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第四章『再会』
第25話 デートの如し
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賑やかな食堂の店内。
俺たちは席に座っていて向き合っている。桜はぎこちなさそうな表情を浮かべて、視線をさまよわせる。
「なんで俺を見ないふりをしているか?」
「だって、社員が私たちを見かけたらデートをしていると勘違いするかもしれない……」
「そんなことはないだろう。とにかく、早く注文を決めてね。腹が今にもゴロゴロしてしまうぞ」
「は、はい!」
言って、桜はメニューに目を通した。
彼女が熟考している間に、俺は早速注文を決めておいた。
「んー、昼ごはんだから……巻き寿司はいいかな」
「それで良い!」
と、俺は芝居がかった声で言った。
芝居がかったというか、わざと待ちわびている気持ちを声に出そうとした。
腹減ったから彼女にできるだけ早く注文してほしい……。
「な、なら巻き寿司を頼もうと思う。森澤さんは?」
「俺は味噌汁だ」
「……味噌汁だけ?」
桜は俺の注文に首を傾げた。すると、前髪が目の前に落ちて、彼女の視界を遮った。
ーー俺の注文はそんなにおかしいのか?
これはおそらく十人十色の問題だけだろう。
桜は味噌汁が好きじゃないのかな……。
それでも、彼女の疑問がなぜか頭に引っかかって、結局俺は注文を少し変えた。
「じゃ、味噌汁と巻き寿司にする。でも、巻き寿司の分は桜が払うよ。俺はお金持ちなんてないんだ」
「知ってるわ。じゃ、案内の恩返しとして払ってくれるよ」
言って、桜は口を尖らせた。
それを見て、俺は彼女の可愛さを初めて実感した。しかし、俺は彼女とデートをしてはいけない。理由は言うまでもないだろうけど、初デートは美於としたいからだ。
「すみません!」
と、俺は手を挙げて給仕に呼びかけた。
給仕が早速テーブルに向かって、俺たちの注文を取った。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
俺たちは同時に頷いて、注文を順番に言う。
「巻き寿司をください」
「俺は味噌汁と巻き寿司です」
「少々お待ちください」
注文をメモに書き留めてから、給仕は踵を返して歩いていく。
俺たちは二人きりになり、空気が少し気持ち悪くなってしまった。
俺は沈黙を終わらせようと咳払いして、何かを切り出そうとした。いい天気だね、なんて言ったらきっと無視されるだろう。だから、口を開く前に俺は話題をちゃんと考えた。
「ところで、なんでこの会社に入ったか?」
いい話題だ。会話を進めるし、俺の気になっている質問に答えてくれる。
「バイトをクビになったの。客足がだんだん増えていくと、私の接客がまずくなって、たくさんのお客様を一時間以上待たせちゃった……」
「大変そうだな。ま、この仕事で接客しないのは不幸中の幸いかもしれん。会議以外、他人とあんまり話さなくてもいいんだ。陰キャだったら最高の仕事だろう」
「そっか? でも、今朝森澤さんが『大きな問題がやまほどある』と言われてから、ちょっと不安になったの」
「俺が悪かったよ。新人に言うことじゃないのはわかってるのに、仕事の残業で怒りが溜まって、ちょっと八つ当たりしてしまった」
俺がそう言うと同時に、給仕がやっと戻ってきた。
「お待たせしました!」
言って、給仕が俺たちの昼食を配膳する。
「ほう、美味しそうだな!」
二、三十分だけだろうけど長年待っていた気がした。
とにかく、昼食がようやく目の前に現れた。
早速食べたい、と俺は味噌汁と巻き寿司を見入りながら頭に繰り返した。
「いただきます!」
と、俺たちは言って箸を取る。
俺は先に巻き寿司を口に運ぶ。
ーー美味いいいいぃ!
そして、桜は彼女の分を食べてみた。
「美味しいぃ!」
桜は容赦なく巻き寿司を次々とかじり続ける。
俺は食べれば食べるほどやる気が湧いてくる。
女性と昼食を摂るなんて、本当に気分転換だなと思った。食べ終わったら、俺たちは無敵になるんだろうか……。
俺たちは席に座っていて向き合っている。桜はぎこちなさそうな表情を浮かべて、視線をさまよわせる。
「なんで俺を見ないふりをしているか?」
「だって、社員が私たちを見かけたらデートをしていると勘違いするかもしれない……」
「そんなことはないだろう。とにかく、早く注文を決めてね。腹が今にもゴロゴロしてしまうぞ」
「は、はい!」
言って、桜はメニューに目を通した。
彼女が熟考している間に、俺は早速注文を決めておいた。
「んー、昼ごはんだから……巻き寿司はいいかな」
「それで良い!」
と、俺は芝居がかった声で言った。
芝居がかったというか、わざと待ちわびている気持ちを声に出そうとした。
腹減ったから彼女にできるだけ早く注文してほしい……。
「な、なら巻き寿司を頼もうと思う。森澤さんは?」
「俺は味噌汁だ」
「……味噌汁だけ?」
桜は俺の注文に首を傾げた。すると、前髪が目の前に落ちて、彼女の視界を遮った。
ーー俺の注文はそんなにおかしいのか?
これはおそらく十人十色の問題だけだろう。
桜は味噌汁が好きじゃないのかな……。
それでも、彼女の疑問がなぜか頭に引っかかって、結局俺は注文を少し変えた。
「じゃ、味噌汁と巻き寿司にする。でも、巻き寿司の分は桜が払うよ。俺はお金持ちなんてないんだ」
「知ってるわ。じゃ、案内の恩返しとして払ってくれるよ」
言って、桜は口を尖らせた。
それを見て、俺は彼女の可愛さを初めて実感した。しかし、俺は彼女とデートをしてはいけない。理由は言うまでもないだろうけど、初デートは美於としたいからだ。
「すみません!」
と、俺は手を挙げて給仕に呼びかけた。
給仕が早速テーブルに向かって、俺たちの注文を取った。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
俺たちは同時に頷いて、注文を順番に言う。
「巻き寿司をください」
「俺は味噌汁と巻き寿司です」
「少々お待ちください」
注文をメモに書き留めてから、給仕は踵を返して歩いていく。
俺たちは二人きりになり、空気が少し気持ち悪くなってしまった。
俺は沈黙を終わらせようと咳払いして、何かを切り出そうとした。いい天気だね、なんて言ったらきっと無視されるだろう。だから、口を開く前に俺は話題をちゃんと考えた。
「ところで、なんでこの会社に入ったか?」
いい話題だ。会話を進めるし、俺の気になっている質問に答えてくれる。
「バイトをクビになったの。客足がだんだん増えていくと、私の接客がまずくなって、たくさんのお客様を一時間以上待たせちゃった……」
「大変そうだな。ま、この仕事で接客しないのは不幸中の幸いかもしれん。会議以外、他人とあんまり話さなくてもいいんだ。陰キャだったら最高の仕事だろう」
「そっか? でも、今朝森澤さんが『大きな問題がやまほどある』と言われてから、ちょっと不安になったの」
「俺が悪かったよ。新人に言うことじゃないのはわかってるのに、仕事の残業で怒りが溜まって、ちょっと八つ当たりしてしまった」
俺がそう言うと同時に、給仕がやっと戻ってきた。
「お待たせしました!」
言って、給仕が俺たちの昼食を配膳する。
「ほう、美味しそうだな!」
二、三十分だけだろうけど長年待っていた気がした。
とにかく、昼食がようやく目の前に現れた。
早速食べたい、と俺は味噌汁と巻き寿司を見入りながら頭に繰り返した。
「いただきます!」
と、俺たちは言って箸を取る。
俺は先に巻き寿司を口に運ぶ。
ーー美味いいいいぃ!
そして、桜は彼女の分を食べてみた。
「美味しいぃ!」
桜は容赦なく巻き寿司を次々とかじり続ける。
俺は食べれば食べるほどやる気が湧いてくる。
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