48 / 203
第二章
047 ハパンナの街に到着
しおりを挟むハパンナの街に入った後は、早々にジョリッツからの護衛依頼をギルドで完了して、二次予選の出場を申請する。
申請場所は街の闘技場であり、かなり立派だった。
訊けば、各街には闘技場が必ずあるらしい。
今回のような大会はもちろんのこと、普段でもモンスターバトルが盛んに行われているようだ。
そして、申請自体も簡単に終わった。
予選通過者の書状を渡し、必要事項を記入するだけである。
また書状の代わりに、二次予選用の札を受け取った。
今回は11番である。
ここまで申請が簡単だと、成り代わりが起きても仕方がない。
だがそんな成り代わりも、どうやら大会の醍醐味のようである。
しかし卑怯な手段で成り代わった場合には、相当の報いがあるようだ。
そうして二次予選の申請を終えた俺は、約束通りジョリッツの娘と会う。
「へえ、ジンさんっていうんですね! 私はリルルです! 九歳でサモナーです!」
可愛らしく声を上げる長い茶髪の少女は、俺を見て目を輝かせていた。
「サモナーか。何か使役しているのか?」
「はい! この子です! おいで、ミミちゃん!」
「きゅい!」
俺がそう訊くと、リルルはホーンラビットを召喚する。
首には、大きな赤いリボンがしてあった。
「ホーンラビットか。よく馴らしてあるみたいだな」
「はい! ミミちゃんは私の親友なんです! それよりも、ジンさんのモンスターを見せてくれませんか?」
「ああ、かまわないぞ」
召喚をせがまれたので、とりあえずレフを呼び出す。
「ウォン!」
「わぁ! 犬さんです!」
「こいつはレフ、一応グレイウルフという狼だ」
グレイウルフは周辺にはいないのか、レフは大型犬だと勘違いされたようだ。
「さ、触ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます! わぁ、もふもふしてるぅ!」
「うぉん」
レフはリルルに撫でられ続け、どこか困ったような表情をしている。
それからリルルと会話をして、サモナーについても少しは理解した。
どうやらサモナーは、モンスターに認められることで契約ができるらしい。
契約したモンスターは、魔力を使うことでその場に召喚できる。
また契約したモンスターは普段別のところにおり、召喚に応じる事で呼び出せるようだ。
それと大体のサモナーは、契約したモンスターを自宅や専用の施設に預けているようである。
リルルのホーンラビットも、普段は自宅のゲージの中にいるらしい。
完全にペットである。
あと重要なのは、サモナーにも契約できる相性があり、例えモンスターが認めても相性が悪ければ契約できないようだ。
加えてサモナーはスキルの習得のように、契約する為の容量が存在している。
なので容量を超えた数とは、契約することはできない。
これはテイマーも概ね同じであり、違いは召喚できるか否かである。
世間的にはサモナーの方が、テイマーより格上とされているようだ。
どうやら歴史的な英雄は、そのほとんどがサモナーらしい。
ちなみに俺のカード召喚術は、魔力量によってカードの所持上限が決まる。
今のところカード上限数については、全く問題が無い。
むしろ最初の頃より魔力量が増えている気がするので、上限数が伸びている。
なのでカード上限数など気にせず、これからどんどんモンスターをカード化していくつもりだ。
というよりホワイトキングダイルが復活して、モンスターも再びカード化できるようになったので早くダンジョンに行きたい。
どうやらこのハパンナの街には、徒歩二時間ほどの場所にダンジョンがあるようだ。
そこはちょっとした村みたいになっているらしい。
ダンジョン自体は、全六階層とのこと。
なお出現するモンスターについては、あえて訊かなかった。
事前情報無しでは危険かもしれないが、何が出るか分からないからこそ良いのだ。
その後ジョリッツに二次予選が終わるまで泊っていくのを勧められたが、当然断った。
二次予選は今からちょうど十日後なので、時間は限られている。
俺はこの機会にダンジョンの最終階層を目指すつもりなので、元々地上に出る気はない。
僅かな期間とはいえカード化できなかったのは、俺にとって相当なストレスだったのだ。
ただジョリッツ商会は様々な物を扱っているという事で、必要な物を買うことにした。
また特別に気前よく二割引きにしてくれたので、使役モンスターの目印になる物なども買いだめしておく。
ゴブリンの村を壊滅させた報酬がだいぶ吹き飛んだが、まあ仕方がないだろう。
そうしてジョリッツたちに別れを告げると、俺は街を出てダンジョンのある方に駆けだした。
周囲の目など気にしなかったこともあり、あっという間に辿り着く。
ここがダンジョンのある場所か。確かに、村のようだ。
ダンジョンのある場所には屋台などはもちろんのこと、宿屋や冒険者ギルドの出張所まであった。
また周囲には多くの人や、使役されているモンスターたちが闊歩している。
おそらくこの中には、今回の二次予選に出る者もいるだろう。
だが、そんな事はどうでもいい。
俺は早くダンジョンに入って、モンスターをカード化したい。
我慢ができず、俺はダンジョンの入口へと向かった。
ダンジョンの入り口周辺では、以前見たようにパーティメンバーを募集する者たちなどがいる。
それらを無視して、俺は地下へと続く階段を下りていく。
なお、このダンジョンの名前はハパンナダンジョンである。
街の名前のつくダンジョンなど、珍しくはない。
俺が以前入っていたダンジョン名も、今思い出せばシルダートダンジョンという名称だった気がする。
そうして階段を下りきると、周囲は人でごった返していた。
入り口周辺なので、それは仕方はない。
ダンジョンはシンプルな洞窟型であり、いくつもの分かれ道が見える。
とりあえず、人のいないところまで行こう。
俺は相棒にレフを召喚すると、ダンジョンの先へと歩み始める。
すると他の冒険者が、茶色い小さなネズミと戦っていた。
あれは確か、村の予選で一度戦ったな。
確か名称はスモールマウスであり、レフを見て逃走するようなモンスターである。
一階層目に出ることからも分かる通り、おそらくザコモンスターだろう。
しかし例えザコだとしても、持っていないモンスターカードは欲しくなる。
あの個体とは他の冒険者が戦っているので諦めるしかないが、この先に行けば好きなだけカード化できるはずだ。
俺は少し足が速くなる事を感じつつも、進み続ける。
さて、ようやく人も少なくなってきたな。
このダンジョンは意外に広く、また複雑だ。
三十分も過ぎれば、冒険者との遭遇もかなり減る。
「ちゅう? ジュワッ!?」
そしてとうとう目の前に現れたそいつを、気が付けば倒していた。
「久々のカード化だ」
右手に光が集まり、カードへと変わる。
「スモールマウス、ゲットだ」
ザコモンスターであるが、久しぶりという事もあり喜びが隠せない。
なのでさっそく、スモールマウスを召喚してみる。
「ちゅう!」
スモールといっても小型犬サイズだが、足自体は速そうだ。
予選の時の逃げ足は、情けなくも見事だった。
まあとりあえず、能力の鑑定をしてみる。
種族:スモールマウス
種族特性
【繁殖力上昇(中)】【悪食】
「これは、酷いな……」
足自体は速くても、種族特性は全く戦闘向きではなかった。
やはりというべきか、スモールマウスは弱い。
これでは、普通のネズミより大きいだけである。
いや、これが集団で襲ってきたら、子供などは喰い殺されるだろう。
だが、他のモンスターと比べると圧倒的に弱い。
小型犬サイズというのも、逆に微妙だ。
普通のネズミサイズであれば、街中での偵察などで使えた可能性もあった。
なので正直に言うと、全くいらない。
手持ちの中での最弱モンスターランキングで、一位にランクインするほどである。
ちなみにこれまでは、ホーンラビットとスモールモンキーが最弱争いをしていた。
まあ、いらなくても十枚は集めよう。
そう思いながら、探索を続ける。
またその道中ではスライムも発見して、カード化した。
種族:スライム
種族特性
【弱酸】【分裂】
スライムは体内の物を弱酸でゆっくり溶かし、栄養を蓄えたら分裂するだけの存在である。
動きも遅く、とても弱い。
ただゴミの処分には使えるので、便利ではある。
その時の事を考えて、三十枚ほど集めておこう。
俺はスモールマウスとスライムをカード化しながら、次の階層を目指すのだった。
91
お気に入りに追加
1,575
あなたにおすすめの小説
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。
暇野無学
ファンタジー
馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。
テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。
無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
夜明けには程遠い【完結】
米派
BL
古くから、人と魔族は大陸の支配者になろうと争い続けてきた。勇者の剣に選ばれたことで泥沼化した戦争に巻き込まれ、ただの高校生が役目から逃げられなくなる話。
復讐者×剣に選ばれてしまった高校生がメインです。 途中で、主従の脇CPのお話が入ります。
※所々、倫理観を捨てている部分がありますので、ご注意ください。立場上、主人公が人を殺す場面があります。
こちらは他サイトにも置いてあります。
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる