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第二章

047 ハパンナの街に到着

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 ハパンナの街に入った後は、早々にジョリッツからの護衛依頼をギルドで完了して、二次予選の出場を申請する。

 申請場所は街の闘技場であり、かなり立派だった。

 訊けば、各街には闘技場が必ずあるらしい。
 
 今回のような大会はもちろんのこと、普段でもモンスターバトルが盛んに行われているようだ。

 そして、申請自体も簡単に終わった。

 予選通過者の書状を渡し、必要事項を記入するだけである。

 また書状の代わりに、二次予選用の札を受け取った。

 今回は11番である。

 ここまで申請が簡単だと、成り代わりが起きても仕方がない。

 だがそんな成り代わりも、どうやら大会の醍醐味だいごみのようである。

 しかし卑怯な手段で成り代わった場合には、相当の報いがあるようだ。

 そうして二次予選の申請を終えた俺は、約束通りジョリッツの娘と会う。

「へえ、ジンさんっていうんですね! 私はリルルです! 九歳でサモナーです!」

 可愛らしく声を上げる長い茶髪の少女は、俺を見て目を輝かせていた。

「サモナーか。何か使役しているのか?」
「はい! この子です! おいで、ミミちゃん!」
「きゅい!」

 俺がそう訊くと、リルルはホーンラビットを召喚する。

 首には、大きな赤いリボンがしてあった。

「ホーンラビットか。よく馴らしてあるみたいだな」
「はい! ミミちゃんは私の親友なんです! それよりも、ジンさんのモンスターを見せてくれませんか?」
「ああ、かまわないぞ」

 召喚をせがまれたので、とりあえずレフを呼び出す。

「ウォン!」
「わぁ! 犬さんです!」
「こいつはレフ、一応グレイウルフという狼だ」

 グレイウルフは周辺にはいないのか、レフは大型犬だと勘違いされたようだ。

「さ、触ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます! わぁ、もふもふしてるぅ!」
「うぉん」

 レフはリルルに撫でられ続け、どこか困ったような表情をしている。

 それからリルルと会話をして、サモナーについても少しは理解した。

 どうやらサモナーは、モンスターに認められることで契約ができるらしい。

 契約したモンスターは、魔力を使うことでその場に召喚できる。

 また契約したモンスターは普段別のところにおり、召喚に応じる事で呼び出せるようだ。

 それと大体のサモナーは、契約したモンスターを自宅や専用の施設に預けているようである。

 リルルのホーンラビットも、普段は自宅のゲージの中にいるらしい。

 完全にペットである。

 あと重要なのは、サモナーにも契約できる相性があり、例えモンスターが認めても相性が悪ければ契約できないようだ。
 
 加えてサモナーはスキルの習得のように、契約する為の容量が存在している。

 なので容量を超えた数とは、契約することはできない。

 これはテイマーも概ね同じであり、違いは召喚できるか否かである。

 世間的にはサモナーの方が、テイマーより格上とされているようだ。

 どうやら歴史的な英雄は、そのほとんどがサモナーらしい。

 ちなみに俺のカード召喚術は、魔力量によってカードの所持上限が決まる。

 今のところカード上限数については、全く問題が無い。

 むしろ最初の頃より魔力量が増えている気がするので、上限数が伸びている。

 なのでカード上限数など気にせず、これからどんどんモンスターをカード化していくつもりだ。

 というよりホワイトキングダイルが復活して、モンスターも再びカード化できるようになったので早くダンジョンに行きたい。

 どうやらこのハパンナの街には、徒歩二時間ほどの場所にダンジョンがあるようだ。

 そこはちょっとした村みたいになっているらしい。
 
 ダンジョン自体は、全六階層とのこと。

 なお出現するモンスターについては、あえて訊かなかった。

 事前情報無しでは危険かもしれないが、何が出るか分からないからこそ良いのだ。

 その後ジョリッツに二次予選が終わるまで泊っていくのを勧められたが、当然断った。

 二次予選は今からちょうど十日後なので、時間は限られている。

 俺はこの機会にダンジョンの最終階層を目指すつもりなので、元々地上に出る気はない。

 僅かな期間とはいえカード化できなかったのは、俺にとって相当なストレスだったのだ。

 ただジョリッツ商会は様々な物を扱っているという事で、必要な物を買うことにした。

 また特別に気前よく二割引きにしてくれたので、使役モンスターの目印になる物なども買いだめしておく。

 ゴブリンの村を壊滅させた報酬がだいぶ吹き飛んだが、まあ仕方がないだろう。

 そうしてジョリッツたちに別れを告げると、俺は街を出てダンジョンのある方に駆けだした。

 周囲の目など気にしなかったこともあり、あっという間に辿り着く。

 ここがダンジョンのある場所か。確かに、村のようだ。

 ダンジョンのある場所には屋台などはもちろんのこと、宿屋や冒険者ギルドの出張所まであった。

 また周囲には多くの人や、使役されているモンスターたちが闊歩かっぽしている。

 おそらくこの中には、今回の二次予選に出る者もいるだろう。

 だが、そんな事はどうでもいい。

 俺は早くダンジョンに入って、モンスターをカード化したい。

 我慢ができず、俺はダンジョンの入口へと向かった。

 ダンジョンの入り口周辺では、以前見たようにパーティメンバーを募集する者たちなどがいる。

 それらを無視して、俺は地下へと続く階段を下りていく。

 なお、このダンジョンの名前はハパンナダンジョンである。

 街の名前のつくダンジョンなど、珍しくはない。

 俺が以前入っていたダンジョン名も、今思い出せばシルダートダンジョンという名称だった気がする。

 そうして階段を下りきると、周囲は人でごった返していた。

 入り口周辺なので、それは仕方はない。

 ダンジョンはシンプルな洞窟型であり、いくつもの分かれ道が見える。

 とりあえず、人のいないところまで行こう。

 俺は相棒にレフを召喚すると、ダンジョンの先へと歩み始める。

 すると他の冒険者が、茶色い小さなネズミと戦っていた。

 あれは確か、村の予選で一度戦ったな。

 確か名称はスモールマウスであり、レフを見て逃走するようなモンスターである。

 一階層目に出ることからも分かる通り、おそらくザコモンスターだろう。

 しかし例えザコだとしても、持っていないモンスターカードは欲しくなる。

 あの個体とは他の冒険者が戦っているので諦めるしかないが、この先に行けば好きなだけカード化できるはずだ。

 俺は少し足が速くなる事を感じつつも、進み続ける。

 さて、ようやく人も少なくなってきたな。

 このダンジョンは意外に広く、また複雑だ。

 三十分も過ぎれば、冒険者との遭遇もかなり減る。

「ちゅう? ジュワッ!?」

 そしてとうとう目の前に現れたそいつを、気が付けば倒していた。

「久々のカード化だ」

 右手に光が集まり、カードへと変わる。

「スモールマウス、ゲットだ」

 ザコモンスターであるが、久しぶりという事もあり喜びが隠せない。

 なのでさっそく、スモールマウスを召喚してみる。

「ちゅう!」

 スモールといっても小型犬サイズだが、足自体は速そうだ。

 予選の時の逃げ足は、情けなくも見事だった。

 まあとりあえず、能力の鑑定をしてみる。


 種族:スモールマウス
 種族特性
【繁殖力上昇(中)】【悪食】


「これは、酷いな……」

 足自体は速くても、種族特性は全く戦闘向きではなかった。

 やはりというべきか、スモールマウスは弱い。

 これでは、普通のネズミより大きいだけである。

 いや、これが集団で襲ってきたら、子供などは喰い殺されるだろう。

 だが、他のモンスターと比べると圧倒的に弱い。

 小型犬サイズというのも、逆に微妙だ。

 普通のネズミサイズであれば、街中での偵察などで使えた可能性もあった。

 なので正直に言うと、全くいらない。

 手持ちの中での最弱モンスターランキングで、一位にランクインするほどである。

 ちなみにこれまでは、ホーンラビットとスモールモンキーが最弱争いをしていた。

 まあ、いらなくても十枚は集めよう。

 そう思いながら、探索を続ける。

 またその道中ではスライムも発見して、カード化した。


 種族:スライム
 種族特性
【弱酸】【分裂】


 スライムは体内の物を弱酸でゆっくり溶かし、栄養を蓄えたら分裂するだけの存在である。

 動きも遅く、とても弱い。

 ただゴミの処分には使えるので、便利ではある。

 その時の事を考えて、三十枚ほど集めておこう。

 俺はスモールマウスとスライムをカード化しながら、次の階層を目指すのだった。

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