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第五章
179 塔のダンジョン ⑪
しおりを挟む導きの宝珠(塔)は、赤色をしたゴルフボールほどの球である。
軽く魔力を送ってみると、三つの矢印が球の周囲に現れた。
色はそれぞれ、青・黄・緑である。
おそらくこの矢印の先に、他の宝珠が眠るダンジョンがあるのだろう。
そして全て集めると、一つになり新たな場所を示すらしい。
どう考えてもその先には、この大陸を支配している者がいる気がしてならなかった。
この塔のボスがAランクのボーンドラゴンだったことを考えると、モンスターであればSランクレベルの個体がいるかもしれない。
とてもカード化したいが、当然一筋縄ではいかないだろう。
それに、この宝珠はダンジョンをクリアすると必ず手に入る気がする。
だとすれば、俺より先に突破したあの冒険者たちも持っているはずだ。
なら当然、他の宝珠を探しに行く可能性が高い。
場所は三つ示されているので、先に宝珠を冒険者が得ることもあるだろう。
だがおそらく今回宝珠を手に入れたことから、後からでも宝珠は手に入ると思われる。
なので宝珠については、焦る必要はないだろう。
しかし宝珠が揃った先にある最終地点は、そうとも限らない。
突破されたら、それでお終いという可能性もある。
故に早い者勝ちだとすれば、俺も急いだ方がいいだろう。
そんなことを考えていると、外にいるアサシンクロウから連絡が入る。
どうやら早速、あの冒険者たちが動き出したみたいだ。
けれども驚くことに、あの四人は凄い速度で空を飛んでいったという。
見張りだった者たちは、そのまま残されたようだ。
一瞬宝珠の指し示す方へ向かったのかと思ったのだが、そうではないらしい。
方向からして、宝珠の指し示す方ではない。
だとすれば、一度拠点のある場所へと帰還したのだろう。
しかしこんな移動方法があるのならば、俺が遭遇したロブントとその仲間たちの代わりに、情報を伝える役をした方がよかったのではないだろうか?
もしかして、それを拒んだのだろうか? 他の冒険者と距離があったし、何か揉めたのかもしれない。
またロブントたちのいた場所は、塔からそれなりに距離があった。
だとすれば、あの四人もすぐに塔へと入った訳ではなさそうだ。
仲間のようであって、仲間ではないのかもしれない。
最初は四人が塔を攻略することを、他の者たちが止めた可能性もある。
利権や報酬、バックについている者の意向などが、関係しているのだろうか?
単純そうに見えて、あの冒険者集団の関係は複雑なのかもしれない。
だが結果として塔の攻略を始めたのなら、それを振り切るほどの何かが、あの四人にはあるようだ。
そうだとすれば、もしかして転移者だろうか? 神授スキルを所持していれば、ある程度の独断専行も可能な気がする。
もしこの予想通りなら、当然油断は出来ない。
考えすぎかもしれないが、注意していこう。
またどちらにしても、まずはダンジョンを見つける方が先決だ。
なので俺は各地に飛ばしていたアサシンクロウたちをカードに戻すと、三十羽を再召喚した。
念のため外にいるアサシンクロウをその場から離れさせ、この三十羽を送る。
そして十羽ずつに分け、宝珠の指し示す方角へとそれぞれ飛ばした。
数羽だとこの塔みたいに見逃すかもしれないので、十羽ずつにしたのである。
とりあえず見つけるまで、それなりに時間がかかるだろう。
なので俺は、それまでこの塔で狩りをすることを決めた。
いずれ崩壊するみたいだが、まだ十分に時間はあるはずだ。
崩壊するには、ダンジョンの魔力が全て無くなる必要がある。
またダンジョンコアは、破壊せずにこのままにしよう。
以前ホブンのいたダンジョンのコアを破壊した時は、大きな揺れが発生している。
それにより多くの冒険者が、ダンジョンの崩壊に気がついた。
故にここのダンジョンコアを破壊すれば、外にいる残された冒険者たちも異変に気がつくだろう。
だとすれば、ダンジョンコアはこのままの方がいい。
俺はそう判断を下すと、次に塔で行う狩りの目標を決めることにした。
目標としては、カード化したいモンスターを重点的に狩っていくことにする。
特に欲しいのは、スケルトンソーサラー・アーマーゾンビ・ボーンリザードの三種類だ。
ソードマンとアーチャーは既に500枚あるので、ソーサラーもここで揃えておきたいのである。
アーマーゾンビとボーンリザードは、純粋に攻撃力が高く強そうだからだ。
そういう訳で俺は部屋を出て魔法陣に乗ると、下の階へと移動するのだった。
◆
時が経つのは早いもので、順調にモンスターを狩っている。
今回は俺も積極的に戦闘に参加したことで、死竜の鎧一式の性能を早速実感した。
体が軽く、力に溢れる。
並みの攻撃は通さないし、俺自身も一段階強くなった。
また自分で倒した不要なモンスターを双骨牙に喰わせることによって、こちらも成長している。
名称:死犬の双骨牙(右牙)
説明
・離れた場所にある左牙を引き寄せる。
・この剣は倒した敵の骨を喰らう事で修復し、強化される。
・定期的に骨を与えなければ、持ち主の生命力を吸い取る。
左牙と同時に装備することで、以下の能力を一時的に得る。
・適性があればスキル【双撃】【双連撃】が使用可能になる。
名称:死犬の双骨牙(左牙)
説明
・離れた場所にある右牙を引き寄せる。
・この剣は倒した敵の骨を喰らう事で修復し、強化される。
・定期的に骨を与えなければ、持ち主の生命力を吸い取る。
右牙と同時に装備することで、以下の能力を一時的に得る。
・スキル【闇耐性(小)】【技量上昇(小)】を得る。
切れ味自体も上昇したが、一番の変化は双連撃と技量上昇(小)を獲得したことだろう。
どうやら双骨牙は、成長するとスキルも獲得するらしい。
これは、今後が楽しみになってきた。
ちなみに双連撃は、剣系スキルである連撃の双剣版である。
発動すると斬った後に、魔力の刃が敵を追加で斬る感じだ。
双剣なので、合計四連撃になる。
おそらく普通の連撃よりは威力は控えめだが、それでも優秀な技だ。
鎧も含めて、俺自身かなり強化できた。
なお残った皮や内臓などは、トーンに与えたりもしている。
トーンの骸木人や回復用として、十分な数を確保できた。
それと死竜の角だが、早速アロマに装備させている。
アロマは俺のプレゼントに喜び、この白く真っすぐな角を大変気に入った。
またこの角自体も強力で、敵の攻撃にびくともしない。
スケルトン系が多いから活かしきれていないが、刺突武器としてもかなり使えるだろう。
これでアロマも、見た目がピンクのウサギから、ピンクのホーンラビットになった。
単なるホーンラビットの色違いだと思ったら、敵は痛い目を見ることになるだろう。
それとアロマに角をプレゼントしたことで、レフが自分にも何かないのかと催促してきた。
加えてそこに、アンクも参戦してきたのである。
これには、少々困った。
思えば、ネームドで何か渡していないのはレフとアンク、それとグインだけだ。
ちなみにずっと昔レフの首に付けていた赤い布は、いつの間にか無くなっている。
そういえば、進化した後には無くなっていたかもしれない。
大したものではなかったので、初進化の驚きですっかり忘れていた。
とりあえず今は無いので、今後使えそうなものが手に入ったら優先的に渡すことで納得してもらう。
グインは今復活中で何も反応はないが、一体だけ除け者にしたらかわいそうだ。
なのでグインにも、何か考えておこう。
なおこれまで渡した物は、こんな感じである。
・【ホブン】→スマッシュクラブと蛮族系防具
・【ジョン】→魔導ライフル銃(プロトタイプ)
・【サン】→緑斬のウィンドソード
・【トーン】→スケルトン召喚の杖(進化で消失)と骨と木の大盾×2(ジンの製作物)
・【アロマ】→死竜の角
装備によって強さが大きく変わるので、やはりレフたちにもいずれ渡した方がいい。
宝珠が指し示す先で、何か良い物が見つかればいいのだが。
そんな事がありつつも、この塔での狩りは無事に終わるのだった。
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