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第5章 新召喚武器召喚編

第13話 ブライフマンの独白

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・・13・・
8の月18の日
妖魔帝国・帝都

 八の月も半ばともなれば妖魔帝国首都の地域でも最高気温は二十度程度まで上昇するこの日。
 皇帝レオニードは人払いをしてあるのをいいことに、自らの妻ルシュカと些か激しく愛を育みあっていた。それも深夜からそろそろ六時間は経っているのではないかというのにだ。ただしこれは、二人にとって一週間のうちに一度か二度ある恒例のものだが。
 対照的に同じ帝都、妖魔帝国軍総軍本部のとある一室ではブライフマンが一人きりで資料を眺めつつ思案を巡らせていた。

「いよいよ仕掛けてきましたか……。それも十五万と。やはり連合王国を侮るのは間違いです。未だに気付けない作戦本部は頭痛のタネですが……」

 彼が見つめている資料は連邦に潜入しているとある人物から届いた報告書だ。そこには連合王国軍により遂行される『鉄の暴風作戦』の内、連邦が関係する部分が事細かに書かれていた。とても内部にいるか内部関係者でないと知ることの出来ない点ばかりである。

「連合王国が北進して北部戦線の魔物軍団を挟み撃ち。となれば事前にシュペティウは陥落させられ、連合王国の手に落ちる事になりますね。面白い話ではありません。ですが……」

 ブライフマンは渋い顔をする。
 実はここまで敵方の作戦を掴んでおきながら作戦本部は山脈より東に控えている、元から妖魔帝国領のこの土地に駐屯する妖魔軍は一切の動きを見せていないのだ。つまり、魔人達による妖魔軍は動員させるつもりがないのである。これにブライフマンはいくらなんでも人間を舐めすぎなのではないかと疑問を抱く。例え山脈から西が元は人間達の土地で、ほとんど開発をしてこなかったからとはいえだ。

「当然対策を取るとは聞いてますし、これまでよりは力は入れているというのは理解しています。しかしだからといって山脈以東の軍を動かさないというのはあまりにも……、いや、これも皇帝陛下の方針ですか」

 普通であれば領土を占領されようとしているのだから魔物軍団ではなく魔人から構成される本物の軍を動かすべきなのだが、皇帝レオニードは動員の勅令を一切出していない。その理由をブライフマンは彼から直接聞いていたのだ。
 レオニードはこう言い放ったという。

「この戦争の舞台に醜い低脳が権利はない。不必要だ。故に、この戦争の第一段階は『人的資源以下の存在を民族浄化すること』も兼ねている。無駄に数だけは多いから物量戦で押し込むには丁度いいだろう。消耗戦で人間達が侵略されればそれまでの存在だったと思えるからね」

「いやはや、確かに個体数は多いですから人間達の国は消耗を強いられますが、よもや人的資源に民族浄化なんていう言葉が出るとは思いませんでした。外ではとても言えませんが、陛下は生粋の戦争狂ですよ」

 いくら知能が低いとはいえ魔物達は物以下の扱いで、銃弾や砲弾消耗の肉壁となれ。頭数は多いのだからぴったりだといいのける皇帝レオニード。魔物を蔑むのは魔人全体の風潮ではあるが、ここまで過激な発案をする者は妖魔帝国であっても皇帝以外にはいなかった。
 だがブライフマンにとって皇帝レオニードを戦争狂と言わしめているのはその点より、妖魔帝国軍の兵士達そのものを人的資源と考えているという点である。全ては自分が楽しむ為の戦争のコマでしかない。言葉の端々から感じる狂気をブライフマンは気付いていたのである。

「しかし、皇帝陛下の仰る事には合理性も存在します。奪還されても大して痛くない領土に敵を誘引。魔物が絶滅する勢いでミンチになるのを引き換えに連合王国軍や他国軍も武器弾薬を消耗する。そして疲弊すれば後は……。恐ろしくも、効率的ではありますね……」

 ただし皇帝を戦争狂と呼ぶブライフマンも彼の案に反対するつもりはなかった。粛清対象になるから言わないのではなく、冷静に考えてみて最終的には妖魔軍にとっては有利にもっていけるからである。現段階で所詮死ぬのは、魔物なのだから。
 ブライフマンは渋い顔をしながらも自身も皇帝の狂気に感化されつつあるのに気付いておらず、別の資料に目を移す。

「大局を見るのは皇帝陛下なり、作戦本部の役目。私には私の役目があり、そちらの方が問題なのですから片付けないと……。アカツキ・ノースロードは詳細については調査中ですが本当にSSランク召喚武器を召喚してしまいますし、お陰であの二人を抑えるのが面倒で仕方ありません。ああ、頭が痛い……」

 ブライフマンはため息をつき、自身に直結する問題を思い出してまた、今度は大きくため息を出す。
 アカツキ達連合王国が大きく動き出す最中、妖魔帝国もまた遅く少しずつではあるが蠢いていた。
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