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第13章 休戦会談と蠢く策謀編
第3話 琥珀宮国王書斎の茶会で語られるは、もう一つの最悪の可能性
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・・3・・
午後8時50分
アルネセイラ王城内・琥珀宮
「謁見の間ではああは言ったけれど、まさか王宮内の、それも普通なら伯爵位や侯爵位の人ですらおいそれと入れない琥珀宮にいるなんてね……」
「お気持ちお察しします。しかし、陛下が書斎に招かれるは重臣のみ。それだけアカツキ中将閣下をご信頼されているということです」
「確定事項。国王陛下のマスターに対する心象は王の腕として、絶大な信頼を寄せているかと」
「エイジス特務官の仰る通りです」
「たははっ……」
軍服姿の僕がやや緊張した面持ちで陛下の私室の一つである書斎へ続く大廊下を歩いていると、護衛として同行している近衛師団所属の国王専属護衛部隊『琥珀部隊』の隊長、ラカム大佐が柔らかい表情で言う。
琥珀部隊は中隊規模だけど、陛下の盾として特例で大佐が隊長になっていて、所属する全員が尉官以上。いずれもAランク以上の魔法能力者で全員が召喚武器持ち。ラカム大佐もA+ランク魔法能力者で、Aランク召喚武器所有者だ。
その彼も含めいつもより多くの隊員が夜の警護にいるらしく、つまり元からこの夜会を国王陛下は開くつもりでいたらしい。
ただラカム大佐は、
「アカツキ中将閣下がおられる限り、陛下の護衛は不要かもしれませんが念の為です。チャイカの前例もありますから」
と言っていた。
模範的な王宮の警護部隊隊長たる彼だけど、割と話しかけてくれる人だった。だから今もこうやって僕の発言に目くじらを立てるどころか、「陛下はいつも急に重臣を呼ばれますからね。お疲れ様です」と労ってくれている。
「あちらが陛下の書斎でございます。書斎とは言いますが図書室と言っても差し支えない規模でして、数千冊の貴重な蔵書が保管され、陛下のお計らいでたまに蔵書が王都の図書館へ公開されることもあります」
「僕も読んだことがあるよ。確か、文化的な書物だったかな。連合王国王宮の紅茶文化と新たな飲物たる珈琲文化~歴代国王の寛ぎの時に寄り添う嗜好品~、だったっけか」
「おお、あの書でしたら小官も読みました。二代前の国王陛下が纏められたものですね」
「そうそう。」
「珈琲や紅茶好きとしては、王家の方々が書かれた文化書物は興味があってね。意外と砕けた事が書かれていて、流石文化王だなと思ったよ」
「自分も同じ感想を抱きました。アカツキ中将閣下とは、時間の空いた時に談義したいものです」
「そうだね、互いの時間が作れた時にでも」
「はい。さ、到着です。――陛下、アカツキ中将閣下をお連れ致しました」
「うむ、ご苦労だったラカム。アカツキよ、入れ」
「はっ。アカツキ・ノースロード、入ります」
「エイジス、入室致します」
ラカム大佐がドアを開けると、ラカム大佐の言う通り書斎というより図書室の広さほどある部屋の真ん中に国王陛下はおられた。メガネをかけ、椅子に楽に腰掛けていた。格好はいつものような厳かな王としての衣ではなく、カッターシャツの上にカーディガンを羽織りスラックスを着た、人の良いおじいさんのような人だった。
「それでは小官はこれにて失礼致します」
「ありがとう、ラカム大佐」
扉が閉まる――同時に防音魔法も施される――と陛下は手でこちらに来るよう合図をし、僕とエイジスは敬礼して近付く。
「アカツキよ、ここは儂以外誰もおらん。もっと楽にしてよい」
「はっ。しかし」
「王命じゃよ?」
「かしこまりました」
陛下を前にするとなると、普段通りとはいかないからいつものように振る舞うけれど、王命と言われれば従うしかない。僕は肩の力を少し抜いて、案内された陛下の正面の椅子に座った。
目の前には直前に用意されたのだろうか、熱々の紅茶が入ったティーカップが用意され、小皿にはクッキーもあった。
「もっと楽にせい。軍服のボタンを一つ外してもよい」
「流石にそれはご勘弁を……」
「むう。マーチスにしてもそうだが、軍人とやらはお固すぎるの。まあ良い、無理強いはしとうないからの。代わりに紅茶と洋菓子は遠慮なく口にするが良い」
「はっ。では、いただきます」
「うむ」
紅茶を口に付けると、芳しい匂いとフルーティーさを感じる味が広がる。王室御用達の茶葉だけあって、最高級のものだ。
クッキーを口に運ぶと、覚えのあるものだった。
「これは、王都旧市街地区画の『カルニア』のクッキーですね。陛下も召し上がられていたのですか」
「ほっほっほっ。洋菓子好きのそちならやはり分かったか。そちのお気に入りの店だと耳にしてな、手配してみたのじゃよ。それで食べてみたら余も気に入ってな」
「『カルニア』の洋菓子はどれも絶品でございますから。陛下のお気に召していたのであれば何よりです」
「今ではすっかり虜じゃよ。もし良ければ、時間が空いておればそちの通う店も教えてくれ」
「はい。ぜひ」
「うむ。して、アカツキよ。分かってはいると思うが、茶会に誘うたのは雑談をする為ではない。停戦以来、そちが心に引っかかっておろう件も含めて話をしようと思うてな」
陛下は顎鬚に触れながら、これまでのやや緩めていた表情を引き締めて言う。ただ、公に見せるような威厳に満ちたもの程厳しいものではなかった。
「…………と、言いますと」
とはいえ、陛下の意志とは反する論を持っている僕はいきなりの言及は避けた。
「そちは、この大戦において戦争推進派の最先鋒であろう。理由は知っておるから語らぬが停戦はともかく休戦には反対せぬのか?」
「私は戦争狂ではありません。いかに自身の権力が増したとはいえ、あくまで軍人。陛下の手となり脚となり戦う身分です。陛下のご意志に背くつもりはございません」
「その忠誠は見事じゃ。嬉しく思う。しかし、余はそちを傀儡として扱うつもりなぞない。――ならばこう言おう。王命じゃ。正直に停戦及び休戦への交渉をどう思うか」
陛下は方向性を変えて質問をしてきた。僕が王命と言われれば答えるのを知っていてだ。
「停戦及び休戦に対して、私は表立って反対は致しません。というのも、あくまで新戦争計画は皇帝レオニードがどちらかが絶滅するまで継戦するのを想定して組み立てられているからです」
「ほう。表立って反対はせぬと。何故じゃ?」
「これは私の落ち度でありますがブカレシタ星型要塞攻略戦はあのまま続けば、エイジスの予測によると三カ国軍全体で最悪五万の死傷者が発生した戦いでした。少々、妖魔帝国軍に対する見積もりが甘かったと痛感しております。もし今後もこのような戦いが続いた場合、山脈を越えて戦争を続けたとしてよしんば来年再来年はよしとしても、三年後が怪しくなります。ではその三年後までに敵の首都を落とせるかどうかと言われると、厳しいでしょう」
「じゃから、反対はせんわけじゃな。そちにしては随分と珍しい正攻法ではないか」
「策略の類はあくまで後々には戦略規模にも影響しますが、基本的にはその戦場における戦術規模を覆すだけです。私は戦略面においては、火力で押し切る王道を取っているのを陛下もご存知かと思いますが」
「そうであったの。そちは時に大胆な戦法を取ることが目立つが、基本的には軸となる戦略に忠実であるからの」
「はい。私のような者が言うのもおこがましいかもしれませんが、そもそも、用意していたもの以外の奇策を用いる時点で作戦は破綻していることになります。あれらはあくまで方向修正し元の作戦に戻す為のもの。よく策で乗り切ったと評価されますが、ああいった苦労は避けたいのが個人的心情です。何せ、一つ一つが歯車のように噛み合ってこそ機能する緻密となった近代化軍にとって不測の事態はいらぬ負担をかけますから」
僕は長く話したので、言い終えると喉を潤すために紅茶を一口飲む。
陛下は僕の発言を聞いて、ほう。と、感心した様子でいると、そのまま言葉を続ける。
「そちと話すと、この齢になっても学になるの。息子や孫達に将来の為に聞かせてやりたくなる。じゃが、そちの言う点は最もじゃ。――話を戻すとするかの。となるとじゃ。今のそちの話を踏まえると、余だけではなく諸国の判断は緻密な歯車が狂うことにはなるまいか? 例えば、余がお主ならこう考える。新戦争計画に則って進行していた最重要機密の計画はどうなるのか、と」
「捕虜を用いて反皇帝国家の樹立。でありますね」
「そうじゃ。お主肝煎りのあの計画じゃよ。しかし休戦交渉が行われるとなれば、必ずあちらは触れてくるはずであろ? 幸いにして我々側の兵が少数にせよ捕虜となっても後々に勝利したから救出はされ問題にはなっておらん。しかし、行方不明者数は上がっておるからあちらに捕えられておる可能性もある。特に、リチリアなどその可能性が高いじゃろう」
「ええ。大陸側の戦いでは捕虜が強制的に連行される事態にはなっていません。基本的に我々は有利で進んでいる上に、大勢の捕虜を連れ出せる余裕を妖魔帝国側に与えていないからです。空はこちらの独壇場でいつでも追えておりましたから。残念ながら、殺された者はいましたが……。しかし、リチリアは分かりませんね。どさくさに紛れて連れ去られているかもしれません。後に死体として見つかった者を除き、行方不明者は約一五〇〇名だったはずです」
「うむ。であるのならば、もし行方不明者が捕虜となっていた場合それを引き換えに返還を迫ってくるかもしれぬ。いなかったとしても、金品や資源を交換材料として持ちかけてくるかもしれぬの」
「…………畏れながら、陛下。そこまで存じておきながら何故停戦の提案に了承されたのですか?」
これまでは陛下の真意が分からなかったから口に出してこなかったけれど、やはり陛下は聡明なお方だ。だからこそ言いたかった。どうして停戦に休戦交渉を命じられたのかと。
これだけはどうしても聞いておきたかった。少なくとも僕が納得出来る材料が欲しかった。そうじゃないと、表立って反対をせざるを得なくなるからだ。
「ようやく本音を言うてくれたの、アカツキ。理由は四つある」
「よろしければ、一つずつお聞かせください」
「良かろう。一つ、余の心情として捕虜の相互交換となれば人類諸国の兵達は元の地に戻るべきであるから。ならば敵国兵くらいくれてやる。二つ、これは国内の問題じゃが旧東方領の全域奪還時点で国防の観点からひとまずは必要な領土を得られたから。三つ、想定以上の出費と犠牲は連合王国だけではない。特に法国は限界に近かろう。協商連合も損得勘定の面でこの辺りが妥協点と考えるであろうから、現時点での山脈越えを果たして望むかどうか確証を得られぬから。四つ、となると連合王国独力でやることになりかねぬ。連合王国にはそれだけの力はあるが、妖魔帝国を相手にするには厳しい。やはり諸国連合で組み戦うのが一番である。この四つであるな」
「陛下の理由、何れも非常に理知的であると思います」
陛下が語られた理由は合理的かつ説得力のあるものだった。
一つ目は真実が分からないと判断出来ないからともかくとして、二つ目からは僕も同様の考えは抱いている。
生きていた時代は総力戦はなかなかに起きない――起きたら世界が滅びかねない兵器を保有しているからだ――から、歴史としてしか知らない。だけど、実際に体感してみてやはり総力戦を経験したこともない――広義的には先の大戦も総力戦に近しい争いかもしれないけれど、一会戦における死傷者数の桁が違う――この世界にとって総力戦とは未知数であって、予測がつかないこと。
その結果が今だ。現状は限定的な戦争で、本国国民にまで大きな影響は広がっていない。しかし、まだ理性的ではある人類諸国の中でも賢い人達はこの先に待つのが何かを悟った。
それらの人々はこう思った。戦争を継続するにしても、一度区切っておかないと際限のない泥沼にこのままハマり、取り返しのつかないことになるのじゃないかと。同じ戦争を続けるのなら、一度備えておいた方が得策なんじゃないかと。
これについて、僕は首を縦にも横にも頷けなかった。
妖魔帝国が消耗しており備える暇を与えない今の内に、人類諸国側の被害が少ない内に攻め込んでいけばさらなる勝利を得られるかもしれない。そうすれば妖魔帝国を瓦解させられるかもしれない。
けれど、人類諸国は旧東方領という広大な領土を奪還した上に勝利を重ねすぎたからこそ慎重になっているんだ。これは各国首脳が非常に理性的であるからこそだろう。得している内に一度止めておき、もしまた戦争することになっても準備期間として使えるからと。
どっちも道理である。個人的には前者であるけれど、諸国は陛下を含めて後者。自分が国王の立場ならまだやりようはあるけれど、残念ながら僕は中将になったとはいえ誰かに従う立場の軍人だ。出過ぎた真似は出来ない。
してしまったら、違う経路を経てフィリーネ少将のような結末を迎えかねないから。
だから僕はああいう風にしか言えなかった。
「そちがひとまずは納得してくれたようで良かった。余は、そちに身を乗り出して反対されると思うておったからの。だが、余はお主に過分な配慮はするつもりない。何故ならば、余は王であるからだ。そちと国民や国家、天秤にかけるまでもないのは賢明なそちなら理解しておるじゃろう」
「陛下のお気を煩わせてしまい、申し訳ございません」
「良いのじゃよ、アカツキ。一度そちの計画に了承しておいて、忠臣を裏切りかねない決断をしたとは頭の隅から離れておらなんだからな」
ああ、このお方はなんて心優しいひとなのだろう。王という立場にあって、僕の存在、一個人を気にしていたなんて。本来ならばそれは王として愚であるとも自覚しておられて。けれども、王としての責務は果たされている。
こんな風に言われたら、もう持論なんて突き通せないじゃないか。
「陛下の御心、確かに受け取りました。より陛下に忠誠を尽くしていきたいと、確信致しました」
「すまぬの、アカツキ。じゃが、そちの計画を忘れるつもりはない。数万の妖魔帝国捕虜までは保証出来ぬが、そちが選ぶ幾分かの人選に関しては余も出来うる限り要望に応えよう」
「ありがとうございます。それだけご配慮頂ければ十分にございます。ここから先を考えるは我々軍人の務めですから」
「例の件はいつでも話をしてくれ。余もそちの力になろう」
「はっ。私もこれまでと変わらず、陛下のお力になると約束致します」
僕はまっすぐに陛下を見つめると、陛下は安心したように微笑みながら頷いた。
けれど、陛下は次にこう言った。それは王としてではなく、まるで自身の孫を心配するかのような瞳でだ。
「故に、約束してくれまいか」
「なんなりと」
「協商連合の戦乙女のようには、なるな。なってくれないでくれ。いつ何時、そちの大切な者が死んでしまうか分からぬ戦場に放り込んでおきながら身勝手な事を言うておるのは自覚しておる。それでも、あのようには、なるな」
「……何故、協商連合のフィリーネ少将の名前を出されたのですか」
陛下が僕を心配なさるお気持ちはとても伝わった。けれども、どうして彼女を引き出しにしてきたのかまでは分からなくて、僕は聞く。
すると、陛下はこう仰られた。
「余は思う。あの者は恐らく二度と立ち直れぬ。どうしても戦乙女が心のどこかで気になっておっての。軍部大臣を通じて情報機関に調べさせたのじゃ」
「どのような情報が得られたのですか……?」
「これは軍部大臣と余、限られた者しか知らぬ。マーチスもすぐに知ることとなる。――戦乙女はの、もう堕ちた。かの者の人生は悲惨にすぎる。親を喪い、孤独にあった。故にフィリーネという人物にとって軍が、部下が心の拠り所であった。しかし、軍は、政府は彼女を裏切った。正面をきって、あの者を庇う者はおらなんだ。どうやら世界は、余程戦乙女に厳しいようじゃよ。そちの忠告が無ければ、軍籍すら剥奪されなかった。いや……」
「…………陛下は何を、掴まれたのですか」
「まだ噂の段階じゃ。戯れ言として聞いて構わぬ。先週、協商連合大使館の特命全権大使とエディンが会談をした。その時、戦乙女の話になったらしく大使はこう言うたらしい。『フィリーネ少将は、もう二度とこれまでの立ち位置には戻れない。軍籍剥奪は不可能にしても、僻地に飛ばして閑職へと飛ばすことになるだろう。いかに強力な戦力になりうる者でも、味方の脅威になると根付いてしまった者は、戦場には立てない。貴国の英雄が羨ましい限りだ』とな」
「つまり、フィリーネ少将の失脚は日の目を見るより明らかになったということですか」
僕がブカレシタにかかりっきりになっている間に、事態は悪い方向に進んでいたらしい。いや、僕が介入出来ない状況にあるからこそ、勢いのある今の内に反対派閥は先手を打ったのだろう。
自国の英雄に対してここまでやれるという事は、既に情報操作は行われている。僕が協商連合の情報を知らない間に、それだけの準備がなされていたというわけだ。
これは非常によろしくないことだろう。
「ああ、そうなるであろう。地位を奪われ、部下を奪われ、居場所も失う事となる」
「そんなのは、あんまりでは……。私の書簡は、無駄になりましたか……」
「いいや、無駄になっておらぬ。そちが止めなければ、軍籍剥奪が有り得た。一番起きてはならぬ事態は防げておる。じゃが、それだけじゃな」
「…………陛下。陛下は、彼女についてどうお考えですか。何が起こりうると、お思いですか」
「あくまで余の推測故、他言無用じゃ。恐らく……、残酷な結末が待っておるだろう」
「推論。フィリーネ少将は自殺を選ぶ可能性すらあり」
これまで沈黙を貫いてきたエイジスが述べたのは、考えうる限りで最悪の予測だった。
僕がリイナとエイジスにしか話していない懸念とは別の、もう一つの最悪の形だ。
「エイジスの言う通りである。絶望に染まった人は、選択をしかねないであろうな」
「英雄殺しの国家に、協商連合はなる、と……。それは協商連合だけではなく、人類諸国にとって大いなる損失です」
「うむ……。故にアカツキ、かの者の動向には注視せよ。国外の事態故に手出しは出来ぬが、それでも、じゃ」
「かしこまりました。貴重な情報を先んじてお話頂き、感謝致します」
「構わぬ。そちには重荷ばかり背負わせてしまうが、頼むぞ」
「はっ」
陛下との夜の茶会は約二時間程で終わった。
帰宅したのは日付が変わる前。
王都に帰還したとはいえ、どうやら多忙からは解放されないらしい。
妖魔帝国軍捕虜に関してはいくらでもやりようがあるし、参謀本部など軍の頭脳を集めればなんとかなるだろう。
でも、協商連合の問題に関しての解決策は、何一つ思い浮かばなかった。
午後8時50分
アルネセイラ王城内・琥珀宮
「謁見の間ではああは言ったけれど、まさか王宮内の、それも普通なら伯爵位や侯爵位の人ですらおいそれと入れない琥珀宮にいるなんてね……」
「お気持ちお察しします。しかし、陛下が書斎に招かれるは重臣のみ。それだけアカツキ中将閣下をご信頼されているということです」
「確定事項。国王陛下のマスターに対する心象は王の腕として、絶大な信頼を寄せているかと」
「エイジス特務官の仰る通りです」
「たははっ……」
軍服姿の僕がやや緊張した面持ちで陛下の私室の一つである書斎へ続く大廊下を歩いていると、護衛として同行している近衛師団所属の国王専属護衛部隊『琥珀部隊』の隊長、ラカム大佐が柔らかい表情で言う。
琥珀部隊は中隊規模だけど、陛下の盾として特例で大佐が隊長になっていて、所属する全員が尉官以上。いずれもAランク以上の魔法能力者で全員が召喚武器持ち。ラカム大佐もA+ランク魔法能力者で、Aランク召喚武器所有者だ。
その彼も含めいつもより多くの隊員が夜の警護にいるらしく、つまり元からこの夜会を国王陛下は開くつもりでいたらしい。
ただラカム大佐は、
「アカツキ中将閣下がおられる限り、陛下の護衛は不要かもしれませんが念の為です。チャイカの前例もありますから」
と言っていた。
模範的な王宮の警護部隊隊長たる彼だけど、割と話しかけてくれる人だった。だから今もこうやって僕の発言に目くじらを立てるどころか、「陛下はいつも急に重臣を呼ばれますからね。お疲れ様です」と労ってくれている。
「あちらが陛下の書斎でございます。書斎とは言いますが図書室と言っても差し支えない規模でして、数千冊の貴重な蔵書が保管され、陛下のお計らいでたまに蔵書が王都の図書館へ公開されることもあります」
「僕も読んだことがあるよ。確か、文化的な書物だったかな。連合王国王宮の紅茶文化と新たな飲物たる珈琲文化~歴代国王の寛ぎの時に寄り添う嗜好品~、だったっけか」
「おお、あの書でしたら小官も読みました。二代前の国王陛下が纏められたものですね」
「そうそう。」
「珈琲や紅茶好きとしては、王家の方々が書かれた文化書物は興味があってね。意外と砕けた事が書かれていて、流石文化王だなと思ったよ」
「自分も同じ感想を抱きました。アカツキ中将閣下とは、時間の空いた時に談義したいものです」
「そうだね、互いの時間が作れた時にでも」
「はい。さ、到着です。――陛下、アカツキ中将閣下をお連れ致しました」
「うむ、ご苦労だったラカム。アカツキよ、入れ」
「はっ。アカツキ・ノースロード、入ります」
「エイジス、入室致します」
ラカム大佐がドアを開けると、ラカム大佐の言う通り書斎というより図書室の広さほどある部屋の真ん中に国王陛下はおられた。メガネをかけ、椅子に楽に腰掛けていた。格好はいつものような厳かな王としての衣ではなく、カッターシャツの上にカーディガンを羽織りスラックスを着た、人の良いおじいさんのような人だった。
「それでは小官はこれにて失礼致します」
「ありがとう、ラカム大佐」
扉が閉まる――同時に防音魔法も施される――と陛下は手でこちらに来るよう合図をし、僕とエイジスは敬礼して近付く。
「アカツキよ、ここは儂以外誰もおらん。もっと楽にしてよい」
「はっ。しかし」
「王命じゃよ?」
「かしこまりました」
陛下を前にするとなると、普段通りとはいかないからいつものように振る舞うけれど、王命と言われれば従うしかない。僕は肩の力を少し抜いて、案内された陛下の正面の椅子に座った。
目の前には直前に用意されたのだろうか、熱々の紅茶が入ったティーカップが用意され、小皿にはクッキーもあった。
「もっと楽にせい。軍服のボタンを一つ外してもよい」
「流石にそれはご勘弁を……」
「むう。マーチスにしてもそうだが、軍人とやらはお固すぎるの。まあ良い、無理強いはしとうないからの。代わりに紅茶と洋菓子は遠慮なく口にするが良い」
「はっ。では、いただきます」
「うむ」
紅茶を口に付けると、芳しい匂いとフルーティーさを感じる味が広がる。王室御用達の茶葉だけあって、最高級のものだ。
クッキーを口に運ぶと、覚えのあるものだった。
「これは、王都旧市街地区画の『カルニア』のクッキーですね。陛下も召し上がられていたのですか」
「ほっほっほっ。洋菓子好きのそちならやはり分かったか。そちのお気に入りの店だと耳にしてな、手配してみたのじゃよ。それで食べてみたら余も気に入ってな」
「『カルニア』の洋菓子はどれも絶品でございますから。陛下のお気に召していたのであれば何よりです」
「今ではすっかり虜じゃよ。もし良ければ、時間が空いておればそちの通う店も教えてくれ」
「はい。ぜひ」
「うむ。して、アカツキよ。分かってはいると思うが、茶会に誘うたのは雑談をする為ではない。停戦以来、そちが心に引っかかっておろう件も含めて話をしようと思うてな」
陛下は顎鬚に触れながら、これまでのやや緩めていた表情を引き締めて言う。ただ、公に見せるような威厳に満ちたもの程厳しいものではなかった。
「…………と、言いますと」
とはいえ、陛下の意志とは反する論を持っている僕はいきなりの言及は避けた。
「そちは、この大戦において戦争推進派の最先鋒であろう。理由は知っておるから語らぬが停戦はともかく休戦には反対せぬのか?」
「私は戦争狂ではありません。いかに自身の権力が増したとはいえ、あくまで軍人。陛下の手となり脚となり戦う身分です。陛下のご意志に背くつもりはございません」
「その忠誠は見事じゃ。嬉しく思う。しかし、余はそちを傀儡として扱うつもりなぞない。――ならばこう言おう。王命じゃ。正直に停戦及び休戦への交渉をどう思うか」
陛下は方向性を変えて質問をしてきた。僕が王命と言われれば答えるのを知っていてだ。
「停戦及び休戦に対して、私は表立って反対は致しません。というのも、あくまで新戦争計画は皇帝レオニードがどちらかが絶滅するまで継戦するのを想定して組み立てられているからです」
「ほう。表立って反対はせぬと。何故じゃ?」
「これは私の落ち度でありますがブカレシタ星型要塞攻略戦はあのまま続けば、エイジスの予測によると三カ国軍全体で最悪五万の死傷者が発生した戦いでした。少々、妖魔帝国軍に対する見積もりが甘かったと痛感しております。もし今後もこのような戦いが続いた場合、山脈を越えて戦争を続けたとしてよしんば来年再来年はよしとしても、三年後が怪しくなります。ではその三年後までに敵の首都を落とせるかどうかと言われると、厳しいでしょう」
「じゃから、反対はせんわけじゃな。そちにしては随分と珍しい正攻法ではないか」
「策略の類はあくまで後々には戦略規模にも影響しますが、基本的にはその戦場における戦術規模を覆すだけです。私は戦略面においては、火力で押し切る王道を取っているのを陛下もご存知かと思いますが」
「そうであったの。そちは時に大胆な戦法を取ることが目立つが、基本的には軸となる戦略に忠実であるからの」
「はい。私のような者が言うのもおこがましいかもしれませんが、そもそも、用意していたもの以外の奇策を用いる時点で作戦は破綻していることになります。あれらはあくまで方向修正し元の作戦に戻す為のもの。よく策で乗り切ったと評価されますが、ああいった苦労は避けたいのが個人的心情です。何せ、一つ一つが歯車のように噛み合ってこそ機能する緻密となった近代化軍にとって不測の事態はいらぬ負担をかけますから」
僕は長く話したので、言い終えると喉を潤すために紅茶を一口飲む。
陛下は僕の発言を聞いて、ほう。と、感心した様子でいると、そのまま言葉を続ける。
「そちと話すと、この齢になっても学になるの。息子や孫達に将来の為に聞かせてやりたくなる。じゃが、そちの言う点は最もじゃ。――話を戻すとするかの。となるとじゃ。今のそちの話を踏まえると、余だけではなく諸国の判断は緻密な歯車が狂うことにはなるまいか? 例えば、余がお主ならこう考える。新戦争計画に則って進行していた最重要機密の計画はどうなるのか、と」
「捕虜を用いて反皇帝国家の樹立。でありますね」
「そうじゃ。お主肝煎りのあの計画じゃよ。しかし休戦交渉が行われるとなれば、必ずあちらは触れてくるはずであろ? 幸いにして我々側の兵が少数にせよ捕虜となっても後々に勝利したから救出はされ問題にはなっておらん。しかし、行方不明者数は上がっておるからあちらに捕えられておる可能性もある。特に、リチリアなどその可能性が高いじゃろう」
「ええ。大陸側の戦いでは捕虜が強制的に連行される事態にはなっていません。基本的に我々は有利で進んでいる上に、大勢の捕虜を連れ出せる余裕を妖魔帝国側に与えていないからです。空はこちらの独壇場でいつでも追えておりましたから。残念ながら、殺された者はいましたが……。しかし、リチリアは分かりませんね。どさくさに紛れて連れ去られているかもしれません。後に死体として見つかった者を除き、行方不明者は約一五〇〇名だったはずです」
「うむ。であるのならば、もし行方不明者が捕虜となっていた場合それを引き換えに返還を迫ってくるかもしれぬ。いなかったとしても、金品や資源を交換材料として持ちかけてくるかもしれぬの」
「…………畏れながら、陛下。そこまで存じておきながら何故停戦の提案に了承されたのですか?」
これまでは陛下の真意が分からなかったから口に出してこなかったけれど、やはり陛下は聡明なお方だ。だからこそ言いたかった。どうして停戦に休戦交渉を命じられたのかと。
これだけはどうしても聞いておきたかった。少なくとも僕が納得出来る材料が欲しかった。そうじゃないと、表立って反対をせざるを得なくなるからだ。
「ようやく本音を言うてくれたの、アカツキ。理由は四つある」
「よろしければ、一つずつお聞かせください」
「良かろう。一つ、余の心情として捕虜の相互交換となれば人類諸国の兵達は元の地に戻るべきであるから。ならば敵国兵くらいくれてやる。二つ、これは国内の問題じゃが旧東方領の全域奪還時点で国防の観点からひとまずは必要な領土を得られたから。三つ、想定以上の出費と犠牲は連合王国だけではない。特に法国は限界に近かろう。協商連合も損得勘定の面でこの辺りが妥協点と考えるであろうから、現時点での山脈越えを果たして望むかどうか確証を得られぬから。四つ、となると連合王国独力でやることになりかねぬ。連合王国にはそれだけの力はあるが、妖魔帝国を相手にするには厳しい。やはり諸国連合で組み戦うのが一番である。この四つであるな」
「陛下の理由、何れも非常に理知的であると思います」
陛下が語られた理由は合理的かつ説得力のあるものだった。
一つ目は真実が分からないと判断出来ないからともかくとして、二つ目からは僕も同様の考えは抱いている。
生きていた時代は総力戦はなかなかに起きない――起きたら世界が滅びかねない兵器を保有しているからだ――から、歴史としてしか知らない。だけど、実際に体感してみてやはり総力戦を経験したこともない――広義的には先の大戦も総力戦に近しい争いかもしれないけれど、一会戦における死傷者数の桁が違う――この世界にとって総力戦とは未知数であって、予測がつかないこと。
その結果が今だ。現状は限定的な戦争で、本国国民にまで大きな影響は広がっていない。しかし、まだ理性的ではある人類諸国の中でも賢い人達はこの先に待つのが何かを悟った。
それらの人々はこう思った。戦争を継続するにしても、一度区切っておかないと際限のない泥沼にこのままハマり、取り返しのつかないことになるのじゃないかと。同じ戦争を続けるのなら、一度備えておいた方が得策なんじゃないかと。
これについて、僕は首を縦にも横にも頷けなかった。
妖魔帝国が消耗しており備える暇を与えない今の内に、人類諸国側の被害が少ない内に攻め込んでいけばさらなる勝利を得られるかもしれない。そうすれば妖魔帝国を瓦解させられるかもしれない。
けれど、人類諸国は旧東方領という広大な領土を奪還した上に勝利を重ねすぎたからこそ慎重になっているんだ。これは各国首脳が非常に理性的であるからこそだろう。得している内に一度止めておき、もしまた戦争することになっても準備期間として使えるからと。
どっちも道理である。個人的には前者であるけれど、諸国は陛下を含めて後者。自分が国王の立場ならまだやりようはあるけれど、残念ながら僕は中将になったとはいえ誰かに従う立場の軍人だ。出過ぎた真似は出来ない。
してしまったら、違う経路を経てフィリーネ少将のような結末を迎えかねないから。
だから僕はああいう風にしか言えなかった。
「そちがひとまずは納得してくれたようで良かった。余は、そちに身を乗り出して反対されると思うておったからの。だが、余はお主に過分な配慮はするつもりない。何故ならば、余は王であるからだ。そちと国民や国家、天秤にかけるまでもないのは賢明なそちなら理解しておるじゃろう」
「陛下のお気を煩わせてしまい、申し訳ございません」
「良いのじゃよ、アカツキ。一度そちの計画に了承しておいて、忠臣を裏切りかねない決断をしたとは頭の隅から離れておらなんだからな」
ああ、このお方はなんて心優しいひとなのだろう。王という立場にあって、僕の存在、一個人を気にしていたなんて。本来ならばそれは王として愚であるとも自覚しておられて。けれども、王としての責務は果たされている。
こんな風に言われたら、もう持論なんて突き通せないじゃないか。
「陛下の御心、確かに受け取りました。より陛下に忠誠を尽くしていきたいと、確信致しました」
「すまぬの、アカツキ。じゃが、そちの計画を忘れるつもりはない。数万の妖魔帝国捕虜までは保証出来ぬが、そちが選ぶ幾分かの人選に関しては余も出来うる限り要望に応えよう」
「ありがとうございます。それだけご配慮頂ければ十分にございます。ここから先を考えるは我々軍人の務めですから」
「例の件はいつでも話をしてくれ。余もそちの力になろう」
「はっ。私もこれまでと変わらず、陛下のお力になると約束致します」
僕はまっすぐに陛下を見つめると、陛下は安心したように微笑みながら頷いた。
けれど、陛下は次にこう言った。それは王としてではなく、まるで自身の孫を心配するかのような瞳でだ。
「故に、約束してくれまいか」
「なんなりと」
「協商連合の戦乙女のようには、なるな。なってくれないでくれ。いつ何時、そちの大切な者が死んでしまうか分からぬ戦場に放り込んでおきながら身勝手な事を言うておるのは自覚しておる。それでも、あのようには、なるな」
「……何故、協商連合のフィリーネ少将の名前を出されたのですか」
陛下が僕を心配なさるお気持ちはとても伝わった。けれども、どうして彼女を引き出しにしてきたのかまでは分からなくて、僕は聞く。
すると、陛下はこう仰られた。
「余は思う。あの者は恐らく二度と立ち直れぬ。どうしても戦乙女が心のどこかで気になっておっての。軍部大臣を通じて情報機関に調べさせたのじゃ」
「どのような情報が得られたのですか……?」
「これは軍部大臣と余、限られた者しか知らぬ。マーチスもすぐに知ることとなる。――戦乙女はの、もう堕ちた。かの者の人生は悲惨にすぎる。親を喪い、孤独にあった。故にフィリーネという人物にとって軍が、部下が心の拠り所であった。しかし、軍は、政府は彼女を裏切った。正面をきって、あの者を庇う者はおらなんだ。どうやら世界は、余程戦乙女に厳しいようじゃよ。そちの忠告が無ければ、軍籍すら剥奪されなかった。いや……」
「…………陛下は何を、掴まれたのですか」
「まだ噂の段階じゃ。戯れ言として聞いて構わぬ。先週、協商連合大使館の特命全権大使とエディンが会談をした。その時、戦乙女の話になったらしく大使はこう言うたらしい。『フィリーネ少将は、もう二度とこれまでの立ち位置には戻れない。軍籍剥奪は不可能にしても、僻地に飛ばして閑職へと飛ばすことになるだろう。いかに強力な戦力になりうる者でも、味方の脅威になると根付いてしまった者は、戦場には立てない。貴国の英雄が羨ましい限りだ』とな」
「つまり、フィリーネ少将の失脚は日の目を見るより明らかになったということですか」
僕がブカレシタにかかりっきりになっている間に、事態は悪い方向に進んでいたらしい。いや、僕が介入出来ない状況にあるからこそ、勢いのある今の内に反対派閥は先手を打ったのだろう。
自国の英雄に対してここまでやれるという事は、既に情報操作は行われている。僕が協商連合の情報を知らない間に、それだけの準備がなされていたというわけだ。
これは非常によろしくないことだろう。
「ああ、そうなるであろう。地位を奪われ、部下を奪われ、居場所も失う事となる」
「そんなのは、あんまりでは……。私の書簡は、無駄になりましたか……」
「いいや、無駄になっておらぬ。そちが止めなければ、軍籍剥奪が有り得た。一番起きてはならぬ事態は防げておる。じゃが、それだけじゃな」
「…………陛下。陛下は、彼女についてどうお考えですか。何が起こりうると、お思いですか」
「あくまで余の推測故、他言無用じゃ。恐らく……、残酷な結末が待っておるだろう」
「推論。フィリーネ少将は自殺を選ぶ可能性すらあり」
これまで沈黙を貫いてきたエイジスが述べたのは、考えうる限りで最悪の予測だった。
僕がリイナとエイジスにしか話していない懸念とは別の、もう一つの最悪の形だ。
「エイジスの言う通りである。絶望に染まった人は、選択をしかねないであろうな」
「英雄殺しの国家に、協商連合はなる、と……。それは協商連合だけではなく、人類諸国にとって大いなる損失です」
「うむ……。故にアカツキ、かの者の動向には注視せよ。国外の事態故に手出しは出来ぬが、それでも、じゃ」
「かしこまりました。貴重な情報を先んじてお話頂き、感謝致します」
「構わぬ。そちには重荷ばかり背負わせてしまうが、頼むぞ」
「はっ」
陛下との夜の茶会は約二時間程で終わった。
帰宅したのは日付が変わる前。
王都に帰還したとはいえ、どうやら多忙からは解放されないらしい。
妖魔帝国軍捕虜に関してはいくらでもやりようがあるし、参謀本部など軍の頭脳を集めればなんとかなるだろう。
でも、協商連合の問題に関しての解決策は、何一つ思い浮かばなかった。
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