上 下
4 / 39
刹那高校二年一学期編

第3話・あの頃の約束 ※挿絵あり

しおりを挟む
「その……豊海さんのこと……私に下さい!!」
「はい?!」
彼女は恥ずかしそうにそしてその言葉は教室中に聞こえてしまった。
「やっぱり豊海と東城ってできてたんだ。」
あちこちで言葉が飛び交う中、東城風とうじょうふうはふと、算学数さんがくすうのことを気になり、算学のことを見た。その時、算学と目が合った。
「なんだろう。どこかであの目を……」
風は思い出した。算学の目に似た目を。
「たしか……私の知らない事を教えて……」
思い出してると豊海瑠璃とようみるりが絡んできた。

「おい、ハニー? 何ボケッとしちゃってるの?」
「ハニー?」
辺りを見渡すと視線が風に注がれていた。
「あぁアァ……誰が豊海と付き合ってる必要があるの?」
「必要?」
辺りのみんなの頭の上に、はてなマークが浮かんでいるのが分かった。
「別に必要性とかの話じゃなくて……」
弥生が呆れ顔でつっこまれた。「あの……違うのですか?」
教室に来た小さい女子生徒は恥ずかしそうに聞いた。
「違います!」
風は1秒よりも早く即答するとまたもや、辺りのみんなの頭の上に、はてなマークが浮かんでいるのが分かった。

取り敢えず、山を乗り越えた風はその日の午前の授業を終えていた。
「疲れた。1杯飲みたい……」
「未成年でしょ。瑠璃って結構まいってたよ……」
「むしろ嫌いなんだけど」「……。算学君の周りひとがいっぱいいるね」
「算学……」
やはり似ていた。あの目。いや、目だけではないのか。でも雰囲気は全く違うよう。
「好きだったのかな……」
「えっ? 算学君? もしかして瑠璃?」
「違うから!」
算学の方をチラリと見るとなんか苦笑いをしている気がした。

算学はその後、人気者だった。算学と名が恥じず、数学の時間は分からない問題を分かりやすく教えていた。数学以外の教科の授業も詳しかった。それだけでなく、人も良く、生徒や先生にも信頼が厚かった。
「約束……」
風は小さい頃、算学と似た男の子との約束を思い出そうとしていた。
「大きくなったら私の旦那さんになって下さい」
「約束してやる。忘れるなよ」そんな約束をしていた気がした。昔過ぎてその約束をしたのか曖昧だった。

算学が来て一週間後
「すいません。この前は」
そう言ったのは、あの豊海に好意寄せているんではないか宣言をした女の子だった。
「私の名前は西尾染杏にしおそあんです。この前は名前も名乗らず……」
「気にしなくていいよ」
「その……豊海さんのことを知ってる事を教えて欲しいんですけど……」
「豊海のこと……」
風は豊海の事を余り知らなかった。幼馴染にも関わらず。
「そういえば、あいつの事を余り知らないんだよね。興味無いと言うか」
「豊海さんは東城さんの事いっぱい知ってるんじゃないんですか」
染杏は食い気味で風の言葉を返した。静かな時間が流れた。
「すいません。また……私はこれで……」
なんか彼女をガッカリさせてしまったようだ。
「なんでこんなに人間関係も失敗するんだろう……本当は豊海の事をどう思ってるの?」
後ろから一人の少年が通り過ぎそうになった。

通り過ぎそうになった少年は算学だった。
「その……聞きたい事がある!」
やや強引に算学の足を止めた。
「なに? 急いんでるけど」
「喋った! でも、何その言い方は!」
「急いんでるから。じゃあこれで」
算学はぶっきらぼうに言うと再び足の歩みを進めた。少し歩くと再び足を止め、振り向いて算学はこう言った。
「幼馴染は大事にしろよ。失敗女」
その目、いや雰囲気があの頃約束した男の子と一緒だった。
「いったい君は……」
再び算学は足の歩みを進めた。算学が見えなくなるまで見守る事しか出来なかった。

「あの目は確かにそうなんだ。そうに決まってる! アイツを捕獲する。絶対にあの頃のアイツに完全に戻す。豊海の事もついでに気持ちを断ち切る!」
その日の夜、自分の部屋の屋根に向けて拳を突き立て、宣言した。「暗い気持ちじゃダメだ。気持ちを切り替えよう……そして約束を必ず果たせる! もう失敗するもんか!」
風の取り柄が発揮した。普通の人とは違う早いスイッチの切り替えだ。
「豊海のことは幼馴染でいいんだ。好きとか嫌いとかの話じゃないんだ」
そう結論付け、瑠璃を幼馴染として知る事にした。遅いとかの話では無かった。
「でも……今の算学は好きじゃない……昔の算学が好きだ……」
それが風の気掛かりであった。考えてると風の瞳がだんだんと重くなり、やがて眠ってしまった。

「俺は昔も今もお前の事好きだよ」
算学は夜空を見上げていた。

~おまけギャラリー~

三毛弥生みけやよい」のLINEスタンプ風です。この後の話で三毛弥生の弱点?が発覚します。乞うご期待!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...