上 下
280 / 361
番外編14 ある新婚生活

六 指先(※)

しおりを挟む
 口づけてくる。最初は触れるだけで、目を閉じて、しばらくそうしていた。
 急にたまらない気分になって、まさぐり合いながら深くなる。唇を割って、優しくこじ開けて、生あたたかい舌が入ってきて、手始めに口の中を犯してる。そういう感じ。
 引っこ抜かれるぐらい強く吸われて、腰砕け。

「ふっ、んっ、んう……」

 唾液が流れこんでくる。口の中がいっぱいになる。味わうように少しずつ飲んだ。和臣さんに侵食されてもう溶けてる。
 息があがってるし、顔は熱いし、はだけてるし。
 和臣さんは、シャツをまくりあげておなかを舐めてくる。くすぐったさに声が出た。

「ひゃっ、あっ」

 指が俺の皮膚をたどってる。爪の先で乳首を弾いたり、指の腹が脇腹を撫でたり。体つきを確かめるみたい。

「多紀くん。足、開こうか」

 下も上も全部脱がされ、下着も剥ぎ取られて、あっという間に全裸。俺は膝の裏を抱えて、従順。
 和臣さんは自分の長い中指を咥えて濡らし、唾液まみれの指が俺のそこに入ってくる。
 探るようにされて腰がくねる。

「あっ」
「多紀くん? ここ柔らかい。なんで?」
「ね、念入りに準備したから……」
「そういう感触じゃないよね。しっかり入れてほぐした感じ。俺が気づかないとでも? ん? 浮気?」
「そんなわけないでしょ……」

 和臣さん以外の男に興味ないっちゅーねん。和臣さんが気づくくらい柔らかいのは、ここ数日、自分で指を入れていたせい。

「疑ってなんかないよ。本当のこと自分の口で言おうね」
「自分で……その……指で……」
「ふふ。多紀くん、アナル使ってオナニーするんだ。知ってたような、知らないような」
「やめて、言わないで……」

 したことまでは言えても、和臣さんの無事を知った後、途端にむらむらしてしまって、ベッドで和臣さんのにおいを嗅ぎながらしたことは、変態くさくて絶対に言えない。
 俺、絶対に和臣さんの悪い影響受けてる。和臣さん、俺の枕めっちゃ嗅ぐもん。真似っこみたい。

「多紀くん嘘吐けないね。あー、すっごい興奮する。なんなの、とろとろじゃん。やらしすぎ……」

 和臣さんの固い指が抉って押して掠めてくる。くぽくぽと音を立てて出し入れしたり、中でぐちゅぐちゅとかき混ぜたりしてくる。
 自分の指だと動きが読めてしまうけど、和臣さんの指は予想外の動きをする。だからすぐ気持ちよくなって、もっと先を知りたくなる。息が荒くなっていく。
 和臣さんも興奮してる。俺のそこを見つめて、俺の反応を確かめながら、夢中になって指を動かしてる。
 興奮してる様子が手に取るようにわかる。スラックスの中身、全体像がくっきり見えるほど勃ってるし、体が火照っているみたい。なにより視線が、俺のことを食べようとする獣。

「俺の指、気持ちいい? 言って、多紀くん。俺の指の味」
「はぁっ、はぁっ、あっ、ゆび、きもちい……」
「多紀くん、俺に指入れられて気持ちよくなっちゃうね」
「んっ、んっ」

 指が体内に入ってるだけで、なんでこんな、火がついたみたいに熱いんだろ。
 そんな目で見ないでくれ、と思う。
 こんな、両足をみっともなく広げて、指を入れられただけで、よだれ垂らして喘いでいる痴態。
 恥ずかしいのに、指に蹂躙されて、どんどん高まって震えて、和臣さんにされるがまま、あっという間に欲しがってる。

「多紀くんが自分の指でするのだと、多紀くんの気持ちいいところは届かないのかな。俺のだと届くけど。自分の指とどっちが気持ちいい?」
「和臣さんのがいい……」
「ひとりでナカイキできた? 射精はした? 前も扱きながら、なのかなー」
「和臣さんのがいいもん……」

 性欲を発散したいからひとりでもするけど、体温も意地悪な声も重みも、何もかもが物足りない。
 がんじがらめにされて密着されて性欲の限り犯されて食われたい。
 全身でのしかかってきて、逃げようとしても逃さないで、広い肩としっかりした腕で固定して、無理やりにでも繋げてきて、柔らかくしたあそこを固いあれで突いてほしい。

「ねぇ、どこでオナニーしたの? ベッド?」
「…………」
「何回した? 何十回?」
「…………」
「だんまり多紀くん。じゃあ、二十回したってことにしとこ。絶倫多紀くん」

 絶倫なのは和臣さんのほうだろ。ベトナムで二十回していてもおかしくない。

「俺はそんなにしてません……」
「何回した?」
「……三回」
「三回もしたんだ。俺の指とどっちがいい?」
「和臣さんの指……」
「オカズなに?」
「和臣さんの写真……」
「ふふっ」

 でも枕のにおい嗅ぎながらイったのは言わないもんね。

「和臣さんは何回したんですか」
「してないよ?」
「それは嘘」
「ほんとほんと。貯めといた。濃厚だと思うから味わってみてよ」
「下品……」
「えへへ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...