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第三話
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「え?あれはスマスト=レイヴン、、、?」
寮の裏庭で洗濯物を済まして、聖堂へ向かおうとするディソサード=リベールは、その黒髪を確かに見た。
忘れもしない、魔法科大学の2年次。私はレイヴンと出会っていた。その出会いは、私が今の仕事についた要因の一つでもある。
それは、各国の魔法科大学対抗の魔術競技会に出た時だった。
学校ではそこそこ優秀だった私は、所属するベルオーブ魔法科大学の代表選手団として競技会に出場した。レイヴンは名門魔法科大学のアンブライドルズソング大学の選手団だった。魔術競技会では、各々の得意分野で、様々なミッションが下され、その解決法に点数がつけられる。その点数で、大学同士が争い、最後に最も総点の高い選手団の優勝、私は白魔術が得意で、その部門に出場した。彼女もまた、白魔術の部門に出場していた。
結果は惨敗だった。大会の雰囲気にひよってしまって、私のミスもあった。だけど、そのミスがあったって点数がちょっと上がるだけで、レイヴンには遠く及ばなかったろう。彼女は、紛れもなく天才だった。「花を咲かせろ」という指令ならば、グラウンド一面に壮観な花々を咲かせて見せた。「星を読め」という指令ならば、点数の引きようのない、見事な天象を表示してみせた。
彼女の点数は100点満点中の97点だった。
3点はきっと卑屈な採点者が引いたんだろう。そう思うまでに完敗だったし、同じ白魔術師目線から見ても、点数の引きどころはわからなかった。
完膚なきまでに私を叩きのめした彼女は、今度は黒魔術、戦争魔術の部門にも出場し、性別を違える他大学の優秀な魔術師をこれまた叩きのめした。結果、アンブライドルズソング大学はほぼダブルスコアで優勝。ベルオーブ魔法科大学は、なんとか3位に落ち着いた。
そんな光景を見て、私自身も負かされてみて。私もダンジョンに入り、一攫千金を夢見た時期があったが、これをきっかけに目を覚ました。理解した。そうか、ダンジョンで勝ち続けるのは、ああいう、化け物みたいな才能の持ち主なんだ、と。魔術に対する熱い情熱も明らかに薄れて、慰安旅行にでも行こうと、のどかな田園地帯であるベルオーブのはずれ、今の職場である教会がある、ジュールを訪れた。牧場や田園が多くて、市街地とダンジョンは少なめのこの街を俯瞰してみて、その中心にあった教会にはやはり興味が湧いた。重装を着た冒険者がお祈りをして、幼気な子供たちが教会の花を囲んで遊ぶのを見ていて。「ああ、こんなところで落ち着きたいなあ」と思ったのがシスターを志した始まりだ。
だからこそ、この街ののどかさと、あのレイヴンの恐ろしさを知っているからこそ。こんな街に、彼女が来ていることの異質さを、多分私だけが捉えていた。
「おーい、大丈夫か?」
思考を巡らして前を向くのを忘れていた私の意識を戻したのは、クラディアだった。
ハッとした。そうだ、こんな田舎町だ、きっと出張か、それこそ慰安旅行が何かで訪れただけだ、何かあるはずがない。
無理矢理にそう思い込んで、聖堂へ向かい直すことにした。
「うん!気にしないで!ボーッとしてた!」
「おう、ならよかったけど。あいにくと今は祝福の最中みたいだぜ?裏口から戻ろう」
「ほんと?えー、ここまで来たのにめんどくさー、、、」
ぶつくさと文句を言って、身を翻した時、この不安の正体に気がついた。
(あ、私はあいつがここにいることが気に食わないんだ)
圧倒的力量差がある、自分を負かした人間が、自分のこよなく好きな場所に現れた。その事実が気に食わなくて、きっと不安がっているんだな、と。
「いかんいかん、シスター失格だ」
小さく呟いて、前を向いた。旅に来た人を迷惑がるなんて、私の憧れたシスターにあるまじき思考だ。いつの間にか私を追い越したクラディアの姿を捉えて、小走りで追いかけた。
それから雑用を済まして、お昼ご飯の頃合いになった。クラディアと共に食堂に顔を出すと、今日はヴィアとアネモスさんが一緒にご飯を食べている。その裏手では顔は見えないが同じくシスターが4人で固まってご飯を食べている。アバンセの姿が見えない、と思ったが、そうだ、彼女は今日は休暇をとっていたのだ。おじいさんの体調が芳しくなくなった、とかの理由だったと思う。食堂には教会のシスターがほぼ出揃っていた。クラディアとは特に会話もせずに料理を受け取って、それから会話もせずに一緒に2人の席へと向かった。
「ヴィア、アネモスさん、お疲れ様!今日は聖堂の担当でしたっけ?」
「うん、そうだよ。君たちも雑用お疲れさま。これ、私持ってきたクッキー、よかったら食後にでも食べて。」
そう言ってまず話しかけてくれたのは、アネモスさんだった。ヴィアはとろーんとした顔で、その横で機械的にご飯を喉へと運んでいた。
「お、フラヴィア、なんかあったのか?」
ちょっと気になるとろけ顔の原因に踏み込んだのは、クラディアだった。
「ん、あ、クラディアにリベール。おつおつ~。いやうん、聖水ぶちまけて萎んでる。」
どうやら、祝福の儀式の片付けの最中、聖水の入った瓶をぶちまけ、割ってしまったらしい。それで心ここに在らず、と言った感じだ。
「あー、、、いつものことじゃん?」
「クラディアお前私のことをなんだと思ってるんだ」
「そうだよ~、クラディアちゃん、思ってたって言葉は選ばないと~」
「先輩もなんですかその棒読み!私、ちゃんとしてるから!だから凹んでるの!」
「クラちゃんはガサツそうでしっかりしてるからね~、フラヴィアみたいなビジネス清楚じゃないのよ」
「なんだクラちゃんこの野郎」
「まあまあ2人とも落ち着きなよ!ヴィアもほんとのこと言われたからって怒らないの!」
「お主もか?お主も敵なのか?おのれリベールううう!!!」
ようやく会話へと混じれた。そう、この感じ。このノリが私はたまらなく好きだ。クラディアも、フラヴィアも、アネモスさんも、アバンセも。みんな、私と違ってる。内心ちょっと冷めたところがある私だけど、このみんなで話している時は、包み隠さず、調子に乗れる。本当にこの関係が好きだった。それと同時に、この交友が保たれるのは、この教会があってこそなんだな、と。また、この場所への尊さも増していく気がした。
午後の業務からは私とクラディア、それからエレンシア先輩が袖廊の担当。魔法科大学出身のシスターが偶然にも揃っていた。私もクラディアもオルガンは弾けないけど、魔法で、自然の音を集めてそれらしい音楽を奏でることはできる。公式のアンセムじゃないけど、いろんな音で曲が構成されていくのは嫌いじゃなかった。ただ、エレンシア先輩は魔法もオルガンも弾ける器用な人なので、私たちの魔法の出番は多分ないわけだけど、、、しかも、午後からダンジョン入りする人はほぼいないと言っていいので、箒を掃きながらだべるのが午後のここ担当のシスターの仕事だ。
「クラディアちゃん、リベールちゃん」
今日は先輩が話を振ってきてくれた。
「私、結婚するかもしれないんだけどさ」
「「え?本当ですか?!」まじすか?!」
クラディアと驚きの声が重なる。まさかの結婚トークだ。
「まだ決めてはないよ?アステルにもアネモスにも相談してないし、、、」
「相手誰なんすか?」
容赦のない質問、さすがクラディアだ。
「ジュール商工会の会長の息子さんなんだけど、、、いい人なんだよ?ちょうど求婚されてて、、、私もいい歳だからお受けしようかな、と思って」
「そしたら、先輩、晴れてお金持ちじゃないですか、、、すげーな、おいおい」
あとは、クラディアのズカズカ行く質問を側から聞いて頷きながら、時間が過ぎていった。私は彼氏なんて大学の頃以来いたことがない。そういえば他の女のところへ逃げていったあいつは今頃どうしているのだろうか。先輩の話を聞いて頷き続けてはいたが、私も再来年には二十台後半に突入だ。この仕事を続けるにしても、身は固めなきゃいけないのかもしれない、、、まず出会いがないのだが、、、
質問タイムは時間をどんどんと消費させ、いつの間にかお天道様は沈み、月光が教会の窓から差し始めた。
「そろそろ閉めますか?」
時計の針は午後6時半のあたりを示している。
「うん、そうだね。リベールちゃん、扉の札、お願いできる?」
「はい、大丈夫ですよ。すぐ行ってきます」
指示を聞いて、小走りに扉へと向かう。そっと開いて、久々に外気に触れると共に、見覚えある顔が私の目に飛び込んできた。
「あなたは、、、」
そう、口を開いたその黒髪は、私の顔を見るなり優しく笑いかけた。
夜闇に紛れるその黒髪に悪意は感じなかったが。
私はその笑顔に薄気味悪さを覚えた。
「確か、ディソサードさん?魔術競技会で、ご一緒でしたよね?」
「ええ、そうですね。お久しぶりです。」
再び、レイヴンは笑いかけた。程なくして、ガタイの良い男のシルエットが、闇の向こうから覗かせる。
朝見かけた時よりも、その外套は、土汚れているように見えた。
寮の裏庭で洗濯物を済まして、聖堂へ向かおうとするディソサード=リベールは、その黒髪を確かに見た。
忘れもしない、魔法科大学の2年次。私はレイヴンと出会っていた。その出会いは、私が今の仕事についた要因の一つでもある。
それは、各国の魔法科大学対抗の魔術競技会に出た時だった。
学校ではそこそこ優秀だった私は、所属するベルオーブ魔法科大学の代表選手団として競技会に出場した。レイヴンは名門魔法科大学のアンブライドルズソング大学の選手団だった。魔術競技会では、各々の得意分野で、様々なミッションが下され、その解決法に点数がつけられる。その点数で、大学同士が争い、最後に最も総点の高い選手団の優勝、私は白魔術が得意で、その部門に出場した。彼女もまた、白魔術の部門に出場していた。
結果は惨敗だった。大会の雰囲気にひよってしまって、私のミスもあった。だけど、そのミスがあったって点数がちょっと上がるだけで、レイヴンには遠く及ばなかったろう。彼女は、紛れもなく天才だった。「花を咲かせろ」という指令ならば、グラウンド一面に壮観な花々を咲かせて見せた。「星を読め」という指令ならば、点数の引きようのない、見事な天象を表示してみせた。
彼女の点数は100点満点中の97点だった。
3点はきっと卑屈な採点者が引いたんだろう。そう思うまでに完敗だったし、同じ白魔術師目線から見ても、点数の引きどころはわからなかった。
完膚なきまでに私を叩きのめした彼女は、今度は黒魔術、戦争魔術の部門にも出場し、性別を違える他大学の優秀な魔術師をこれまた叩きのめした。結果、アンブライドルズソング大学はほぼダブルスコアで優勝。ベルオーブ魔法科大学は、なんとか3位に落ち着いた。
そんな光景を見て、私自身も負かされてみて。私もダンジョンに入り、一攫千金を夢見た時期があったが、これをきっかけに目を覚ました。理解した。そうか、ダンジョンで勝ち続けるのは、ああいう、化け物みたいな才能の持ち主なんだ、と。魔術に対する熱い情熱も明らかに薄れて、慰安旅行にでも行こうと、のどかな田園地帯であるベルオーブのはずれ、今の職場である教会がある、ジュールを訪れた。牧場や田園が多くて、市街地とダンジョンは少なめのこの街を俯瞰してみて、その中心にあった教会にはやはり興味が湧いた。重装を着た冒険者がお祈りをして、幼気な子供たちが教会の花を囲んで遊ぶのを見ていて。「ああ、こんなところで落ち着きたいなあ」と思ったのがシスターを志した始まりだ。
だからこそ、この街ののどかさと、あのレイヴンの恐ろしさを知っているからこそ。こんな街に、彼女が来ていることの異質さを、多分私だけが捉えていた。
「おーい、大丈夫か?」
思考を巡らして前を向くのを忘れていた私の意識を戻したのは、クラディアだった。
ハッとした。そうだ、こんな田舎町だ、きっと出張か、それこそ慰安旅行が何かで訪れただけだ、何かあるはずがない。
無理矢理にそう思い込んで、聖堂へ向かい直すことにした。
「うん!気にしないで!ボーッとしてた!」
「おう、ならよかったけど。あいにくと今は祝福の最中みたいだぜ?裏口から戻ろう」
「ほんと?えー、ここまで来たのにめんどくさー、、、」
ぶつくさと文句を言って、身を翻した時、この不安の正体に気がついた。
(あ、私はあいつがここにいることが気に食わないんだ)
圧倒的力量差がある、自分を負かした人間が、自分のこよなく好きな場所に現れた。その事実が気に食わなくて、きっと不安がっているんだな、と。
「いかんいかん、シスター失格だ」
小さく呟いて、前を向いた。旅に来た人を迷惑がるなんて、私の憧れたシスターにあるまじき思考だ。いつの間にか私を追い越したクラディアの姿を捉えて、小走りで追いかけた。
それから雑用を済まして、お昼ご飯の頃合いになった。クラディアと共に食堂に顔を出すと、今日はヴィアとアネモスさんが一緒にご飯を食べている。その裏手では顔は見えないが同じくシスターが4人で固まってご飯を食べている。アバンセの姿が見えない、と思ったが、そうだ、彼女は今日は休暇をとっていたのだ。おじいさんの体調が芳しくなくなった、とかの理由だったと思う。食堂には教会のシスターがほぼ出揃っていた。クラディアとは特に会話もせずに料理を受け取って、それから会話もせずに一緒に2人の席へと向かった。
「ヴィア、アネモスさん、お疲れ様!今日は聖堂の担当でしたっけ?」
「うん、そうだよ。君たちも雑用お疲れさま。これ、私持ってきたクッキー、よかったら食後にでも食べて。」
そう言ってまず話しかけてくれたのは、アネモスさんだった。ヴィアはとろーんとした顔で、その横で機械的にご飯を喉へと運んでいた。
「お、フラヴィア、なんかあったのか?」
ちょっと気になるとろけ顔の原因に踏み込んだのは、クラディアだった。
「ん、あ、クラディアにリベール。おつおつ~。いやうん、聖水ぶちまけて萎んでる。」
どうやら、祝福の儀式の片付けの最中、聖水の入った瓶をぶちまけ、割ってしまったらしい。それで心ここに在らず、と言った感じだ。
「あー、、、いつものことじゃん?」
「クラディアお前私のことをなんだと思ってるんだ」
「そうだよ~、クラディアちゃん、思ってたって言葉は選ばないと~」
「先輩もなんですかその棒読み!私、ちゃんとしてるから!だから凹んでるの!」
「クラちゃんはガサツそうでしっかりしてるからね~、フラヴィアみたいなビジネス清楚じゃないのよ」
「なんだクラちゃんこの野郎」
「まあまあ2人とも落ち着きなよ!ヴィアもほんとのこと言われたからって怒らないの!」
「お主もか?お主も敵なのか?おのれリベールううう!!!」
ようやく会話へと混じれた。そう、この感じ。このノリが私はたまらなく好きだ。クラディアも、フラヴィアも、アネモスさんも、アバンセも。みんな、私と違ってる。内心ちょっと冷めたところがある私だけど、このみんなで話している時は、包み隠さず、調子に乗れる。本当にこの関係が好きだった。それと同時に、この交友が保たれるのは、この教会があってこそなんだな、と。また、この場所への尊さも増していく気がした。
午後の業務からは私とクラディア、それからエレンシア先輩が袖廊の担当。魔法科大学出身のシスターが偶然にも揃っていた。私もクラディアもオルガンは弾けないけど、魔法で、自然の音を集めてそれらしい音楽を奏でることはできる。公式のアンセムじゃないけど、いろんな音で曲が構成されていくのは嫌いじゃなかった。ただ、エレンシア先輩は魔法もオルガンも弾ける器用な人なので、私たちの魔法の出番は多分ないわけだけど、、、しかも、午後からダンジョン入りする人はほぼいないと言っていいので、箒を掃きながらだべるのが午後のここ担当のシスターの仕事だ。
「クラディアちゃん、リベールちゃん」
今日は先輩が話を振ってきてくれた。
「私、結婚するかもしれないんだけどさ」
「「え?本当ですか?!」まじすか?!」
クラディアと驚きの声が重なる。まさかの結婚トークだ。
「まだ決めてはないよ?アステルにもアネモスにも相談してないし、、、」
「相手誰なんすか?」
容赦のない質問、さすがクラディアだ。
「ジュール商工会の会長の息子さんなんだけど、、、いい人なんだよ?ちょうど求婚されてて、、、私もいい歳だからお受けしようかな、と思って」
「そしたら、先輩、晴れてお金持ちじゃないですか、、、すげーな、おいおい」
あとは、クラディアのズカズカ行く質問を側から聞いて頷きながら、時間が過ぎていった。私は彼氏なんて大学の頃以来いたことがない。そういえば他の女のところへ逃げていったあいつは今頃どうしているのだろうか。先輩の話を聞いて頷き続けてはいたが、私も再来年には二十台後半に突入だ。この仕事を続けるにしても、身は固めなきゃいけないのかもしれない、、、まず出会いがないのだが、、、
質問タイムは時間をどんどんと消費させ、いつの間にかお天道様は沈み、月光が教会の窓から差し始めた。
「そろそろ閉めますか?」
時計の針は午後6時半のあたりを示している。
「うん、そうだね。リベールちゃん、扉の札、お願いできる?」
「はい、大丈夫ですよ。すぐ行ってきます」
指示を聞いて、小走りに扉へと向かう。そっと開いて、久々に外気に触れると共に、見覚えある顔が私の目に飛び込んできた。
「あなたは、、、」
そう、口を開いたその黒髪は、私の顔を見るなり優しく笑いかけた。
夜闇に紛れるその黒髪に悪意は感じなかったが。
私はその笑顔に薄気味悪さを覚えた。
「確か、ディソサードさん?魔術競技会で、ご一緒でしたよね?」
「ええ、そうですね。お久しぶりです。」
再び、レイヴンは笑いかけた。程なくして、ガタイの良い男のシルエットが、闇の向こうから覗かせる。
朝見かけた時よりも、その外套は、土汚れているように見えた。
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