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二章
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しおりを挟む「失われた記憶?なんのことだ?」
リオンが混乱していると、元魔導士団長がリオン肩に手をポンっと置いた。
「その話はおいおいするから、取りあえず、今は巡礼の旅の事を調べて、彼女を助ける方法を探そう」
「……そうだな」
何もかもふに落ちないながらも、取りあえず優先事項は巡礼の旅のことなので、関連してそうな本を探してもらって、手当たり次第に読み始める。
(っても、俺、古語は読めんのだがな……)
舌打ちしそうな顔で、本を開いていた俺にリツカがこちらを見ずに魔法をかける。
「ーー何をした!?……ああ、なるほど、わるい」
「いえ、一人足手まといがいると困りますから」
その口調にはイラっとしたが、古語が読めるようになるのはありがたいのでそのまま会釈だけして調べものに戻った。
先ほどの魔法は翻訳の魔法らしい。翻訳の魔法はかけた本人が理解している言語のみ使用可能な魔法だ。つまり、リツカは古語をほぼ理解しているという事、天才はだてではない。
いくつの文献を読んだか……。
翻訳の魔法がかかっていても、リオンの故郷と同じく、古語の文献は読みづらく何度イライラしたか分からない。
そうして、今までの中でも一番古めかしい本を手に取った時、ようやくその記載は見つかった。
「あったぞ!!」
思わず大声を上げたリオンの元に、残りの二人も近づいてきた。
その本は現在のものよりも大判で、普通の本を四つくっつけたほどの大きさをしていた。
文字は素人が手書きで書いたような字で、青っぽいインクがわずかに滲んでいる。
「これは……随分と古い本だね」
「そうですね。この本だけでも、研究員を何匹か釣れますよ」
何匹???と思ったが、この男の口の悪さは最初からなので、リオンはそれ以上突っ込まなかった。まあ、それほど歴史的価値があるものなのだろう。
「ふむ、なるほど、神託による巡礼の場合どの神からの神託なのかが重要、なのか」
「神託の巡礼を只人が止めようとする行為は禁忌、神によって罰を与えられ場合によっては呪われる、と」
「ああ、それで……」
「心当たりがあるんですか?」
「……まあな。普段は出ないような強い魔物に王都周辺で出くわしたりとかか?」
「そこまでするんですか?たかだか巡礼の旅に出ている女性を一人引き止めるだけで?」
「まあ、僕たちの感覚からするとそうだけど、神からすると、自分のものを虫にでも奪われそうになってるって感覚なんだろうね」
「最悪だな、そりゃ」
「まあ、その分恩恵も気まぐれに振りまく存在だし、神が居なかったらこの国はとうに滅んでたから、何とも言い難いかな」
「神様それぞれも性格が違うっていいますしね」
「まあ、魔物に関しては王都の結界が色々あってもろくなってたからって事情もあるんだろうけどね」
「そうか」
「と、話がそれたね。で、どうしたら呪われたりせずに巡礼から巡礼者を取り戻せるって?」
「ーー創造神以外の神なら、対立している、もしくは仲の良い神の助力を乞うことで助かることがあるとありますね」
「神頼みってことか?」
「ちょっと違いますね。いや、言葉的にはあっていますが、対価をささげることで頼みを聞いてもらうといった感じですね」
「対価ってどんなものなんだ?」
「あまり例がないみたいなので、確証はないですが、その神の好むものや、他の命とかですね」
「あー、じゃあ、俺の命とか?」
そう軽く言ったリオンは急に壁に突き飛ばされた。
「ーーリオンが死んでどうするんだ!!本末転倒だろうが!!」
「そうですよ!あなたが死んでどうするんですか!?」
二人に怒られて、リオンはなんでこんなに怒られているのか分からずきょとんとする。自分は厄介者だったはずだ。この国とって、この世界にとって、用済みだったはずだ。
きょとんとしたリオンを見て、リツカは泣きそうに顔をしかめ、元魔導士団長は目をつむり肩をすくめた。
「とりあえず、今はこの話してもらちがあかない、命以外で何かないか、探そう」
「それだったら、神殿に突撃するか」
これも軽く言うリオンに二人とも目を丸くした。
「「リオン!!」」
「いや、それが早いだろ。神様が関わてるんだろ?なら神殿に俺が突撃したら早いだろ。どうせお尋ね者だしな」
「……それはそうですが……」
元魔導士団長もその言葉を聞いて考え込む。
暫くして、顔を上げた彼は、リオンに告げた。
「とりあえず、僕から連絡を取ってみよう。正攻法で行けるならそれに越したことは無いはずだ。ちょうど、色々融通が利きそうな知り合いがいる」
元魔導士団長の彼が利かせる融通とは……とリオンは少し考えたが、心の中でその人に合掌してから、言葉に甘えることにした。
きっと彼が大丈夫というんだから大丈夫なはずだ。
リツカは白い目で元魔導士団長を見ている。
「どうしたの?ふたりとも」
元魔導士団長は満面の笑みで二人に笑いかけた。
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