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第三章

102 新たな可能性

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 俺がハパンナの街に戻って来てから、あっという間に日々が過ぎていく。

 リードとも再会して、戻ってきたことを喜ばれた。

 そして俺はカード化が再びできるまでの間、ハパンナ子爵の元で手伝いをしている。

 食料を確保するためダンジョンに潜ったり、街道に現れた盗賊を倒したりもした。

 他にもフォレストバードを召喚して、ラブライア王国の状況を確認している。

 俺の召喚したモンスターは飲まず食わずで活動可能であり、こうした偵察にはうってつけだった。

 それによって判明したのは、ラブライア王国がドラゴルーラ王国に追加の部隊を進軍させたことである。

 どうやら原因は、俺の乗っていたグリフォンにあるらしい。

 ドラゴルーラ王国にはグリフォンを操る名家があり、単独戦闘や偵察を得意としているようだ。

 そして近頃、その名家の若き当主が見つからないようである。

 よって今回現れたグリフォン使いは、その人物ではないかという憶測が飛び交った。

 しかしグリフォンに乗っていたのが女だったことは、指名手配されたことでみんな知っている。

 だがその矛盾については、若き当主が女装で乗り込むような人物ということで片が付いた。

 ある意味真実であるために、俺はこれを知ったとき何とも言えない気持ちになり落ち込んだ。

 また俺の正体を知っているツクロダのメイドたちだが、なんと既に死亡していた。

 ツクロダが死亡したことで自決したのか、それとも何らかの効果で道連れにされたのかは不明である。

 後味が悪い結果になってしまったが、今更どうしようもない。

 あとはブラッドの捜索も続けられていたようだが、ブラッドが元々オブール王国にいて、そこからやってきたことを知る者はいなかった。

 なので現状、オブール王国は半ば放置されている。

 故に進軍される気配はなさそうなので、しばらくは安全そうだ。

 まさかあの時のグリフォン使いを倒したことで、このような結果になるとは思わなかった。

 しかし有利に働いた事には違いないので、良しとする。

 ちなみにドラゴルーラ王国にも偵察を送り込んだが、一定の距離に近付くとなぜか見つかってしまい、排除されてしまった。

 偵察モンスターを感知する何かが、おそらくあるのだろう。

 けれども道中の景色から、その荒れ具合はよくわかった。

 多くの街や村が、壊滅状態のようである。

 傷跡から見るに、リビングアーマーに持たされた銃によるものだろう。

 かなりの侵略をされていることから、俺がツクロダを倒さなければ敗戦していたかもしれない。

 なお遠目から見た最前線では、現状ラブライア王国軍に対して、ドラゴルーラ王国が優勢に見えた。

 ツクロダの魔道具が無くなったことが、逆転の切っ掛けになったのだろう。

 あとは俺が出てきた国境門側も、偵察している。

 だがこちらは、特に動きはない。

 進軍はしておらず、守りだけを固めている状態だ。

 ラブライア王国の相手だけで、手一杯なのだろう。

 運が良いことに、俺が元々いた大陸からの進軍も無いようだ。

 まあそもそもとして、あの国に進軍する意思はあまり無かったので当然だろう。

 来れば迎え撃つというスタンスで、あの強大な壁を建設したのだと思われる。

 だが進軍しないとはいえ、ドラゴルーラ王国がこちらに戦力を割いているのも事実だ。

 おそらくドラゴルーラ王国は、オブール王国に何かしらの取引を持ちかける可能性がある。

 そうなれば、ラブライア王国も終わりが近い。

 取引の結果がどうであれ、二国に押しつぶされる事になるだろう。

 そうした情報を、俺はハパンナ子爵にも伝えていた。

 ちなみに情報は、俺の存在が明るみに出ない程度に活用するらしい。

 また偵察以外では、報酬でもらったスキルオーブを使用した。

 それにより自然魔力回復速度上昇(小)は、(中)に進化している。 

 加えて召喚移動のスキルは、召喚転移になった。

 二つのスキル効果は、以下の通りになっている。


 名称:自然魔力回復速度上昇(中)
 効果
 魔力の自然回復速度を上昇させる。

 名称:召喚転移
 効果
 魔力を消費することにより、自身の召喚済みモンスターの付近へ転移することが可能になる。


 自然魔力回復速度上昇は思った通りだが、召喚転移が凄い。

 なんとラブライア王国に偵察に行かせていた、フォレストバードの元に転移できてしまったのだ。

 もちろん莫大な魔力量を消費したが、それを支払うだけの価値がある。

 また転移には召喚したモンスターとの精神的な繋がりや、場所を把握していることが重要のようだ。

 もちろん消費魔力量が増えることは前提として、遠ければ遠いほどそれが重要になってくる。

 しかし俺の場合カード召喚術によって、距離の長さ関係なく、強い繋がりがあった。

 これはどうやら、普通のサモナーには無い感覚らしい。

 加えて全感共有や以心伝心+で、繋がりを強める事ができる。

 場所の把握についても、問題はなかった。

 意識すれば繋がりから場所を把握できるし、全感共有で直接確認することもできる。

 つまり本来大変な工程が、俺であれば難なくできてしまうという訳だった。

 ちなみにその時の帰りには、未だに貸し出しているハイオークを目印にして戻っている。

 また二重取りで増えた縮小の二つについては、今後のために取っておいた。

 なお今回のスキル取得でも、まだ容量の限界はきていない。

 だがいずれ限界は来ると思われるので、取得するスキルは厳選する必要があるだろう。

 それと増えた分のスキルオーブを使おうとしたが、何も起きなかった。

 どうやら上位スキルがある場合、そもそも使用することができないらしい。

 なので二重取りも、もちろん発動しなかった。

 本来冒険者なら知っていて当たり前なのかもしれないが、俺はそうした部分が抜けている。

 これも強さだけで、一気に駆け上がってきた弊害へいがいだろう。

 そんな時ふと、最初に色々な知識を教えてくれたベックたちや、プリミナたちのことを思い出す。

 彼らは元気にしているだろうか? 特に、プリミナの事が気になってしまう。

 別れも告げられずに、この大陸に来てしまった。

 そういえば、ベックたちにグレイウルフをあげたんだよな……もしかして……。

 すると意識すれば、ベックたちに譲渡したグレイウルフとの繋がりを感じた。

 国境門を越えているのに、まさか感じ取れるとは……。

 だとすれば、転移できるのか?

 召喚転移の条件は自身の召喚したモンスターということだが、カード召喚術の譲渡は特殊だ。

 可能性はある。

 そう思い、俺は召喚転移を試みた。

 だが、何も起こらない。いや、魔力が足りなかった。

 それにより、転移が失敗したのだろう。

 しかし魔力さえあれば、おそらく転移できる。

 これは、物凄い発見ではないだろうか?

 国境門が一度閉じれば、同じ場所に繋がることは難しい。

 ゆえに別れた人物とは、二度と会えないと思っていた。

 けれども俺がカードを譲渡していれば、その前提がくつがえる。

 今は魔力こそ足りないが、自由に他の大陸に転移することができるようになるかもしれない。

 また国境門からの移動前に俺がモンスターを召喚しておくという手もあるが、それだとそのモンスターがやられた場合、転移することができなくなる。

 だが譲渡していれば、モンスターが死亡してもその者が再召喚すればいい話だ。

 もちろん譲渡者が死亡すればお終いだが、複数人に譲渡していればそれも解決だろう。

 しかしだからといって、どうでもいい者にカードを譲渡したいとは思わない。

 今回ならハパンナ子爵家の人たちが、譲渡相手に適しているだろう。

 元々カードを譲渡する気はあったし、問題はない。

 あるとすれば、何を渡すかになる。

 それについても、色々考えておこう。

 とりあえずはカード化ができるようになるまで、今の生活を続けることにする。

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