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番外編4 おまけ

おまけ① Side多紀

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 口述試験が終わった次の週。土曜日の午後。
 寒い日が続いている。
 朝から洗濯して、午前中にしっかり掃除して、ゆっくりしているとき。
 リビングのソファでコーヒーを飲んでいたところ、和臣さんがおもむろに寝室に行って、背後から声をかけてきた。

「多紀くん、これ着てほしいな……」
「……?」

 和臣さんは自分の私服を俺に着せるのが趣味で、さいきん俺はそんな和臣さんに呆れつつも慣れてきている。
 まあ、害はないしね。
 出掛けるにはぶっかぶかの不格好だけど、室内で着る分にはさ。和臣さんは喜ぶし。
 和臣さんがおずおず差し出してきた衣類だって、振り返るまでは着てあげるつもりだったわけ。俺ってば優しい。
 だけど一目見て硬直。
 だってすっげえ懐かしい。見たことある。
 濃い紺色のブレザー、胸元に校章の刺繍ワッペン。白いワイシャツに、赤いストライプのネクタイ。グレーのチェックのズボン。黒いベルト。一揃い。
 俺は思わず呟く。

「……うわ。高校の制服……」

 和臣さんは、てへへって顔してる。
 てへへじゃないよ。そんな顔してもだめだよ。

「これ取りに行けただけでも、実家に帰ったかいがあったね」

 帰りの荷物がやたら多いと思ったら。
 まさか、俺にこれを着ろと?
 ちらりと和臣さんを見る。和臣さんは、俺が腰掛けているソファの前にやってきて、床に座る。骨折しているので、その場に足を投げ出して座っている。
 ソファで固まっている俺に上目遣い。

「だめ?」

 俺はドン引き。

「これは……さすがに……着れないでしょ……」
「え? 着れるよ? 俺、この頃でも、百七十後半あったし、ウエストも多紀くんよりあったと思うんだよね。一年から二年あたりで背が急激に伸びてサイズアウトしちゃって、新しい制服は大きく作ってたはず」
「いや、入るか入らないかだったら、入るとは思うんですけど……」

 問題はそこじゃない。
 わかってるだろ。
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