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第一章:この養成施設は終わってる
第6話:目覚めよ、少年
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どれほど眠っていたのだろうか。
リンネが目を覚ますと、外はもう暗くなっていた。陽が沈んでおり、代わりに月が高く昇っていた。キレイな満月だ。
リンネが今いるのは施設内にある治療所の個室である。
「……俺は、痛っ! 全身筋肉痛か? 無理しすぎたな……」
リンネはあのグランカとかいうやつと戦って、少なからず成長した。また、何故かわからないが〝スキル〟が増えたのだ。
《全解放》
・全ての能力値を上げ、全ての〝スキル〟を際限なく使うことができる
何気なしに発動された〝スキル〟はリンネの体を《化け物》以上に強靭に変えた。しかし、《化け物》よりも強力な分、体にかかる負担も桁違いであり、現在のように使用すれば倒れてしまう。
「まだこの世界が謎ってことだな。〝スキル〟は使えたとして一人一つ。いや、グランカの〝反撃〟に光っていた左眼からして、一つだけじゃないのか……?」
疑問が疑問を呼び、絡まっていく脳内。リンネはベッドの上に座りながら痛むコメカミを抑える。
すると、不意にコンコンという扉をノックする音が聞こえてくる。
「どうぞ」
扉が開かれると、そこにはアルムと宿敵の顔がひょこっと見える。
「そんな怪訝な顔すんなよ。ケガしてんのはお互い様……って、お前、傷跡がないな……」
「あ? 治癒魔法かけられたとしたら、それが当たり前じゃないのか?」
「いや? 治癒魔法で治せるのはあくまで『痛み』だ。止血の魔法とかあるが、それでも『傷』が治るわけじゃない。第一、傷は当人の治癒力で治せ、それが治癒魔法のルールだ」
魔法の知識が壊滅的に足りないリンネにとってその情報はありがたかった。ともに、自分の異常さがわかった瞬間でもある。
「異常なまでの強化魔法と治癒能力。他にもふざけた力を扱ってるだろ?」
(ヤバい、ほとんどバレてるじゃねーか。脅される。このままじゃ脅されてしまう。きっと変な要求をされるだろう。最悪、人体実験なんてされた暁には、本気で化け物になって呪ってやる)
「──めっちゃ強ぇし、カッケェじゃねーか!」
「ソウデスネ」
斜め上の発言によってリンネは棒読みに返してしまった。
なんかグランカの目が子供のようにキラキラしてる。犬で例えるとコーギーみたいな雰囲気を感じる。
「ウンウン。まさか俺と同じ〝複数スキル所持者〟がいるなんてな~」
「〝複数〟? やっぱり珍しくないものなのか? 〝スキル〟って」
「いや、普通に珍しいぞ? というより複数〝スキル〟を所持してるやつなんてロクなやつじゃねーからな」
グランカが説明したことをまとめるとこうなる。
・本来、〝スキル〟というのは当人の実力や努力、カリスマ性その他諸々で決まってくるらしい。
転生者であるリンネは特典として手に入れたため、努力せずに強くなってしまった。また、《化け物》を使いまくったことにより、【セルス】が
『うん。お前強い。実力十分。〝スキル〟あげるわ』
ということでリンネは二つ目の〝スキル〟《全解放》を獲得したことになる。
「俺は五歳の頃に一つ手に入れて、十二歳になってやっと二つ目を手に入れたぜ? 何故かそれから手に入る機会ゼロ! 魔法研究会や能力研究会のやつらは『〝スキル〟は一人二つまでなら手に入るのか?』っていう勝手な仮説立ててるけどな」
ただ純粋に自慢するわけでなく、説明の中に自分のことを交えてグランカは説明した。その横にいるアルムがすっごい顔しているのも気付かず。
「…………〝スキル〟ってそんな簡単に手に入れるんですか?」
「簡単なわけねーでしょ? 常識的に考えて」
「お願いしますっ! グランさんがどうやって〝スキル〟を手に入れることができたか教えてくださいっ!」
「そうだな……。まず剣を握って【ブリスリナ】と呼ばれる丘に行くじゃろ?」
「…………(コクコク」
「そんでもって《暴嵐の牙狼》を見つけるじゃろ」
「…………(コクコク」
「そしたら後は簡単じゃよ。魔法に頼らず剣と己の肉体のみで大体百匹殺せばいいんじゃ」
「うん、ムリだ!!」
自分には到底できないと理解したアルムは部屋の隅で体育座りをし始める。
「気を取り直して、さてリンネ! お前に朗報だ」
「なんだ? 飯食いたいんだが……」
「俺が明日からお前の専属コーチ的な立場になりましたっ、やったね!」
嫌な笑みを見せながらサムズアップをする。きっちり十秒の沈黙の後、リンネは立ち上がり、アルムの隣に体育座りする。そして
「イヤだァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「俺はその顔が見たかった! おーい、アルムちゃんやい。そろそろ自分の部屋に戻らないと、施設長が怒るぜ?」
「………………はぃ」
どれだけ傷付いたのか。本当にわかりやすいアルムはうなだれながらも自分の部屋へと戻っていく。部屋から出る際に、アルムは「バイバイ」と手を振っていった。
続けてグランカが部屋を出るのだが。
「よろしくなっ! 後輩くん」
あの笑顔は忘れられないだろう。
リンネは現実逃避するかのように、ベッドに潜ると気持ちよく、眠りについた。
後日。気持ちよく眠っているとリンネ含む新入生たちはグベルフによって集合を余儀なくすることとなった。昨日も使ったグラウンドに集合し、グベルフはこんなことを言う。
「よく眠れたかな諸君!? 昨日は、まぁ、思い出したくないので割愛しよう! 冒険者にとって一番重要なのはパーティーを組むことにある。とりあえず今日は適当にパーティーを組んでもらう! 最低三人のパーティーを自由に組んでくれ! では、始め!」
適当なこと抜かしてんじゃねーぞクソッタレ、と思いながらもリンネの心は冷静ではなかった。アルムとリンネは自然と同じパーティーを組むことができるがもう一人はどうしようか。
いや待てよ。俺は昨日あんなにも目立ったではないか(無意識で)。俺の強さはみんな理解したはずだ(強制的に)。こんな火力持ち、皆が欲しいに決まっているはずだ(乙)。
「どうする? 私ここに知り合いいないし、リンネもでしょ?」
アルムが絶好のタイミングで話題を持ち込んでくる。それを好機とみたリンネはフフッと笑う。
「まぁ、安心しろ。俺に策がある」
「……? ならいいけど」
リンネの策というのは簡単だ。
・動かず待つ
・誰が自分目当てで話しかける
・一番有能だと思ったパーティーに参加する
なんて完璧な作戦なんだろうとリンネは内心ドヤ顔だったが、現実そんなに甘くはなかった。
・・・
三分後
・・・・・
五分後
・・・・・・・・・・
十分後
何分経っても自分に話しかけてくる者はいなかった。
「な、何故だっ! 俺は結構目立っていたはずだぞ!?」
自分に自惚れているリンネは、なにかに気付いたのかハッと眼を見開く。
リンネは確かに強い。新入生の中ではダントツでリンネが強く、勝る者はいないだろう。しかし、何度も言うがリンネの力は異常なのだ。強すぎる。知らず内にリンネのことを恐れた生徒達は誘うことができなくなっていたのだ。
「…………どんまい」
「優しいその心、忘れるなよ」
また、アルムは支援魔法専門(本人は不満に思っている)なため、攻撃が基本だった昨日は目立つことができなかった。また、リンネとともにパーティーを組むため、パーティー勧誘はないに等しいだろう。
「……まだだっ。俺はコミュ力が割と高い。任せろっ!」
そう言ってリンネは一人で近くにいたパーティーの所へ走る。男二人に女二人の実にバランスのとれたパーティーといえる。
「すいません、俺たちもアナタたちのパーティーに……」
「ごめんムリです。」
一分も経たずにリンネのガラスのハートがパリンと割れた瞬間である。涙目になりながらリンネはアルムの元へと帰ってくる。アルムは我が子を心配する母親のような表情をしていた。
「…………だ、だめでし、た」
「もういいよ、もういいんだよリンネ。君は頑張った。本当に頑張った。もう、辛いことはしなくていいんだよっ」
「アルムっ」
ドラマができあがった瞬間でもあった。
アルムがリンネを慰さめていると。
「あの、ちょっと……いい、ですか?」
声をかけられたので、その方を見る。そこにいたのは、昨日派手に倒れた鎧姿の女性と派手にグラウンドを破壊した少女と眠そうな顔をした女の子だった。
また、女性は何故か肩で息しているし、少女は眠っている女の子をおんぶしていた。
「はい、なんでしょうか?」
未だ復帰できていないリンネの代わりにアルムが要件を聞く。
「ふぅ。……実はどこのパーティーにも入れてもらえず、困っていたんですよ。もうこのまま三人パーティーでも、と思いましたが何せアタッカー・アタッカー・ヒーラーという超攻撃パーティーの完成は免れたくて……」
落ち着いた女性は説明をした。何ともわかりやすい考えで、わかりやすい説明だった。
「できればアナタ方のパーティーに入れてもらいたいのですが……」
カレンはパーティーの即戦力であるリンネを見る。現在リンネはアルムの乏しい胸に顔を埋めて、チラッとカレンたちの方へと視線を移す。
「…………男一人は、なんか気まづい」
それは遠回しに否定していることになる。カレン含めた三人は仕方ない、と立ち去ろうとしたその時。
「…………しかし、俺たちもパーティー認定ができずに困っている」
足を止め、リンネの方へと顔を向ける。
「…………お前らに問おう。力が欲しいか」
「君はどこの魔王なのかな?」
アルムが胸元にいるリンネに軽くツッコミを入れる。三人の返答はイエスだった。まぁ、一人眠っているので、正確には二人となるが。
リンネは一旦アルムの胸から名残惜しそうに離れる。そして自己紹介を始める。名前がわからなければパーティーとしてどうかという最もな考えからだ。
「パーティーに入れてくれてありがとうございますっ! 私はカレン・オルガ、剣士です。よろしくお願いしますっ」
「私はエリス・オーセルティア、魔法使いで~す。そんでもって後ろの女の子がクルル・クラント、治癒魔法使いらしいよ?」
「俺は天霧リンネ、できればリンネとかリンって呼んでくれると助かる。えっと……なぁアルム、俺の役職ってなんだ?」
「うーん。拳闘士、とかじゃない?」
「んじゃあ俺は拳闘士で」
「私はアルム・ヘイムっ、支援魔法使いです」
このパーティーが、時期強くなるなんて、誰が想像できただろうか。しかし、それはもっと未来の話となる。
リンネが目を覚ますと、外はもう暗くなっていた。陽が沈んでおり、代わりに月が高く昇っていた。キレイな満月だ。
リンネが今いるのは施設内にある治療所の個室である。
「……俺は、痛っ! 全身筋肉痛か? 無理しすぎたな……」
リンネはあのグランカとかいうやつと戦って、少なからず成長した。また、何故かわからないが〝スキル〟が増えたのだ。
《全解放》
・全ての能力値を上げ、全ての〝スキル〟を際限なく使うことができる
何気なしに発動された〝スキル〟はリンネの体を《化け物》以上に強靭に変えた。しかし、《化け物》よりも強力な分、体にかかる負担も桁違いであり、現在のように使用すれば倒れてしまう。
「まだこの世界が謎ってことだな。〝スキル〟は使えたとして一人一つ。いや、グランカの〝反撃〟に光っていた左眼からして、一つだけじゃないのか……?」
疑問が疑問を呼び、絡まっていく脳内。リンネはベッドの上に座りながら痛むコメカミを抑える。
すると、不意にコンコンという扉をノックする音が聞こえてくる。
「どうぞ」
扉が開かれると、そこにはアルムと宿敵の顔がひょこっと見える。
「そんな怪訝な顔すんなよ。ケガしてんのはお互い様……って、お前、傷跡がないな……」
「あ? 治癒魔法かけられたとしたら、それが当たり前じゃないのか?」
「いや? 治癒魔法で治せるのはあくまで『痛み』だ。止血の魔法とかあるが、それでも『傷』が治るわけじゃない。第一、傷は当人の治癒力で治せ、それが治癒魔法のルールだ」
魔法の知識が壊滅的に足りないリンネにとってその情報はありがたかった。ともに、自分の異常さがわかった瞬間でもある。
「異常なまでの強化魔法と治癒能力。他にもふざけた力を扱ってるだろ?」
(ヤバい、ほとんどバレてるじゃねーか。脅される。このままじゃ脅されてしまう。きっと変な要求をされるだろう。最悪、人体実験なんてされた暁には、本気で化け物になって呪ってやる)
「──めっちゃ強ぇし、カッケェじゃねーか!」
「ソウデスネ」
斜め上の発言によってリンネは棒読みに返してしまった。
なんかグランカの目が子供のようにキラキラしてる。犬で例えるとコーギーみたいな雰囲気を感じる。
「ウンウン。まさか俺と同じ〝複数スキル所持者〟がいるなんてな~」
「〝複数〟? やっぱり珍しくないものなのか? 〝スキル〟って」
「いや、普通に珍しいぞ? というより複数〝スキル〟を所持してるやつなんてロクなやつじゃねーからな」
グランカが説明したことをまとめるとこうなる。
・本来、〝スキル〟というのは当人の実力や努力、カリスマ性その他諸々で決まってくるらしい。
転生者であるリンネは特典として手に入れたため、努力せずに強くなってしまった。また、《化け物》を使いまくったことにより、【セルス】が
『うん。お前強い。実力十分。〝スキル〟あげるわ』
ということでリンネは二つ目の〝スキル〟《全解放》を獲得したことになる。
「俺は五歳の頃に一つ手に入れて、十二歳になってやっと二つ目を手に入れたぜ? 何故かそれから手に入る機会ゼロ! 魔法研究会や能力研究会のやつらは『〝スキル〟は一人二つまでなら手に入るのか?』っていう勝手な仮説立ててるけどな」
ただ純粋に自慢するわけでなく、説明の中に自分のことを交えてグランカは説明した。その横にいるアルムがすっごい顔しているのも気付かず。
「…………〝スキル〟ってそんな簡単に手に入れるんですか?」
「簡単なわけねーでしょ? 常識的に考えて」
「お願いしますっ! グランさんがどうやって〝スキル〟を手に入れることができたか教えてくださいっ!」
「そうだな……。まず剣を握って【ブリスリナ】と呼ばれる丘に行くじゃろ?」
「…………(コクコク」
「そんでもって《暴嵐の牙狼》を見つけるじゃろ」
「…………(コクコク」
「そしたら後は簡単じゃよ。魔法に頼らず剣と己の肉体のみで大体百匹殺せばいいんじゃ」
「うん、ムリだ!!」
自分には到底できないと理解したアルムは部屋の隅で体育座りをし始める。
「気を取り直して、さてリンネ! お前に朗報だ」
「なんだ? 飯食いたいんだが……」
「俺が明日からお前の専属コーチ的な立場になりましたっ、やったね!」
嫌な笑みを見せながらサムズアップをする。きっちり十秒の沈黙の後、リンネは立ち上がり、アルムの隣に体育座りする。そして
「イヤだァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「俺はその顔が見たかった! おーい、アルムちゃんやい。そろそろ自分の部屋に戻らないと、施設長が怒るぜ?」
「………………はぃ」
どれだけ傷付いたのか。本当にわかりやすいアルムはうなだれながらも自分の部屋へと戻っていく。部屋から出る際に、アルムは「バイバイ」と手を振っていった。
続けてグランカが部屋を出るのだが。
「よろしくなっ! 後輩くん」
あの笑顔は忘れられないだろう。
リンネは現実逃避するかのように、ベッドに潜ると気持ちよく、眠りについた。
後日。気持ちよく眠っているとリンネ含む新入生たちはグベルフによって集合を余儀なくすることとなった。昨日も使ったグラウンドに集合し、グベルフはこんなことを言う。
「よく眠れたかな諸君!? 昨日は、まぁ、思い出したくないので割愛しよう! 冒険者にとって一番重要なのはパーティーを組むことにある。とりあえず今日は適当にパーティーを組んでもらう! 最低三人のパーティーを自由に組んでくれ! では、始め!」
適当なこと抜かしてんじゃねーぞクソッタレ、と思いながらもリンネの心は冷静ではなかった。アルムとリンネは自然と同じパーティーを組むことができるがもう一人はどうしようか。
いや待てよ。俺は昨日あんなにも目立ったではないか(無意識で)。俺の強さはみんな理解したはずだ(強制的に)。こんな火力持ち、皆が欲しいに決まっているはずだ(乙)。
「どうする? 私ここに知り合いいないし、リンネもでしょ?」
アルムが絶好のタイミングで話題を持ち込んでくる。それを好機とみたリンネはフフッと笑う。
「まぁ、安心しろ。俺に策がある」
「……? ならいいけど」
リンネの策というのは簡単だ。
・動かず待つ
・誰が自分目当てで話しかける
・一番有能だと思ったパーティーに参加する
なんて完璧な作戦なんだろうとリンネは内心ドヤ顔だったが、現実そんなに甘くはなかった。
・・・
三分後
・・・・・
五分後
・・・・・・・・・・
十分後
何分経っても自分に話しかけてくる者はいなかった。
「な、何故だっ! 俺は結構目立っていたはずだぞ!?」
自分に自惚れているリンネは、なにかに気付いたのかハッと眼を見開く。
リンネは確かに強い。新入生の中ではダントツでリンネが強く、勝る者はいないだろう。しかし、何度も言うがリンネの力は異常なのだ。強すぎる。知らず内にリンネのことを恐れた生徒達は誘うことができなくなっていたのだ。
「…………どんまい」
「優しいその心、忘れるなよ」
また、アルムは支援魔法専門(本人は不満に思っている)なため、攻撃が基本だった昨日は目立つことができなかった。また、リンネとともにパーティーを組むため、パーティー勧誘はないに等しいだろう。
「……まだだっ。俺はコミュ力が割と高い。任せろっ!」
そう言ってリンネは一人で近くにいたパーティーの所へ走る。男二人に女二人の実にバランスのとれたパーティーといえる。
「すいません、俺たちもアナタたちのパーティーに……」
「ごめんムリです。」
一分も経たずにリンネのガラスのハートがパリンと割れた瞬間である。涙目になりながらリンネはアルムの元へと帰ってくる。アルムは我が子を心配する母親のような表情をしていた。
「…………だ、だめでし、た」
「もういいよ、もういいんだよリンネ。君は頑張った。本当に頑張った。もう、辛いことはしなくていいんだよっ」
「アルムっ」
ドラマができあがった瞬間でもあった。
アルムがリンネを慰さめていると。
「あの、ちょっと……いい、ですか?」
声をかけられたので、その方を見る。そこにいたのは、昨日派手に倒れた鎧姿の女性と派手にグラウンドを破壊した少女と眠そうな顔をした女の子だった。
また、女性は何故か肩で息しているし、少女は眠っている女の子をおんぶしていた。
「はい、なんでしょうか?」
未だ復帰できていないリンネの代わりにアルムが要件を聞く。
「ふぅ。……実はどこのパーティーにも入れてもらえず、困っていたんですよ。もうこのまま三人パーティーでも、と思いましたが何せアタッカー・アタッカー・ヒーラーという超攻撃パーティーの完成は免れたくて……」
落ち着いた女性は説明をした。何ともわかりやすい考えで、わかりやすい説明だった。
「できればアナタ方のパーティーに入れてもらいたいのですが……」
カレンはパーティーの即戦力であるリンネを見る。現在リンネはアルムの乏しい胸に顔を埋めて、チラッとカレンたちの方へと視線を移す。
「…………男一人は、なんか気まづい」
それは遠回しに否定していることになる。カレン含めた三人は仕方ない、と立ち去ろうとしたその時。
「…………しかし、俺たちもパーティー認定ができずに困っている」
足を止め、リンネの方へと顔を向ける。
「…………お前らに問おう。力が欲しいか」
「君はどこの魔王なのかな?」
アルムが胸元にいるリンネに軽くツッコミを入れる。三人の返答はイエスだった。まぁ、一人眠っているので、正確には二人となるが。
リンネは一旦アルムの胸から名残惜しそうに離れる。そして自己紹介を始める。名前がわからなければパーティーとしてどうかという最もな考えからだ。
「パーティーに入れてくれてありがとうございますっ! 私はカレン・オルガ、剣士です。よろしくお願いしますっ」
「私はエリス・オーセルティア、魔法使いで~す。そんでもって後ろの女の子がクルル・クラント、治癒魔法使いらしいよ?」
「俺は天霧リンネ、できればリンネとかリンって呼んでくれると助かる。えっと……なぁアルム、俺の役職ってなんだ?」
「うーん。拳闘士、とかじゃない?」
「んじゃあ俺は拳闘士で」
「私はアルム・ヘイムっ、支援魔法使いです」
このパーティーが、時期強くなるなんて、誰が想像できただろうか。しかし、それはもっと未来の話となる。
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