上 下
110 / 203
第三章

108 リジャンシャン樹海 ④

しおりを挟む
 あれから数日かけて、狩りを続けていた。

 ジャイアントサーペントは比較的手に入ったが、他の二種が中々集まらない。

 なので途中からは、Dランクのモンスターも生贄の数合わせのために集め始めた。

 そしてこの樹海に来てから集めたカードは、次の通りになる。

【Cランク】
 ・ジャイアントサーペント 56枚
 ・アサシンクロウ 22枚
 ・アプルトレント 18枚

【Dランク】
 ・オーク 123枚+元々所持していた50枚=173枚
 ・ホブゴブリン 82枚+元々所持していた50枚=132枚
 ・スリーピングバタフライ 46枚
 ・トレント 32枚


 ダンジョンとは違って、集まりが悪い。

 理由はダンジョン種とは違い自然種だと、倒せば数が簡単に補充されないからだろう。

 またダンジョン種が積極的に襲ってくるのに対して、自然種は警戒心も強く、勝てない相手へ無理に挑む個体が少ない。

 一応自然種も空気中の魔力、魔素によって自然発生するが、ダンジョンよりも発生は遅いようだ。

 ちなみに街や村などでは、人が空気中の魔素を中和するため、モンスターが自然発生しないらしい。

 俺もその点は詳しくは知らないが、人通りの多い場所も同様とのこと。

 この魔素が濃いほど強く、また周囲の環境によって発生するモンスターが変わるらしい。

 なのでこのリジャンシャン樹海の深層は魔素が濃いため、Cランクモンスターが現れる。

 それと種類が少ないのも、これが関係していそうだ。

 まあそういう訳で、生贄を集めるのはまだまだ時間がかかりそうである。

 ちなみにこれでようやく、他と合わせて生贄の点数が500点を少し超えたくらいだ。

 先は長い。

 ゆえにここからは、人海戦術で行くことにする。 

 召喚するのは当然、リビングアーマー千体だ。


 種族:リビングアーマー
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(小)】
【技量上昇(小)】【マナドレイン】
【自動修復】


 そして千体を十体一組の分隊にして、合計百分隊ほど用意する。

 加えて所持している武器をできる限り渡してから、樹海内に送り込んだ。

 俺は更地に待機して、アロマラビットのリラックスアロマで魔力の回復に専念する。

 流石にこの数の召喚は、かなり無理があった。

 アロマラビットがいなければ、魔力回復量がマイナスになっていただろう。

 また自然魔力回復速度上昇(中)も、いい仕事をしている。

 動かず楽な姿勢をとりながら、何か食べ続けることでギリギリ均衡きんこうを保っていた。

 なお食事をすると、その質によって自然回復量が増える。

 それと周囲はレフやホブン、グインに守らせた。

 ちなみにジョンはいなくても変わらないので、カードに戻している。

 そうしてしばらく待っていると、リビングアーマーたちが獲物を運んできた。

 ただし半殺し状態であり、止めはここで刺す。

 倒したところと死骸の距離が離れすぎていると、何故かカード化できないからだ。

 またここまで運んでもらうのは、距離が離れるほどカード化する時の魔力消費が増えるからである。

 カード化の原理について少し気になったが、いずれ時間ができた時に色々と試してみよう。

 それと運ばれてきた獲物はDランクが多めだが、Cランクもいる。
 
 俺の軍団指揮による補正と、数と武器で有利に戦ったようだ。

 他にもリビングアーマーは、マナドレインのスキルで相手から魔力を奪うことで、俺が渡す魔力量を減らすことにも貢献してくれた。

 それにより魔力に余裕が出てきたので、超級生活魔法を活用して棍棒を作っていく。

 材料は、当然樹海の木である。
 
 更地にする過程で、大量に貯蔵してあった。

 それとどうやら生活魔法の貯蔵に入れてあるものは、そのまま解体の生活魔法でバラすことができるようだ。

 更にそこから製作の生活魔法で、貯蔵内部の木材から棍棒を作り出す。

 この三つの生活魔法は、元々組み合わせて使用することが前提だったようである。

 そうして次々に棍棒を作り出し、戻ってきたリビングアーマーの中で武器を持っていない個体に渡していった。

 すると武器を持ったことで効率が良くなったのか、モンスターが運ばれる頻度が増えてくる。

 俺が直接動くよりも、こっちの方が効率がいいな。

 千体をオーバーレボリューションで一体にするつもりだが、ここまで使えると悩む。

 しかし元々そのためにここに来たので、やはり予定通り融合させることに決める。

 それから順調に狩りが進んでいくが、中にはやられてしまう個体もいた。

 リビングアーマーは防御面で優れているが、戦いを続けていれば消耗していく。

 加えてアサシンクロウが相手の場合、基本的に不意打ちを喰らってからの戦いになっているようだ。

 やられるのは、仕方がない。

 けれども十二時間経てば、問題なく復活するはずだ。

 おそらくこれが、カード召喚術の正しい使い方だろう。

 術者自身が戦う方が、本来異端なのだ。

 二重取りが無ければデミゴッドも選べなかったし、スキルも進化しなかった。

 もし俺がカード召喚術だけしか持っていなければ、前に出て戦うことはしなかったかもしれない。

 そんなことを思いながら、運ばれてくるモンスターをカード化していく。

 また周囲のモンスターが減れば、その都度移動を繰り返す。

 正に順調そのものだった。

 しかしそんな時、事件が起きる。

 ん? リビングアーマーが次々にやられているのか!?

 短時間でいくつもの繋がりが消失したことに、俺は驚愕きょうがくする。

 そして実際手元には、十枚のカードが戻ってきた。

 武器を持たせたリビングアーマー十体を倒す存在が、どうやらこの樹海にいるらしい。

 もしかして、樹海の主だろうか?

 これは、狙うしかないな。

 俺はそう思い、他のリビングアーマーたちに捜索を命じる。

 場所はリビングアーマーのやられた感覚から、おおよそ分かっていた。

 予想では、Aランクだと思われる。

 Bランクならば、ここまで短時間にやられる事はまず無い。

 だが逆に、Aランクを超える存在ではないとも感じていた。

 そうであれば、やられる直前のリビングアーマーから何かを感じていただろう。

 俺の直感スキルも反応していなかった。

 強いが、理不尽ではない。

 やられる直前の繋がりから予想するに、概ね間違っていないと思われる。

 むろん油断する気はないが、特出したスキルを所持していなければ、おそらく勝てない相手ではないだろう。

 そうして待っていると、対象を発見したらしいので俺も現場へと向かう。

 リビングアーマーたちには、それまでの足止めを命じておいた。

 一度感覚を共有して確認しても良かったが、それよりも移動を優先する。

 移動しながら使うのは、まだできそうになかった。

 加えて、魔力もかなり足りていない。

 自然回復量を増やすため食事を取り続けていたこともあり、魔力を回復するポーションの使用も難しかった。

 なので少しでも、魔力の消費を抑えたい。

 またその間にも、どんどんリビングアーマーの数が減っていく。

 だがそれ以上にリビングアーマーが集まってきているので、十分間に合うだろう。

 加えて減る速度から見ても、やはりいいところAランクモンスターだと思われる。

 敵の姿は気になるが、それは辿り着けば分かることだ。

 それにリビングアーマーに問いかければ、ある程度の情報が送られてくる。

 敵の使う能力についても、概ね把握した。

 油断はしないが、十分に対処はできる。

 そうしてリビングアーマーが百体ほどやられた頃、俺は目的地に辿り着いた。

「グォオウ!」

 あれが、この樹海の主か。

 それはぱっと見、空色のとらだった。

 体中には、電気のようなものをまとっている。
 
 俺はすぐさま、鑑定を発動した。


 種族:スパークタイガー
 種族特性
【雷属性適性】【雷耐性(大)】
【蓄電】【放電】【威圧】【気配感知】
【サンダーブレイク】【エレクトリックムーブ】


 能力を見た感じだと、やはり雷系スキルを操るAランクのモンスターか。

 エクストラや通常スキルが無いので、特殊な個体ではないようだ。

「にゃにゃ!」

 するとレフが敵を見て、俺にあることを伝えてくる。

 なるほど。あいつを次のフュージョン素体にしたいのか。

 確かに、レフとの相性は良さそうだ。

 同じ猫科だろうし、いびつな姿になる可能性は低いだろう。

 Aランクモンスターは貴重だが、レフを強くした方が良いと判断した。

「わかった。アレはレフにやろう」
「にゃっ!」

 俺がそう言うと、レフは自分が戦うと声を上げる。

 フュージョンするのであれば、それが筋だと言う。

 レフの種族であるグレネスレーヴェは、おそらくBランクだ。

 エクストラや俺の軍団指揮の効果など考えれば、勝てる可能性は十分にある。

「そうか、なら全力で行け」
「グルオウ!」

 俺の言葉を聞いたレフは、縮小を解いて本来の大きさに戻った。

 サイズを比べると、レフの方が断然大きい。

 だが大きさなど、高ランクの戦いでは不利になることもある。

 さて、レフはどのように戦うのだろうか。

 窮地きゅうちになればもちろん助けに入るが、できる限り全力でやらせよう。
 
 そうして、レフとスパークタイガーの戦いが始まった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学
ファンタジー
 馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。  テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。  無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

夜明けには程遠い【完結】

米派
BL
古くから、人と魔族は大陸の支配者になろうと争い続けてきた。勇者の剣に選ばれたことで泥沼化した戦争に巻き込まれ、ただの高校生が役目から逃げられなくなる話。 復讐者×剣に選ばれてしまった高校生がメインです。 途中で、主従の脇CPのお話が入ります。 ※所々、倫理観を捨てている部分がありますので、ご注意ください。立場上、主人公が人を殺す場面があります。 こちらは他サイトにも置いてあります。

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...