異世界転生者はぶっ殺せ

UZI SMG

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第一章

屈辱の中で、希望を

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「我々は勇者組織ユースケ帝国だ!勇者祐輔様の名により、この村から税の回収と統治を行う。村の責任者は、すぐに出てこい!!!」

 村の入口に、馬に乗った騎兵が4騎、軽歩兵が10人以上見えた。

 恐らく、交易の無かった偏狭へんきょうの地に、税を回収しに来たのだろう。
 村の家から、住人達が不安そうに顔をのぞかせる。

 ハッサムがすぐに、騎兵のリーダーと思われる男に近づいていった。俺もすぐに後を追う。

「この村は、中立の村です。どこの国にも属していません。それにお渡しできるような物はありません」
 リーダー格と思われる騎士の前で、堂々と叫ぶハッサムは、同じ年とは思えない風貌だった。大人が村を捨てて行った今、実質の村の責任者は、ハッサムだった。努力家で、皆からもしたわれている。
 騎士達に近づくと、子供の二人に比べ、身長が高く。フルプレートの鎧は、かなりの威圧感をまとっていた。


「中立?子供が何の立場で言っている?責任者が子供の村が中立?笑わせるな!!それに、行商から聞いた話だと、この村は、外部との接触を避けているそうだな?」

 騎士が表情を崩し、ハッサムを睨み、問う。

「いえ、避けてはいません。この村では取引するものが無かったので、行商の方には、そう言っただけです」
「ほう、何も無いか?この村には、豊かな作物ができそうな畑が見えるが?」そう言って、騎士が顎で郊外に広がる畑を指す。

「あれは10年かけて再生した大地です」
「つまり、この村は、10年間、税を納めていないという事だな?」
「10年前、勇者が現れて村を破壊したからです。収めるものなどこの10年の間何もありませんでした」
 そうハッサムが答えると、騎士が急に激昂げきこうしだした。
「お前は今、勇者の名を軽々しく口に出したな?勇者ユースケ様は、我々を導く神だ。言葉を訂正しろ」


「……」


 ハッサムが騎士をじっと見つめたまま、黙る。その神とやらの勇者に、日常を殺されたのだ。謝れるはずなどない。


「私とて、子供相手に悪魔ではない。言葉を訂正して謝れば済ましてやると言っている」


「……」


「……」


 しばらく沈黙が続く。騎士達の間でざわめきが起こる。
「おい、死にたいのか?」
 騎士がそう言って、剣を抜き、ハッサムに剣先を向けた。銀色の刃の先端が夕日に不気味に輝く。

「……私は、勇者が憎いです」ハッサムが言葉を選ばずに、騎士にそう告げる。
「……そうか……分からせてやれ」

 そう騎士が言うと、軽歩兵がハッサムを、さっと取り囲んだ。

「……」

 ハッサムがその男達をぎろっと睨む。
 そして抵抗する間も無く羽交い絞めにされ、リンチが始まった。

「おい、ガキ!」
「勇者様は偉いんだぞ」
 軽歩兵が、怒号を上げながら、棒で顔を殴ったり、大振りの蹴りでハッサムを痛めつける。

 ハッサムは苦痛で辛い顔をしたが、叫び声を上げないように耐えていた――自分の信念を貫くために。
 大人が子供をなぶる、異常だった。

「お願いです。この者が、口が聞けないのです。許してください」
 その残忍な様子に見かねて、俺はすぐに騎士に、豚のように土に顔を押し付け、必死に懇願こんがんした。

「……」

 騎士は、見下したように俺を見て、しばらく黙った。
「そう言ってますけど、どうします?」
 もう一人の騎兵が、同じ顔でそのリーダー格の騎士に問う。
 ニタニタと笑うその顔は、人間の皮を被った獣に見えた。

「……まあ、私も悪魔ではない。おい!もういいだろ?」

 騎士がそう言って、軽歩兵に暴行を止めさせる。
 軽歩兵がハッサムを囲んだ輪を崩すと。
 血だらけのハッサムが地面に倒れていた。

「ハッサム!!大丈夫か?」俺はすぐに、ハッサムに駆け寄り、体を支える。
 ハッサムは、恐怖に震えてはいたが、少しだけ口元を緩めた。ほんとに大した奴だ。



「今から、この村はユースケ帝国の領地となった!!!貴様らは、魔王と戦う我々の休息の地を提供しろ!そして税を支払い、このユースケ帝国のさらなる繁栄を支えるのだ!!我々は諸君に、対価として暖かい毛布や医療を与える」
 そう言って、騎士はユースケ帝国の旗を、俺に渡した。
「これを、村の一番高い所へ掲げよ。それでこの村は勇者様の加護を得る事ができる」
 俺は、何も言わずにその旗を受け取り、旗を村の中心に立てたのだった。



 村をまた、惨事さんじに巻き込みたくない。その一心で。
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