62 / 240
第二章
061 ソイルワームの巣穴
しおりを挟む
あれから再び屋敷を出た俺は、街を出て現在森の中にいた。
この森のとある場所に、ソイルワームの巣穴があるらしい。
地図を見ながら、俺は先へと進む。
「にゃーん!」
それと俺の側には、大型犬サイズに縮小したレフがいる。
どうやら縮小のスキルは、ある程度小さくする大きさを選べるようだ。
森の中で猫サイズだと逆に不便なので、これくらいがちょうど良い。
それと小さくなると、その分身体能力が下がるようだ。
といっても、ゴブリン程度では相手にならないが。
「にゃっ!」
「ゴブァ!?」
今もレフが、ゴブリンの首をダークネスチェインで締め千切った。
ロックゴーレムの時は動きを束縛する程度だったが、こうした使い方もできるらしい。
意外と恐ろしいスキルだった。
また魔力自体は小さくなっても変わらないので、本来の威力のままである。
「キィ!」
「ごばっ!?」
それと新しく育てることにしたジャイアントバットにも、戦闘をさせていた。
日中行動のスキルを持っているので、期待を込めて”サン”という名前をつけている。
いずれ太陽にも負けない、立派な吸血鬼になってほしい。
それから二匹を連れて、森の中を進んだ。
また奥に進めば進むほど、見たことのないモンスターが増えていく。
種族:フォレストバード
種族特性
【集団行動】【警戒】
種族:ドローンビートル
種族特性
【物理耐性(小)】【顎強化(小)】
種族:ポイズンスクワール
種族特性
【毒牙】【毒耐性(小)】【姿隠し】
まずフォレストバードは、緑色の小鳥である。
戦闘能力は低く、集団で行動していた。
スキルの警戒は気配感知と似ているが、少し違う。
警戒は同じ場所にいると効果が上昇するが、移動中には効果が低下する。
小さく密偵として使えそうなので、見つけ次第カード化していく。
次にドローンビートルだが、簡単に説明すると子犬サイズのカナブンである。
攻撃方法は噛みついてくるくらいしかないが、好戦的で俺を見つけ次第飛んでくるので面倒な虫だ。
特に使い道を思いつかないザコモンスターだが、一応十枚は確保しておく。
最後にポイズンスクワールは、毒の牙を生やしたリスである。
大きさも普通のリスと大差ないが、姿隠しで気配を消してから襲い掛かってくるので、注意が必要だ。
まあそもそも俺にこの程度の毒は効かず、噛みつかれても甘噛み程度にしか感じないので、こいつもザコモンスターである。
暗殺要員として少しは役に立つかもしれないので、二十枚ほどの確保を目指す。
森で遭遇した初見のモンスターたちはザコばかりだが、それでも楽しい。
カードの種類が増えていくだけで、俺は満足だ。
やはりダンジョンだけではなく、こうした森の中の探索も今後は増やしていこう。
そうしてカードを増やしながら、俺は森の中を進むのだった。
◆
地図だと、ここら辺にあるはずだが……。
ソイルワームの巣穴を探しながら、俺は森の中を彷徨い続ける。
モンスターに道案内をさせようとしても、行ったことがある場所しか分からないようだった。
加えてソイルワーム自体も知らないようであり、俺も知識がないので説明できずに困ってしまう。
どうやら自然種はダンジョン種と違って、持っている情報が少ないようだった。
ダンジョン種は生み出された瞬間に、ある程度の情報がインストールされているようだが、自然種にはそれがない。
これは、地道に探すしかないか。
だがソイルワームというくらいだし、細長い見た目をした虫だろう。
そう思った俺は、道中手に入れたフォレストバードを複数放つ。
今思い浮かんだ情報を思念で伝え、似たようなモンスターを探すように命じる。
「「「ぴぴぃ!」」」
フォレストバードたちは俺の命令に答えて、綺麗な声を上げるとそれぞれ飛んで行った。
地図だとこの辺りだし、しばらくすれば見つかるだろう。
そうして数分経つと、早くもフォレストバードから連絡が入る。
もう見つけたのか。
思ったよりも、近くに巣があったみたいだ。
それからフォレストバードのいる方向へと進み、俺はようやくソイルワームの巣穴を見つける。
ふむ。あれがソイルワームか。
見た目は茶色いミミズであり、先端に鋭い歯が並ぶ口があった。
種族:ソイルワーム
種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(小)】
【顎強化(小)】
大きさは、成人男性一人分という感じだろうか。
能力的には、ザコモンスターである。
しかし大きさも相まって、ゴブリンよりは強そうだ。
とりあえず緑斬のウィンドソードを抜くと、ウィンドカッターを剣先から飛ばした。
ソイルワームはそれにより呆気なく両断されるが、それでも即死せずにグネグネとのたうち回っている。
正直、見ていて気持ちが悪い。
だが少しすると息絶えたので、俺はいつも通りにソイルワームをカード化しておく。
さてと、問題の巣穴についてだが、大きさは普通に人が通れる大きさのようだ。
これは、ソイルワームの大きさにすると違和感がある。
だが依頼では、上位種の存在についての確認もあったはずだ。
つまり、この大きさを空けるだけのモンスターがいることになる。
上位種の討伐は明記されていなかったが、見つけたら倒すことにしよう。
そう思いながら、俺は久々に生活魔法の光球を浮かべると、巣穴の中を進む。
ダンジョンの壁には光る石が埋め込まれているが、この巣穴はそれが無くとても暗いのだ。
「キシャー!」
すると目の前にソイルワームが何匹も現れるので、斬り伏せてはカード化していく。
レフとサンにも戦わせて、順調に探索を進めた。
奥に進めば進むほど、ソイルワームの数が増えていく。
気が付けば二十匹もカード化していたので、残りはストレージに送っていった。
そしていくつかの分かれ道を順番に確認していくと、広い部屋に出る。
見ればそこには大量の卵らしきものが並んでおり、無数のソイルワームがそれを守っていた。
まるで、アリのような生態である。
そんなことを考えながら、卵と幼虫もろともソイルワームを処理していった。
他にも似たような部屋がいくつかあり、順調に潰していく。
一応証拠と何かに使えるかもしれないので、卵を百個ほど確保した。
またこの時気が付いたことだが、孵化前であれば卵もストレージに入るようである。
そうして処理していくことしばらく、俺は巣穴の奥で上位種を発見した。
うわっ……これは流石に気持ち悪いな。
広々とした巣穴の奥にいたのは、巨大なソイルワーム。
だが普通とは違い、体中に長さの違うムカデのような足を数千、いや下手すると数万の規模で生やしていた。
それが絶え間なくワシャワシャと動いており、人によっては見れば卒倒してしまうだろう。
種族:ソイルセンチピート
種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【顎強化(中)】【食い溜め】
【眷属出産】【集団指揮】
能力的には、眷属であるソイルワームに命令を下し戦わせるタイプのようだ。
直接戦闘は、そこまで得意ではないだろう。
しかしその眷属も、道中で既にほぼ全てを討伐済みである。
なので周囲に残っているソイルワームを処理すれば、あとはコイツだけだ。
であるならば、ここは一つ試してみることにしよう。
俺は瞬く間に残りのソイルワームを処理すると、さっそく実験を行うことにした。
「ギシャア!!」
まずは暴れ狂うソイルセンチピートを、レフのダークネスチェインで束縛して動けなくする。
次に行うのは、緑斬のウィンドソードをサンに使わせることだ。
といっても、サンは当然剣を持つことができない。
なので生活魔法の土塊で台を作り、剣先が敵に向くような形で固定する。
そして剣の上に乗ったサンに、ウィンドカッターを発動させるという試みだ。
この剣は適性が無くても、装備中に限りウィンドとウィンドカッターを使える。
俺は普段剣を振ったときに合わせて発動しているが、剣先からも飛ばせることは確認済みだった。
なので装備されていると判定されれば、サンでもウィンドカッターを発動できるはずなのだ。
「キキィ」
しかし俺の考えは甘かったのか、サンは発動のしかたが分からずに戸惑っている。
ふむ。使い方が分からないのか。
まあ、当然だな。
ならハイオークの時と同様に、俺がサンを操作して実践してみよう。
全感共有や以心伝心+などを活用して、サンの体を動かす。
やはり人型じゃないからか、操作が難しいな。
だが、発動自体はできそうだ。
問題は発動に必要な魔力が、一回分あるかどうかだ。
よし、いけそうだ。サン。この感覚を忘れるなよ。
そうして緑斬のウィンドソードが能力を発動し、ウィンドカッターを飛ばした。
「ギシャア!!」
直撃したソイルセンチピートワームは、緑色の液体を垂れ流しながら金切り声を上げる。
だがまだまだ元気そうであり、倒れる様子はない。
「キキィ」
「魔力が切れたようだな。これを飲め」
俺は自分の腕を自傷して、血を流す。
サンには吸血という種族特性のスキルがあり、血を飲むことで体力や魔力を回復することができる。
ただ俺の肉体にサンの牙が通る事はないので、自傷する必要があった。
「キキィ!」
するとサンは、嬉しそうに俺の血をペロペロと舐める。
そして少し舐めただけで全回復したのか、俺の手を借りずにウィンドカッターを発動して見せた。
またそれだけに留まらず、連続で二発、三発と続けて発動させる。
加えてなぜか、威力も高くなっていた。
うーむ。これは、デミゴッドの血を飲んだ影響かもしれないな。
おそらく一時的なものだろうが、俺の血を飲むことで強化されたらしい。
全容は掴めないが、少なくとも魔力関係は見た通り上昇している。
これは、絶対に知られてはいけないことが増えたな。
そんなことを思いつつも、サンに何度もウィンドカッターを使わせる。
ちなみに腕の傷は再生で塞がってしまうので、俺は毎回自傷行為をすることになった。
またレフもなぜか羨ましそうに鳴き声を上げたが、今あげて敵を絞め殺されてはいけないので、今度という事で我慢させている。
それから数十発のウィンドカッターを発動させた後、ようやくソイルセンチピートが息絶えた。
とてもしぶとかったが、これでほぼサンだけでの討伐に成功する。
俺の血の強化が無ければ、あと数時間は平気でかかっていただろう。
そしてこの後の問題は、このソイルセンチピートをどうするかになる。
カード化してしまうと、上位種の報告時に困ってしまう。
この巣穴の大きさから、ギルドも上位種がいることをおおよそ把握していたはずだ。
上位種と契約したと言ったとして、果たして通るだろうか?
正直持っていないカードが欲しいという気持ちと、気持ち悪いし戦力としても微妙だからいらないという気持ちがあるんだよな。
うーん。いつか地中を掘り進むときに使えるか?
まあ、ギルド職員のラルドにはホワイトキングダイルも既に見せているし、どうにかなると信じよう。
俺はそう決断して、ソイルセンチピートをカード化するのだった。
また一応サンをカードに戻してみたが、残念ながら進化の兆しはない。
けれども今日育て始めたばかりなので、仕方がないと切り替える。
あとは運悪くも喰われたのか、人の残骸だと思われるものがあったので回収しておく。
冒険者証も落ちており、駆け出しのようである。
経緯は分からないが、ここは駆け出しが来るには遠い。
調子に乗って、森の奥へと進んでしまったのだろうか?
そんなことを思いながら、俺は念のために生き残りがいないかもう一度巣穴を回る。
すると多少の生き残りがいたのでそれを処理してから、俺は巣穴を脱出するのだった。
この森のとある場所に、ソイルワームの巣穴があるらしい。
地図を見ながら、俺は先へと進む。
「にゃーん!」
それと俺の側には、大型犬サイズに縮小したレフがいる。
どうやら縮小のスキルは、ある程度小さくする大きさを選べるようだ。
森の中で猫サイズだと逆に不便なので、これくらいがちょうど良い。
それと小さくなると、その分身体能力が下がるようだ。
といっても、ゴブリン程度では相手にならないが。
「にゃっ!」
「ゴブァ!?」
今もレフが、ゴブリンの首をダークネスチェインで締め千切った。
ロックゴーレムの時は動きを束縛する程度だったが、こうした使い方もできるらしい。
意外と恐ろしいスキルだった。
また魔力自体は小さくなっても変わらないので、本来の威力のままである。
「キィ!」
「ごばっ!?」
それと新しく育てることにしたジャイアントバットにも、戦闘をさせていた。
日中行動のスキルを持っているので、期待を込めて”サン”という名前をつけている。
いずれ太陽にも負けない、立派な吸血鬼になってほしい。
それから二匹を連れて、森の中を進んだ。
また奥に進めば進むほど、見たことのないモンスターが増えていく。
種族:フォレストバード
種族特性
【集団行動】【警戒】
種族:ドローンビートル
種族特性
【物理耐性(小)】【顎強化(小)】
種族:ポイズンスクワール
種族特性
【毒牙】【毒耐性(小)】【姿隠し】
まずフォレストバードは、緑色の小鳥である。
戦闘能力は低く、集団で行動していた。
スキルの警戒は気配感知と似ているが、少し違う。
警戒は同じ場所にいると効果が上昇するが、移動中には効果が低下する。
小さく密偵として使えそうなので、見つけ次第カード化していく。
次にドローンビートルだが、簡単に説明すると子犬サイズのカナブンである。
攻撃方法は噛みついてくるくらいしかないが、好戦的で俺を見つけ次第飛んでくるので面倒な虫だ。
特に使い道を思いつかないザコモンスターだが、一応十枚は確保しておく。
最後にポイズンスクワールは、毒の牙を生やしたリスである。
大きさも普通のリスと大差ないが、姿隠しで気配を消してから襲い掛かってくるので、注意が必要だ。
まあそもそも俺にこの程度の毒は効かず、噛みつかれても甘噛み程度にしか感じないので、こいつもザコモンスターである。
暗殺要員として少しは役に立つかもしれないので、二十枚ほどの確保を目指す。
森で遭遇した初見のモンスターたちはザコばかりだが、それでも楽しい。
カードの種類が増えていくだけで、俺は満足だ。
やはりダンジョンだけではなく、こうした森の中の探索も今後は増やしていこう。
そうしてカードを増やしながら、俺は森の中を進むのだった。
◆
地図だと、ここら辺にあるはずだが……。
ソイルワームの巣穴を探しながら、俺は森の中を彷徨い続ける。
モンスターに道案内をさせようとしても、行ったことがある場所しか分からないようだった。
加えてソイルワーム自体も知らないようであり、俺も知識がないので説明できずに困ってしまう。
どうやら自然種はダンジョン種と違って、持っている情報が少ないようだった。
ダンジョン種は生み出された瞬間に、ある程度の情報がインストールされているようだが、自然種にはそれがない。
これは、地道に探すしかないか。
だがソイルワームというくらいだし、細長い見た目をした虫だろう。
そう思った俺は、道中手に入れたフォレストバードを複数放つ。
今思い浮かんだ情報を思念で伝え、似たようなモンスターを探すように命じる。
「「「ぴぴぃ!」」」
フォレストバードたちは俺の命令に答えて、綺麗な声を上げるとそれぞれ飛んで行った。
地図だとこの辺りだし、しばらくすれば見つかるだろう。
そうして数分経つと、早くもフォレストバードから連絡が入る。
もう見つけたのか。
思ったよりも、近くに巣があったみたいだ。
それからフォレストバードのいる方向へと進み、俺はようやくソイルワームの巣穴を見つける。
ふむ。あれがソイルワームか。
見た目は茶色いミミズであり、先端に鋭い歯が並ぶ口があった。
種族:ソイルワーム
種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(小)】
【顎強化(小)】
大きさは、成人男性一人分という感じだろうか。
能力的には、ザコモンスターである。
しかし大きさも相まって、ゴブリンよりは強そうだ。
とりあえず緑斬のウィンドソードを抜くと、ウィンドカッターを剣先から飛ばした。
ソイルワームはそれにより呆気なく両断されるが、それでも即死せずにグネグネとのたうち回っている。
正直、見ていて気持ちが悪い。
だが少しすると息絶えたので、俺はいつも通りにソイルワームをカード化しておく。
さてと、問題の巣穴についてだが、大きさは普通に人が通れる大きさのようだ。
これは、ソイルワームの大きさにすると違和感がある。
だが依頼では、上位種の存在についての確認もあったはずだ。
つまり、この大きさを空けるだけのモンスターがいることになる。
上位種の討伐は明記されていなかったが、見つけたら倒すことにしよう。
そう思いながら、俺は久々に生活魔法の光球を浮かべると、巣穴の中を進む。
ダンジョンの壁には光る石が埋め込まれているが、この巣穴はそれが無くとても暗いのだ。
「キシャー!」
すると目の前にソイルワームが何匹も現れるので、斬り伏せてはカード化していく。
レフとサンにも戦わせて、順調に探索を進めた。
奥に進めば進むほど、ソイルワームの数が増えていく。
気が付けば二十匹もカード化していたので、残りはストレージに送っていった。
そしていくつかの分かれ道を順番に確認していくと、広い部屋に出る。
見ればそこには大量の卵らしきものが並んでおり、無数のソイルワームがそれを守っていた。
まるで、アリのような生態である。
そんなことを考えながら、卵と幼虫もろともソイルワームを処理していった。
他にも似たような部屋がいくつかあり、順調に潰していく。
一応証拠と何かに使えるかもしれないので、卵を百個ほど確保した。
またこの時気が付いたことだが、孵化前であれば卵もストレージに入るようである。
そうして処理していくことしばらく、俺は巣穴の奥で上位種を発見した。
うわっ……これは流石に気持ち悪いな。
広々とした巣穴の奥にいたのは、巨大なソイルワーム。
だが普通とは違い、体中に長さの違うムカデのような足を数千、いや下手すると数万の規模で生やしていた。
それが絶え間なくワシャワシャと動いており、人によっては見れば卒倒してしまうだろう。
種族:ソイルセンチピート
種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【顎強化(中)】【食い溜め】
【眷属出産】【集団指揮】
能力的には、眷属であるソイルワームに命令を下し戦わせるタイプのようだ。
直接戦闘は、そこまで得意ではないだろう。
しかしその眷属も、道中で既にほぼ全てを討伐済みである。
なので周囲に残っているソイルワームを処理すれば、あとはコイツだけだ。
であるならば、ここは一つ試してみることにしよう。
俺は瞬く間に残りのソイルワームを処理すると、さっそく実験を行うことにした。
「ギシャア!!」
まずは暴れ狂うソイルセンチピートを、レフのダークネスチェインで束縛して動けなくする。
次に行うのは、緑斬のウィンドソードをサンに使わせることだ。
といっても、サンは当然剣を持つことができない。
なので生活魔法の土塊で台を作り、剣先が敵に向くような形で固定する。
そして剣の上に乗ったサンに、ウィンドカッターを発動させるという試みだ。
この剣は適性が無くても、装備中に限りウィンドとウィンドカッターを使える。
俺は普段剣を振ったときに合わせて発動しているが、剣先からも飛ばせることは確認済みだった。
なので装備されていると判定されれば、サンでもウィンドカッターを発動できるはずなのだ。
「キキィ」
しかし俺の考えは甘かったのか、サンは発動のしかたが分からずに戸惑っている。
ふむ。使い方が分からないのか。
まあ、当然だな。
ならハイオークの時と同様に、俺がサンを操作して実践してみよう。
全感共有や以心伝心+などを活用して、サンの体を動かす。
やはり人型じゃないからか、操作が難しいな。
だが、発動自体はできそうだ。
問題は発動に必要な魔力が、一回分あるかどうかだ。
よし、いけそうだ。サン。この感覚を忘れるなよ。
そうして緑斬のウィンドソードが能力を発動し、ウィンドカッターを飛ばした。
「ギシャア!!」
直撃したソイルセンチピートワームは、緑色の液体を垂れ流しながら金切り声を上げる。
だがまだまだ元気そうであり、倒れる様子はない。
「キキィ」
「魔力が切れたようだな。これを飲め」
俺は自分の腕を自傷して、血を流す。
サンには吸血という種族特性のスキルがあり、血を飲むことで体力や魔力を回復することができる。
ただ俺の肉体にサンの牙が通る事はないので、自傷する必要があった。
「キキィ!」
するとサンは、嬉しそうに俺の血をペロペロと舐める。
そして少し舐めただけで全回復したのか、俺の手を借りずにウィンドカッターを発動して見せた。
またそれだけに留まらず、連続で二発、三発と続けて発動させる。
加えてなぜか、威力も高くなっていた。
うーむ。これは、デミゴッドの血を飲んだ影響かもしれないな。
おそらく一時的なものだろうが、俺の血を飲むことで強化されたらしい。
全容は掴めないが、少なくとも魔力関係は見た通り上昇している。
これは、絶対に知られてはいけないことが増えたな。
そんなことを思いつつも、サンに何度もウィンドカッターを使わせる。
ちなみに腕の傷は再生で塞がってしまうので、俺は毎回自傷行為をすることになった。
またレフもなぜか羨ましそうに鳴き声を上げたが、今あげて敵を絞め殺されてはいけないので、今度という事で我慢させている。
それから数十発のウィンドカッターを発動させた後、ようやくソイルセンチピートが息絶えた。
とてもしぶとかったが、これでほぼサンだけでの討伐に成功する。
俺の血の強化が無ければ、あと数時間は平気でかかっていただろう。
そしてこの後の問題は、このソイルセンチピートをどうするかになる。
カード化してしまうと、上位種の報告時に困ってしまう。
この巣穴の大きさから、ギルドも上位種がいることをおおよそ把握していたはずだ。
上位種と契約したと言ったとして、果たして通るだろうか?
正直持っていないカードが欲しいという気持ちと、気持ち悪いし戦力としても微妙だからいらないという気持ちがあるんだよな。
うーん。いつか地中を掘り進むときに使えるか?
まあ、ギルド職員のラルドにはホワイトキングダイルも既に見せているし、どうにかなると信じよう。
俺はそう決断して、ソイルセンチピートをカード化するのだった。
また一応サンをカードに戻してみたが、残念ながら進化の兆しはない。
けれども今日育て始めたばかりなので、仕方がないと切り替える。
あとは運悪くも喰われたのか、人の残骸だと思われるものがあったので回収しておく。
冒険者証も落ちており、駆け出しのようである。
経緯は分からないが、ここは駆け出しが来るには遠い。
調子に乗って、森の奥へと進んでしまったのだろうか?
そんなことを思いながら、俺は念のために生き残りがいないかもう一度巣穴を回る。
すると多少の生き残りがいたのでそれを処理してから、俺は巣穴を脱出するのだった。
126
お気に入りに追加
1,575
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
追放から始まる新婚生活 【追放された2人が出会って結婚したら大陸有数の有名人夫婦になっていきました】
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
役に立たないと言われて、血盟を追放された男性アベル。
同じく役に立たないと言われて、血盟を解雇された女性ルナ。
そんな2人が出会って結婚をする。
【2024年9月9日~9月15日】まで、ホットランキング1位に居座ってしまった作者もビックリの作品。
結婚した事で、役に立たないスキルだと思っていた、家事手伝いと、錬金術師。
実は、トンデモなく便利なスキルでした。
最底辺、大陸商業組合ライセンス所持者から。
一転して、大陸有数の有名人に。
これは、不幸な2人が出会って幸せになっていく物語。
極度の、ざまぁ展開はありません。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★お気に入り登録ポチリお願いします!
2024/3/4 男性向けホトラン1位獲得
難病で動くこともできず、食事も食べられない俺はただ死を待つだけだった。
次に生まれ変わったら元気な体に生まれ変わりたい。
そんな希望を持った俺は知らない世界の子どもの体に転生した。
見た目は浮浪者みたいだが、ある飲食店の店舗前で倒れていたおかげで、店主であるバビットが助けてくれた。
そんなバビットの店の手伝いを始めながら、住み込みでの生活が始まった。
元気に走れる体。
食事を摂取できる体。
前世ではできなかったことを俺は堪能する。
そんな俺に対して、周囲の人達は優しかった。
みんなが俺を多才だと褒めてくれる。
その結果、俺を弟子にしたいと言ってくれるようにもなった。
何でも弟子としてギルドに登録させると、お互いに特典があって一石二鳥らしい。
ただ、俺は決められた仕事をするのではなく、たくさんの職業体験をしてから仕事を決めたかった。
そんな俺にはデイリークエストという謎の特典が付いていた。
それをクリアするとステータスポイントがもらえるらしい。
ステータスポイントを振り分けると、効率よく動けることがわかった。
よし、たくさん職業体験をしよう!
世界で爆発的に売れたVRMMO。
一般職、戦闘職、生産職の中から二つの職業を選べるシステム。
様々なスキルで冒険をするのもよし!
まったりスローライフをするのもよし!
できなかったお仕事ライフをするのもよし!
自由度が高いそのゲームはすぐに大ヒットとなった。
一方、職業体験で様々な職業別デイリークエストをクリアして最強になっていく主人公。
そんな主人公は爆発的にヒットしたVRMMOのNPCだった。
なぜかNPCなのにプレイヤーだし、めちゃくちゃ強い。
あいつは何だと話題にならないはずがない。
当の本人はただただ職場体験をして、将来を悩むただの若者だった。
そんなことを知らない主人公の妹は、友達の勧めでゲームを始める。
最強で元気になった兄と前世の妹が繰り広げるファンタジー作品。
※スローライフベースの作品になっています。
※カクヨムで先行投稿してます。
文字数の関係上、タイトルが短くなっています。
元のタイトル
超リアルなVRMMOのNPCに転生してデイリークエストをクリアしまくったら、いつの間にか最強になってました~年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれています〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる