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カレーパーティー

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 ゴールデンウィーク中頃の5月2日、私はUちゃんの家に遊びに行った。
 Uちゃん考案の、様々なスパイスを調合してカレーを作ろうと2人で計画していた。カレーの材料はUちゃんが用意してくれていた。
 私は手ぶらで行くのは気が引けたので、Uちゃんが好みそうなお菓子や酒の肴を持っていった。酒の肴ではスルメが好きと聞いていたので、それも買った。
 Uちゃんの家で遊ぶのは約1ヶ月ぶりだった。
 お昼にカレーを食べようということで、何時もより早めの10時頃に出向いた。夫と子供のお昼ご飯は作ってから、アパートを出た。
「ういっすー」
「ういすー」
「早速作ろうか!お昼に食べたいし!」Uちゃんは言った。
「いいね!」私は答えた。
 Uちゃんはキッチンから数種類のスパイスを籠に入れて、リビングに持ってきた。
「こんなに沢山使うんだね」私は調理師なのに、スパイスを調合して作るカレーは作ったことがなかったので驚いた。学校に行っていた時は、ルーを使わないハヤシライスを作ったことはあった。
「全部入れなくてもいいんだけどね。ちょっとずつ使ってるよ」
 自分の家でも作りたかったので、スパイスの名前をスマートフォンにメモした。 
 クミン、コリアンダー、ターメリックなどはスーパーにも売っていて、手に入りやすいとのことだった。
 小さなすり鉢にスパイスを入れてゆき、すりこぎで擦る。意外と少ない量で味が付くらしく、驚いた。理科の実験みたいで楽しかった。ある程度スパイスを擦ったら、キッチンへ移動した。
 まず、油を熱した鍋にスパイスを入れ、香りを立たせる。次に、一口大に切ってヨーグルトに漬け込んでおいた鶏もも肉を入れて、中火で炒める。鶏肉に火が通ったら薄切りにした玉ねぎを入れて、さらに炒める。玉ねぎがしんなりしたら水を加え、20分ほど煮込む。仕上げにバターを多めに加え、溶けきったら完成だ。
 煮込んでいる間、リビングで放課後クラブのことを話した。
 話題はこの間、掲示板に書かれたことから始まった。
「あれ見たよ!」
 Uちゃんには掲示板に書かれた箇所を、スクリーンショットして送っていた。「星があるって素敵なことじゃん!」と返信が返ってきていた。
「あれねー。結構落ち込んだ」
「落ち込むことないよ!誉め言葉だと思う!ラーメンだったら食べたくなるもん」
「そうかなー。私、根暗なのかな?」
「うーん。その人の暗いって言い方がちょっと違うなあ。影があるって言えばいいのかな?なんかミステリアスな感じっていうか!」
「なるほど!」
「でも、キャバクラでは喋らない女の子の方が人気になるのよ」
「嘘!キャバクラの女の子って凄く喋るイメージなんだけど!」
「それが逆なのよ。喋らない女の子って男の人からすると、凄く気になってしまうものみたい。何考えているか分からないから」
「そうなんだ!」
「あと、特定の女の子にしか話さないことを作っておくといいよ!」
「なんで?」
「その女の子が掲示板に書いた時、誰が書いたか分かるから!」
「そっか!でも、女の子が書くことってあるのかな?」
「あるよー!わしなんかめちゃめちゃ書かれたよ」
「そっか!ナンバー1だったから、妬まれて!」 Uちゃんから以前、ナンバー1になったことがあると聞いていた。ナンバー1になるため、色々努力したみたいだ。
「そうそう!こんなの書かれてるよーって教えてくれた子が書いてたの!あれは人間不信になるよ」
 話題は次に、指名を取るためにお客さんとどう接しようということになった。
「そうだなー。まずは手を繋いでブースまで行こうか!それで次は……」
「ちょっと待って!メモさせて!」
 私はまた、スマートフォンにメモをした。

手を繋ぐ
名前を聞く
あだ名で呼んでもらう
急に抱きつく
彼女いるか聞く
好きなところを見つける
名前をいっぱい呼ぶ
じゃんけん
おやすみと言う
好きなジュースを聞く

 Uちゃんは沢山アドバイスをくれた。
「じゃんけんは会話の流れでするの?」
「最後かなー。自分が勝ったら、また次も来て!って言えば指名に繋がりやすいでしょ」
「確かに!でも、自分が負けちゃったらどうするの?」
「もう1回!って言って、自分が勝つまでじゃんけんしてみて。そうすれば、また来てほしいんだなってお客さんは思うはずだから」
「なるほど!」
 私はじゃんけんの後に、(勝つまでする)と付け加えた。
 好きなジュースを聞くは、ジュースだとお酒が飲めない人も答えやすいし、好きなジュースがなければお茶や水と答えられるし、とにかく何かしら相手から返答がある質問だからということだった。確かに人間は水分を補給しないと死んでしまう。
「そういえば、好きになった人はいないの?」
「うーん。いないなあ。熊本出身のお客さんとは楽しかったけど、好きとは違うしね」
「でも、男女でそういう行為をしてたら、絶対好きになってしまうと思うんだけどなあ」
 この時の私は、Uちゃんのその言葉の意味を、まだ分かっていなかった。
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