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13 攫われた婚約者
しおりを挟む結論を言うと、ロイクとクラリス嬢の結婚式の日程が早まった。本当は半年後の予定だったのだが、急遽3ヶ月後に式を挙げることとなったのである。
結婚式にはもちろん俺もオリーヴも出席する。オリーヴはクラリス嬢から式の予定が突然早まった、その理由を聞いたらしく「まったく、クラリスったら!」と、少し怒っていた。オリーヴは親しい友人が婚姻前に、たとえ婚約者とであっても身体の関係を持ったことに憤慨しているようだ。
「オリーヴ、すまない。ロイクが悪いんだよ」
「いえ。ロイク様だけの責任ではございませんわ。クラリスの話では、ロイク様は決して強引なことをなさった訳ではないようですし」
オリーヴはやっぱり真面目だな。オリーヴとの婚前交渉は諦めた方が良さそうだ。彼女に軽蔑されたくないし、嫌われたくない。あぁ、でも、ちょっとおっぱいを触るくらいは許してくれないだろうか?
「いや、やはり紳士なら決して結婚前にそのような事はすべきではない。こういう事は男の側の責任だ」
キマった! 俺ってば、なんて紳士!
「まぁ。やっぱりルイゾン様は紳士の鑑ですわ。ご立派です」
オリーヴが俺を感嘆の目で見上げる。
ヌハ、ヌハハハハ! やったぜ!
ロイクよ、お前は俺の踏み台となった。褒めてやるぞ!
そんな、ある日。
我が家にベルモン伯爵家からの使者が飛び込んで来た。物凄く急いでやって来たようだ。
「どうした? 何か、あったのか?」
俺の問いに、使者は息を切らしながら言った。
「オリーヴお嬢様が王宮に連れて行かれました!」
「何? どういう事だ?」
「それが……旦那様も奥様もお留守の時に、先触れも何もなく突然、王宮から迎えが来たのです。オリーヴお嬢様に『至急、王宮に来るように』と。『王太子殿下の命である』と」
「アラン殿下の命だと?」
「はい。コラリーお嬢様と執事が『せめて当主と連絡がつくまで待って欲しい』と、必死に頼んだのですが、王宮からの使者は全く聞く耳を持たず、強引にオリーヴお嬢様を馬車に押し込み、連れ去ったのです!」
「何だよ、それ!? ただの人攫いじゃないか!?」
「コラリーお嬢様が、ブロンディ公爵家に助けを求めるしかないと判断されて、急ぎこちらに向かうよう私にお命じになりました。どうか、どうか、お願いします! オリーヴお嬢様を取り戻して下さい!」
くそっ! アランのヤツ、何を考えてるんだ?!
王太子アランは来月、同盟国の王女と結婚式を挙げる予定だ。来月だぞ! 来月! 国を挙げての式まで実質あと3週間もないのである。この時期にオリーヴを強引に連れ去るなんて、一体どういうつもりだ?!
まさか――まさか、本気でオリーヴを側妃にするつもりか?
アランは、学園時代からオリーヴへの想いを相当に拗らせているようだった。
けれど、俺がはっきり引導を渡してやったはずだ。あれで、諦めたと思っていたのに――
「すぐに王宮へ向かう。オリーヴは必ず無事に取り戻すから心配するな。コラリー嬢にも、そう伝えてくれ」
俺は、ベルモン伯爵家の使者の肩に手を置いて、そう言った。
使者は涙ぐみながら、
「何卒、何卒よろしくお願い致します」
と、何度も俺に頭を下げた。
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