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第五章
178 塔のダンジョン ⑩
しおりを挟むまず問題なのは、転移後に待ち伏せされていることである。
だがこれは、可能性としては低い方かもしれない。
そもそもとして、相手は俺の存在自体に気がついていない可能性がある。
であれば、既にダンジョンを脱出しているかもしれない。
宝箱がある部屋には、おそらく外と繋がる魔法陣があるはずだ。
これまでのダンジョンでも、そうした脱出用の魔法陣があった。
そう考えるとまずは、外にいるアサシンクロウから様子を確認してみる方がいいかもしれない。
俺はそう思い、塔から少し離れた場所で待機しているアサシンクロウと、感覚を共有する。
するとダンジョンの入り口には、以前よりも人数が増えている事が確認できた。
増援とかでなければ、このダンジョンにいた冒険者かもしれない。
気がつかれると不味いので距離を取っているが、髪の色や服装くらいは分かる。
増えたのは、金髪・赤髪・青髪・黒髪だった。
その内、おそらく赤髪と青髪は女かもしれない。
赤髪は褐色肌でビキニのような姿であり、青髪はスカート姿だ。
黒髪は背が低く、男女どちらとも取れない。
そして金髪は、何となく男っぽい気がする。
遠くからでも分かる通り、他の冒険者とは違い目立つ四人だ。
別の場所で遭遇しても、おそらくこいつらだと判断できるだろう。
鷹の目を持つアンクを召喚転移で一度送ってもいいのだが、それは止めておく。
俺の直感のスキルが、危ないと告げていた。
もしかしたら、何か魔力の揺らぎのようなものを感じ取る者がいるのかもしれない。
それに、顔を細部まで確かめる必要はないだろう。
このままやり過ごそう。
アサシンクロウには念のため、もう少し距離をとらせて監視するように告げて、感覚の共有を解除した。
今の様子からすれば、この先にいる可能性は低いな。
だが絶対ではないのでスケルトンを三体召喚すると、そこにホブンを加えて先に転移させる。
これで魔法陣が消えても、ホブンを目印に転移すればいい。
仮に冒険者がいても、ホブンなら時間を稼げるだろう。
そうしてホブンたちを送り出したが、特に何も起きない。
冒険者も、いないようだ。
加えて魔法陣も残っていたので、レフとアンクを残して他をカードに戻す。
そして俺たちも、転移する。
転移した先は小部屋となっており、周囲には燭台と青い炎の蝋燭。この階の入り口に戻るための魔法陣があった。
ふむ。俺の考えすぎだったか。
しかしまだ油断は出来ないので、スケルトン三体を目の前の通路に先行させる。
俺たちは、それに続いた。
しばらく歩くと、難なく終着点にやって来る。
大きな宝箱と、帰還用の魔法陣。そして巨大なダンジョンコアがあった。
まず俺は、ダンジョンコアに鑑定を発動する。
名称:ダンジョンコア
説明
・ダンジョンを動かす心臓のようなものであり、破壊されるとダンジョンが崩壊する。
・ダンジョン内や周囲から得られた魔力を元にして、一定の期間経過でモンスターや罠などを全自動で補充する。
・魔力量が一定値を越えた場合、×××へと大量のモンスターを送ることで魔力を消費する。
・現在半身であるダンジョンボスの消失により、自己崩壊へと向かっている。
ホブンのいたダンジョンで見た時と、概ね似たような内容だ。
大きな違いは、どこかへモンスターが送られていることだろう。
どこに送られているのかは、鑑定しても知ることができない。
またボーンドラゴンをカード化したからか、崩壊へと向かっている。
ダンジョンボスが半身である故の崩壊であれば、階層守護者のスケルトンナイトは関係ないのかもしれない。
いや、あるのかもしれないが、崩壊までには至らない可能性がある。
おそらくここに来たあの冒険者も、ダンジョンコアの鑑定くらいはするだろう。
それで崩壊することが書かれていれば、流石にあそこまで落ち着いてはいなかったはずだ。
遠くから見た感じ、やり切った感が伝わって来た。
けど見張りをしていた他の冒険者たちとは、何となく距離があった気がする。
あまりあの四人は、他の冒険者と良好な関係ではないのかもしれない。
まあ、それについてはどうでもいいか。
問題は、送る場所がある事だろう。
その送った先でアンデッド軍団を編成した後に、他の国に侵攻している可能性がある。
この塔で出てきたモンスターは、見知ったモンスターが多かった。
もしかしたらこの塔のようなダンジョンが、他にもあるかもしれない。
探してみる価値は、十分にあるだろう。
さて、思考を巡らせるのもこれくらいにして、お待ちかねの宝箱を開けるか。
いつも通りスケルトンにまずは開けさせて、安全を確認する。
よし、問題はなさそうだ。
宝箱が無事に開いたので、俺はその中身を精査し始める。
これだけのダンジョンだ。いったい何が入っているのか、ワクワクするな。
俺は慎重に、一つずつ取り出していく。
そして宝箱の中に入っていた物は、次の通りとなった。
まず入っていたのは、金貨袋。
名称:金貨袋(大)
説明
多くの金貨が入っている袋。
中には、金貨が百枚以上入っていた。
以前装飾品に金を使い過ぎて金欠だったので、正直嬉しい。
次はセレクトオーブ(小)×2
名称:セレクトオーブ(小)
説明
念じることで、望んだ下級スキルを習得することができる。
これは欲しい下級スキルをピンポイントで習得できるので、利用価値は計り知れない。
使い道が多すぎるので、後々考えていこうと思う。
そして三つ目は、これだ。
名称:死竜の角
説明
・装備中は以下の能力を得る。
【火闇属性耐性(小)】【物理耐性(小)】
【自然魔力回復量上昇(小)】【瘴気無効】
・この角は頭部に自動装着される。
・この角は時間経過と共に修復されていく。
・この角は装備する者のサイズに調整される。
おそらく、装飾品となる。
装飾品の場所は指輪、腕輪、ネックレス、イヤリングと決まっているのだが、例外となる物が存在していたようだ。
それが、この死竜の角だろう。
だとすれば、かなり希少な物になる。
自分で付けてもいいのだが、この角はアロマに渡そうと思う。
ちょうどアロマの装備を探していたし、アロマは元々ホーンラビットだったが、進化を経て角を無くしている。
なので、この角はアロマにピッタリだろう。
アロマは耐久面に難があるので、この角の効果である程度改善もできそうだ。
故にこの角は、後でアロマに渡すことにした。
そうして次は、一気に三ついく。
名称:死竜の鎧
説明
・装備中は以下の能力を得る。
【体力上昇(中)】【火闇属性耐性(中)】
【瘴気無効】
・この鎧は【腕鎧】【足鎧】と同時に装備することで、以下の能力を得る。
【ドラゴン特攻】
・この鎧は時間経過と共に修復されていく。
・この鎧は装備する者のサイズに調整される。
・この鎧は周囲の環境温度に適応する。
◆
名称:死竜の腕鎧
説明
・装備中は以下の能力を得る。
【腕力上昇(中)】【ドレイン耐性(中)】
【環境弱体化無効】
・この腕鎧は時間経過と共に修復されていく。
・この腕鎧は装備する者のサイズに調整される。
・この腕鎧は周囲の環境温度に適応する。
◆
名称:死竜の足鎧
説明
・装備中は以下の能力を得る。
【脚力上昇(中)】【呪い耐性(中)】
【威圧無効】
・この足鎧は時間経過と共に修復されていく。
・この足鎧は装備する者のサイズに調整される。
・この足鎧は周囲の環境温度に適応する。
宝箱から出てきたのは、死竜の鎧セットである。
長い間ブラックヴァイパーの装備一式を使ってきたが、正直性能面は高くない。
なのでいつか買い替えようと思っていたので、この鎧一式が手に入ったのは正に渡りに船だ。
能力も申し分ないし、デザインもいい。黒色をベースに、所々白色が入っている。
骨鎧だが、無骨な感じは一切ない。早速着替えてみると、着心地は最高だ。
まるで鎧を身に纏っていないかのように、軽い。
しかし丈夫さは、折り紙付きだ。下手な攻撃は、一切ダメージを通さないだろう。
腕鎧もまるで、直接素手で触れているみたいな感覚がある。これは凄い。
試しにレフの背を撫でてみると、心地良い毛並みを感じ取れた。
「にゃぁ」
しかしレフには、少々不評。レフからすれば、腕鎧の感触のようだ。
なので撫でる時は、手首の部分から腕鎧の先を外してからにしよう。
また鎧は首から手先足先まであるが、蒸れた感じもない。とても快適だ。
装備に少し手間がかかるが、脱ぐのはストレージへの収納で一瞬である。
加えて様々な上昇、耐性、無効化もあり、とても優秀だ。
セット効果で、ドラゴン特攻もある。
ちなみにこれは、ドラゴンへ与えるダメージが50%上昇する効果だ。
今後ドラゴンと戦う際には、有利に戦うことができるだろう。
他に気になるのは環境弱体化無効だが、これはボーンドラゴンが発動したダークフィールドのような弱体化を、無効化するものだと思われる。
しかし俺には全属性適性があるので、例え様々な属性のフィールドを発動されても、強化されるだけだろう。
なのでこの環境弱体化無効の出番は、少ないかもしれない。
とりあえず気に入ったので、新しい防具はこのまま装備することにする。
なおこれまで世話になったブラックヴァイパーの装備一式は、ストレージにしまった。
しかしローブは引き続き、このまま使うことにする。
ついでに最早装備している意味をなさない、ストレージ偽装用の肩掛けバッグも収納した。
もう装備の質からして、収納系スキルを持っていてもそこまで驚かれないだろう。
邪魔だったし、ちょうどいい。
そして、宝箱にはあと一つあった。
最後に入っていたのは、これだ。
名称:導きの宝珠(塔)
説明
・所持していない導きの宝珠の場所を示す。
・全種類の宝珠が揃った時、一つになり新たな場所を示す。
・この宝珠は時間経過と共に修復されていく。
この大陸で重要なアイテムであることには、間違いなさそうだった。
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