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四章
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しおりを挟むリオンside
「て、あの童顔黒ローブ、どこの神殿だよ……」
リオンは探索魔法を使いながら少女の後を追っていた。
探索魔法といっても、リオンの故郷で想像されていたようななんでもござれの魔法ではない。
半径××メートル(この範囲は本人の魔力量などに依存)に存在する対象者の痕跡、足跡やにおいなどを探し当ててくれる魔法なのだが、少女が王都を出た日は季節外れの大雪。痕跡がかなり少なかった。正直、黒ローブの『神殿』というヒントがなければ行き先を絞り込むことは難しかっただろう。
痕跡一つ見つけるのにも一苦労だった。かといって探索範囲を広げたら、魔力が尽きてしまう。魔力消費が大きいのもこの魔法の特徴だった。
「まったく、影薄すぎだろ……」
少女は夜半だけ移動しているようだが、それにしても痕跡が少ない。もともと姿を隠すことに慣れているかのようだった。
初日が大雪だったせいで初動が遅れて、少女に追い付いたのは、ある辺境の町にたどり着いた時だった。
その町には、古い神殿がある。もし、あの黒ローブの言っていることが正しいなら、そこに少女がいる可能性が高い、とリオンは神殿に足を向けた。
「寒いな……」
しとしとと雨が降り始めている。そろそろ気温が上がってきてもいい時期なのだが、今年は大雪と言い、天候が全く安定せず気温も上がってこない。
真夜中の暗闇の中、白い息を吐いて、リオンは神殿にたどり着いた。
コンコン
「だれかいないのか?」
声をかけてみるが、返事が返ってこないので、リオンは扉の取ってを引いてみた。
キー。
古びた扉が開く音がして扉が開く。なぜか扉には錠がかかっていないようだった。
リオンは何かに誘い込まれるようにふらふらと、目的地も分からず足が向くままに神殿の中を進んでいった。
ひっく、う、あああああ。
女性がむせび泣く声が聞こえてくる。
ぼんやりとした意識がふっと覚醒した。いつの間にかリオンは神殿を抜けて、小さな別館に来ていた。
奥から女性がむせび泣いている音が響いてくる。
その声に既視感を感じたリオンは、駆け出して、その音がする部屋に駆け込んだ。
そこにいた少女は、その物音に顔を上げて、ぼんやりとリオンを見つめた。
「どうした!!」
駆け寄って少女の手元を見る。
少女の腕の中にいる子供の額から全身に向かって黒い文様がひろがり、子供の額からは汗がとめどなく流れている。
「り、リオン様、子供が、どうして?」
慌てて少女から子供を受け取り、リオンはその顔をじっと見つめた。
高熱がでているだろうその子は、泣き叫ぶ体力もないのかぐったりとしていた。
「……呪いの文様か」
リオンは愕然としてその子を見つめた。その様子を少女は真っ暗な瞳でみていた。
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