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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編
第13話 蠢くは戦争狂皇帝の新たな野望。色魔は新たな任務を携え暗躍す。
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・・13・・
10の月27の日
午後10時過ぎ
妖魔帝国北西部
サンクティアぺティルブルク
アカツキ達三カ国軍がブカレシタ星型要塞を着実に攻略しつつあり要塞の四割強を制圧。しかし正規軍同士のぶつかり合いによる相応の犠牲者を出していた頃、妖魔帝国北西部の大都市、人口九十七万人のサンクティアぺティルブルクは間もなく冬を迎えようとしていた。
妖魔帝国北西部という土地柄、十の月も末ともなれば最高気温は十度を越えるくらいであり最低気温は氷点下に近付く。夜には街ゆく人々は厚着をして歩いていた。
サンクティアぺティルブルクの中心街から程近い場所には妖魔帝国軍第六軍集団本部がある。妖魔帝国北西部の安全保障と治安を司る中心的存在だけあって、建築群は瀟洒なものばかりであった。
その軍集団本部の本部棟にあるとある一室。そこには二人の男が椅子に座って妖魔帝国でよく嗜まれている紅茶を飲んでいた。
一人は皇帝レオニードの直轄諜報部隊の長たるブライフマン。
もう一人は軍人――立場上扱いは軍人である――らしからぬ雰囲気の若い男だった。赤色の派手なジャケットを羽織っており、男にしてはやや長い毛髪も燃え盛るような深紅。ただし瞳は澄んだ蒼色。彼のジャケットも軍服で、彼曰くこれはオーダーメイドであるらしい。
「連邦での諜報任務、お疲れ様でした。報告は受けていますが、ギリギリ振り切ったようですね」
「ったく、本当だぜ。連合王国の情報連中と来たら派手に動き回ってもねえのに嗅ぎつけてきがったからな。俺がしばらくいた連邦じゃなくて連合王国がやってくるだなんて、人間ってやつをつくづく見直したっての」
「連邦もアレはアレで悪くないのですが、連合王国は頭一つ抜けて優秀な国です。僅かな痕跡から辿りついたのでしょう」
「悪ぃな、ブライフマン。出来ればもう少しいたかったんだけどよ」
「構いません、ゾリャーギ。貴方でダメならば他に任せた所で下手をすれば捕まっていましたから」
ブライフマンは微笑んでゾリャーギに言う。軽い男のように見えるゾリャーギだが、諜報機関内では潜入任務に最も特化している人物である。人は見た目によらないというが、まさにその典型的人物であった。
それはブライフマンの問いに対する答えがよく示していた。
「ところでゾリャーギ。連邦での二年以上に及ぶ潜入調査の結果はどうでしたか? 報告は逐次受け取っていましたが、最終報告をお願いします」
「あいよ。俺が日々の餌かつ快楽の虜にしていた連邦の女性軍人からちょくちょく情報は引っ張り出していたが、連邦自体は来るべき我らが国土への侵攻作戦に備えて力を蓄えてるって所だな。詳細は皇帝陛下もご覧になる書類に纏めてあるぜ」
「なるほど。書類は目を通してありますので、私は貴方の口から聞きたい点がいくつかあります。このまま質問を続けても?」
「いいぜ。女軍人ときたらそこそこの立場で機密も持ってるのにペラペラと喋らせてやっ、いや、喋ってくれたからな」
「貴方の能力に抗える者などそうそういませんよ。では、一つ。正直な話、スカンディア連邦は大した脅威とは感じていません。無論慢心などしませんが、貴方の所感は?」
「連邦の情報管理体制は底に穴の空いた瓶みたいなもんだな。おざなりにも程がある。軍こそそれなりの戦力を整えているが、技術の進化におっついていない所がある。特に魔法無線装置については連合王国より格段に扱いが劣ると思ったぜ」
ゾリャーギの言う通り、同じ魔法無線装置を扱っていながらも連邦と連合王国や協商連合では格段の開きがあった。
連邦では魔法無線装置による機密通信こそ文字の並び替え等で暗号化しているものの、ゾリャーギが手玉に取っていたのはその情報部門において一定の地位にある女性士官。狙われたのは不運としか言いようがないが、これもまた諜報戦であるのだからゾリャーギの方が上手だったと評価出来るだろう。故に連邦の機密は筒抜けであった。
「ふむ、せっかくの魔法無線装置も暗号が解読しやすいと」
「あくまで連合王国や協商連合に比べりゃって話だ。俺らより少し劣る、だな」
「我々は技術面で遅れていますからね。魔法に頼りきりで魔法科学は残念ながらまだまだ発展途上です。なら本題に移りましょう。連邦から連合王国の情報は得ていると思いますが、貴方はあの国を改めてどう思いますか?」
「正直に言うぜ。もしあの国が俺らと同じ規模の国だったら負ける。間違いねえ」
「大きく出ましたね。ですが私も同意見です。協商連合にしてもそうですが連合王国が我々帝国並みの面積と人口、さらには資源を保有していた場合、私の見立てでは五年から十年で首都すら占領されるでしょう。それ程までに、人間は進化している。畏れ多くも皇帝陛下のように述べるのならば、『改革者の存在が人間を飛躍させている』でしょうね」
ブライフマンは、市井で皇帝直属機関たる反体制派取締も行う国家憲兵に聞かれれば即刻捕縛されるような発言をする。皇帝の耳達と陰で称される彼等に、一般市民が今のような意見を述べようものなら確実に生きて帰れないだろうが、発言の主はブライフマンだ。それだけにゾリャーギは言葉の重みを感じていた。
「暗号に限っても連合王国のアレは手がつけられねえ。解読の糸口があればいいんだけどよ、専門連中ですら手がかりすら掴めねえんだから、時間がかかるだろうな……」
「連合王国の暗号が不可解なものでしたからね。口語は人魔同一。文章も同一ですが、それはあくまで互いの大多数の言語使用者が同一言語を使っているだけという話。恐らくですが、エルフやドワーフの言語なのでしょうけど残念ながら今の言語ではありません。資料があればヒントになるのでしょうが、生憎百年前の大乱で焼かれるか失われてますし」
「そうだと俺も思ったから図書館を覗いてみたが見当たらなかったな……。相当古いのを使ってるぜ。それだけじゃねえ、あいつらは言語にさらに手を加えてやがる」
ところが連合王国ともなると話は大きく変わる。連合王国は今年から魔法無線装置の暗号通信に大幅なアップデートを行っていた。
前世の最先端に比べるべくもないが、この世界のこの時代においては最先端であった。
というのも、暗号が複雑すぎて解けないのである。
チャイカ姉妹が死んで以来、ゾリャーギは連合王国についても兼務していたが難解な連合王国の暗号についてはゾリャーギが解読を試みるも一人ではとても不可能な代物で、妖魔帝国の情報機関――ブライフマン達とは別の大規模な情報管理部門――に送ったものを情報機関はまったく解読出来なかったのだ。
当然である。暗号通信にもアカツキの息がかかっていたのだ。
アカツキは暗号組成をするにあたって旧日本軍が薩摩弁を用いたかのように、彼が目を付けたのは妖魔帝国側が知る由もない言語。人類諸国ですら最早古文書扱いの言語を使っていたのだ。
使用されていたのは古式エルフ言語の中でもさらに難解な旧東方領エルフ言語。連合王国首都の王城内にある書物庫と軍本部の書物庫、エルフ理事会の書物庫など限られた人物しか入れない場所にある文献から作り出したのである。しかもこの言語に参謀本部情報部門が独自に手を加えた読む必要のない単語や数字まで入れられており、解読を尚更困難にしていた。
連合王国軍は周辺各国向けには解読がややしやすいものを用いており、だからこそ情報管理体制が杜撰な連邦経由で情報は引き出せたが、肝心の連合王国国内の機密性の高い情報は知れずにいたのである。
「他にも貴方が言っていた可能性がありましたね。連合王国は連邦から情報漏洩していたのに気付いており、連合王国国内の情報はなるべく流さないようにしていた、とか」
「連邦が積極的に外に出ず国内にこもっているのもあるだろうが、連合王国は間違いなく連邦向けには情報を絞っていたな。そもそも連邦は戦争に途中からあんま参戦していない国だ。連合王国はその点も踏まえて送信する情報を連邦向けに取捨選択していたんだろうよ。さらに諜報員まで潜らせてきた。お陰で時が経つにつれて実りが乏しくなったってわけだ」
「ですから貴方を勅令で呼び戻したのですよ。チャイカ姉妹が余計な事をしでかしてくれた以降、連合王国は警戒感を強めた。結果がゾリャーギ、貴方が極限まで残さなかった証拠を発見し、あと少し遅れていたら捕まるところだったのですから」
「俺も人間に捕まるのは御免だぜ。捕虜の扱いは良いらしいが、諜報員の扱いは間違いなく凄惨を極める。俺らが行ってきたような行為だって平気でするだろうさ。戦争の一種だからな。――けどよ、これで連邦の拠点は失い法国にいるあいつもロクに動けねえ。あいつは独自に拠点を構築したから悟られやしねえだろうが、砂金を見つけるみてえに地道にしかやれねえ。となると、これまで築いてきた人類諸国の諜報網は殆ど使えなくなったわけだ。この状況下でどうすんだ、ブライフマン?」
ゾリャーギは温くなった紅茶を飲み干し、新しく湯気が立ち込める紅茶をティーカップに注ぐと、ブライフマンに問う。
連合王国は諜報員が活動するには困難であり、法国も宗教国家だけに連邦ほど生易しくない。頼みの綱であった連邦の活動拠点を失陥した今、ブライフマン達の諜報機関は価値を問われかねない事態になっていた。
しかし、そこは皇帝に認められているブライフマンであり、戦争狂のレオニードだけあって既に次の手を打とうとしていた。
「心配なさらずとも、恐るべき皇帝陛下はもう新たな考えを示されました」
「へえ、恐怖の象徴になっている、正室にお熱なあの皇帝陛下が?」
「前半はともかく後半の発言は謹んでくださいね? 我々とてそこに触れるのは危な過ぎますので」
「分かってるって。ここだけの話だ。で、新たな考えってのはなんだ?」
「皇帝陛下はああ見えても反省されるお方です」
「お前も大概不敬だな……。胃が痛むだろうから、心境は察するけどよ」
「色々あるんですよ……。さて、皇帝陛下は本大戦を人間を舐め腐った軍本部の失策であり、すなわち自らの失政と判断されました。この一年半で旧東方領をほぼ全て失い、ブカレシタも風前の灯。救援を出したとて駒を失うだけとお考えです」
「ってことはブカレシタは見捨てられたっってことか」
「さらなる繁栄と次なる勝利の礎ですよ。貴方もご存知でしょうが、我々は何も西方にだけ目を向けていません。我々の管轄外でしたから殆ど言及してきませんでしたが、遥か東方の島国との戦争がようやく決着して二年。想定外に粘った東の皇女の国を滅ぼしたはいいものの肝心の皇女共の首は落とせませんでしたし、西に振り向ける筈の駒も消耗しました。さらに南へ目を向ければ蛮族共の反乱。少数民族が頑強な抵抗を示し、占領したところで延々と抵抗運動と火種は抱えたまま」
ブライフマンは西方が担当であったのと、軍本部が東や南方面は西以上に有象無象と考えていた為に小耳に挟む程度の情報しか得てこなかった。
西の人類諸国と妖魔帝国の広大な勢力圏に阻まれほとんど交流のない、数十年前より抵抗を続けていた南の小国群はついに全滅となり集団的な抵抗は不可能に。ゲリラ戦へと移行していた。
しかし東、すなわち人類諸国からすると極東方面である国家の制圧には軍本部の想定を越えた抵抗により全域制圧を果たしたとはいえ多くの犠牲を生んでいた。
西と東では妖魔帝国を挟むが為に最早古い文献でしか互いの存在を知れないでいたが、故に独自に発展を遂げた東方国家は遂に孤立無援のまま滅亡したのである。
ただ、ブライフマンにとっての気がかりは東方国家の指導者たる皇女とその一団が行方知れずとなっている点であった。
「先代からの負の遺産だな。西の人間共の前に東と南を片付ける。南は所詮蛮族だから良かったけどよ、東は独自の魔法形態と厄介な翼で手痛い目に遭った。それでも西に振り向けるには十分な兵力があったが、皇帝陛下曰く『改革者』によって早々低脳の魔物共の駒は消え失せ、挙句正規軍も二個軍集団、いやそれ以上を損耗したわけだな」
「ええ。軍本部の石頭の見立てが甘過ぎたのです。ですから、皇帝陛下は方針転換しました。先に南を片付けるそうです。未だに無駄な抵抗を続ける蛮族共を根絶やしにすると。もしかしたら皇女が潜んでいるやもしれませんから。それにあの辺りは資源地帯です。入植して資源獲得をされたいのでしょう」
「へえ。…………ってちょっと待った。人類諸国との戦争はどうすんだよ。俺は諜報専門だからよ、軍戦略には詳しくねえ。でもよ、妖魔帝国軍はまだまだ余力は残ってるじゃねえか。人間共の国家を消耗させてから叩くんじゃなかったのか?」
「ええ、今のままでも国内まで誘引すればいずれは補給線が伸びきり我々は勝利するでしょう。しかし、それでは我々帝国も少なからず多くの損失が生じます」
「だからって、むざむざ……。臣民にはどう伝えるんだよ。あいつらだって馬鹿じゃねえ。情報統制にも限界があんだろ。人類諸国は一年半の戦争で予想を大幅に上回る勢いで戦費を使っているからどうにかなるかもしれねえ。特に法国は今後の戦争に耐えられそうにねえし、連合王国や協商連合にしても少なくない戦死傷者と戦費を消費した。けどよ、国内はそう簡単にはいかねえだろ」
「国内も平穏ではありませんからね。事実をそのまま伝えれば反乱の芽が育ってしまいます。ですから、南の浄化を含め国内の不満分子及び新たな思想を摘み取りにかかるようですよ」
「不満分子というと、身分差のない平等を謳った労働者だけの国を作るって連中か」
ブライフマンとゾリャーギが言っている存在とは、前世でも世界の一部を席巻した共産主義の存在である。この世界においても例に漏れず共産主義思想は誕生していた。それらは身分差と貧富の差が激しい妖魔帝国であれば起きても当然の思想であった。ちなみに人類諸国にも同様の思想は生まれており一定の地位を築いていたが、前世ほどの勢力は誇っていない。
「はい。皇帝陛下は特にこれらを危険視しています。今でこそ放置しておいても問題ない奴らですが、かといって放っておけば脇腹を刺されかねないと皇帝陛下は思っておられるそうですよ」
「たかがあいつらに? 戦争狂の皇帝陛下にしては信じられねえな」
「たかがと思っていた人間達にしてやられたからこそでしょう。皇帝陛下は疑心暗鬼であられますから」
「ははあ、なるほどな。早めに刈り取っておいて身の安全も図りたいってわけか。となると、俺らも仕事の中心はそっちになりそうだな」
「いいえ、違います。貴方にはこれまで通り人類諸国で、しかし新たな任務に就いてもらいます。これは勅令、皇帝陛下が貴方をご指名のようですよ。任務の詳細はこちらになります」
「皇帝陛下が俺を直々に指名だ? とんでもねえ重要な任務じゃねえか」
「皇帝陛下は面白いお考えをされていますよ。そして、合理的であられます」
「そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか」
ゾリャーギは興味深そうに言うと、ブライフマンから勅令の任務書を受け取る。
すると、ゾリャーギは任務書を読むに連れて口元が緩みついには愉しそうに笑い出した。
「くくく、ははははははっ! こいつは傑作だぜ! 流石は皇帝陛下だ! おもしれえ発想するじゃねえか!」
「では、任務を受けますね? いいえ、受けてください。勅令任務です。必ず成功させてください」
「ったりめえよ! まさに俺にぴったりの仕事だ! 絶対に成し遂げてみせるさ!」
「ええ、ええ。お願いしますよ?」
ニタニタと笑うゾリャーギに、ブライフマンはつられてニヤリと笑う。
戦争狂、皇帝レオニードによって戦争は新たな局面を迎える。
そして、ブライフマン率いる諜報部隊随一の諜報員ゾリャーギは新たな任務を携えて再び人類諸国の領域へと戻るのであった。
10の月27の日
午後10時過ぎ
妖魔帝国北西部
サンクティアぺティルブルク
アカツキ達三カ国軍がブカレシタ星型要塞を着実に攻略しつつあり要塞の四割強を制圧。しかし正規軍同士のぶつかり合いによる相応の犠牲者を出していた頃、妖魔帝国北西部の大都市、人口九十七万人のサンクティアぺティルブルクは間もなく冬を迎えようとしていた。
妖魔帝国北西部という土地柄、十の月も末ともなれば最高気温は十度を越えるくらいであり最低気温は氷点下に近付く。夜には街ゆく人々は厚着をして歩いていた。
サンクティアぺティルブルクの中心街から程近い場所には妖魔帝国軍第六軍集団本部がある。妖魔帝国北西部の安全保障と治安を司る中心的存在だけあって、建築群は瀟洒なものばかりであった。
その軍集団本部の本部棟にあるとある一室。そこには二人の男が椅子に座って妖魔帝国でよく嗜まれている紅茶を飲んでいた。
一人は皇帝レオニードの直轄諜報部隊の長たるブライフマン。
もう一人は軍人――立場上扱いは軍人である――らしからぬ雰囲気の若い男だった。赤色の派手なジャケットを羽織っており、男にしてはやや長い毛髪も燃え盛るような深紅。ただし瞳は澄んだ蒼色。彼のジャケットも軍服で、彼曰くこれはオーダーメイドであるらしい。
「連邦での諜報任務、お疲れ様でした。報告は受けていますが、ギリギリ振り切ったようですね」
「ったく、本当だぜ。連合王国の情報連中と来たら派手に動き回ってもねえのに嗅ぎつけてきがったからな。俺がしばらくいた連邦じゃなくて連合王国がやってくるだなんて、人間ってやつをつくづく見直したっての」
「連邦もアレはアレで悪くないのですが、連合王国は頭一つ抜けて優秀な国です。僅かな痕跡から辿りついたのでしょう」
「悪ぃな、ブライフマン。出来ればもう少しいたかったんだけどよ」
「構いません、ゾリャーギ。貴方でダメならば他に任せた所で下手をすれば捕まっていましたから」
ブライフマンは微笑んでゾリャーギに言う。軽い男のように見えるゾリャーギだが、諜報機関内では潜入任務に最も特化している人物である。人は見た目によらないというが、まさにその典型的人物であった。
それはブライフマンの問いに対する答えがよく示していた。
「ところでゾリャーギ。連邦での二年以上に及ぶ潜入調査の結果はどうでしたか? 報告は逐次受け取っていましたが、最終報告をお願いします」
「あいよ。俺が日々の餌かつ快楽の虜にしていた連邦の女性軍人からちょくちょく情報は引っ張り出していたが、連邦自体は来るべき我らが国土への侵攻作戦に備えて力を蓄えてるって所だな。詳細は皇帝陛下もご覧になる書類に纏めてあるぜ」
「なるほど。書類は目を通してありますので、私は貴方の口から聞きたい点がいくつかあります。このまま質問を続けても?」
「いいぜ。女軍人ときたらそこそこの立場で機密も持ってるのにペラペラと喋らせてやっ、いや、喋ってくれたからな」
「貴方の能力に抗える者などそうそういませんよ。では、一つ。正直な話、スカンディア連邦は大した脅威とは感じていません。無論慢心などしませんが、貴方の所感は?」
「連邦の情報管理体制は底に穴の空いた瓶みたいなもんだな。おざなりにも程がある。軍こそそれなりの戦力を整えているが、技術の進化におっついていない所がある。特に魔法無線装置については連合王国より格段に扱いが劣ると思ったぜ」
ゾリャーギの言う通り、同じ魔法無線装置を扱っていながらも連邦と連合王国や協商連合では格段の開きがあった。
連邦では魔法無線装置による機密通信こそ文字の並び替え等で暗号化しているものの、ゾリャーギが手玉に取っていたのはその情報部門において一定の地位にある女性士官。狙われたのは不運としか言いようがないが、これもまた諜報戦であるのだからゾリャーギの方が上手だったと評価出来るだろう。故に連邦の機密は筒抜けであった。
「ふむ、せっかくの魔法無線装置も暗号が解読しやすいと」
「あくまで連合王国や協商連合に比べりゃって話だ。俺らより少し劣る、だな」
「我々は技術面で遅れていますからね。魔法に頼りきりで魔法科学は残念ながらまだまだ発展途上です。なら本題に移りましょう。連邦から連合王国の情報は得ていると思いますが、貴方はあの国を改めてどう思いますか?」
「正直に言うぜ。もしあの国が俺らと同じ規模の国だったら負ける。間違いねえ」
「大きく出ましたね。ですが私も同意見です。協商連合にしてもそうですが連合王国が我々帝国並みの面積と人口、さらには資源を保有していた場合、私の見立てでは五年から十年で首都すら占領されるでしょう。それ程までに、人間は進化している。畏れ多くも皇帝陛下のように述べるのならば、『改革者の存在が人間を飛躍させている』でしょうね」
ブライフマンは、市井で皇帝直属機関たる反体制派取締も行う国家憲兵に聞かれれば即刻捕縛されるような発言をする。皇帝の耳達と陰で称される彼等に、一般市民が今のような意見を述べようものなら確実に生きて帰れないだろうが、発言の主はブライフマンだ。それだけにゾリャーギは言葉の重みを感じていた。
「暗号に限っても連合王国のアレは手がつけられねえ。解読の糸口があればいいんだけどよ、専門連中ですら手がかりすら掴めねえんだから、時間がかかるだろうな……」
「連合王国の暗号が不可解なものでしたからね。口語は人魔同一。文章も同一ですが、それはあくまで互いの大多数の言語使用者が同一言語を使っているだけという話。恐らくですが、エルフやドワーフの言語なのでしょうけど残念ながら今の言語ではありません。資料があればヒントになるのでしょうが、生憎百年前の大乱で焼かれるか失われてますし」
「そうだと俺も思ったから図書館を覗いてみたが見当たらなかったな……。相当古いのを使ってるぜ。それだけじゃねえ、あいつらは言語にさらに手を加えてやがる」
ところが連合王国ともなると話は大きく変わる。連合王国は今年から魔法無線装置の暗号通信に大幅なアップデートを行っていた。
前世の最先端に比べるべくもないが、この世界のこの時代においては最先端であった。
というのも、暗号が複雑すぎて解けないのである。
チャイカ姉妹が死んで以来、ゾリャーギは連合王国についても兼務していたが難解な連合王国の暗号についてはゾリャーギが解読を試みるも一人ではとても不可能な代物で、妖魔帝国の情報機関――ブライフマン達とは別の大規模な情報管理部門――に送ったものを情報機関はまったく解読出来なかったのだ。
当然である。暗号通信にもアカツキの息がかかっていたのだ。
アカツキは暗号組成をするにあたって旧日本軍が薩摩弁を用いたかのように、彼が目を付けたのは妖魔帝国側が知る由もない言語。人類諸国ですら最早古文書扱いの言語を使っていたのだ。
使用されていたのは古式エルフ言語の中でもさらに難解な旧東方領エルフ言語。連合王国首都の王城内にある書物庫と軍本部の書物庫、エルフ理事会の書物庫など限られた人物しか入れない場所にある文献から作り出したのである。しかもこの言語に参謀本部情報部門が独自に手を加えた読む必要のない単語や数字まで入れられており、解読を尚更困難にしていた。
連合王国軍は周辺各国向けには解読がややしやすいものを用いており、だからこそ情報管理体制が杜撰な連邦経由で情報は引き出せたが、肝心の連合王国国内の機密性の高い情報は知れずにいたのである。
「他にも貴方が言っていた可能性がありましたね。連合王国は連邦から情報漏洩していたのに気付いており、連合王国国内の情報はなるべく流さないようにしていた、とか」
「連邦が積極的に外に出ず国内にこもっているのもあるだろうが、連合王国は間違いなく連邦向けには情報を絞っていたな。そもそも連邦は戦争に途中からあんま参戦していない国だ。連合王国はその点も踏まえて送信する情報を連邦向けに取捨選択していたんだろうよ。さらに諜報員まで潜らせてきた。お陰で時が経つにつれて実りが乏しくなったってわけだ」
「ですから貴方を勅令で呼び戻したのですよ。チャイカ姉妹が余計な事をしでかしてくれた以降、連合王国は警戒感を強めた。結果がゾリャーギ、貴方が極限まで残さなかった証拠を発見し、あと少し遅れていたら捕まるところだったのですから」
「俺も人間に捕まるのは御免だぜ。捕虜の扱いは良いらしいが、諜報員の扱いは間違いなく凄惨を極める。俺らが行ってきたような行為だって平気でするだろうさ。戦争の一種だからな。――けどよ、これで連邦の拠点は失い法国にいるあいつもロクに動けねえ。あいつは独自に拠点を構築したから悟られやしねえだろうが、砂金を見つけるみてえに地道にしかやれねえ。となると、これまで築いてきた人類諸国の諜報網は殆ど使えなくなったわけだ。この状況下でどうすんだ、ブライフマン?」
ゾリャーギは温くなった紅茶を飲み干し、新しく湯気が立ち込める紅茶をティーカップに注ぐと、ブライフマンに問う。
連合王国は諜報員が活動するには困難であり、法国も宗教国家だけに連邦ほど生易しくない。頼みの綱であった連邦の活動拠点を失陥した今、ブライフマン達の諜報機関は価値を問われかねない事態になっていた。
しかし、そこは皇帝に認められているブライフマンであり、戦争狂のレオニードだけあって既に次の手を打とうとしていた。
「心配なさらずとも、恐るべき皇帝陛下はもう新たな考えを示されました」
「へえ、恐怖の象徴になっている、正室にお熱なあの皇帝陛下が?」
「前半はともかく後半の発言は謹んでくださいね? 我々とてそこに触れるのは危な過ぎますので」
「分かってるって。ここだけの話だ。で、新たな考えってのはなんだ?」
「皇帝陛下はああ見えても反省されるお方です」
「お前も大概不敬だな……。胃が痛むだろうから、心境は察するけどよ」
「色々あるんですよ……。さて、皇帝陛下は本大戦を人間を舐め腐った軍本部の失策であり、すなわち自らの失政と判断されました。この一年半で旧東方領をほぼ全て失い、ブカレシタも風前の灯。救援を出したとて駒を失うだけとお考えです」
「ってことはブカレシタは見捨てられたっってことか」
「さらなる繁栄と次なる勝利の礎ですよ。貴方もご存知でしょうが、我々は何も西方にだけ目を向けていません。我々の管轄外でしたから殆ど言及してきませんでしたが、遥か東方の島国との戦争がようやく決着して二年。想定外に粘った東の皇女の国を滅ぼしたはいいものの肝心の皇女共の首は落とせませんでしたし、西に振り向ける筈の駒も消耗しました。さらに南へ目を向ければ蛮族共の反乱。少数民族が頑強な抵抗を示し、占領したところで延々と抵抗運動と火種は抱えたまま」
ブライフマンは西方が担当であったのと、軍本部が東や南方面は西以上に有象無象と考えていた為に小耳に挟む程度の情報しか得てこなかった。
西の人類諸国と妖魔帝国の広大な勢力圏に阻まれほとんど交流のない、数十年前より抵抗を続けていた南の小国群はついに全滅となり集団的な抵抗は不可能に。ゲリラ戦へと移行していた。
しかし東、すなわち人類諸国からすると極東方面である国家の制圧には軍本部の想定を越えた抵抗により全域制圧を果たしたとはいえ多くの犠牲を生んでいた。
西と東では妖魔帝国を挟むが為に最早古い文献でしか互いの存在を知れないでいたが、故に独自に発展を遂げた東方国家は遂に孤立無援のまま滅亡したのである。
ただ、ブライフマンにとっての気がかりは東方国家の指導者たる皇女とその一団が行方知れずとなっている点であった。
「先代からの負の遺産だな。西の人間共の前に東と南を片付ける。南は所詮蛮族だから良かったけどよ、東は独自の魔法形態と厄介な翼で手痛い目に遭った。それでも西に振り向けるには十分な兵力があったが、皇帝陛下曰く『改革者』によって早々低脳の魔物共の駒は消え失せ、挙句正規軍も二個軍集団、いやそれ以上を損耗したわけだな」
「ええ。軍本部の石頭の見立てが甘過ぎたのです。ですから、皇帝陛下は方針転換しました。先に南を片付けるそうです。未だに無駄な抵抗を続ける蛮族共を根絶やしにすると。もしかしたら皇女が潜んでいるやもしれませんから。それにあの辺りは資源地帯です。入植して資源獲得をされたいのでしょう」
「へえ。…………ってちょっと待った。人類諸国との戦争はどうすんだよ。俺は諜報専門だからよ、軍戦略には詳しくねえ。でもよ、妖魔帝国軍はまだまだ余力は残ってるじゃねえか。人間共の国家を消耗させてから叩くんじゃなかったのか?」
「ええ、今のままでも国内まで誘引すればいずれは補給線が伸びきり我々は勝利するでしょう。しかし、それでは我々帝国も少なからず多くの損失が生じます」
「だからって、むざむざ……。臣民にはどう伝えるんだよ。あいつらだって馬鹿じゃねえ。情報統制にも限界があんだろ。人類諸国は一年半の戦争で予想を大幅に上回る勢いで戦費を使っているからどうにかなるかもしれねえ。特に法国は今後の戦争に耐えられそうにねえし、連合王国や協商連合にしても少なくない戦死傷者と戦費を消費した。けどよ、国内はそう簡単にはいかねえだろ」
「国内も平穏ではありませんからね。事実をそのまま伝えれば反乱の芽が育ってしまいます。ですから、南の浄化を含め国内の不満分子及び新たな思想を摘み取りにかかるようですよ」
「不満分子というと、身分差のない平等を謳った労働者だけの国を作るって連中か」
ブライフマンとゾリャーギが言っている存在とは、前世でも世界の一部を席巻した共産主義の存在である。この世界においても例に漏れず共産主義思想は誕生していた。それらは身分差と貧富の差が激しい妖魔帝国であれば起きても当然の思想であった。ちなみに人類諸国にも同様の思想は生まれており一定の地位を築いていたが、前世ほどの勢力は誇っていない。
「はい。皇帝陛下は特にこれらを危険視しています。今でこそ放置しておいても問題ない奴らですが、かといって放っておけば脇腹を刺されかねないと皇帝陛下は思っておられるそうですよ」
「たかがあいつらに? 戦争狂の皇帝陛下にしては信じられねえな」
「たかがと思っていた人間達にしてやられたからこそでしょう。皇帝陛下は疑心暗鬼であられますから」
「ははあ、なるほどな。早めに刈り取っておいて身の安全も図りたいってわけか。となると、俺らも仕事の中心はそっちになりそうだな」
「いいえ、違います。貴方にはこれまで通り人類諸国で、しかし新たな任務に就いてもらいます。これは勅令、皇帝陛下が貴方をご指名のようですよ。任務の詳細はこちらになります」
「皇帝陛下が俺を直々に指名だ? とんでもねえ重要な任務じゃねえか」
「皇帝陛下は面白いお考えをされていますよ。そして、合理的であられます」
「そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか」
ゾリャーギは興味深そうに言うと、ブライフマンから勅令の任務書を受け取る。
すると、ゾリャーギは任務書を読むに連れて口元が緩みついには愉しそうに笑い出した。
「くくく、ははははははっ! こいつは傑作だぜ! 流石は皇帝陛下だ! おもしれえ発想するじゃねえか!」
「では、任務を受けますね? いいえ、受けてください。勅令任務です。必ず成功させてください」
「ったりめえよ! まさに俺にぴったりの仕事だ! 絶対に成し遂げてみせるさ!」
「ええ、ええ。お願いしますよ?」
ニタニタと笑うゾリャーギに、ブライフマンはつられてニヤリと笑う。
戦争狂、皇帝レオニードによって戦争は新たな局面を迎える。
そして、ブライフマン率いる諜報部隊随一の諜報員ゾリャーギは新たな任務を携えて再び人類諸国の領域へと戻るのであった。
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アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
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最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
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転生幼児は夢いっぱい
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チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
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大東亜戦争を有利に
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日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈
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高校二年生にもかかわらず、見た目は小学生にも見える小柄な体格で、いつものようにクラスメイトに虐められてロッカーに閉じ込められた倉戸 新矢(くらと あらや)。身動きが取れない間に、突然の閃光と地震が教室を襲う。
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呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
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前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
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恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~
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異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。
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元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。
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【登場人物】(メインキャラ)
主人公 :カイト / 男 / 商人
ヒロイン:ルナ / 女 / メイド
ヒロイン:ソレイユ / 女 / 聖騎士
ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ
***忙しい人向けの簡単な流れ***
◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち
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俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
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