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第二章

037 ポイントの使い道

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 まず初めに、ランクアップ先を確認してみることにする。


【スキル】
・中級生活魔法→ 上級生活魔法 30
・シャドーアーマー→ダークアーマー 50
・軍団行動→総軍行動 50


 どうやら効果までは確認できないようだが、名称から予想することはできる。

 まず上級生活魔法は、使える魔法の数が増えるだろう。

 ダークアーマーは、そのままシャドーアーマーの強化版だと思われる。

 総軍行動も、同様に効果が強化されるはずだ。

 現状だと40ポイントしかないので、上級生活魔法にしかランクアップはできない。

 さて、問題は上級生活魔法を覚えるかどうかだな。 

 おそらく中級生活魔法を使い続けて、上級生活魔法のスキルオーブを見つければ、ポイントを消費することなく習得ができる。

 だがそのスキルオーブが、そもそも見つかるという保証がない。

 それに上級生活魔法という名称から、かなり難易度の高いダンジョンでなければ見つからないだろう。

 買うにしても、値段は途方もないほど高いはずだ。

 どうにか手に入れたとしても、それは一体何年後だろうか。

 それに、俺は進んで転移者を殺害したいとは思わない。

 まあ相手がどうしようもない人間であったり、向こうから襲ってきたのであれば話は違うが。

 逆に善良で普通に暮らしているだけの転移者を、ポイントの為に襲うことはない。

 ただ善人がそれを良いことだと思って、とんでもないことをする場合は別だ。

 善人でも、必要があれば殺害するしかない場合もあるだろう。

 なので例外はあるものの、今後進んで転移者を殺害しない以上、ポイントを貯めこんでいても仕方がない。

 それに次ポイントを手に入れば、残った10ポイントに40ポイントが足されて、50ポイントになる。

 中級生活魔法をここでランクアップさせても、次もランクアップ可能という訳だ。
 
 ゆえに俺は、中級生活をここでランクアップさせることにした。

『ポイントを使用したことにより、【中級生活魔法】は【上級生活魔法】にランクアップしました』

 そして脳内に、いつもの通り声が聞こえてくる。

 どうやらポイントを使ったランクアップでは、二重取りが発動しないらしい。

 これはキャラクターメイキングでエクストラやスキル選択時に発動しなかったので、何となく分かっていた。

 いや、少し違うか?

 既に授かっているスキルに対してのランクアップだから、発動しなかったのかもしれない。

 二重取りはあくまでも、授かる瞬間に発動するのだろう。

 まあこれは推測なので、絶対ではない。

 むしろキャラクターメイキングの時に、スキルを選択しても発動しなかった謎が深まった。

 あれはポイントを対価にスキルを得たからか? だがスキルオーブを使用した時には二重取りが発動する。

 ポイントは対価になりえるので授かったのではなく、対等な交換という事だろうか?

 対してスキルオーブはただ単に、スキルを授かるためのアイテムでしかないのかもしれない。

 なるほど。そう考えると、ある程度納得はできるな。

 とりあえず今はこれくらいにして、今後も二重取りについては、少しずつ情報を得て判断していくことにする。

 他にも進化とランクアップの違いも気になるが、これ以上考えるのは止めておく。

 それよりも、上級生活魔法の確認の方が先決だ。


 名称:上級生活魔法
 効果
 次の魔法が使用可能になる。
 ・種火 ・飲水 ・微風 ・土塊
 ・光球 ・暗闇 ・清潔 ・氷塊
 ・魔充 ・植育 ・修理 ・調整


 増えたのは魔充・植育・修理・調整である。

 スキルの効果から更に効果の確認はできないので、名称から判断するか、実際に使ってみなければ分からない。

 まず魔充は、魔力で何かを充電する感じだろうか?

 そういえば、この世界には魔道具と呼ばれる高価なアイテムが存在していたな。

 魔石の利用法の一つが、確かそれだったはずだ。

 つまり魔充の使用方法は、魔力を使い切った魔石に魔力を補充するものとなる。

 正直、微妙だ。

 魔充の使い道は、魔石を買い替える代金の節約だろうか。

 まあ俺が知らないだけで、他にも使い道があるのかも知れないが。

 次に植育だが、おそらく植物の育成に影響を与える感じな気がする。

 ここで試しておかしなことになったら困るので、後日誰もいない外で試してみよう。

 三つ目の修理は、文字通りだな。

 試しにボロくなった俺の剣に使用してみると、刃こぼれが無くなる。

「おおっ」

 これは当たりだ。魔力・操作力・集中力次第では、かなり破損していてもどうにかなりそうだ。

 そして最後に調整だが、名称が大雑把すぎて分かりづらい。

 いったい何を調整するんだ?

 ぱっと思い浮かぶのは、服屋でブラックヴァイパーの一式をサイズ調整してもらった時のことだ。

 俺はそこで、微妙にサイズの合っていなかった耐地の指輪に発動してみる。

 すると耐地の指輪は、俺の指のサイズピッタリに調整された。

 これは、地味だが役に立つな。

 ついでに耐毒の指輪にも発動させて、サイズを整える。

 あの服屋の店員は、もしかして上級生活魔法を習得していたのだろうか?

 いや、そんな感じじゃないな。似たような別のスキルだろう。

 それか、調整のスキルだけを10歳の時授けられたのかもしれない。

 にしても生活魔法という名称通り、生活で使えればとても便利なスキルだ。

 やはり戦闘で使っていたのは、おかしかったのだろう。

 何か遠距離攻撃を覚えるのが、一つの課題だな。

 ちなみに上級生活魔法は、50ポイントで超級生活魔法にランクアップするようである。
 
 まあ、ランクアップさせるほどポイントに余裕が出るとは思えないが、他に優先するものがなければランクアップしよう。

 とりあえず、ここまでの道中で気になっていた内容は処理できた。

 この宿は夕食が出るみたいだし、食べたらもう寝るか。

 俺は支度を整えると、一階へとおりた。

 もちろん、泊まるときに見せたグリーンスネークもいっしょだ。
 
 席に着くと、出された料理は肉料理とパンにスープ、そしてエールである。

 国境門を越えた場所でも、出される料理にそこまでの差はなさそうだ。

 ちなみに、グリーンスネーク用の肉も出された。

 普段俺のモンスターは食事をしないし、食欲も湧かない。

 なぜなら俺の魔力があれば、十分活動できるからだ。

 しかし、食べられないわけではない。

 怪しまれないように、グリーンスネークにも食事をさせる。

 何となく観察していると、グリーンスネークが肉を丸飲みした。

 胴体には、肉の形がくっきり現れている。

 だがモンスターはゆえか、消化が早い。

 これなら、俺が食べ終わるころには元に戻っているだろう。

 それから周囲の話し声に耳を傾け、何か情報を得られないか試みる。

「ラブライア王国がドラゴルーラ王国の側面から攻撃を仕掛けたらしいぞ」
「まじか。確かドラゴルーラ王国って、いま侵略戦争しているよな?」
「おそらく、その妨害だろう」
「だとしたら、オブール王国はどうするんだ?」
「いや、動いた噂は聞かないな。そもそもアレが近いから、そっちに集中するんじゃないか?」
「ああ、オブール杯か。そりゃ、他国に何かするはずがないな」

 オブール杯? なんだそれは?

 それとこの大陸には、ラブライア王国という国もあるらしい。

 名前だけ聞くと、なんだかアイドルが歌って踊りそうな名称だな。

 そんなこと考えていると、話し声が続く。

「お前は出ないのか?」
「無理だろ。王国中から実力ぞろいのテイマーとサモナーが参加する大会なんだぞ? 俺みたいにゴブリンやホーンラビットとかをギリギリテイムした奴が、敵うはずないだろ」
「だろうな。参加したら見ものだったのによ」
「お前、担ごうとしたな!」
「なんだ、バレたか?」

 男たちはそこから馬鹿話を始めたので、これ以上有用な情報は聞けそうにはない。

 にしても、良いことを聞いたな。

 テイマーとサモナーが集まる大会か。

 きっと、様々なモンスターが出場するのだろう。

 情報を集めて、俺も参加してみようと思う。

 軍団を作るのも良いが、最強のエースを育てるのも楽しみの一つだ。

 現状のエースはホワイトキングダイルだが、大会前にもっと強いモンスターを見つけるのも良いかもしれない。

 この国ですることを一つ決めた俺は、久々に良い気持ちで一日を終えることができたのだった。

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