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第四章

118 入国とエルフ

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 大変お待たせいたしました。
 四章を今日から開始いたします。
 __________

 国境門を抜けると、そこには森が広がっていた。

 周囲からは、何者かの視線を無数に感じる。

 おそらく、エルフが森の中に潜んでいるのだろう。

 まあ国境門だし、警戒はするか。

 すると森の中から、一人のエルフが現れる。

 見た目は金髪碧眼の美男子であり、革鎧を身につけていた。

 その手には、弓が握られている。

「何者だ。国境門を通ってきた理由を答えよ」

 さっそく誰何すいかしてきたので、俺は無難に返事をすることにした。

「俺は旅をしている者だ。これを確認してくれれば、問題ないだろ?」

 俺はそう言って、万能身分証をエルフに向けて見せる。

 距離は少し離れているが、弓を使うだけあってエルフは目が良いらしい。

 万能身分証を見ると、表情をけわしくさせた。

「チッ、まあいいだろう。だが人族、この国にお前の居場所はない。元いた国にさっさと帰るんだな。でなければ、後悔することになるぞ」

 エルフはそう言葉を吐くと、跳躍ちょうやくして木々をつたい、その場からいなくなる。

 だが実際にはある程度距離を離したあと、再び戻ってきて木の陰からこちらを見張っているようだ。

「にゃん」

 それをレフが教えてくれた。

 他のエルフにも、おそらく見張られているな。

 この突き刺さるような視線の数は、間違いないだろう。

 薄っすらとだが、殺気も感じる。

 一応入国許可は出してくれたみたいだが、安心はできない。

 以心伝心+で調べたところ、表層から嘘を言っている感じはしなかった。

 つまりこのまま進めば、命の保証は無いということだろう。

 むしろ、闇討ちしてきてもおかしくはない。

 おそらくあのエルフには、万能身分証がBランク冒険者証に見えたのだろう。

 Bランク冒険者が国境門を通れることは、創造神によって許されている。

 これを無視することは、排他的なエルフたちでも不可能のようだ。

 しかし入国後に何かするのは、別に問題が無いのかもしれない。

 今も薄っすらと、嫌な感じがする。

 気配や殺気を隠しているようだが、エクストラの直感がそれを告げていた。

 この国は大変だろうとは思っていたが、最初からこうなるとはな。

 とりあえずはこの場から離れて、襲ってくるようなら逃げるか返り討ちにするしかない。

 今更オブール王国に戻る気は無いし、最初から犯罪者になるのは避けたいところだ。

 この国にも転移者がいる可能性があるし、なるべく目立つことはしたくはない。

 そう思いながら、とりあえず俺は歩き出す。

 するとレフからの思念で、複数のエルフが俺の後をつけてきているとのこと。

 全員でないのは、国境門の見張りを続ける必要があるからだろう。

 これは、面倒なことになりそうだな。

 僅かにだが、殺気が強くなっている気がする。

 可能性としては、俺を襲う機会をうかがっているのかもしれない。

 別に始末してもいいのだが、おそらくそうすると俺がやったと断定されるだろう。

 戻ってこなければ、国境門に残ったエルフたちはそれに気が付く。

 ならここは穏便に、どうにかしてこれを回避するしかない。
 
 ゆえに俺は、まずレフにエルフの気配があまりしない方向を教えてもらう。

 そして限界まで離れた場所に、俺はスモールマウスを召喚した。

 よし、気が付かれていないみたいだな。

 周囲の反応からして、おそらくそうだろう。

 続いてスモールマウスに命じて、なるべく距離を稼がせる。

 あとはタイミングを計って、召喚転移をすれば逃げられるだろう。

 けれども問題があるとすれば、その瞬間を見られたくないということだ。

 転移系スキルがあると知られるのは、あまりよろしくない。

 なのでどうにか見られない方法がないか考えていると、あるものを発見する。

 それは見上げるほど大きな巨木であり、人が入れそうなうろがあった。

 流石は、エルフの国の森と言える。

 こうした巨木が、普通に存在していた。

 俺はさっそくレフを先行させて、内部を確認させる。

 どうやら中には何もいないようなので、俺もそれに続いた。

 少し狭いが、入れないこともない。

 続いて入り口を生活魔法の土塊で塞ぎ、地面の土をレフと協力して掘る。

 邪魔な根っこも引きちぎり、土と共にストレージに収納していく。

 デミゴッドの俺と縮小したとはいえBランクのレフにかかれば、あっという間に掘ることができた。

 そして俺は次にソイルワームを召喚して、遠くまで掘っていくように命じる。

 ソイルワームは成人男性を横に寝かせたくらいの大きさなので、エルフからすれば俺が掘ったように見えるだろう。

 さて、そろそろ巨木の周りをエルフが取り囲んでいる気がするので、俺はレフと共に逃げることにする。

 流石にこの穴があれば、エルフも転移したとはまず思わない。

 まあ、何らかの感知スキルを持っていた場合、少し怪しいが。

 いや普通に考えたら、俺が何らかの隠密系スキルを使った後に穴を掘り、逃げたと思うだろう。

 転移系スキルが非常に珍しいことは、実のところハパンナの街にいた時に調べている。

 エルフの国でも、そう簡単にいるとは思えない。

 なので見下している人族が転移系スキルを使うと考える可能性は、低いと思われる。

 ちなみに先ほどの会話と態度から、こちらを見下しているのは明らかだった。

 仮に感づかれた時は、その時に対処法を考えることにする。

 それに現状これ以上の方法を考えている暇は無いし、さっさと召喚転移をすることにしよう。

 俺はそう割り切ると、先ほど召喚したスモールマウスを目印にする。

 念のためスモールマウスに周囲を確認させたが、怪しい存在はいない。

 よし、これなら大丈夫そうだな。

 そして俺は召喚転移を発動すると、レフと共にその場から転移するのだった。

 ◆

 問題なく転移した俺とレフは、まずその場から離れることにする。

 レフを先頭にして、エルフの気配が薄い方へと走り出した。

 ちなみにスモールマウスは、念のためその付近に待機させている。

 あとは無数にフォレストバードを放ち、情報収集を命じた。

 アサシンクロウでないのは、ランクの高さから目立つことを考慮したからである。

 感知系スキルを持つエルフがいた場合、隠密スキルでも気が付かれる可能性があるかもしれない。

 逆にフォレストバードであれば、見つかってもそこまで警戒はされないはずだ。

 例えこの国にいないモンスターでも、見た目から普通の鳥だと勘違いされると思われる。

 なのでまずはこのくらいが、ちょうどいいだろう。

 また移動を優先して、道中の戦闘は避ける。

 初見のモンスターをいくつか見つけたものの、それは後からでも狩ることができるはずだ。

 そしてようやくエルフの気配が完全に消えたところで、俺たちは休憩を取る。

 もちろん、警戒は緩めない。

 にしても排他的だとは思っていたが、ここまでだと流石に面倒だな。

 おそらくエルフの村などを見つけても、入ることは難しいだろう。

 むしろ発見され次第、人族というだけで捕らえようとしてくるかもしれない。

 これは何か、対策をする必要がありそうだ。

 まあそれについては、少し考えがある。

 それは最近まで全く使用していなかった、エクストラの偽装だ。

 これまではステータスを偽装していただけだが、実は他にも使い道がある。

 実際に、試してみよう。

 俺は目の前に氷塊で氷鏡を作ると、それに映った自分に偽装を発動させた。

 まずは銀髪を金髪へと変えていく。瞳は元々碧眼なので、問題はない。

 次に耳をエルフのようにとがらせれば、もう完成だ。

 元々顔は整っているので、エルフと言っても違和感はないだろう。

 加えて俺の偽装はエクストラなので、早々にバレることは無いと思われる。

 また偽装する対象の変化が小さいほど、見破りにくくなる気がした。

 髪色と耳を少し変えたくらいなら、まずスキルでも看破されないだろう。

 他にも念のため、ステータスも変更しておく。

 ____________________

 名称:ジン
 種族:エルフ
 年齢:15
 性別:男
 種族特性
【闇属性適性】【シャドーネイル】
【魔力上昇(小)】【魔法耐性(小)】

 スキル
【契約召喚】【アイテムポケット】
【鑑定】【中級生活魔法】【下級鑑定妨害】

 ____________________


 こんなところだろうか。

 確かキャラクターメイキングの時、エルフは次の通りだったと思う。


 種族:エルフ(35ポイント)
 寿命:300年~500年
 特性
【属性適性をランダムに1~2つ】【適性を得た属性の下級属性魔法をランダムに1~2つ】
【魔力上昇(小)】【魔法耐性(小)】【杖系、弓系の武器適性を得る可能性】


 ファンタジーなら有名な種族ということもあり、よく覚えていた。

 なのでこれなら、例え鑑定が通ったとしても誤魔化せるだろう。

 まあ俺には超級鑑定妨害もあるし、魔力量でも圧倒して防ぎきることはできると思うが。

 逆にそれを突破して見られた場合、この偽装も見破られるだろう。

 そう考えると、ステータスの偽装はただの自己満足になるかもしれない。

 けれども何が起こるか分からないし、念のためステータスも偽装しておこう。

 そうしてステータスの偽装も済んだので、俺は休憩を終わりにする。

 さて、これで自由になったことだし、手に入れていないモンスターをカード化しに行こう。 

 俺はそう心の中で呟くと、レフと共にその場から歩き始めるのだった。
 
 __________
 読んでいただきありがとうございます。
 四章より私生活との兼ね合いの結果、隔日更新にすることにしました。
 申し訳ございません。

 更新優先で後回しにしていたことを処理していたら、とても大変だったので。
 (^-^;

 色々と調整がとれるようになったら、更新頻度も増やしていきたいと思います。

 ちなみに四章のおおまかなプロットは最後まで書けているので、大きな変更が無ければ大丈夫だと思います。

 そういう訳で引き続き、モンカドをよろしくお願いいたします。
 <m(__)m>

 乃神レンガ
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