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第二章 凰雅side18

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ふらふらの体と頭で考える。


どういう関係なのか確認出来ていない。
俺は結を諦めるなんて出来ない。

何にしろ 前みたいな失敗だけは絶対に出来ない。

...なら 仕事はやる。
見合いに向けて努力する。

これだけは必須事項だ。

どんなにうちひしがれていようとも
俺はまずやるべき事はやる。

それは誤らない。

その上で何をするべきか。

考えろ。
結が俺だけを見るようになるにはどうすれば....。

自分の体でないような感覚に叱咤しながら仕事だけはこなして。
それが結の傍にいく最低限条件の一つだから。

そんなある日 アメリカ人弁護士主催のパーティに顧問弁護士共々声がかかり 里美からビリーの情報を得ていた俺はこのパーティにもしかして結が来ているかも と期待とも落胆とも言えぬ複雑な想いを抱えながら一応顔だけは出すことにした。


パーティ会場の階でエレベーターから降りて暫く行くと 少し入りくんだゆったりくつろげるソファスペースに女が体をあずけて後ろ向きに座っている。

いつもと違う髪型とパーティ用のシンプルな膝丈の淡いブルーのドレス。

まさか
と思いながら近づく。

かわいいその耳だけでわかった。

顔まで見て少し呆れる。ホテル内とは言え人目につきにくいソファで 見るからに寝入っている。
呆れながらも二人きりのこの偶然に胸をを躍らせずに居られない。
二人の関係が今微妙なのも気にならない。

愛しくて 恋しくて。
そっと結の頭を撫でた。
何てかわいいのだろう。

.....胸が詰まる。

泣きたくなるような切なさと蕩けるような甘さで胸が一杯になった。

撫で続けると俺には言った事のない甘えた声で

もっと

とねだる。

思わず手が止まったが 甘える結をまだ味わいたくて他の事は考えないようにした。

やさしく撫でると 目を瞑っているのに満足そうな笑みを浮かべる。

..そうか 結はこんな無防備な顔をするのか。

偽りにしろ 今の結を独占しているのは俺。

結を撫でてるだけで最近の疲れが溶けていくようだった。


俺は込み上げる切ない気持ちを笑顔で逃がして満足な気持ちだけを留めようとした。
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