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第13章 休戦会談と蠢く策謀編
第5話 限られた手段の中で、アカツキ達は動き出す
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・・5・・
12の月21の日
午後1時40分
アルネシア連合王国首都・アルネセイラ
連合王国軍統合本部・本部棟
今年も残すところあと十日になった十二の月下旬。貴族界隈では停戦記念も兼ねている年越しのパーティに向けた準備が進む中、僕達軍人貴族は戦後処理を含めた仕事に追われていた。とはいえ、戦争に区切りが付いたことからこれまでピリピリしていた連合王国軍統合本部もかなりリラックスした雰囲気になっていて、そこかしこから年末年始はどうするかという話題が聞こえてきていた。
だけど、僕はその中での例外であるんだよね……。
それはとある場所に向かうまで付き従ってくれている部下達との会話でも現れていた。
「アカツキ中将閣下。午前のアルネシア新聞の取材、お疲れ様でした。翌日には協商連合のロンドリウム新聞の取材があります。また、同日午後にはノイシュランデ新聞からも取材がありますので、よろしくお願いします」
「了解。明日は一日取材漬けかあ……」
「……大変申し上げにくいのですが、軍広報の取材は明後日にございます」
「ひえ……。リイナが上手いことスケジュール調整してくれなかったらもっと大変だったろうね……」
隣を歩く少佐は申し訳なさそうに言う。
彼等は僕が今の立場になってから新たに加えられた部下達で、平時の軍統合本部の軍務において様々な仕事をしたり中継役になってくれる者達だ。今日の取材についても、リイナがいないのもあって彼等が同行してくれていた。
リイナはというと、副官として僕のスケジュール調整を行ってくれていた。彼女自身にも取材は来ているし仕事はいくらでもあるんだけれど、僕のスケジュールが既に来月下旬までいることから分かる通り、かなりの折衝をリイナはしてくれている。今日いないのもそれが理由だ。
彼女が各方面へ調整を働きかけてくれているお陰で一日の詰まった予定の中に多少落ち着ける余裕がある。本当に頭が上がらないよね。
さて、軍本部の大廊下を歩いて奥の方まで進み、一階から三階まで上がると今から向かう目的地へと着く。
扉の横には、『連合王国軍統合本部統合総司令官室』と書かれている壁に付けられた大きく程よく装飾が施されている木札があった。
「同行ご苦労様。各自、軍務に戻っていいよ」
『はっ。失礼致します』
「うん、ちょっとゆっくりしてってね」
僕はそう言って部下達と別れると、ドアをノックする。
「アカツキ・ノースロードです」
「アカツキ中将か。入れ」
「はっ。失礼します」
ガチャ、と扉が開くとようやく引越し作業が終わって片付けがなされ、しっかりと体裁の整った部屋になっていた。部屋の奥には派手すぎず質素過ぎずの執務机と椅子があり、そこにはマーチス侯爵が座っていた。軍服は軍の最高階級たる元帥に相応しい豪奢さで、肩の階級章は金星が四つになっていた。隣には元からの副官、ブリック中将――彼も先日昇進した――がいた。
「ここ数日の取材、ご苦労だったなアカツキ中将」
「ありがとうございますマーチス元帥閣下。帰還早々にあちこちから取材で、申し訳ないのですがあまり仕事は捗りませんでした」
「ははっ、そうだろうなあ。お前がまたあちこちから取材を受けることになっているのはオレも耳にしている。まあ有名人はそんなものさ。かくいうオレも似たようなものだしな。なあ、ブリック中将?」
「ええ。遠征組は大小あれど皆忙しいようですから。――アカツキ中将、改めてだが昇進おめでとう。あれだけの活躍をしたんだから、当然だと思っていたよ」
「ありがとうございます。ブリック中将も、昇進おめでとうございます」
「ふ、自分はお零れみたいなもんだけどな。だが、これまでの行いが認められるのは嬉しいよ」
「ブリック中将はマーチス元帥閣下をお支えになっておりましたし、今の形になる前の任務でも多くの情報を集められておりましたから」
「英雄閣下からそう評価してもらえるのは名誉なことだ。これからもよろしく頼むよ?」
「こちらこそ」
「二人が昇進となった事には、誇らしく思うぞ。だが、せっかく話している所申し訳ないが、ブリック中将。頼んである仕事に向かってくれるか?」
「おっと、もうこんな時間でしたか。了解しました。情報部に出向いてきます」
「うむ。じゃあまたな、アカツキ中将。時間が空いたら貴官の通う洋菓子店に連れていってくれ。子供にアカツキ中将お墨付きのクッキーをくれとせがまれていてな」
「あはは、そんな事があったんですね。分かりました。明明後日でしたら夕方が空いています。それでよろしければ」
「分かった。明明後日の夕方だな。空けておこう」
「よろしくお願いします」
ブリック中将と約束を交わすと、彼はマーチス侯爵に敬礼して退室した。
部屋にはマーチス侯爵と自分だけ。するとマーチス侯爵はいくらか肩の力を抜いてリラックスした雰囲気になり、僕に微笑みかけると。
「アカツキ、立ったままだと疲れるだろう。そこに座れ」
「はい、ありがとうございます義父上」
「コーヒーはどうだ?」
「僕がいれますよ?」
「オレが飲みたいからいれるだけだ。
「でしたらお言葉に甘えていただきます」
「おう。砂糖は二つか? 一つか?」
「今日は一つで」
「分かった」
マーチス侯爵は保温しておいたコーヒーを、カップに注いでいく。ああは言うけれど、どうやらさっき準備してくれていたらしい。
「以前お前が気に入ったディモーブもあるぞ。食べなさい」
「わぁ! ありがとうございます!」
「ははっ、お前が喜ぶ顔いつ見てもオレも嬉しくなるぞ」
マーチス侯爵はコーヒーカップとソーサーを置くと、応接用にあるソファに座って脚を組んでゆったりとした姿勢になる。
「ここもようやく移転作業が終わって片付いたが、自宅ほどではないが外の喧騒がない分落ち着くものだな」
「ええ。帰還してからというものの、歩けば握手攻勢場合によってはサイン。たまに黄色い声まで飛んできますからね」
「黄色い声のほとんどはお前とリイナと思うんだがなあ……。しかし、停戦と勝利をもたらした我々は時の人だ。仕方あるまい。が、疲れるよな」
「正直疲れますね」
僕とマーチス侯爵は二人して愚痴りながら笑い合う。
大々的に遠征組の活躍が報じられている今、民衆の間では当然のこと軍の中でもちょっと歩けばまるで前世の芸能人が現れたかのような様子になる。それだけじゃない。僕がそうであるように、通常の軍務に加えての広報活動や取材は大量にあって、いくら戦場慣れして体力のある僕達でも精神的な疲労はあるんだよね。
少しの間、そういった類の愚痴を話していたけれど、今は軍務中の時間。
互いにコーヒーを飲み、ディモーブを口に運んでからマーチス侯爵は本題を切り出してきた。
「休戦会談へ向けた動きだが、比較的順調に進んでいると外務省から連絡があった。協商連合や法国との共同管理都市が決定されたブカレシタで会談への交渉が行われると決まったようだぞ。既に各国外務省はひとまず次官級で進め、準備に追われているらしい」
「朗報ですね。今までマトモな話し合いなど行われたこともない妖魔帝国軍と穏やかに言葉同士で話せるのならば、良きことです」
「本当にな。これまで散々に罵っておきながら、停戦になってからというものの連中は同じ邦かと思えるくらいに態度が変わった。こちらが受け入れる側だからと対等どころか我々を持ち上げるかのごとくだ。ますます皇帝の評価を修正せざるを得なくなる」
「まるであの、いや、それ以上か……」
「何か言ったか?」
「いえ、独り言です。それで、外務省の見立てではどれくらいに休戦会談を開く予定なのですか?」
「雪解けの春くらいにだそうだ。停戦の地となったブカレシタを、休戦の象徴の地にしたいらしい。年数はともかく、約束をまた破るなと暗に釘をさしたいのだろう。単純に春の方が見栄えも良くなるし、あそこなら法国も行きやすい。連合王国にせよ、これから駐留することになるであろう協商連合にとっても悪くない場所だ」
「なるほど。外面と内面の両方を整えられる外務省らしい判断です。問題は、休戦するにあたっての条件ですかね」
「ああ。ここが一番の問題となる。奴らは領地を差し出したが、あれは元々人類諸国の地。となると、賠償金が絡んでくる。それだけではない。捕虜交換の問題もあるし、何より年数だ」
「計画に変更が出かねませんが、捕虜交換についての策は参謀本部が既に動き始めています。僕も当然関わっていますが、まだ動き始めてばかり故に大まかな形すら出来上がっていません」
「そこについてはお前に一任する。粛清された妖魔帝国軍人に対する同情論はようやく国民の間でも浸透してきた。過激な主戦論者には少し頭を悩まされるが、お前を崇拝するかの如くの連中でもある。利用してやれ」
「あの手の者達はある意味では厄介ですが、使いようによっては良いカードになります。情報操作は引き続き情報機関にお任せする予定です」
「了解した。覚えておこう。休戦会談についは外務省の仕事だが、随時最新の情報はお前に届くようにしておこう」
「ご配慮痛み入ります、元帥閣下」
「気にするな。エディンの奴は外務省の仕事故に軍人のお前は舞台に立てないが、助力は欲しいらしいのでな」
「分かりました。こちらも貸しを作っておきたいので、承ります」
「ほう、貸しか。何かまた新しい考えでもあるのか?」
マーチス侯爵は僕の言葉に反応し、にやりと笑う。
ただ、その期待には申し訳ないけれど応えられない。何せ未だに解決策の見いだせない話だからだ。
「半分は当たりで半分は違います。如何せん、僕の力だけでは到底足りない専門外の分野にもなりますので。外務省の協力が必要になります」
「ほう? で、どんな内容だ?」
「協商連合の件です。先日国王陛下と茶会で話した事柄になりまして、恐らく義父上もご存知かと」
「ああ、戦乙女の事か」
「はい。協商連合の英雄、いえ今はかつての、が付きますが彼女の事です」
マーチス侯爵はコーヒーを一口飲むと、味覚とは別の意味で険しく、苦い顔をする。
フィリーネ少将の件についてはあの翌日にはマーチス侯爵にも伝わっていて、面倒な話になっていると彼も思っているらしい。
心が壊れているであろうフィリーネ少将が自死を選ぶ可能性もあるという推測は、協商連合の国益を大きく損なうだけでなく、人類諸国全体の損失になる。
そう遠くないうちにフィリーネ少将が最悪の選択をした場合、単純に戦力の喪失となるだけでなくせっかくの休戦条約の空気に水を差しかねないからだ。協商連合国内の新たな火種になってしまうかもしれないし、協商連合と同盟関係を結ぶ連合王国にも何らかの形で影響が及ぶだろう。次に備えなければならない中での英雄の自死で政治が乱れるのは誰も望まない展開だ。
だからこそ、彼女の動向には注視しないといけない。
「あの軍人についてはオレも時間を見つけて集められた資料に目を通してみた。あくまで一個人的な感想だが、気の毒としか言いようがない」
「彼女の人生は華々しい功績の影に隠れているからこそ見えにくいのですが、辛いものがいくつも見受けられました。親類の死なんて、まさに」
「幼いうちに両親を喪うのは、心に暗い影を落とす。だからこそ、人格が曲がってしまったのかもしれない」
「だとしても少々過激な気もしますが……」
どうにもフィリーネ少将のあの性格は元来のものだけとは思えないんだ。
確かに両親の死は人を歪ませるに十分な要素であるし、そこへ遺産争いという大人の醜い世界を目の当たりにしたのならば尚更だ。
でも、果たしてそれだけであんなにもなるものなんだろうか。
疑心暗鬼になって誰も信じないならともかく、部下を守る為に力を欲するという姿勢は一体どこから生まれてくるのだろうか。
協商連合はそれを愛国心と考えているようだけど、僕にはそれだけじゃないと感じた。
脳裏によぎるのはやはりあの人。前世の上官。ここは転生先の世界のはずなのに、やっぱりフィリーネ少将にあの人を感じる点がいくつもあった。
「人の性格というものはどうなるか分からん。それに、オレらが知らない事情があったのかもしれん」
「そうですね……。失礼しました」
とはいえ、転生絡みの話は出来ない。悪いことをしているわけじゃないけれど、誰にも明かしていない秘密であって、自分の墓穴も掘りかねないからだ。
だから別方面から彼女を探るほか無い。そして探るのと並行して、万が一が無いように彼女の動向を逐一分かるようにしておく。
解決策を見い出せない中で唯一思いついたのが、この点だった。
「どちらにせよ、かの女性軍人には連合王国も事態を注視しなけらばならない。で、だ。アカツキ。お前はどうするつもりでいるんだ?」
「軍情報機関と外務省。双方が協力して彼女の情報を収集。現況がどうなっているのか詳細まで把握します。そして、内政干渉にならない程度でこれ以上彼女にとって自死を決断させるような事態を回避させます」
「かなり難しい案件になりそうだな……。何せ、お前であっても解決法が見えていないのだろう?」
「遺憾ながら、その通りです義父上。結局は協商連合頼りになりますから。僕が連合王国の人間である以上は限界がありますし、休戦の後。次の再戦に備えるという本務があります。ありのままを言うのならば、本件に際しては我々は傍観者であり、やれるのはせいぜい諌める程度であると言えましょう」
「……了解した。その為に必要なのはなんだ?」
「軍情報機関内にフィリーネ少将の情報収集室、ここではF調査室とします。これを設置し、外務省にも協商連合に精通した人物を手配してもらう予定でいます」
「相分かった。年明けの中旬には調査室が動けるようにしておこう。人選はお前に任せる」
「ありがとうございます。僕の方でも明日はほとんど動けませんが明後日から行動を開始します」
「何かと手を煩わせてすまんな、アカツキ」
「いえ、休戦関連の殆どが外務省管轄となった今手は空くようになりましたし、取材もいずれ数は減りますから」
「助かる。可能な範囲で構わない。外からだけでも良いからフィリーネ少将が悪手を選ばないよう取り計らってくれ」
「はい、義父上」
これでマーチス侯爵の認可は取り付けたから、あとは方策を考えるだけだ。
僕だけでは出来ない事ばかり。でも、多くの知恵を集めればなんとかなるかもしれない。
何としてでも、フィリーネ少将が悲惨な結末を迎えないように手を尽くさないとね……。
12の月21の日
午後1時40分
アルネシア連合王国首都・アルネセイラ
連合王国軍統合本部・本部棟
今年も残すところあと十日になった十二の月下旬。貴族界隈では停戦記念も兼ねている年越しのパーティに向けた準備が進む中、僕達軍人貴族は戦後処理を含めた仕事に追われていた。とはいえ、戦争に区切りが付いたことからこれまでピリピリしていた連合王国軍統合本部もかなりリラックスした雰囲気になっていて、そこかしこから年末年始はどうするかという話題が聞こえてきていた。
だけど、僕はその中での例外であるんだよね……。
それはとある場所に向かうまで付き従ってくれている部下達との会話でも現れていた。
「アカツキ中将閣下。午前のアルネシア新聞の取材、お疲れ様でした。翌日には協商連合のロンドリウム新聞の取材があります。また、同日午後にはノイシュランデ新聞からも取材がありますので、よろしくお願いします」
「了解。明日は一日取材漬けかあ……」
「……大変申し上げにくいのですが、軍広報の取材は明後日にございます」
「ひえ……。リイナが上手いことスケジュール調整してくれなかったらもっと大変だったろうね……」
隣を歩く少佐は申し訳なさそうに言う。
彼等は僕が今の立場になってから新たに加えられた部下達で、平時の軍統合本部の軍務において様々な仕事をしたり中継役になってくれる者達だ。今日の取材についても、リイナがいないのもあって彼等が同行してくれていた。
リイナはというと、副官として僕のスケジュール調整を行ってくれていた。彼女自身にも取材は来ているし仕事はいくらでもあるんだけれど、僕のスケジュールが既に来月下旬までいることから分かる通り、かなりの折衝をリイナはしてくれている。今日いないのもそれが理由だ。
彼女が各方面へ調整を働きかけてくれているお陰で一日の詰まった予定の中に多少落ち着ける余裕がある。本当に頭が上がらないよね。
さて、軍本部の大廊下を歩いて奥の方まで進み、一階から三階まで上がると今から向かう目的地へと着く。
扉の横には、『連合王国軍統合本部統合総司令官室』と書かれている壁に付けられた大きく程よく装飾が施されている木札があった。
「同行ご苦労様。各自、軍務に戻っていいよ」
『はっ。失礼致します』
「うん、ちょっとゆっくりしてってね」
僕はそう言って部下達と別れると、ドアをノックする。
「アカツキ・ノースロードです」
「アカツキ中将か。入れ」
「はっ。失礼します」
ガチャ、と扉が開くとようやく引越し作業が終わって片付けがなされ、しっかりと体裁の整った部屋になっていた。部屋の奥には派手すぎず質素過ぎずの執務机と椅子があり、そこにはマーチス侯爵が座っていた。軍服は軍の最高階級たる元帥に相応しい豪奢さで、肩の階級章は金星が四つになっていた。隣には元からの副官、ブリック中将――彼も先日昇進した――がいた。
「ここ数日の取材、ご苦労だったなアカツキ中将」
「ありがとうございますマーチス元帥閣下。帰還早々にあちこちから取材で、申し訳ないのですがあまり仕事は捗りませんでした」
「ははっ、そうだろうなあ。お前がまたあちこちから取材を受けることになっているのはオレも耳にしている。まあ有名人はそんなものさ。かくいうオレも似たようなものだしな。なあ、ブリック中将?」
「ええ。遠征組は大小あれど皆忙しいようですから。――アカツキ中将、改めてだが昇進おめでとう。あれだけの活躍をしたんだから、当然だと思っていたよ」
「ありがとうございます。ブリック中将も、昇進おめでとうございます」
「ふ、自分はお零れみたいなもんだけどな。だが、これまでの行いが認められるのは嬉しいよ」
「ブリック中将はマーチス元帥閣下をお支えになっておりましたし、今の形になる前の任務でも多くの情報を集められておりましたから」
「英雄閣下からそう評価してもらえるのは名誉なことだ。これからもよろしく頼むよ?」
「こちらこそ」
「二人が昇進となった事には、誇らしく思うぞ。だが、せっかく話している所申し訳ないが、ブリック中将。頼んである仕事に向かってくれるか?」
「おっと、もうこんな時間でしたか。了解しました。情報部に出向いてきます」
「うむ。じゃあまたな、アカツキ中将。時間が空いたら貴官の通う洋菓子店に連れていってくれ。子供にアカツキ中将お墨付きのクッキーをくれとせがまれていてな」
「あはは、そんな事があったんですね。分かりました。明明後日でしたら夕方が空いています。それでよろしければ」
「分かった。明明後日の夕方だな。空けておこう」
「よろしくお願いします」
ブリック中将と約束を交わすと、彼はマーチス侯爵に敬礼して退室した。
部屋にはマーチス侯爵と自分だけ。するとマーチス侯爵はいくらか肩の力を抜いてリラックスした雰囲気になり、僕に微笑みかけると。
「アカツキ、立ったままだと疲れるだろう。そこに座れ」
「はい、ありがとうございます義父上」
「コーヒーはどうだ?」
「僕がいれますよ?」
「オレが飲みたいからいれるだけだ。
「でしたらお言葉に甘えていただきます」
「おう。砂糖は二つか? 一つか?」
「今日は一つで」
「分かった」
マーチス侯爵は保温しておいたコーヒーを、カップに注いでいく。ああは言うけれど、どうやらさっき準備してくれていたらしい。
「以前お前が気に入ったディモーブもあるぞ。食べなさい」
「わぁ! ありがとうございます!」
「ははっ、お前が喜ぶ顔いつ見てもオレも嬉しくなるぞ」
マーチス侯爵はコーヒーカップとソーサーを置くと、応接用にあるソファに座って脚を組んでゆったりとした姿勢になる。
「ここもようやく移転作業が終わって片付いたが、自宅ほどではないが外の喧騒がない分落ち着くものだな」
「ええ。帰還してからというものの、歩けば握手攻勢場合によってはサイン。たまに黄色い声まで飛んできますからね」
「黄色い声のほとんどはお前とリイナと思うんだがなあ……。しかし、停戦と勝利をもたらした我々は時の人だ。仕方あるまい。が、疲れるよな」
「正直疲れますね」
僕とマーチス侯爵は二人して愚痴りながら笑い合う。
大々的に遠征組の活躍が報じられている今、民衆の間では当然のこと軍の中でもちょっと歩けばまるで前世の芸能人が現れたかのような様子になる。それだけじゃない。僕がそうであるように、通常の軍務に加えての広報活動や取材は大量にあって、いくら戦場慣れして体力のある僕達でも精神的な疲労はあるんだよね。
少しの間、そういった類の愚痴を話していたけれど、今は軍務中の時間。
互いにコーヒーを飲み、ディモーブを口に運んでからマーチス侯爵は本題を切り出してきた。
「休戦会談へ向けた動きだが、比較的順調に進んでいると外務省から連絡があった。協商連合や法国との共同管理都市が決定されたブカレシタで会談への交渉が行われると決まったようだぞ。既に各国外務省はひとまず次官級で進め、準備に追われているらしい」
「朗報ですね。今までマトモな話し合いなど行われたこともない妖魔帝国軍と穏やかに言葉同士で話せるのならば、良きことです」
「本当にな。これまで散々に罵っておきながら、停戦になってからというものの連中は同じ邦かと思えるくらいに態度が変わった。こちらが受け入れる側だからと対等どころか我々を持ち上げるかのごとくだ。ますます皇帝の評価を修正せざるを得なくなる」
「まるであの、いや、それ以上か……」
「何か言ったか?」
「いえ、独り言です。それで、外務省の見立てではどれくらいに休戦会談を開く予定なのですか?」
「雪解けの春くらいにだそうだ。停戦の地となったブカレシタを、休戦の象徴の地にしたいらしい。年数はともかく、約束をまた破るなと暗に釘をさしたいのだろう。単純に春の方が見栄えも良くなるし、あそこなら法国も行きやすい。連合王国にせよ、これから駐留することになるであろう協商連合にとっても悪くない場所だ」
「なるほど。外面と内面の両方を整えられる外務省らしい判断です。問題は、休戦するにあたっての条件ですかね」
「ああ。ここが一番の問題となる。奴らは領地を差し出したが、あれは元々人類諸国の地。となると、賠償金が絡んでくる。それだけではない。捕虜交換の問題もあるし、何より年数だ」
「計画に変更が出かねませんが、捕虜交換についての策は参謀本部が既に動き始めています。僕も当然関わっていますが、まだ動き始めてばかり故に大まかな形すら出来上がっていません」
「そこについてはお前に一任する。粛清された妖魔帝国軍人に対する同情論はようやく国民の間でも浸透してきた。過激な主戦論者には少し頭を悩まされるが、お前を崇拝するかの如くの連中でもある。利用してやれ」
「あの手の者達はある意味では厄介ですが、使いようによっては良いカードになります。情報操作は引き続き情報機関にお任せする予定です」
「了解した。覚えておこう。休戦会談についは外務省の仕事だが、随時最新の情報はお前に届くようにしておこう」
「ご配慮痛み入ります、元帥閣下」
「気にするな。エディンの奴は外務省の仕事故に軍人のお前は舞台に立てないが、助力は欲しいらしいのでな」
「分かりました。こちらも貸しを作っておきたいので、承ります」
「ほう、貸しか。何かまた新しい考えでもあるのか?」
マーチス侯爵は僕の言葉に反応し、にやりと笑う。
ただ、その期待には申し訳ないけれど応えられない。何せ未だに解決策の見いだせない話だからだ。
「半分は当たりで半分は違います。如何せん、僕の力だけでは到底足りない専門外の分野にもなりますので。外務省の協力が必要になります」
「ほう? で、どんな内容だ?」
「協商連合の件です。先日国王陛下と茶会で話した事柄になりまして、恐らく義父上もご存知かと」
「ああ、戦乙女の事か」
「はい。協商連合の英雄、いえ今はかつての、が付きますが彼女の事です」
マーチス侯爵はコーヒーを一口飲むと、味覚とは別の意味で険しく、苦い顔をする。
フィリーネ少将の件についてはあの翌日にはマーチス侯爵にも伝わっていて、面倒な話になっていると彼も思っているらしい。
心が壊れているであろうフィリーネ少将が自死を選ぶ可能性もあるという推測は、協商連合の国益を大きく損なうだけでなく、人類諸国全体の損失になる。
そう遠くないうちにフィリーネ少将が最悪の選択をした場合、単純に戦力の喪失となるだけでなくせっかくの休戦条約の空気に水を差しかねないからだ。協商連合国内の新たな火種になってしまうかもしれないし、協商連合と同盟関係を結ぶ連合王国にも何らかの形で影響が及ぶだろう。次に備えなければならない中での英雄の自死で政治が乱れるのは誰も望まない展開だ。
だからこそ、彼女の動向には注視しないといけない。
「あの軍人についてはオレも時間を見つけて集められた資料に目を通してみた。あくまで一個人的な感想だが、気の毒としか言いようがない」
「彼女の人生は華々しい功績の影に隠れているからこそ見えにくいのですが、辛いものがいくつも見受けられました。親類の死なんて、まさに」
「幼いうちに両親を喪うのは、心に暗い影を落とす。だからこそ、人格が曲がってしまったのかもしれない」
「だとしても少々過激な気もしますが……」
どうにもフィリーネ少将のあの性格は元来のものだけとは思えないんだ。
確かに両親の死は人を歪ませるに十分な要素であるし、そこへ遺産争いという大人の醜い世界を目の当たりにしたのならば尚更だ。
でも、果たしてそれだけであんなにもなるものなんだろうか。
疑心暗鬼になって誰も信じないならともかく、部下を守る為に力を欲するという姿勢は一体どこから生まれてくるのだろうか。
協商連合はそれを愛国心と考えているようだけど、僕にはそれだけじゃないと感じた。
脳裏によぎるのはやはりあの人。前世の上官。ここは転生先の世界のはずなのに、やっぱりフィリーネ少将にあの人を感じる点がいくつもあった。
「人の性格というものはどうなるか分からん。それに、オレらが知らない事情があったのかもしれん」
「そうですね……。失礼しました」
とはいえ、転生絡みの話は出来ない。悪いことをしているわけじゃないけれど、誰にも明かしていない秘密であって、自分の墓穴も掘りかねないからだ。
だから別方面から彼女を探るほか無い。そして探るのと並行して、万が一が無いように彼女の動向を逐一分かるようにしておく。
解決策を見い出せない中で唯一思いついたのが、この点だった。
「どちらにせよ、かの女性軍人には連合王国も事態を注視しなけらばならない。で、だ。アカツキ。お前はどうするつもりでいるんだ?」
「軍情報機関と外務省。双方が協力して彼女の情報を収集。現況がどうなっているのか詳細まで把握します。そして、内政干渉にならない程度でこれ以上彼女にとって自死を決断させるような事態を回避させます」
「かなり難しい案件になりそうだな……。何せ、お前であっても解決法が見えていないのだろう?」
「遺憾ながら、その通りです義父上。結局は協商連合頼りになりますから。僕が連合王国の人間である以上は限界がありますし、休戦の後。次の再戦に備えるという本務があります。ありのままを言うのならば、本件に際しては我々は傍観者であり、やれるのはせいぜい諌める程度であると言えましょう」
「……了解した。その為に必要なのはなんだ?」
「軍情報機関内にフィリーネ少将の情報収集室、ここではF調査室とします。これを設置し、外務省にも協商連合に精通した人物を手配してもらう予定でいます」
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「何かと手を煩わせてすまんな、アカツキ」
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「助かる。可能な範囲で構わない。外からだけでも良いからフィリーネ少将が悪手を選ばないよう取り計らってくれ」
「はい、義父上」
これでマーチス侯爵の認可は取り付けたから、あとは方策を考えるだけだ。
僕だけでは出来ない事ばかり。でも、多くの知恵を集めればなんとかなるかもしれない。
何としてでも、フィリーネ少将が悲惨な結末を迎えないように手を尽くさないとね……。
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どんなスキルかというと…?
本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。
パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。
だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。
テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。
勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。
そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。
ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。
テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を…
8月5日0:30…
HOTランキング3位に浮上しました。
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皆様の応援のおかげです(つД`)ノ
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
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小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
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どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
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月が導く異世界道中extra
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勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
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無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
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※本作の書籍化が決定いたしました!
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「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
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