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第三章

111 ダガルマウンテン ①

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 ここが、ダガルマウンテンか。

 召喚転移でやって来ると、目の前には巨大な山、ダガルマウンテンが見える。

 それとこの山はどうやら、活火山でもあるようだ。

 周囲にはゴツゴツとした黒っぽい岩などが、大量に散乱している。
 
 また多くのモンスターが、この山に生息しているとのこと。
 
 ふもとですら弱くても、Dランクが多いらしい。

 このダガルマウンテンは、リジャンシャン樹海よりも上の天然のダンジョンだ。

 おそらくこの軽装備で挑むのは、本来自殺行為だろう。

 だが俺には召喚転移やストレージがあり、デミゴッドの身体能力もあるので問題はない。

 たぶん登山病にも、かからないだろう。

 そういう訳で、さっそく俺はダガルマウンテンへと挑む事にする。

 なお今回のメンバーは、俺・レフ・ホブン・ジョン・アサシンクロウだ。

 ちなみにこのアサシンクロウは、ユニーク個体である。

 
 種族:アサシンクロウ
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【隠密】【暗殺】【追跡】【警戒】
【ナイトビジョン】

 スキル
【鷹の目】【声真似】【体力上昇(小)】


 見れば分かる通り、なんとスキルを三つも覚えていた。

 鷹の目は遠くを見ることができるスキルであり、声真似は文字取り声を真似ることができる。

 特に声真似が、地味に凄い。

 俺が全感共有でアサシンクロウを操作している時、このスキルで相手と会話することができる。

 今後どこかで役に立つことは、間違いない。

 それと他にもユニーク個体が手に入っており、オークとトレントに一体ずついる。
 
 もしかしたらランクの低い方が、ユニーク個体が出やすいのかもしれない。

 なおその二体の能力は、次の通りである。


 種族:オーク
 種族特性
【腕力上昇(小)】【体力上昇(小)】
【悪食】【他種族交配】

 スキル
【精力上昇(小)】

 種族:トレント
 種族特性
【自然治癒力上昇(中)】【硬化】
【エナジードレイン】【身体操作上昇(小)】

 スキル
【樹液生成】【再生】


 オークはハズレだったが、トレントは大当たりだった。

 まず樹液生成は、水のようなほんのり甘い樹液が出てくる。

 当初は当たりだとは思わなかったが、ふとあることに気が付いて煮詰めてみた。

 するとまるでメープルシロップのように甘くなり、それからというものパンにかけている。

 ただ樹液生成を一度に使用しすぎると、トレントが衰弱すいじゃくしてしまうので注意が必要だ。

 一応水と魔力を与えることで元気になり、再び使用することが可能になる。

 何気に再生のスキルも、樹液生成の再使用に貢献こうけんしているらしい。
 
 この樹液からできるシロップはとても有用なので、俺はこいつを育てることにした。

 ランクアップをさせれば、果物も得られるようになるだろう。

 だがあまり動けるモンスターではないので、今は召喚しないことにしている。

 ちなみにこの時知ったことだが、レフは酸味は感じるものの、甘みは感じないらしい。
 
 これは甘くなった樹液を舐めたときに首をかしげたので、試しに感覚を共有してみたところ発覚した。

 モンスターや動物の生態にそこまで詳しくないので分からないが、もしかしたら猫系は甘みを感じないのかもしれない。

 なので逆に俺の味覚を共有してみたところ、レフにとってそれは未知との遭遇となってしまう。

 味わったことのない感覚は、レフにとって刺激が強すぎたようである。

 これはあまり、俺の味覚をレフに共有しない方がいいかもしれない。

 慣れすぎると、元々の味覚では満足できなくなるだろう。

 そんなことを思い出しつつ、俺は今回連れていくメンバーを召喚した。

 さて、このダガルマウンテンには、いったいどのようなモンスターが現れるのだろうか。

 おそらくこの山にも主がいる可能性があるし、今から楽しみだ。

 そうして俺は召喚したモンスターたちと共に、ダガルマウンテンに挑み始める。

 リジャンシャン樹海と比べれば、規模はそこまで大きくはない。

 だが道などは当然整備されていないので、進むのには時間がかかるだろう。

 もちろんルートなども、自分で探す必要がある。

 ある程度は身体能力でごり押しして、どうしても進むのが難しい場合には、召喚転移を活用することにした。

 だが今いるのはふもとであり、道はなだらかだ。

 険しい登山となるのは、当分先だろう。

 俺がそう考えながら進んでいると、見たことのあるモンスターが目の前に現れる。

「グゴゴ!」
 

 種族:ロックリザード
 種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(小)】
【ストーンバレット】【物理耐性(小)】


 ロックリザードか。

 確かリードが従えていた、Dランクのモンスターだったな。

 であればここは、ジョンに戦わせよう。

「いけ、ジョン」
「ウキ!」

 俺の指示を受けて、ジョンが敵へと向っていく。

「グォ!」

 するとジョンに気が付いたロックリザードが、ストーンバレットを放つ。

 それに対してジョンは、動きが遅く見える芋虫の下半身を素早く動かして、うまく回避した。

 またお返しとばかりに、糸を吹きかけて相手を束縛する。

 続いてジョンは動きが鈍ったロックリザードへと近付き、毒爪を繰り出した。

「ウキ! ウキャッ!?」

 しかしロックリザードの鱗は硬く、ジョンの毒爪では傷をつけるのが難しい。

 柔らかそうな目を狙っても閉じて防がれ、口も開ける様子もなかった。

 どうやらロックリザードのまぶたも、同様に硬いようである。

 更にロックリザードは束縛されながらも何とか身体を地に伏せて、腹を守った。

 なるほど。勝てないと判断したらひたすら耐える感じか。

 実際守りに徹したロックリザードに、ジョンは成す術もなさそうだ。

 強力な一撃が無ければ、同ランクだと勝つのは難しいだろう。

 そう思いジョンをここで下げ、代わりにホブンを向かわせた。

 ホブンであれば、十分勝てるだろう。

「ゴッブア!」
「ギョア!?」

 すると思った通り、ホブンのスマッシュで簡単に倒すことができた。

 打撃武器というのも、相性が良いのだろう。

 そうしてホブンが倒したロックリザードを、俺はカード化する。

「よし、ロックリザード、ゲットだ」

 時間稼ぎ要員としてなら、それなりに使えるだろう。

 なのでこのモンスターも、生贄以外にいくつか確保することを決める。

 他にも道中、ロックハンドとロックフットが現れた。

 既に数は揃っているが、生贄のためにこいつらも集める。

 この二体は瞳が弱点なので、ジョンでも倒すことができた。

 それと何となくこの山に出現するモンスターの名称は、ロック○○が多い気がする。

 ロックゴーレムもいるようだし、あながち間違ってはいないだろう。

 そんなことを思いながら、俺たちは進む。

 また見晴らしも良く人が来ないからか、モンスターの数が多い。

 特にロックハンドとロックフットは、集団行動の種族特性を持っている。

 それ故に、数体から数十体単位で襲ってきた。

 個人的には生贄が手に入るので嬉しいが、普通なら面倒に違いない。

 一体一体は弱点もあるザコモンスターだが、硬化からの突進は中々のものである。

 特にホブンとジョンに当たることが多く、何度か超級生活魔法の治療を使用した。

 やはり治療は、かなり使える能力と言える。

 これが無ければ、ジョンなどは既に脱落していただろう。

 またこの戦いは、ホブンやジョンにとって良い経験になったようである。

 そうしてモンスターを倒していき、おそらくダガルマウンテンの二合目辺りに来た。

 山には少しずつ、傾斜がついてきている。

 ここからは事故が起きないように、気をつけよう。

 慣れない地形で戦えば、転倒する可能性があるかもしれない。

 そこをもしBランクのモンスターに不意を突かれれば、面倒なことになる。

 あとは召喚したばかりだが、ここでジョンをカードに戻すことにした。

 相性が悪そうだし、移動も難しくなるだろう。

 なのでここからは、俺・レフ・ホブン・アサシンクロウで行く。

 グインは要所要所で出していこう。

 それから少し休憩した後、俺は山の頂上を目指して歩き始めるのであった。

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