62 / 86
08
1
しおりを挟む変化ってもんは急に起こるのか。
気付いてない内に変化してるのか。
莉緒が俺ん家来て。
ただ迷惑なだけだったのに、いつの間にか抱き合って眠ってる。
俺はこんな風に女と一緒いた事ねえし。
可愛いだとか思った事ねえし。
別に先の事とか考えるワケじゃねえけど。
ただ。
今の二人一緒にいるってのが続いてけばな。
良いかな。とは思ってる。
だからこの眼の前の男が俺にはちょっとムカつく。
前に写真で見たより痩せてて。
「妹がお世話になってすみません」
急に出て来やがって。
いきなり莉緒の携帯に連絡してきて挨拶なんかしに来やがった。
妹の彼氏らしい態度してやるけどな。
ホントは気に入らねえ。
にこにこしてるがロクなヤツじゃねえのは尊さんから聞いて知ってるしな。
莉緒のヤツは久しぶりの大好きなお兄ちゃんなもんだからすんげえ嬉しそうで。
それも気に入らねえ。
「こっち帰って来てようやく落ち着いたんで」
ヒモ生活がか。
「また兄妹で暮らせるよ」
クソ兄貴が言ったら。
「ホントに!?お兄ちゃんっ!?」
莉緒が抱き付いた。
もう子供じゃねえんだし。
俺に言わせりゃ。
兄妹で今更一緒住む必要ねえだろ、と思う。
けど。莉緒はブラコン。
それに兄貴は唯一の肉親だし。
そこら辺は俺にはわかんねえとこだしな。
あの兄貴もろくでなしだろうが。妹は可愛いんだろうし。
いや、可愛い妹なら借金押し付けて消えたりするか?
どうにもスッキリしねえ。
仕事終わって。今日は少し早かったな。
まだ寝てるから起こさねえ様にと思ったら。
「ん…おかえり」
眼覚ました。
キスして抱き締める。
「…ん?どうしたの?」
照れ笑いしながら。
お前はどうしたいんだよ。
俺と一緒の今の生活。
そうじゃなくなってもお前は平気なのか。
ずっと俺んとこいて、一緒いるの慣れてるだろ。
俺がいなくても大丈夫なのか、お前は。
「莉緒…」
「んっ…」
切れ切れの声で。
「俺の事好きか?」
「ん…好き…」
返事する。
そうか。俺も。
「お前が好きだよ…」
ああ、そう言えばこんな事言ったの。
初めてかもしんねえな。
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる