2 / 12
第二章
哀しみの少女
しおりを挟む
~数日後~
紗夜のBirthday。
正明は、買ってきたケーキにロウソクを立てていく。
それを嬉しそうに見つめる紗夜。
『あれ?』
『どうしたのパパ?』
『一本足りないんだよ。困ったなこりゃ。』
紗夜の顔が少し沈んだのを横目で見る正明。
『お~い智代、ロウソクなかったか?』
奥の部屋にいる妻に声を書けた。
『そんなものありません。』
冷たい声が静かに響く…。
正明と智代は、二年前に病気で娘を亡くしていた。
落胆した妻の寂しさを紛らわす為、正明は『ビート』を飼うことにしたのである。
その為に、ペットが飼えるこのマンションへ引っ越しもした。
娘の様にかわいがった愛犬を亡くした智代は、葬儀の日から…変わった。
元々気に入らなかった紗夜には、よりキツくあたるようになっていたのである。
紗夜は、二人の子ではなかった。
正明の仕事は警察官である。
半年前、警部である正明は、ある一家惨殺事件に関わった。
どこにでもある様な普通の家で、父親、母親、長男が殺された事件。
父親と母親は頭部が無くなるほど潰され、長男に至っては、11階の窓を突き破って投げ捨てられていた。
そんな中、たった一人生き残ったのが、紗夜である。
怯えきった少女。
少女は事件の記憶も、家族の記憶をも失っていた。
正気になって、初めて見たのが、正明の笑顔であった。
丁度娘と同じ歳の少女を、正明は放って置けず、身寄りのない紗夜を、引き取ることにしたのである。
妻もきっと受け入れてくれると思っていた。
が、智代は紗夜を気味悪がり、娘として可愛がることはなかったのである。
正明が仕事でいない間、智代は紗夜にキツくあたり、手をあげることも度々であった。
それでも紗夜は、智代を愛している大好きな『パパ』のために、そのことは一言も言わなかったのである。
『参ったなぁ…。』
そう言いながら、紗夜の顔を伺う正明。
『イイよ…。サヤはロウソクなんてなくても。パパがいればいい。』
愛しくてたまらない健気な笑顔。
『よし!。そこのコンビニまで買いに行こう。』
『ほんとに!』
少女の目が輝く。
『智代、ちょっとコンビニまで行ってくるからな。』
(………)
返事はなかった。
『私も行く!』
『よ~し。二人で夜のお散歩だ。』
こうして、二人はすぐ近くのコンビニへ出かけたのである。
『うっひゃ~、寒いな。雪でも降るかな。寒くないか紗夜?』
『うん。パパの手、あったかい。』
『そうか?紗夜の手もあったかいぞ。ハハ。』
コンビニが見えて来た。
『んん?』
コンビニの前では、若い男女が三人、バイクの横でタバコをふかしていた。
どう見ても未成年である。
『紗夜、先に中でロウソクを探しててくれるかな。』
『は~い。』
紗夜がコンビニへと入ったのを見届けて、正明は若者達に話かけた。
『こらこら、君たちはまだ未成年だろう。タバコをかしなさい。』
『はぁ?なんだぁおっさん。』
ピアスをした男が、鋭い眼で見上げる。
『たっちゃん、こいつなに様ぁ?』
女が指を差した。手の甲にあるドクロのタトゥーに、正明が目を細める。
『殺されたくなかったら、あっち行けや、おっさん。』
たっちゃんと呼ばれた男が立ち上がる。
『き…君は…!』
その顔に見覚えがあった。
『なんでこんなやつらと…?』
その言葉に女が反応した。
『あんだと!クソじじぃ。』
正明は、つかみかかる腕を取り、軽く地面へと転がす。
『いってー!』
『あっ、大丈夫か?』
条件反射とはいえ、思いのほか女が派手に転がったので、正明は少し焦った。
『てめぇ!』
女を気遣い、かがんだ正明の腹に、ピアスの男が蹴りをいれた。
『グッ!』
その足を抱えて、正明は男の方へ踏み出す。
片足を取られ、後ろに転ぶ男に、正明がのしかかる。
『クソ!どきやがれ。』
正明の下で男がもがく。
その背後で、もう一人の男が、ヘルメットを降りかざした。
『ガンッ!!』
思いきり降り下ろしたヘルメットが、正明の後頭部を打った。
『うっ…』
意識が遠のき、その体がゆっくり男に重なる。
そこへ、更にヘルメットが打ち付けられた。
『ガッ!ガッ!ガッ!!』
『たっちゃん!もうやめて。死んじゃうよ。』
怯えた声で女が止めようとする。
下の男は、正明の血で真っ赤であった。
何とか抜け出そうとする男。
正明がその男の耳を掴み、ゆっくり上体を起こす。
その顔面へ、最後の一降りが襲った。
『ガンッ!!』
『ぎゃー!!』
下にいた男が悲鳴を上げる。
横へ吹っ飛んだ正明の手には、ピアスと男の耳が握られていた。
『パパッ!!』
開いたコンビニのドアの外に、紗夜が立っていた。
女と血だらけのヘルメットを持った男が振り向き、目が合った。
『くっそー!このヤロウ。』
耳を押さえ、キレた男が正明の顔面を踏みつける。
『ガシッ!ガシッ!』
異変に気付き、店員が表に出て来た。
『ヤベェ、行くぜ!』
慌ててバイクへまたがる。
『バカヤロー!早く乗れ!』
放心状態の女が、我に返り後ろにまたがる。
けたたましい音を響かせて、二台のバイクは、夜の街へ逃げて行った。
紗夜がゆっくり近づく。
『パ…パ…』
『さ……サ…ャ…』
『パパ!』
仰向けの正明の顔は悲惨なものであった。
『サ…ヤ。……』
何かを呟く正明へ、紗夜は耳を近づけた。
『サ…ヤ、お前は何も…何も見なかったんだ。い…いいね。何も。な…に…も…』
それっきり彼の目は、二度と開くことはなかった。
『ぃゃ…。…いヤァー!!パパ!パパ!パパァ!!』
少女の悲しい叫びが響く。
握り締めた小さな手のひらの中で、ロウソクが粉々になる。
その震える黒髪に、初雪がひらひらと舞い降りていった。
この夜から、紗夜の心は、目を開くことをやめた。
医者の診断では、ひどいショックにより、脳が見ることを拒んでいる。
とのことであった。
警察官殺人事件として、捜査は夜を徹して行われた。
そして、その2日後、三人の容疑者が捕まり、異例の早さで有罪判決が下されたのである。
~事件から一週間~
姫城家のマンション。
見えない目で、砕けたロウソクを見つめる紗夜。
『さっさと食べなさい!』
こげたパンが二枚、乱暴に皿に載せてあった。
紗夜の体が『ビクッ!』と揺れる。
手のひらから落ちたロウソクを拾おうとした手を、智代が踏みつけた。
『いたい!ママ、やめて。いたいからやめて。』
怯えた小さな声でつぶやく。
『いつまでこんなものを持ってるの!もうパパはいないのよ!』
正明が死んでから、智代の精神は壊れ、全く別人になっていた。
ロウソクの袋を拾いあげる。
『お願い、返して。ママ、お願い。ぶってもいいから、返して。』
この頃既に、少女の体は傷だらけであった。
小さな手を広げて差し出す紗夜。
『バシッ』
『アァ!』
テーブルにさしてあった長い菜箸で、その手のひらをぶつ。
『お前のパパはもう死んだのよ!お前が、お前が殺したんだよ!』
『バシッ!バシッ!』
何度も何度もぶった。
智代の目から涙が溢れる。
『返して!私の正明さんを返して!!』
そのまま泣き崩れる智代。
紗夜は、幾スジも血が滲んだ手のひらを握りしめて、その母をじっと見つめていた…。
智世の錯乱はどんどんエスカレートしていった。
そしてある夜。
『富士本です。今、現場に到着しました。』
辺りには大勢の人だかりが出来ていた。
救急隊員に、富士本が尋ねる。
『刑事課の者です。どうですか?』
『ひどい有り様だよ、全く。ベランダから飛び降りた様で、即死だねこりゃ。』
マンションの前に、シートを被せられた智代の亡骸が横たわっていた。
『娘さんは?』
『あぁ、救急車の中にいるよ。目が…見えなくて良かったよ。可哀想に、見つけた時は、ひどく怯えていて、ショック状態だったが、だいぶ落ち着いた様だ。』
『そうですか。』
『さて、どうしたものか…』
困った顔で救急車の方を見る隊員。
『とりあえず私が預かります。あの子の父親に大変世話になったもんで。』
救急車のドアを開ける。
『さあ、心配しないで。おいで…。』
紗夜のBirthday。
正明は、買ってきたケーキにロウソクを立てていく。
それを嬉しそうに見つめる紗夜。
『あれ?』
『どうしたのパパ?』
『一本足りないんだよ。困ったなこりゃ。』
紗夜の顔が少し沈んだのを横目で見る正明。
『お~い智代、ロウソクなかったか?』
奥の部屋にいる妻に声を書けた。
『そんなものありません。』
冷たい声が静かに響く…。
正明と智代は、二年前に病気で娘を亡くしていた。
落胆した妻の寂しさを紛らわす為、正明は『ビート』を飼うことにしたのである。
その為に、ペットが飼えるこのマンションへ引っ越しもした。
娘の様にかわいがった愛犬を亡くした智代は、葬儀の日から…変わった。
元々気に入らなかった紗夜には、よりキツくあたるようになっていたのである。
紗夜は、二人の子ではなかった。
正明の仕事は警察官である。
半年前、警部である正明は、ある一家惨殺事件に関わった。
どこにでもある様な普通の家で、父親、母親、長男が殺された事件。
父親と母親は頭部が無くなるほど潰され、長男に至っては、11階の窓を突き破って投げ捨てられていた。
そんな中、たった一人生き残ったのが、紗夜である。
怯えきった少女。
少女は事件の記憶も、家族の記憶をも失っていた。
正気になって、初めて見たのが、正明の笑顔であった。
丁度娘と同じ歳の少女を、正明は放って置けず、身寄りのない紗夜を、引き取ることにしたのである。
妻もきっと受け入れてくれると思っていた。
が、智代は紗夜を気味悪がり、娘として可愛がることはなかったのである。
正明が仕事でいない間、智代は紗夜にキツくあたり、手をあげることも度々であった。
それでも紗夜は、智代を愛している大好きな『パパ』のために、そのことは一言も言わなかったのである。
『参ったなぁ…。』
そう言いながら、紗夜の顔を伺う正明。
『イイよ…。サヤはロウソクなんてなくても。パパがいればいい。』
愛しくてたまらない健気な笑顔。
『よし!。そこのコンビニまで買いに行こう。』
『ほんとに!』
少女の目が輝く。
『智代、ちょっとコンビニまで行ってくるからな。』
(………)
返事はなかった。
『私も行く!』
『よ~し。二人で夜のお散歩だ。』
こうして、二人はすぐ近くのコンビニへ出かけたのである。
『うっひゃ~、寒いな。雪でも降るかな。寒くないか紗夜?』
『うん。パパの手、あったかい。』
『そうか?紗夜の手もあったかいぞ。ハハ。』
コンビニが見えて来た。
『んん?』
コンビニの前では、若い男女が三人、バイクの横でタバコをふかしていた。
どう見ても未成年である。
『紗夜、先に中でロウソクを探しててくれるかな。』
『は~い。』
紗夜がコンビニへと入ったのを見届けて、正明は若者達に話かけた。
『こらこら、君たちはまだ未成年だろう。タバコをかしなさい。』
『はぁ?なんだぁおっさん。』
ピアスをした男が、鋭い眼で見上げる。
『たっちゃん、こいつなに様ぁ?』
女が指を差した。手の甲にあるドクロのタトゥーに、正明が目を細める。
『殺されたくなかったら、あっち行けや、おっさん。』
たっちゃんと呼ばれた男が立ち上がる。
『き…君は…!』
その顔に見覚えがあった。
『なんでこんなやつらと…?』
その言葉に女が反応した。
『あんだと!クソじじぃ。』
正明は、つかみかかる腕を取り、軽く地面へと転がす。
『いってー!』
『あっ、大丈夫か?』
条件反射とはいえ、思いのほか女が派手に転がったので、正明は少し焦った。
『てめぇ!』
女を気遣い、かがんだ正明の腹に、ピアスの男が蹴りをいれた。
『グッ!』
その足を抱えて、正明は男の方へ踏み出す。
片足を取られ、後ろに転ぶ男に、正明がのしかかる。
『クソ!どきやがれ。』
正明の下で男がもがく。
その背後で、もう一人の男が、ヘルメットを降りかざした。
『ガンッ!!』
思いきり降り下ろしたヘルメットが、正明の後頭部を打った。
『うっ…』
意識が遠のき、その体がゆっくり男に重なる。
そこへ、更にヘルメットが打ち付けられた。
『ガッ!ガッ!ガッ!!』
『たっちゃん!もうやめて。死んじゃうよ。』
怯えた声で女が止めようとする。
下の男は、正明の血で真っ赤であった。
何とか抜け出そうとする男。
正明がその男の耳を掴み、ゆっくり上体を起こす。
その顔面へ、最後の一降りが襲った。
『ガンッ!!』
『ぎゃー!!』
下にいた男が悲鳴を上げる。
横へ吹っ飛んだ正明の手には、ピアスと男の耳が握られていた。
『パパッ!!』
開いたコンビニのドアの外に、紗夜が立っていた。
女と血だらけのヘルメットを持った男が振り向き、目が合った。
『くっそー!このヤロウ。』
耳を押さえ、キレた男が正明の顔面を踏みつける。
『ガシッ!ガシッ!』
異変に気付き、店員が表に出て来た。
『ヤベェ、行くぜ!』
慌ててバイクへまたがる。
『バカヤロー!早く乗れ!』
放心状態の女が、我に返り後ろにまたがる。
けたたましい音を響かせて、二台のバイクは、夜の街へ逃げて行った。
紗夜がゆっくり近づく。
『パ…パ…』
『さ……サ…ャ…』
『パパ!』
仰向けの正明の顔は悲惨なものであった。
『サ…ヤ。……』
何かを呟く正明へ、紗夜は耳を近づけた。
『サ…ヤ、お前は何も…何も見なかったんだ。い…いいね。何も。な…に…も…』
それっきり彼の目は、二度と開くことはなかった。
『ぃゃ…。…いヤァー!!パパ!パパ!パパァ!!』
少女の悲しい叫びが響く。
握り締めた小さな手のひらの中で、ロウソクが粉々になる。
その震える黒髪に、初雪がひらひらと舞い降りていった。
この夜から、紗夜の心は、目を開くことをやめた。
医者の診断では、ひどいショックにより、脳が見ることを拒んでいる。
とのことであった。
警察官殺人事件として、捜査は夜を徹して行われた。
そして、その2日後、三人の容疑者が捕まり、異例の早さで有罪判決が下されたのである。
~事件から一週間~
姫城家のマンション。
見えない目で、砕けたロウソクを見つめる紗夜。
『さっさと食べなさい!』
こげたパンが二枚、乱暴に皿に載せてあった。
紗夜の体が『ビクッ!』と揺れる。
手のひらから落ちたロウソクを拾おうとした手を、智代が踏みつけた。
『いたい!ママ、やめて。いたいからやめて。』
怯えた小さな声でつぶやく。
『いつまでこんなものを持ってるの!もうパパはいないのよ!』
正明が死んでから、智代の精神は壊れ、全く別人になっていた。
ロウソクの袋を拾いあげる。
『お願い、返して。ママ、お願い。ぶってもいいから、返して。』
この頃既に、少女の体は傷だらけであった。
小さな手を広げて差し出す紗夜。
『バシッ』
『アァ!』
テーブルにさしてあった長い菜箸で、その手のひらをぶつ。
『お前のパパはもう死んだのよ!お前が、お前が殺したんだよ!』
『バシッ!バシッ!』
何度も何度もぶった。
智代の目から涙が溢れる。
『返して!私の正明さんを返して!!』
そのまま泣き崩れる智代。
紗夜は、幾スジも血が滲んだ手のひらを握りしめて、その母をじっと見つめていた…。
智世の錯乱はどんどんエスカレートしていった。
そしてある夜。
『富士本です。今、現場に到着しました。』
辺りには大勢の人だかりが出来ていた。
救急隊員に、富士本が尋ねる。
『刑事課の者です。どうですか?』
『ひどい有り様だよ、全く。ベランダから飛び降りた様で、即死だねこりゃ。』
マンションの前に、シートを被せられた智代の亡骸が横たわっていた。
『娘さんは?』
『あぁ、救急車の中にいるよ。目が…見えなくて良かったよ。可哀想に、見つけた時は、ひどく怯えていて、ショック状態だったが、だいぶ落ち着いた様だ。』
『そうですか。』
『さて、どうしたものか…』
困った顔で救急車の方を見る隊員。
『とりあえず私が預かります。あの子の父親に大変世話になったもんで。』
救急車のドアを開ける。
『さあ、心配しないで。おいで…。』
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
巨象に刃向かう者たち
つっちーfrom千葉
ミステリー
インターネット黎明期、多くのライターに夢を与えた、とあるサイトの管理人へ感謝を込めて書きます。資産を持たぬ便利屋の私は、叔母へ金の融通を申し入れるが、拒絶され、縁を感じてシティバンクに向かうも、禿げた行員に挙動を疑われ追い出される。仕方なく、無一文で便利屋を始めると、すぐに怪しい来客が訪れ、あの有名アイドルチェリー・アパッチのためにひと肌脱いでくれと頼まれる。失敗したら命もきわどくなる、いかがわしい話だが、取りあえず乗ってみることに……。この先、どうなる……。 お笑いミステリーです。よろしくお願いいたします。
霧崎時計塔の裂け目
葉羽
ミステリー
高校2年生で天才的な推理力を誇る神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、異常な霧に包まれた街で次々と起こる不可解な失踪事件に直面する。街はまるで時間が狂い始めたかのように歪んでいき、時計が逆行する、記憶が消えるなど、現実離れした現象が続発していた。
転校生・霧崎璃久の登場を機に、街はさらに不気味な雰囲気を漂わせ、二人は彼が何かを隠していると感じ始める。調査を進める中で、霧崎は実は「時間を操る一族」の最後の生き残りであり、街全体が時間の裂け目に飲み込まれつつあることを告白する。
全ての鍵は、街の中心にそびえる古い時計塔にあった。振り子時計と「時の墓」が、街の時間を支配し、崩壊を招こうとしていることを知った葉羽たちは、街を救うために命を懸けて真実に挑む。霧崎の犠牲を避けるべく、葉羽は自らの推理力を駆使して時間の歪みを解消する方法を見つけ出すが、その過程でさらなる謎が明らかに――。
果たして、葉羽は時間の裂け目を封じ、街を救うことができるのか?時間と命が交錯する究極の選択を迫られる二人の運命は――。
一輪の廃墟好き 第一部
流川おるたな
ミステリー
僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。
単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。
年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。
こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。
年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...
神暴き
黒幕横丁
ミステリー
――この祭りは、全員死ぬまで終われない。
神託を受けた”狩り手”が一日毎に一人の生贄を神に捧げる奇祭『神暴き』。そんな狂気の祭りへと招かれた弐沙(つぐさ)と怜。閉じ込められた廃村の中で、彼らはこの奇祭の真の姿を目撃することとなる……。
隅の麗人 Case.1 怠惰な死体
久浄 要
ミステリー
東京は丸の内。
オフィスビルの地階にひっそりと佇む、暖色系の仄かな灯りが点る静かなショットバー『Huster』(ハスター)。
事件記者の東城達也と刑事の西園寺和也は、そこで車椅子を傍らに、いつも同じ席にいる美しくも怪しげな女に出会う。
東京駅の丸の内南口のコインロッカーに遺棄された黒いキャリーバッグ。そこに入っていたのは世にも奇妙な謎の死体。
死体に呼応するかのように東京、神奈川、埼玉、千葉の民家からは男女二人の異様なバラバラ死体が次々と発見されていく。
2014年1月。
とある新興宗教団体にまつわる、一都三県に跨がった恐るべき事件の顛末を描く『怠惰な死体』。
難解にしてマニアック。名状しがたい悪夢のような複雑怪奇な事件の謎に、個性豊かな三人の男女が挑む『隅の麗人』シリーズ第1段!
カバーイラスト 歩いちご
※『隅の麗人』をエピソード毎に分割した作品です。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる