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第三章

094 ツクロダとの決戦 ③

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 ダークネスチェインを駆使して、リビングアーマーを倒す。

 またモンスターたちに指示を出して、なるべく消耗を抑えるように戦わせる。

「ぐあぁ!?」

 すると、ブラッドのそんな悲鳴が聞こえてきた。

 集中して狙われているからか、避け切れないみたいである。

 俺はそれに対して、身を挺してでもブラッドを守った。

 ブラッドがやられてしまうと、俺が自動的に隷属化させられてしまう。

 であるならば、俺が受けた方がまだマシだ。

 デミゴッドの耐久力と再生、そしてシャドーアーマーがあれば、ダメージを最小限に抑えられる。

 まさか、ブラッド自身が俺の弱点になるとは思わなかった。

 しかしブラッドがいなければ、ツクロダに勝てそうになっても逃げられていただろう。

 それに戦力的な面でも、ある程度は役に立っている。

 強さだけでいえば、既にホブンよりも断然強い。

「すまねえ、けどもう少しだ。もう少し追い詰められれば、強くなる」
「それってどういうこと?」
「ああ、俺の神授スキルの強化は、敵が強大なほど強化される。だが、すぐにじゃない。ピンチになるにつれて、解放されていく感じだ」
「なるほど」

 どうやら劣化失敗作EX1のバリアを突破できたのは、そういうカラクリがあったらしい。

 強化されたと言った割に、弱いと思ったのだ。

 であれば、ブラッドが死なない程度に守れば大丈夫だろう。

 とりあえずは、まずリビングアーマーの数を減らす必要がある。

 だが失敗作EXなどの攻撃を回避しながら、数を減らしていくのは至難の業だ。

 召喚したモンスターたちも、数をどんどん減らしていく。

 けれども少しずつ、俺はリビングアーマーを減らしていった。

 しかしそれをあざ笑うかのように、ツクロダが動く。

「うひゃひゃ! すげえじゃん! なら、僕ちゃんもサービスするしかないっしょ! おら! おかわりだぞ!」

 そう言われ、リビングアーマーが数十体補充されてしまう。

 くそっ、これじゃあ、何時まで経っても終わりがこなさそうだ。

 オブール王国に現れた数を考えれば、リビングアーマーがあと数千体控えていてもおかしくない。

 このままでは、じり貧だ。

 ブラッドはピンチになれば、強化が増すと言っていた。

 だが、それに頼って失敗したら詰む。

 俺自身も、何か打開策を考える必要がある。

 何か、何かないか?

 モンスターを召喚するのは、現状時間稼ぎにしかならない。

 シャドーネイルに魔力を込めた一撃でも、失敗作EX1のバリアは貫けなかった。

 であれば俺の残されているのは、アレしかない。

 下手をすれば無駄に終わり、こちらが消耗するだけになってしまう。

 だが、試すだけの価値はありそうだ。

 そう考えて俺は、ストレージから一番高価な魔力ポーションを取り出すと、一気に飲み干す。

 失った魔力が、戻ってくる感じがした。

 よし、これでいける。

 そして俺は失敗作EX1との距離を詰めると、ダークネスチェインを叩きつけた。

 当然バリアに阻まれて、意味をなさない。

「あれれ? 猫耳ちゃん、おかしくなったのかな? 無駄無駄! そいつは失敗作だが、強さだけは本物だからな! それよりも先に、犬畜生が死んじまうぞ! うひゃひゃ!」

 俺を煽るように、ツクロダが馬鹿笑いをする。

 だが、そんなのはどうでもいい。

 ひたすらに、俺は攻撃を続ける。

「お、おい。今はそいつよりも、周りの奴らをどうにかしてくれ!」

 するとブラッドも俺の行動を見て、そう言ってくる。

 それでも俺は、構わず続けた。

 もうすぐだ、もうすぐな気がする。

 一番の問題は解決しているんだ。後は気づかれず、目的を達成すればいい。

 二人には意味の分からない行動でも、俺はあることを確信して、攻撃を続けた。

 そして、その時がくる。

「ヴェエエ!?」
「だから無駄だって言ってるじゃ――はぁあ!?」
「ま、まじか!? どうやったんだ!!」

 ツクロダとブラッドが、驚愕の声を上げた。

 だがそれも仕方がない。

 なぜなら、あれほど強固だったバリアの元となっている魔道具が、爆発したからだ。

「これで終わりじゃないよ!」

 続けて俺はこの時のために、ダークネスチェインを無駄な攻撃に見せかけて展開していた。

 それがたくみに動き、失敗作EX1を包み込む。

 魔力は十分に込めた。問題はない。

「引き千切れろ!」

 そして俺は声を上げて、右手の平を握りしめる。

「ヴェゲェエ!?」

 まるで握りつぶしたスライムのように、スキマからドロリとしたものが飛び散った。

 バリアが無ければ失敗作EX1はもろく、簡単にダークネスチェインによって千切れる。

 そうして飛び散った物体に、再生する気配はない。

 また俺はそれでも油断ならないと、すかさずストレージに収納するように見せかけて、カード化する。

 よし、問題なくカード化できた。

「な、な、な、なんだそりゃぁああ!! ふざけるな! 何をしやがった!! 答えろ!」

 するとツクロダが、半狂乱になって怒気を飛ばしてくる。

「え? 言う訳ないじゃん。それくらい自分で考えなよ?」
「く、くそが! 飽きたら醜い姿に改造して、性欲をたぎらせたモンスターの巣穴に放り込んでやる!!」

 失敗作EX1がやられるとは、ツクロダもつゆほども思ってはいなかったようだ。

 怒り以上に、あせりが見て取れる。

「ざまあみやがれ! これで楽勝だ! 小さい方なら俺でも倒せる! おら! 死にやがれ!」
「ヴェゲエ!」

 そう言って、ブラッドが劣化失敗作EX1を仕留め始める。

「犬畜生が調子に乗るな! ま、待て、もう壊すな!」

 ツクロダがブラッドに意識を向けたところで、俺はポーションで魔力を回復させた。

 こうは言ったが、結構危なかったな。

 残存魔力量も、実はかなりギリギリである。

 それにしても上級生活魔法の魔充が、まさかここまで役に立つとは思わなかったな。

 以前ゴブリンで実験した魔充は、本来魔道具の魔力を補充する生活魔法である。

 それは攻撃ではなく、どちらかといえば補助魔法よりだ。

 これは賭けだったが、思った通り魔充による魔力の補充は攻撃とは見なされず、バリアが発動しなかった。

 あとはツクロダにバレないように、失敗作EX1との距離を維持しながら無駄に攻撃を続けていた訳である。

 結果としてバリアを発生させる魔道具は、魔力の許容を超えたことによって、爆発した。

 これが、ここまでの経緯である。

 よし、魔力も十分に回復した。

 俺も劣化失敗作EX1を倒そう。

 魔力を込めればバリアと拮抗きっこうすることもなく、倒すことができる。

 それにより俺は、劣化失敗作EX1を四枚カード化するのだった。

 残りのリビングアーマーなど、相手ではない。

 そうして俺たちは、ツクロダの手駒モンスターを全て倒すことに成功した。

「どうだ! これで残すはお前だけだぜ!」
「そこから見てるだけ? 下りてこないの?」
「う、うるさいうるさいうるさい! 黙れ畜生どもが! 失敗作を倒したくらいでいい気になるなよ! 僕ちゃんの本気はここからだ! 最高傑作を見せてやる!」

 そりゃ失敗作があれば、成功作がある訳か。

 次はいったい、何が来る?

 失敗作EX1が強かっただけに、俺は警戒を強めた。

 するとこれまでツクロダの上空にあった青いキューブが、一瞬光る。

「なっ!?」
「これは流石に、卑怯ひきょうだろ!!」 

 そして気が付けば、目の前に巨大ロボットが現れた。

 ツクロダは、玉座ごといなくなっている。

 水晶を乗せた柱だけが、残っていた。

 ここにきて、巨大ロボットか。

 その見た目は赤色をメインに使われており、サブカラーは金色だ。

 瞳は緑色をしている。

 大きさは、おそらく十メートルは超えているだろう。

 ボスエリアがやけに広すぎると思ったが、これが理由だったみたいだ。

「どうだお前ら! これこそ僕ちゃんの最高傑作、ツクロダロボだぞ!」

 どこに消えたのかと思っていたが、どうやらロボットの中にいるらしい。

 ツクロダの拡大された音声が、ロボットから聞こえてきた。
 
 そして本人が最高傑作と言っている以上、あなどることはできない。

 失敗作EX1より強いのは、確実だろう。

 だがここまできて、負けるわけにはいかない。

 やってやる。

 そうして俺とブラッドは、ツクロダロボとの戦闘を始めるのであった。

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