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episode 02
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「駅員さんが親族の人にシロの行方を聞かれたらしいから、連絡先を知ってるかもしれないです」
そう言うと、ニット帽の男性は頷いた。
「聞いてみるよ」
「今から一緒に行ってもいいですか?」
「え、今から!?」
ニット帽の男性は驚いたような声をあげる。しかし、すぐにうな垂れた様子で同意する。
「そうだな。早いほうがいいか」
こうしてニット帽の男と女子高生と大正紳士、鎧武者、セクシーマスク、露出メガネの奇妙な犬の散歩がはじまった。
もっとも、智希以外の人には幽霊四人組は見えていないけれど。
「いい子ですね」
シロはときどきニット帽の男性を振り仰ぎながら歩く。決して走ったりひっぱったりしない。
「そうだろう。お婆さんと散歩してるときもさ、こうだったんだよ。お婆さんをずっと気にして歩調を合わせて歩いてたよ」
お婆さんが逃げるように促しても、なかなか離れようとしなかったシロ。
親族の人が引き取るのか、このまま男性が飼うことになるのか分からない。けれどみんなシロを大切に思っている。きっとシロは幸せに過ごせるだろう。
奇妙な散歩はすぐに終わりを迎える。
かんかんかんと警告音が響く。
智希たちは踏切到着した。
シロは落ち着かない様子でしきりにキョロキョロとあちらこちらを見まわしたり、しきりに匂いをかいだりしている。
隣にはお婆さん、しかしシロに気づいていない……
「あの、抱っこしてもいいですか? 怖がってるみたいなんで」
「あ、ああ。そうだな」
智希はシロを抱き上げる。
それからシロを見つめ撫でながら話しかけた。お婆さんに。
「シロいい子だね。シロ! お婆さんはちゃんと天国にいけるからね。心配しないで。シロも大丈夫!」
「……シロ? シロなのかい?」
お婆さんがこちらを向いた。
「シロ、よしよし。シロ」
智希は名前を何度も呼びながら、抱き方をかえ、お婆さんにシロを近づけた。
お婆さんは手をあげ、シロをなでる。その手はシロにはさわれない。けれどシロは目を細めてしっぽを振った。
「元気でねえ」
お婆さんの体が薄く小さくなる。光り輝く魂になると、それは天に吸い込まれて消えた。
「一件落着だの」
「よかったわ」
「ううっ、感動です」
義直さんと、玲子さん、中井さんが感慨深げにそう言う。
「時間がかかりましたがね」
とそこに水をさすのは博文さんだ。
「いちいち願いを叶えていては、いくら体があっても足りなくなりますよ」
智希はじろりと無言で博文さんを睨んだ。
駅員さんから遺族の人に連絡をつけてもらえることになった。
ニット帽の男性、もとい安元さんは自分の名前と連絡先を告げ、ひとまずシロを預かったまま連絡を待つことになった。
別れ際
「ありがとな。すっきりしたよ。すぐに連絡しなかったこと、ちゃんと謝罪するよ」
そう告げる顔は心なしか晴れ晴れとしていた。
そう言うと、ニット帽の男性は頷いた。
「聞いてみるよ」
「今から一緒に行ってもいいですか?」
「え、今から!?」
ニット帽の男性は驚いたような声をあげる。しかし、すぐにうな垂れた様子で同意する。
「そうだな。早いほうがいいか」
こうしてニット帽の男と女子高生と大正紳士、鎧武者、セクシーマスク、露出メガネの奇妙な犬の散歩がはじまった。
もっとも、智希以外の人には幽霊四人組は見えていないけれど。
「いい子ですね」
シロはときどきニット帽の男性を振り仰ぎながら歩く。決して走ったりひっぱったりしない。
「そうだろう。お婆さんと散歩してるときもさ、こうだったんだよ。お婆さんをずっと気にして歩調を合わせて歩いてたよ」
お婆さんが逃げるように促しても、なかなか離れようとしなかったシロ。
親族の人が引き取るのか、このまま男性が飼うことになるのか分からない。けれどみんなシロを大切に思っている。きっとシロは幸せに過ごせるだろう。
奇妙な散歩はすぐに終わりを迎える。
かんかんかんと警告音が響く。
智希たちは踏切到着した。
シロは落ち着かない様子でしきりにキョロキョロとあちらこちらを見まわしたり、しきりに匂いをかいだりしている。
隣にはお婆さん、しかしシロに気づいていない……
「あの、抱っこしてもいいですか? 怖がってるみたいなんで」
「あ、ああ。そうだな」
智希はシロを抱き上げる。
それからシロを見つめ撫でながら話しかけた。お婆さんに。
「シロいい子だね。シロ! お婆さんはちゃんと天国にいけるからね。心配しないで。シロも大丈夫!」
「……シロ? シロなのかい?」
お婆さんがこちらを向いた。
「シロ、よしよし。シロ」
智希は名前を何度も呼びながら、抱き方をかえ、お婆さんにシロを近づけた。
お婆さんは手をあげ、シロをなでる。その手はシロにはさわれない。けれどシロは目を細めてしっぽを振った。
「元気でねえ」
お婆さんの体が薄く小さくなる。光り輝く魂になると、それは天に吸い込まれて消えた。
「一件落着だの」
「よかったわ」
「ううっ、感動です」
義直さんと、玲子さん、中井さんが感慨深げにそう言う。
「時間がかかりましたがね」
とそこに水をさすのは博文さんだ。
「いちいち願いを叶えていては、いくら体があっても足りなくなりますよ」
智希はじろりと無言で博文さんを睨んだ。
駅員さんから遺族の人に連絡をつけてもらえることになった。
ニット帽の男性、もとい安元さんは自分の名前と連絡先を告げ、ひとまずシロを預かったまま連絡を待つことになった。
別れ際
「ありがとな。すっきりしたよ。すぐに連絡しなかったこと、ちゃんと謝罪するよ」
そう告げる顔は心なしか晴れ晴れとしていた。
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