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面接

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 まず、最初に狭い事務所に通された。
 それから、木製の堅そうな椅子に座るように指示された。
 指示が終わると、さっきのおじさんはどこかへ消えてしまった。
 変わりに顔を覗かせたのは、金髪のストレートの髪型をした30代半ばくらいの男の人だった。その髪の色にスーツ姿というのが、夜の世界を知らない私には異様に見えた。
 その男性が椅子に腰掛けようとした。私はそれを待っていたら、椅子に座るように促されたので、私も椅子に腰掛けた。
 右方向の奥の部屋で、女の子たちが座って何やら話をしているのも見えた。ぼんやりと襟足がピンクのように見える。
「初めまして。こんにちは」
 金髪の男性に話しかけられた。
「あ、初めまして。よろしくお願いします」
「まずね、今日は面接に来て下さってありがとうございます」
「いえ……」
「ここは本番のないお店です。でもピンクサロンなので、キスやフェラチオなどの接客はしてもらいます」
「……はい」
「身分証って持ってきてる?」
「いえ、持ってきてないです」
 嘘だった。商業施設までは車で来たから、免許書は絶対持ってきてるのだ。
「じゃあ、この紙に必要事項を書いてもらえるかな?」
 金髪の男性から手渡された紙には住所、電話番号、氏名を書く欄があっただけだった。
 怖かった。ただただ怖かった。
 わけも分からず飛び込んだ世界は、やっぱり恐ろしいと思った。
 手渡されたボールペンの手が止まったままだったのだろう。
 それでも金髪の男性は何も口を開かない。
 このまま逃げてしまおうか。
 男性の横は人が通れる幅もないくらい狭い。そんな事務所だ。逃げることも出来ない。
 観念したと同時に一つの策を思い付く。
「色々話を聞いた上で、この紙を書いていいですか?」
 すると、金髪の男性は後ろのカーテンの向こう側にいる誰かと話し始めた。
 こちらに向き直る。
「上に行こうか?色々説明したいし、ブースも見てもらいたいので」
 ブースというのは座席がパーテーションや観葉植物などで仕切られた、半個室の座席というのはネットで調べていたので知っていた。
「……はい」
「じゃあ、その紙とペンはもらっておくね」
 私は紙とペンを金髪の男性に手渡した。
「あ、はい……」
 金髪の男性が立ち上がったので、それについていく。
 先ほど金髪の男性とカーテンの後ろで話していた誰かの姿はなかった。
 事務所を出て左手にあったカーテンを、金髪の男性がめくった。
 そこには階段があった。
 私は金髪の男性がめくりあげてくれたカーテンを潜った。
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