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○月×日
倒れてから王の過保護に拍車がかかってしまった。
どこに行くにも使用人を付き添わせようとする。
大人なんだから一人で大丈夫だと言ってみたが、そんな小さな身体でどこかに行くのは心配なのだと言われた。
小さな身体…そういえばこの国の男性の平均身長は俺よりも遥かに高い。
あまり気にしてなかったが、考えてみるとエナさんやランさんの身長も俺とほとんど変わらない。
俺の身長は179cmだ。
王は俺より30cmは高い。そう考えるとやはり俺は小さい方なのか。
地味に落ち込んだ。
―――――――
○月×日
王の許可が出たので図書室に行った。
使用人付きだけどまあいい。
今日の目的は城下町の事を調べる事だった。せっかく行くなら楽しみたいし、何があるか把握しておきたかったから。
使用人は真剣に調べる俺に対して「楽しみにしておられるのですね」と嬉しそうに笑っていた。
今はそう思わせておいた方がいいから何も言わずにおいたけど、ちょっと複雑だった。
そういえば、あれから城下町の事を王が口にする事はなかった。俺から切り出さないとダメだろうか。
―――――――
○月×日
いきなり城下町の地図と詳しいガイドブック的なものを贈られた。司書からだそうだ。
この前真剣に調べていた俺を見て心を打たれたらしい。
「王の為にこの国を知ろうとする姿は本当に健気だった」と言っていたらしい。
凄く失礼だと思うけど、ちょっと怖かった。
でもまあ、図書室に行く時間は限られてるし、詳しい事ももっと知りたい。有り難く受け取る事にした。
それにしてもこの国の使用人や城の人達は俺の事を買い被りすぎていると思う。
ちょっと疲れる。
――――――――
○月×日
中庭でガイドブックを見ていたらランさんに会った。
それは何かと聞かれたので、素直に城下町の本ですと言ったら興味を持ったようだった。
ランさんは王族だからあまり街には行かないらしい。
そのうち行くかも知れないから調べているのだと言えば、羨ましいと言っていた。
もし行けたら教えて下さいねと笑った一方で、王の事を聞かれた。
最近王に会えないけど何かあったのかと。
思い当たるのはひとつしかない。
王は俺が倒れてからしばらく、ずっとそばにいたからだ。
ランさんを悲しませたくはない。
黙っているのが一番いいだろうから何も言わなかったが、罪悪感でいっぱいだった。
――――――――
○月×日
ランさんの悲しそうな顔が頭から離れない。
俺が使用人ではなく、王の客だと言った方がいいのだろうか。
けど、俺のせいでランさんに会わなかったと聞いたら気分を悪くするかもしれない。
悲しそうな顔はさせたくない。
この気持ちは何なんだろう。
ずっと悩んでいたら気分が悪くなってきた。
―――――――
○月×日
使用人に「誰かを悲しませたくないという気持ちは何なんだろうな」と何気なく言ってみたら、その使用人は顔を輝かせて「それは恋ですわ」と嬉しそうに言った。
そんなバカな。
俺はランさんが好きなのか?
でも、彼女の笑顔は癒されるし、話していると楽しい。
自分の気持ちがよく分からない。
使用人は王の事だと思ったらしく、今すぐにでも言いに行きそうな勢いだった。
慌てて止めたがいつ王の耳に入るか分からない。
勘違いされても困るし、ランさんだと分かっても良い方向には転ばないだろう。
頭が痛くなった。
俺はどうすればいいんだ。
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