自分のことを大事にして欲しくて……」
「リイナ……」
「マイマスター。差し出がましいかもしれませんが、発言をお許しください」
「……うん」
今まで黙って見守ってきたエイジスが口を開く。僕にそれを止める権利はない。
「リイナ様はマスターが錯乱されてから今日に至るまで、マスターに代わり無事指揮を遂行されました。その時に仰られていたのです。『旦那様は、こんな重たい責務を常に背負っていたのね』と。そして、『もっと旦那様を支えなければならなかった』と痛感されておりました。結果的に、本件でマスターが錯乱された理由が重責ではなくリシュカ・フィブラにある事が分かりましたが、とはいえリイナ様は非常に心を痛めておられたのです。愛する人が倒れられたのですから。ところがマスターは言ってしまわれたわけです」
「僕を捨ててしまっても構わない、だろう……」
「肯定。畏れ多くも、ワタクシは思いましたよ。悪言だと。リイナ様が怒られるのは当然です。同時に、ワタクシもリイナ様と同じ感想を持っております。マスターは、マスター自身を大切にして欲しいと」
「…………そう、だね。僕は自暴自棄になっていた。上官を救えなくて、今の状態になる前に動けなくて、そして敬愛する上官に殺意を向けられて……」
「だからって、自分を卑下するのはやめてちょうだいよ。旦那様……」
リイナは涙をこぼして俯き、弱々しく言う。
僕は目の前で泣かせてしまった大切な人を抱きしめるべきか躊躇する。
そんな権利があるのかと、手が止まる。
「私は旦那様がどんな隠し事をしていても、胸の内に秘めていても受け入れるわ……。でも、旦那様が旦那様を蔑ろにすることだけは許さない……、許さないんだから……」
「ごめん、ごめんよ……」
「だから、謝罪の言葉はいらないの……。謝るくらいなら、抱き締めなさいよ……」
「…………ありがとう、リイナ。こんな僕を、受け入れてくれて……」
ベッドにいる僕は上半身だけだけど、そっと、リイナを抱きしめた。
いつも胸を張って自信に満ちていて、僕を大切にしてくれる人。愛してくれる人は、まるで今すぐ割れそうなくらいな程に弱々しくすすり泣きをしていた。
「ばか……、旦那様のばか……」
「…………うん」
「なんでも一人で背負い込んで、悩んで、自分の命より人の命を大切にして……」
「…………うん」
「でも、だからこそ誰よりも人々を守ろうとする……。そんなアナタが大好きで、愛しているのよ……」
「ありがとう……。僕もリイナを愛しているのに、あんな事を言ってごめんよ……」
「…………ばか。ただ愛しているだけ言ってくれればいいのよ……」
「リイナ、愛してる」
「もっと私を頼ってくれる……?」
「うん」
「自分を大事にしてよ……」
「うん」
「もう隠し事はなしよ……?」
「うん」
「…………叩いてしまって、ごめんなさい」
「いいんだ、お陰で目が覚めた」
「…………そう。そう。なら、良かったわ。けど、これくらいはさせなさいな」
「え、わ、わぷっ――」
リイナは顔を上げると両目から零れた涙を両頬に残したまま小悪魔のような笑みを浮かべると、僕をいきなり押し倒す。
顔を近付けてきたと思ったら、強引に口を塞がれた。
唇同士を触れさせるだけのではなく、舌が絡み合う熱い熱いキス。直後こそじたばたこそすれ、直ぐに抵抗をやめて受け入れた。
存在を確かめ合うような行為は数分続いた。
「…………ぷはっ。ごちそうそまでした」
「ごちそうさまでした、って……」
僕は未だ余韻の残る唇を触れながら言う。エイジスに至ってはこの光景を見て口笛を高く吹いていた。君、それどこで覚えてきたんだよ……。
「仕方ないでしょう? 我慢ならなかったのですもの」
「悪びれない様子……。うん、リイナだ」
「ええ、私よ?」
艶めかしく濡れる唇を舌でぺろりと舐めるリイナ。
本当にこの人は……。
でも、彼女のおかげで僕はまた救われた。ならば、いつまでも病室にいちゃいけない。
何故ならば僕は軍人で、今は危機の最中で、僕は大切な人を守らなければならない。
高槻亮は死んでしまったけれど、今の僕はアカツキ・ノースロードだ。この世界には、沢山のかけがえのない大切な人がいる。
…………如月中佐。申し訳ありません。
僕は今も貴女に救いの手を差し伸べられなかった事を後悔しています。
貴女が今の様子になってしまった原因は、少なからず僕にあるかもしれません。
でも、それでも僕は大切な人を守りたいんです。貴女がかつて教えてくれたように、この力で僕は大切な人を守りたいんです。
……きっと、僕は貴女を殺すことになるかもしれません。
捕らえるだなんて生易しい終わり方をしないかもしれないです。
それでも、僕は決めました。
妖魔帝国には負けません。必ず統合軍が勝利します。何故ならば、大切な人達がいるから。
そして。
貴女を尊敬しているからこそ、変わってしまった、変わらせてしまった貴女を殺します。
…………待っていてください、如月中佐。
また、相見える日まで。
「旦那様……?」
「ああ、ごめんよリイナ。じっとはしていられないなって思っただけさ」
「ふふふ、いつもの旦那様に戻ったわね。まずは、どうするのかしら?」
「軍服に着替えよう。それから、マーチス元帥閣下の所へ行こう。今回の件を謝って、僕は戦線に復帰する。流石にリイナ達に言った真実は極一部の人にしか話せないけれど」
「そうね。話せるのは、お父様にココノエ陛下。ごくごく限られた人の方が良さそうだわ。色々、とね」
「肯定。全ての人に公開するといらぬ混乱を産みかねませんし、説明が多すぎます。ひとまずはマーチス元帥閣下やココノエ陛下に打ち明け、それから判断しましょう。場合によっては、墓場まで持っていくのも一つの手です」
「よし。方針が決まったのなら早速動こうか」
・・Φ・・
統合軍の危機の中で、運命の女神はアカツキに微笑んだ。
アカツキの復活を語るにあたっては、後世の歴史書にはリイナの存在が不可欠であり、リイナこそが救国の女神とも言えるだろうと記録されているほどだ。
リシュカが企図したアカツキの精神的崩壊は、一時的には目論見通りとなったが、リシュカの予想を大幅に反してアカツキは短時間で復活してみせたのである。
もしアカツキがあのまま抜け殻のようになっていたのならば、戦況は大きく変わっていただろう。
だがしかし、そうはならなかったのである。英雄は英雄故に再び立ち上がったのである。
何はともあれ、時計の針は再び動き出す。
アカツキ・ノースロード復活の時は、人類諸国統合軍の反撃の狼煙の時でもあった。
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