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第三章

106 リジャンシャン樹海 ②

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 ユニゾンフュージョンを開始すると、十枚のカードが一層強く輝き一つになっていく。

 そして光が消えると、新たな一枚のカードとなっていた。


 種族:アロマラビット
 種族特性
【癒属性適性】【リラックスアロマ】
【ヒールアロマ】【リフレッシュアロマ】

 エクストラ
【ユニゾンモンスター】


 アロマラビットか。

 カードから見た感じ、色合いはピンクのウサギである。

 またホーンラビットのような、角は無い。

 色合い以外は、モフモフ度の増した普通のウサギである。

 それと初めて見る種族特性と、エクストラを所持しているようだ。 

 リラックスアロマは、気持ちを落ち着かせて自然魔力回復力を一時的に高めるらしい。

 魔力を常時消費し続けている俺からすれば、それだけで有用と言える。

 次にヒールアロマは痛みを消して、自然回復力を一時的に高めるようだ。

 加えて殺菌効果や、軽い病気にも効くらしい。

 俺にはそこまで必要ないが、いつか役に立つかもしれない能力だ。

 そしてリフレッシュアロマは、状態異常を治せるらしい。

 といっても全てではなく、毒や麻痺などの基本的な状態異常で、尚且なおかつ軽度のものに対してだけだ。

 これも俺にはあまり恩恵は無いが、いずれ役に立つかもしれない。

 あと肝心のエクストラは、このようになっている。


 名称:ユニゾンモンスター
 効果
 ・元になったカードの枚数に応じて、生命力や魔力、身体能力などが上昇する。
 ・個を確立する。


 ぱっと見他と比べて控えめだが、ユニゾンモンスターにはある制限がない。

 それは、ランクアップやフュージョンが可能という点である。

 有用な種族特性を持っているし、何気に癒属性適性のモンスターも初めてだ。

 このアロマラビットも育てることにした。

 そういう訳で、さっそく召喚してみる。

「きゅぃ!」

 大きさは、普通のウサギと変わらないようだ。

「この毛触りは、凄いな」
「きゅいきゅい!」

 触れてみると、とてもふわふわだった。

 これは、くせになる触り心地だな。

「にゃにゃ!」
「ん?」

 すると枕になっているレフが声を上げるので、レフも撫でてやる。

 レフの毛触りはサラっとしており、これはこれでいいものだ。

 そうして二匹を撫でた後、アロマラビットだけでは寒いので掛け布団を取り出した。

 一応寝る前に他のカードも確認してみたが、現状進化できそうなものはない。

 ゴブリンも可能性があると思ったのだが、何か条件を満たしていないのだろう。

 それにゴブリンのカードは、その大部分をホブンのランクアップ時に消費している。

 なので、初期ゴブリンはほとんど残っていない。

 まあ、今更仕方がないか。

 とりあえず、今日はもう寝よう。

 ついでに、アロマラビットにリラックスアロマを発動させてみる。

「これはいいな」

 フローラルな香りが広がり、心が落ち着いていく。

 安眠効果も期待できそうだ。

 もしかして寝具として使っていたから、こうした種族特性を持つモンスターになったのだろうか。

 関係なくはなさそうだ……。

 そう思いながら、俺は眠りについた。

 ◆

 翌朝準備を終えた俺は、再びリジャンシャン樹海を進み始める。

 ちなみに夜に襲撃してきたモンスターは、ほとんどいなかったようだ。

 思ったよりもこの樹海にいるモンスターは、警戒心や実力差が分かっているのかもしれない。

 あれだけのリビングアーマーが守りを固めていれば、まあ当然か。

 それでも何匹か倒されていたので、間抜けなモンスターはいたようだ。

 ちなみに残念ながら、初見のモンスターはいない。
 
 また今日のメンバーは、俺・レフ・ホブン・ジョン・アロマラビットである。

 アロマラビットを連れるのは、その実力を見るためだ。

「ブフゥ!」

 するとさっそくオークが現れたので、ジョンと共にアロマラビットを戦わせてみる。

「ウキィ!」
「きゅい!」

 だがやはりというべきか、能力的に戦闘は得意ではないようだ。

 ジョンに対してヒールアロマを発動して、サポートに回っている。

 それとどうやらヒールアロマは、対象を選べるようだ。

 敵味方関係なく発動するのかと思っていたので、これは良い誤算だった。

 またエクストラのユニゾンモンスターのため、身体能力自体は高そうである。

 すばしっこいので、オークの攻撃はまず当たらないだろう。

 後は攻撃力を見たかったので、アロマラビットに体当たりを命じた。

「きゅい!!」
「ぶひゃっ!?」

 するとオークはアロマラビットの一撃を受けて、苦痛により顔をゆがめている。

 どうやら体当たりするだけでも、そこそこ威力があることが分かった。

 ふむ。戦闘能力自体はそこまで高くは無いが、種族特性も加味してランクはDだろう。

 俺はそう判断すると、ジョンに止めを刺させた。

 まあ戦闘能力は別に無くてもいい、俺の手持ちにはサポート要員が少ないので、種族特性のアロマ系スキルだけで有用だ。

 そうして戦闘が終わり先へと進んでいると、また新たなモンスターが現れる。

「あれは……」

 俺が思わずつぶやいてしまったのは、それが巨大な紫色の蝶だったからだ。

 襲撃犯の一人であったアミーシャ、本名ミシェルが使役していたモンスターである。

 こんなところにいたのか。

 とりあえず、鑑定。


 種族:スリーピングバタフライ
 種族特性
【眠り鱗粉】【眠り耐性(中)】
【吸血】【姿隠し】


 見たところ、暗殺者タイプのようだ。

 しかし俺に見つかっている以上、飛んでいるだけの大きな蝶である。

 緑斬リョクザンのウィンドソードを抜き、ウィンドカッターで簡単に仕留めた。

 そして無事にカード化する。

 眠り鱗粉は使えそうだし、それなりの数が欲しいな。

 俺はそう思い、奥に進むよりも先にスリーピングバタフライを探すことにした。

 ここはおそらく中層であり、ほぼDランクモンスターだけしか現れない。

 稀に、Eランクモンスターが出てくる程度である。

 出現するのは、オーク・ホブゴブリン・スリーピングバタフライ・ゴブリン・グリーンスネークだった。

 グリーンスネークは、シルダートダンジョン以来である。

 他はモンスターではなく、おそらく普通の動物や昆虫だろう。

 それとあと一種類、初見のモンスターが現れた。


 種族:トレント
 種族特性
【自然治癒力上昇(中)】【硬化】
【エナジードレイン】【身体操作上昇(小)】


 リトルトレントの上位種の、トレントである。

 見た目は成木であり、顔が付いているのが特徴だ。

 木の枝を器用に操り、襲い掛かってくる。

 また硬化を発動させているので、普通の人が当たれば骨折をするかもしれない。

 加えて細い枝を伸ばし、対象を捕まえて生気を吸い取る事も可能なようだ。

 リトルトレントの時と比べると、かなり強くなっている。

 だが動き自体は遅く攻撃範囲も限られているので、対処は容易だった。

 また顔が弱点らしく、そこを潰すと簡単に息絶える。

 当然カード化して、集めることにした。

 それから一日かけて、スリーピングバタフライとトレントを三十枚ほどそろえる。

 時間を使ってしまったが、あせる必要はない。

 国境門は開く予兆こそあるが、早くても開くのは一週間以上先である。

 そして閉じるとしても、一ヶ月以上は開いたままになるらしい。

 なので、時間的余裕は結構ある。

 さて、そろそろ先へと進むか。

 Cランクモンスターをゲットするのが、楽しみだ。

 そうして俺は樹海を進み続け、リジャンシャン樹海の深層に辿り着くのだった。

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