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幕間「代表」
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2人が結婚記念の写真を撮った日から少し時を遡り…
これは2人がそれぞれの実家へ挨拶をしに行った後、まだそう経っていない頃の話である。
ーーーーー
《…ねぇ、なんか実家に挨拶しに行ったときとは違う緊張があるんだけど。なにこれ?》
《そうだね。僕も代表とはそれなりの付き合いだし、元々僕達の仲を知ってる人だから報告しやすいはずなのに…なぜかやたらと緊張する》
《やっぱり悠もそう?なんでだろうね…》
こそこそと言葉を交わしてそこはかとなく漂う緊張を吐露し合う玖一と律悠。
彼らはその日、2人揃ってとあるごく普通のビルの中の3階にあるオフィスを訪れていた。
シンプルなモノトーンの内装でまとめられているそのオフィスは代表の会社であり、現在自宅勤務が主となっている玖一もかつてはここに通って事務仕事をしていた上、律悠も税務関係の仕事の話をするために度々足を運んでいるという、2人にとってはお馴染みの場所だ。
しかし、この日ばかりは少々特別だった。
2人はただ代表に会いに来たのではなく、実家へ行ったときのように結婚の報告をするために来ていたのだ。
きちんとした身なりでオフィスを訪れると、ちょうどそこによく知るスタッフがいて すぐに代表へ取次ぎをしてくれたのだが「ごめん、ちょっと一瞬だけ待っててもらってもいい?俺の部屋で寛いでてよ、すぐ戻ってくるから」と代表の部屋に通され、2人はそのままソファに座って静かに部屋で待つことになった。
それが彼らの今の状況だ。
そしてその待っている時間が、より彼らの緊張を煽っているのだった。
『代表』は律悠より7つ歳上くらいだが、年齢よりも若く見えるという長身の男で、律悠と玖一にとっては2人が出逢うきっかけを作ってくれた恩人その人でもある。
男優をしていた当時の玖一が律悠と交際したいと申し出たときも、厳しい言葉ではなく2人の関係を温かく見守るという温かな言葉をかけてくれた代表。
すでに互いの実家へ赴いて家族に報告を済ませたとはいえ、2人にとっての『代表』は実の家族とはまた違う『頼れる兄』のような存在であり、そんな代表に改めてかしこまった報告をするのは(きっと喜んでくれるだろう)とは思いつつも、くすぐったいような緊張するような、とにかくむずむずとすることだった。
「ごめん、待たせたね。どうしたの?2人揃ってここへ来るなんて」
代表が部屋に戻ってきたことで一層背筋が伸びた玖一と律悠。
それからまず玖一が「あの、今日はご報告があってきたんです」と口を開いたのだった。
:
:
:
「…なので、代表にも直接ご報告したかったんです。おれ達の縁は代表が繋いでくださったようなものですから」
「お忙しいところすみません。なかなか2人揃ってここへ来ることができなかったので、なんとか都合のつくときにと思いまして」
改まってそう挨拶をする2人を前にした代表は「そっかそっか、結婚かぁ」と眉を八の字にして笑みを浮かべる。
「やけにかしこまってるし、緊張もしてるみたいだったからどうしたのかと思ったんだけど…そんな嬉しい報告が聞けるなんてね。お揃いのその指輪も良く似合ってるよ」
「そういえば2人が出逢ったのって、俺がバーでチカ君に月ヶ瀬君を紹介したのがきっかけだったんだっけ。それから知らないうちに仲良くなってて、ある日突然『付き合いたいんです、交際を許してもらえませんか』って2人してここに来てさ…それから5年くらい経ったのかな?ついこの間のことみたいなのに…そうかぁ、そうかぁ」
直接報告することができてほっと胸を撫で下ろした玖一と律悠は、ようやく緊張がいくらか解けていつも代表と話しているくらいの調子を取り戻す。
「まぁ、俺達の世界だとどうしてもそういう…『この先何年もずっと一緒にいたい』と思えるような人を見つけるっていうのが難しいし、その2人が互いに深く想い合えるような間柄になれたっていうのも奇跡的なことだと思うからさ。だからチカ君と月ヶ瀬君が一緒になってくれて本当に嬉しいし、『いいな』って思うよ。2人を結びつけたのが俺だっていうのも、なんか誇らしいな」
「海外で結婚証明書をもらってくるっていうのもすごく良いよな。でも挙式とか披露宴みたいなのはしないのか」
「はい。お互いに忙しいですし、色々探すのとか準備とか、それで慌ただしくするよりは のんびりしようということになって」
「そうだな、2人がそう決めたならそうするのが良いよ。…けどせっかくならお祝いはしたいし、せめて食事会みたいなのをやらない?俺が予約とか全部やるから2人が呼びたい人を皆呼んでさ。ね、どう?」
「え、そんな…良いんですか?」
「もちろんだよ、2人が良ければぜひやろう!だってせっかくならそういうのしたいじゃん?そもそも俺はそういうのを企画するのが好きなんだ。ほら、忘年会のときもそうだったようにさ」
朗らかな代表の提案を受けて、律悠と玖一は顔を見合わせて確認し合うと、「それじゃあ…お言葉に甘えても、いいですか?」と気恥ずかしそうに答えた。
「嬉しいです、そんな風に僕たちのことをお祝いしようと考えてくださって」
「ははっ、長い付き合いなんだしこれくらい当たり前だよ。バーのマスターとか2人のことを知ってるやつは皆お祝いしたがると思うから、集まってワイワイしよう!」
「はい、ぜひ!」
突発的に決まった玖一と律悠、2人のための集まり。
代表が「じゃあ場所決めからだな。お店は具体的にどこって教えてくれてもいいし、イメージで言ってくれてもいいよ。なにか希望があれば全部その通りになるようにするからさ、俺に任せてよ」と楽しそうな様子で言うので、律悠はすぐに「あっ、あの、それじゃあ…」と口を開く。
「去年忘年会をやった場所…あのお店って、どうでしょうか」
「忘年会のときの?」
「はい」
去年忘年会をした場所というのは、あのひっそりとした場所にある料理屋のことだ。
律悠の提案を聞いた玖一も「あぁ!あのお店すごく良かったよね?雰囲気がいいし、お料理も美味しかったし」と隣で同意する。
「おれもいつかまた行きたいと思ってたんだ」
「うん、だからまたあそこで食事会ができたらと思って。でも…あんな良いお店はなかなか予約は取れないですよね?一番の希望はそこなんですけど、もしだめだったら…」
玖一と二番目の候補の店も見当をつけようとする律悠。
しかし代表は「いいよ、そこにしよう!」と即決したのだった。
「そんなに気に入ってるならそこ以外にないでしょ!あの店は俺の知り合いの店だし、連絡はすぐつくからさ。予約しとくね」
「えっ、でも、いいんですか?」
「もちろん!何なら今電話かけても良いくらいだよ」
あっさりと店が決まりそうなことに驚く玖一達をよそに、代表は「場所はそれで良いとしても、人数と希望の日に関しては2人が決めてといてね」と携帯端末を手に取る。
食事会についてすでにあれこれと考え出しているらしい代表は微笑みを隠しきれておらず、なんだかこちらまで気恥ずかしくなってしまうような心の底からの喜びを漂わせていて…玖一と律悠は改めて礼を言ったのだった。
ーーーーー
帰宅した2人は一息ついて落ち着いたところで食事会のことを色々と話し合い、お世話になったバーのマスターや共通の友人(代表の元で働いているスタッフ達や2人が住んでいるマンションの大家など)に声をかけようということを決める。
玖一の同僚であるスタッフ達が一番多くなりそうなので、ほとんどの顔ぶれが忘年会のときと同じということになるだろう。
気心の知れた人々と共にする時間はなかなか良いものであり、フリーランスになる前の、事務所で働いていた当時の食事会があまり得意ではなかった律悠も今回の集まりはすでにとても楽しみになっている。
きっといいひと時を過ごすことができるに違いない。
そんな機会を提供してくれるという代表への感謝から、2人の話題は「でも…あの代表の行動力には僕もちょっと学ぶべきものがあるなと思ったよ」「だよね、おれも。あんなにサクサク物事を進められるのはさすがだなって思った」というように自然と代表のことに移っていった。
「それにしてもさ、おれ今日改めて思ったんだけど…代表ってどこ取っても完璧すぎる感じがしない?」
「長身のモデル体型でかなり目鼻立ちも整ってるし、その上行動力があって面倒見も良いでしょ。たしか結構いい大学の経営学部出身だったはずだし、頭も良くて人当たりがよくてって…すごくモテそうなんだけど」
玖一が言うと、律悠は「うん。実際かなりモテてたらしいよ」と大きく頷く。
「随分前だけどバーのマスターから聞いたことがある、あの人のモテっぷりは昔から群を抜いてて、バーで働いてた時もいつも声をかけられてたって」
「やっぱりそうなんだ」
「だけどそれを鼻にかけることもなくいつも紳士的な姿勢だったから余計に人気だったみたい、ポジション関係なく誰からも。なんていうか…あしらい方も上手かったんだろうね。しかも長い付き合いのパートナーがいて、その人をずっと大切にしてたのも微笑ましくて良かったんだって。…まぁ、どうもその後パートナーの人とは別れちゃったみたいだけど」
「へぇ…代表のパートナーか…う~ん、今も代表にパートナーがいる感じは全然しないよね」
「うん。きっとそのパートナーさんと別れた後はそういう仲の人はいないんじゃないかと思う。実際どうなのかは分からないけど」
「全部バーのマスターからそう聞いたってだけのことだから」と付け足した律悠。
だが、とにかく『群を抜いたモテっぷり』というそのバーのマスターの話が本当であろうということは、代表と話したことのある人間ならば誰でも頷けることだろう。
眉目秀麗かつ頼りがいのある代表にパートナーがいなかったはずがない。
しかし代表とそれなりに長い付き合いになる玖一と律悠にも、代表の過去や私生活については知らないことの方がずっと多いのだった。
なにより、明るく飄々としている人ほど往々にして謎が多いものだ。
「実際代表って…結構謎な人だよね」
「そうだね。謎といえば謎かも」
「うん…」
2人は顔を見合わせた。
これは2人がそれぞれの実家へ挨拶をしに行った後、まだそう経っていない頃の話である。
ーーーーー
《…ねぇ、なんか実家に挨拶しに行ったときとは違う緊張があるんだけど。なにこれ?》
《そうだね。僕も代表とはそれなりの付き合いだし、元々僕達の仲を知ってる人だから報告しやすいはずなのに…なぜかやたらと緊張する》
《やっぱり悠もそう?なんでだろうね…》
こそこそと言葉を交わしてそこはかとなく漂う緊張を吐露し合う玖一と律悠。
彼らはその日、2人揃ってとあるごく普通のビルの中の3階にあるオフィスを訪れていた。
シンプルなモノトーンの内装でまとめられているそのオフィスは代表の会社であり、現在自宅勤務が主となっている玖一もかつてはここに通って事務仕事をしていた上、律悠も税務関係の仕事の話をするために度々足を運んでいるという、2人にとってはお馴染みの場所だ。
しかし、この日ばかりは少々特別だった。
2人はただ代表に会いに来たのではなく、実家へ行ったときのように結婚の報告をするために来ていたのだ。
きちんとした身なりでオフィスを訪れると、ちょうどそこによく知るスタッフがいて すぐに代表へ取次ぎをしてくれたのだが「ごめん、ちょっと一瞬だけ待っててもらってもいい?俺の部屋で寛いでてよ、すぐ戻ってくるから」と代表の部屋に通され、2人はそのままソファに座って静かに部屋で待つことになった。
それが彼らの今の状況だ。
そしてその待っている時間が、より彼らの緊張を煽っているのだった。
『代表』は律悠より7つ歳上くらいだが、年齢よりも若く見えるという長身の男で、律悠と玖一にとっては2人が出逢うきっかけを作ってくれた恩人その人でもある。
男優をしていた当時の玖一が律悠と交際したいと申し出たときも、厳しい言葉ではなく2人の関係を温かく見守るという温かな言葉をかけてくれた代表。
すでに互いの実家へ赴いて家族に報告を済ませたとはいえ、2人にとっての『代表』は実の家族とはまた違う『頼れる兄』のような存在であり、そんな代表に改めてかしこまった報告をするのは(きっと喜んでくれるだろう)とは思いつつも、くすぐったいような緊張するような、とにかくむずむずとすることだった。
「ごめん、待たせたね。どうしたの?2人揃ってここへ来るなんて」
代表が部屋に戻ってきたことで一層背筋が伸びた玖一と律悠。
それからまず玖一が「あの、今日はご報告があってきたんです」と口を開いたのだった。
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「…なので、代表にも直接ご報告したかったんです。おれ達の縁は代表が繋いでくださったようなものですから」
「お忙しいところすみません。なかなか2人揃ってここへ来ることができなかったので、なんとか都合のつくときにと思いまして」
改まってそう挨拶をする2人を前にした代表は「そっかそっか、結婚かぁ」と眉を八の字にして笑みを浮かべる。
「やけにかしこまってるし、緊張もしてるみたいだったからどうしたのかと思ったんだけど…そんな嬉しい報告が聞けるなんてね。お揃いのその指輪も良く似合ってるよ」
「そういえば2人が出逢ったのって、俺がバーでチカ君に月ヶ瀬君を紹介したのがきっかけだったんだっけ。それから知らないうちに仲良くなってて、ある日突然『付き合いたいんです、交際を許してもらえませんか』って2人してここに来てさ…それから5年くらい経ったのかな?ついこの間のことみたいなのに…そうかぁ、そうかぁ」
直接報告することができてほっと胸を撫で下ろした玖一と律悠は、ようやく緊張がいくらか解けていつも代表と話しているくらいの調子を取り戻す。
「まぁ、俺達の世界だとどうしてもそういう…『この先何年もずっと一緒にいたい』と思えるような人を見つけるっていうのが難しいし、その2人が互いに深く想い合えるような間柄になれたっていうのも奇跡的なことだと思うからさ。だからチカ君と月ヶ瀬君が一緒になってくれて本当に嬉しいし、『いいな』って思うよ。2人を結びつけたのが俺だっていうのも、なんか誇らしいな」
「海外で結婚証明書をもらってくるっていうのもすごく良いよな。でも挙式とか披露宴みたいなのはしないのか」
「はい。お互いに忙しいですし、色々探すのとか準備とか、それで慌ただしくするよりは のんびりしようということになって」
「そうだな、2人がそう決めたならそうするのが良いよ。…けどせっかくならお祝いはしたいし、せめて食事会みたいなのをやらない?俺が予約とか全部やるから2人が呼びたい人を皆呼んでさ。ね、どう?」
「え、そんな…良いんですか?」
「もちろんだよ、2人が良ければぜひやろう!だってせっかくならそういうのしたいじゃん?そもそも俺はそういうのを企画するのが好きなんだ。ほら、忘年会のときもそうだったようにさ」
朗らかな代表の提案を受けて、律悠と玖一は顔を見合わせて確認し合うと、「それじゃあ…お言葉に甘えても、いいですか?」と気恥ずかしそうに答えた。
「嬉しいです、そんな風に僕たちのことをお祝いしようと考えてくださって」
「ははっ、長い付き合いなんだしこれくらい当たり前だよ。バーのマスターとか2人のことを知ってるやつは皆お祝いしたがると思うから、集まってワイワイしよう!」
「はい、ぜひ!」
突発的に決まった玖一と律悠、2人のための集まり。
代表が「じゃあ場所決めからだな。お店は具体的にどこって教えてくれてもいいし、イメージで言ってくれてもいいよ。なにか希望があれば全部その通りになるようにするからさ、俺に任せてよ」と楽しそうな様子で言うので、律悠はすぐに「あっ、あの、それじゃあ…」と口を開く。
「去年忘年会をやった場所…あのお店って、どうでしょうか」
「忘年会のときの?」
「はい」
去年忘年会をした場所というのは、あのひっそりとした場所にある料理屋のことだ。
律悠の提案を聞いた玖一も「あぁ!あのお店すごく良かったよね?雰囲気がいいし、お料理も美味しかったし」と隣で同意する。
「おれもいつかまた行きたいと思ってたんだ」
「うん、だからまたあそこで食事会ができたらと思って。でも…あんな良いお店はなかなか予約は取れないですよね?一番の希望はそこなんですけど、もしだめだったら…」
玖一と二番目の候補の店も見当をつけようとする律悠。
しかし代表は「いいよ、そこにしよう!」と即決したのだった。
「そんなに気に入ってるならそこ以外にないでしょ!あの店は俺の知り合いの店だし、連絡はすぐつくからさ。予約しとくね」
「えっ、でも、いいんですか?」
「もちろん!何なら今電話かけても良いくらいだよ」
あっさりと店が決まりそうなことに驚く玖一達をよそに、代表は「場所はそれで良いとしても、人数と希望の日に関しては2人が決めてといてね」と携帯端末を手に取る。
食事会についてすでにあれこれと考え出しているらしい代表は微笑みを隠しきれておらず、なんだかこちらまで気恥ずかしくなってしまうような心の底からの喜びを漂わせていて…玖一と律悠は改めて礼を言ったのだった。
ーーーーー
帰宅した2人は一息ついて落ち着いたところで食事会のことを色々と話し合い、お世話になったバーのマスターや共通の友人(代表の元で働いているスタッフ達や2人が住んでいるマンションの大家など)に声をかけようということを決める。
玖一の同僚であるスタッフ達が一番多くなりそうなので、ほとんどの顔ぶれが忘年会のときと同じということになるだろう。
気心の知れた人々と共にする時間はなかなか良いものであり、フリーランスになる前の、事務所で働いていた当時の食事会があまり得意ではなかった律悠も今回の集まりはすでにとても楽しみになっている。
きっといいひと時を過ごすことができるに違いない。
そんな機会を提供してくれるという代表への感謝から、2人の話題は「でも…あの代表の行動力には僕もちょっと学ぶべきものがあるなと思ったよ」「だよね、おれも。あんなにサクサク物事を進められるのはさすがだなって思った」というように自然と代表のことに移っていった。
「それにしてもさ、おれ今日改めて思ったんだけど…代表ってどこ取っても完璧すぎる感じがしない?」
「長身のモデル体型でかなり目鼻立ちも整ってるし、その上行動力があって面倒見も良いでしょ。たしか結構いい大学の経営学部出身だったはずだし、頭も良くて人当たりがよくてって…すごくモテそうなんだけど」
玖一が言うと、律悠は「うん。実際かなりモテてたらしいよ」と大きく頷く。
「随分前だけどバーのマスターから聞いたことがある、あの人のモテっぷりは昔から群を抜いてて、バーで働いてた時もいつも声をかけられてたって」
「やっぱりそうなんだ」
「だけどそれを鼻にかけることもなくいつも紳士的な姿勢だったから余計に人気だったみたい、ポジション関係なく誰からも。なんていうか…あしらい方も上手かったんだろうね。しかも長い付き合いのパートナーがいて、その人をずっと大切にしてたのも微笑ましくて良かったんだって。…まぁ、どうもその後パートナーの人とは別れちゃったみたいだけど」
「へぇ…代表のパートナーか…う~ん、今も代表にパートナーがいる感じは全然しないよね」
「うん。きっとそのパートナーさんと別れた後はそういう仲の人はいないんじゃないかと思う。実際どうなのかは分からないけど」
「全部バーのマスターからそう聞いたってだけのことだから」と付け足した律悠。
だが、とにかく『群を抜いたモテっぷり』というそのバーのマスターの話が本当であろうということは、代表と話したことのある人間ならば誰でも頷けることだろう。
眉目秀麗かつ頼りがいのある代表にパートナーがいなかったはずがない。
しかし代表とそれなりに長い付き合いになる玖一と律悠にも、代表の過去や私生活については知らないことの方がずっと多いのだった。
なにより、明るく飄々としている人ほど往々にして謎が多いものだ。
「実際代表って…結構謎な人だよね」
「そうだね。謎といえば謎かも」
「うん…」
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