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そのじゅうさん

そのじゅうさん-7

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「ほげっ」

「はいはい、みいくん。おしっこ出たかなあ?」

いそいそとオムツ交換する尊。

今のところ母親であるワタクシめの役割は乳飲ませる事ですよ。

全部が母乳と言うワケでもなく。そこまで出ないらしい。

足りない分はミルクやけど。みいくんもミルク飲む時だけは大人しく尊に抱っこされてる。

退院したらおかんがしばらく家来てくれるって言ってたけど。

尊の様子見て。

「お母さんいらんのやない?」

と。イクメン尊の活躍に期待しばぁばは、構いたい時だけ遊びに来る、に方向転換した。

「みいくん、いっぱい飲んで大きくなろうねえ」

ゲップさせる動作も既に板に付き。

「やっぱさあ、目鼻立ちは尊クンぽいかなあ。俺としてはさあ、全体的な雰囲気がみのりちゃんで顔が尊クンだったら最強だと思うんだけど」

ベビーベッドで眠るみいくんを眺める各務先生の眼差しは自分が父親みたいに優しい。赤子は変態を真人間にする。

「どう思う?」

「どうって…お二人のお子さんですから可愛らしいお顔立ちになると思いますよ。それより各務先生、いい加減仕事して下さい」

松本氏は自社その他から各務先生の強制連行を期待されているらしく。やつれてきたな。

そりゃそうだよな。宿泊費はかさむし新婚なのに新妻ほったらかしで変態作家にくっついてんだからな。

各務先生は相変わらず我が家に宿泊中。

朝尊と一緒に家出て瞳子さんに会いにいって病院来て夕方瞳子さんが来るのを待ってる。

あたしが産後疲れて爆睡してる間になにがあったのか。尊の言うところでは。

分娩室のドア開けた瞬間、一斉に人々の視線が尊に注がれた。

尊の言葉を待つ人々の顔はあたかも神の声を待つかの様だった。尊談。

「男の子です。元気な」

それは嬌声に近いくらいの騒ぎ様だったらしい。

おかんはなぜか松本氏の手握り。

「ありがとう、ありがとうございます!」

なぜ?

尊はおとんに両手握られて。

「うん、うん、良かった」

涙目のおとん見て尊もまた泣いた。

そして。

「やったあ!みのりちゃんすごいっ!」

少女のように無邪気に喜びの声あげる瞳子さんは。

ホントに無邪気に。

側にいた各務先生に抱きついた。

少しだけ戸惑った顔した各務先生は、はしゃぐ瞳子さんを。

それはそれは愛おしそうに抱き締めた。

無意識だとしても。

各務先生の気持ちを考えると。同じ男として。

「ちょっとアイツがかわいそうかな、と思った」

尊が言った。

それをどう解釈したのか。そんなもんポジティブにしか解釈せんやろ、元がポジティブな人やし。

各務先生は自分と瞳子さんの将来を真剣に考える様になってしまった。

仕事終わってお見舞いに、と言うかみいくんに会いに来る瞳子さん。

「みいくーん!とうこちゃんでしゅよお!」

意地でもとうこちゃん、て呼ばせたいらしい。

気が済むまで抱っこして頬ずりして。

「お食事行きましょうか。今日はそうだなあ、あっさり寿司とかいかがですか?」

頃合見計らって瞳子さんの肩抱く各務先生。

ちょっと前まで二人の事をああだこうだ言ってた尊は今はそれどころじゃなく。

「みいくんもそろそろお腹すいたかなあ?」

みいくんに熱中。

そして後に残された松本氏は。

はあっ、と。

ため息ついた。




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